陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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剣と鋼 ―――スクーリング

推奨BGM:Burlesque


 ここまで納品する必要があるのか、と正直驚いていたりもする。荷車の上には大量の刀剣が乗せられている。その全てがカインの作品であり、全てがほぼ同じ規格で作られている。カインは量産での製法をしないため、全て自分の手でたたいて作った作品であり、全ての刃は斬れない様に潰れている。布に包まれたそれは全部で五十本近くある様に見える。荷車に乗せたそれをカインはチェックし、軽く頷く。

「それじゃあお仕事よろしくねマサキ君。それを学園の方まで運べば後は向こうが勝手に貰ってくれるから」

 最終チェックなのかつんでいるものの数を軽く確認し、カインは頷く。

「うん、大丈夫だね。っと、少し不思議そうな顔をしているね」

「あぁ、まあ、それは……」

 正直これを数ヶ月に一度なら解る。だが結構なハイペースでこの量の納品を求められているのだ。それは何故か、と少々気になる事はある。視線でそれを理解したのか、カインは口を開く。

「えとね、折れるんだよ」

「……は?」


「結構頑丈に作ってるつもりなんだけど、それでも卒業前の子とか三年生だと結構平気で剣を折ってくる子がいてね、斬れない様に作ってるんだけどそれも技術任せに相手を斬ろうとする子が出てきたり……まあ、それで色々と消耗が早いんだ、剣は。だからこんな風に納品をしなきゃいけないんだけど」

 そんな所への入学をキリトとユージオは目指しているのか。しかしキリトは言わずとも、ユージオも実戦の現場には立っていた。それだけで大きなアドバンテージのはずだ。学園の学生たちに負けない……と良いなぁ……。

「うん、とりあえず向こうには結構貴族の子供とかがいるからあまり目立っちゃ駄目だよ? 貴族には僕たち平民と違って少しだけだけど禁忌目録の制限が緩くなっている所があるから、目を付けられると少し厄介な事になるしね」

 君ならそんな心配はいらないだろうけどね、とカインはその後に都透けるが、その言葉は頭には入ってこなかった。

 思いがけないヒントが入った。

 貴族。

 この世界には貴族制度があったのだ。

 そりゃあ中世ベースで騎士がいるのならいてもおかしくはない。だが貴族は禁忌目録の制限が多少緩くなる、という言葉に関しては見逃せない。アリスという少女は貴族ではなく、平民だった……はずだ。闇の国へと踏み込んでしまった為に連れ去られてしまった少女。もし本当に平民ではなく貴族だったなら? 何て事態は流石にフィクションノベルの読みすぎだが、この制限が”緩い”という部分、いったいどの程度までなのか。それを把握しておく必要はある。

「じゃ、頼んだよマサキ君」

「あ、はい」

 まあ、それも時間はある。キリトとユージオがこっちにやってくるまでの半年間、この時間を利用して何としてでもこの世界について調べる。荷車に近寄りながらカインへと視線を向ける。

「えーと、それで馬とかは……?」

 荷車を引っ張るのはもちろん動物だと思い、カインへと視線を向ける。が、そこにはいい笑顔のカインだけしかおらず、

「え? もちろん人力だけど?」


                           ◆


「いや、まあ、予想してたんだけどさ……!」

 人が通る大通りを馬などの動物ではなく人間が荷車を引っ張っている。周りを歩く人間が振り返りこっちを見てはひそひそ何やら話している。なんという屈辱、何という羞恥プレイ。しかし司狼や兄と一緒にやんちゃに特攻していた時の方がそういう視線は多くなったので恥ずかしい、と思うよりは”あぁ、懐かしい”とか思ってしまうあたりもうだめなのかもしれない。兄たちの毒されすぎた。

 だがこうやって荷車を引きながら街を歩いていると改めて街の景観が視界に入る。レンガの道路にレンガの家。技術力は正直高いとは言えないレベルだ。数千年もの間この文明レベルで停滞しているという話しを聞く辺り、

 誰か、もしくは何かが発展を妨げている様にしか思えないところはある。

「……ゲームの遊びすぎかなぁ」

 突拍子の無い事ばかり思いつく。が、現実がそういう突拍子のない事ばかりなので笑っている事も出来ない。

 信じてSAOに送り出した兄が金髪っ巨乳嫁と首切りにドハマリして帰ってきた。

 何て意味不明の極地にあるような出来事があるのだ。もうたぶん十分の人生、何が起きたって心の底から驚くようなことはないはず。少なくともアレレベルのインパクトでもないと驚かない。たとえばラスボスが兄だったとか。そんなレベルだったら多分驚ける。でも兄はどこかボスっぽい雰囲気を最近では見せてたしなっててもおかしくはない。

 ……等と軽い現実逃避をする。

 周りを見れば人通りの多い大通りだと言う事が解る。隣を馬が引っ張る馬車が通り過ぎる姿を見るとどうしようもなく虚しくなってくる。もしやカインには悪意があるのではないかと、首ばっかり攻撃した仕返しを受けているのではないかと。でもよく考えればカインも納品する度にこの道を通っているのだ。だとしたら少しだけ同情する。

「あ、いや」

 する必要はない、か。

 視線を感じ、そっちへと顔を向ければ視線を向けていた相手がこっちに向ける緯線はあくまでも”視線”のみで。そこには感情も興味も一切存在しない。文字通りみているだけ。情報として見て、処理しているだけだ。それだけ。

「これなら」

 見られていないのと全く変わらない。カインの人間臭い対応で忘れていたが、そう、この世界の住人はどこか自己中心的で、自分を愛している様な所がある。吐き気がするほどに自分が世界の中心だと信じて疑っていない。人によってその度合いが高かったり低かったり、調べるべき事は多い。ルーリッドでは基本的なあり方しか解らなかったから―――キリト達が到着する前になんとか、大きなピースの一つでも見つけておきたい。

