陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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剣と鋼 ―――デイズ

推奨BGM:Burlesque


 素早いく、短いステップから一気に踏み込む。手に握っている得物は長く、重い。それ故相手の懐に接近しすぎると完全に振り下ろす事が出来ない弱点がある。いや、それは刃の長い得物全般に言える弱点だ。これが西洋種の武器であればその用途は”斬る”事ではなく”叩く”ことtにある。威力を込めて殴る事は出来る為、その役目を果たす事は出来る。だが東洋剣、刀は違う。攻撃する際に刃を押し当て、そして引く、という動作が必要とされる。しかも刀は限りなく芸術品に近い武器だ。その技術一つにしても精密な動きで行わなければ武器を無駄に損耗させるだけで終わってしまう。

 一流の剣士であれば得物を損耗させずに戦うを熟知している。

 だから、この体に染みついている動きは間違いなく一流の動きだ。

 そう、染み付いている。ほぼゼロ距離であるというのに、獲物である黒い大太刀は迷うことなく
相手の首元を狙う。左足から踏み込み、刃を前に突き出しつつ右足を背後へと引きずる様に回し、刃が引っ掛かるのと同時に体を回転する様に刃を引く。シンプルな動きながら、巨大な得物をその性能を存分に発揮するための動きだ。考えるよりも早くこの動きが出てくる辺り、彼の言葉は本当なのだろう。いや、最初からそれを疑う余地はない。自分が考えて動くよりもはるかに優秀であり、そして凶悪である。動きの一つ一つが首を刈り落とす為だけに存在している。

 この動きの元々の所持者は頭がおかしいと言う評価を与える他ない。