 とはいえ、今は鍛冶屋のアルバイトなのだが。

 その事実だけはどうしようもない。

 他の人間が運べば重くて牛歩程の歩みになるであろう荷車の重みも、大太刀に振れた時から始まった身体能力の変異の前では無に等しい。舗装されているとはそこそこでこぼこするレンガの道を苦も無く荷車を引いて進む。悪路といえるほどでもない道を荷車を引きながら進む事数十分、やっと目的地が見えてくる。

 目的となる学園はそこそこの大きさを持っていた。

 まず見えてくるのは入り口、そして校舎の姿だった。レンガの壁に木の屋根、かなり年期の入った建物らしく、壁に対して足場が組み上がっている。その上にバケツやらヘラやら色々と道具が置いてあることを見ると、どうやら校舎の補修作業の最中らしい。この世界でもものを大事にする習慣があるのだな、と軽く感心しつつ入り口に近づく。足場の上の作業員が此方に視線を向け、笑顔と共に軽く頭を下げるので此方も頷き返す。

 白い髪に病的なほど細い体、まるで蜘蛛をイメージさせる姿はどこかで見た事がある気がする……が、まあ、やはりこの世界は自己中心的部分が個人で結構波があるな、等と思い、視線を外して学園の大きな門をくぐって中に入る。門をくぐったところで見えるのは学園の広い敷地だった。カインが来る直前に貴族の子供も存在している事を考えるとそれなりに大きく、そして環境が整ってなくてはならないだろう。その結果、この姿になったと、広いなぁ、等と感想を抱きつつあると人影が此方へと向かって歩いてくる。手を上げて近寄ってくる辺り、確実に自分が目的なのだろう。此方も手を上げて返事をする。

 手を振りかえしたところで確認が終わったのか向うは手を下げ、此方へと向かって少しだけ速度を上げて歩いてくる。その間、歩いてくる姿を確認する。

 まずは服装だ。布だろうか、動きやすい服装に身を包んでいる。とは言え半袖でも半ズボンでもなく、上も下も長い。近づいてくるごとにその姿はもう少し鮮明に見えてくる。金髪のポニーテールで肌は白い。体格からして女性の様だ。腰に剣を差しているが、見た目からしてどう見ても”学生”という感じではない。おそらく教職の人間なのだろうが、いや、待て。この人物は知っているぞ―――

「―――ベア、……トリスさん?」

「あ、もしかしてカインから私の名前を聞いてました?」

 そう言って近づいてきた女性は俺が知るベアトリス・キルヒアイゼンにそっくりn人物だった。そして彼女もまた、俺を見て初見の人物と同じリアクションをしてくる。彼女もまたカインみたいなただのそっくりさんなのか、記憶を制限された本人なのか、その判別はつかない。ただ笑顔で片手であいさつしてくる姿は何処から見てもベアトリス本人だった。

「あ、っと、マサキ君でしたよね? カインの方から今日送るのは貴方だって伝書鳩の方で伝えてもらっていましたからたぶんそうだと思うんですけど―――」

「あ、はい、ちょっと呆けてただけです。そうです、正樹です」

 少しだけ考えに没頭し、呆けていた。それはいけない。すぐさま頭を切り替えて目の前の”ベアトリス”へと視線を向ける。

「カインさんに頼まれて剣の納品に来ました」

「お疲れ様です。ここからは私と生徒の方で運び込みます―――」

 と、そこでベアトリスが頭の後ろを掻く。

「と、言いたい所なんですけど予想よりも早くマサキ君が来てしまった為にまだ授業終わっていないんですよね。なので……」

「あぁ、いえ、もちろんお手伝いさせていただきます」

「あ、本当ですか? なんだか手伝わせちゃったようで申し訳ありませんねー、いやー、あはは。いや、ごめんね?」

「いえ、ここまで来たらあと少し、ってだけですし」

 そうは言うが、先ほどまでベアトリスはわざとらしい困った顔を浮かべて此方の事をチラチラ見ていた。完全に手伝わせる気満々だったのは見ただけで解った。この女、自分の知っているベアトリス・キルヒアイゼンとそっくりすぎて憎めない。

「あぁ、そう言えばそうでしたね」

 歩き出す前にベアトリスが手を出してくる。

「一応カインから人となりとかは聞いてましたが、初めてですので挨拶をしましょうか、はじめましてマサキ君、私の名前はベアトリス、ベアトリス・キルヒアイゼンと申します。ここで実技担当での教師をやらせていただいています」

「一応カインさんの所でバイトをさせてもらっている正樹です、どうぞよろしくお願いします」

 差し出された手を握り、握手を交わす。そしてそこでベアトリスが首をかしげる。

「あれ、マサキ君、私達どこかで会ったことありませんか?」 あ、いえ、私は元からカイン君一筋でカイン君んラブを公言していますけどそれとは別になんというかマサキ君には親しみを感じるというか……なんというか既知感を感じると言いますか」

 ベアトリスの言葉に、真実を言えなく、

「いえ、たぶん似た様な人に会っただけじゃないですか? 生徒はたくさんいるみたいですし」

「ま、たぶんそうでしょうね」

 その事実に少しだけ心が痛んだ。




シュピ虫「名前が現れる事もなく平和に生きたい」
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| 断頭の剣鬼 | 14:41 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ああ、うん。お茶の間の代表格さんは平穏に暮らせるといいね(遠い目)

| hunting ground | 2013/04/01 00:14 | URL | ≫ EDIT

シュピ虫さんに安らぎをw

| とっつき | 2013/04/01 21:37 | URL |















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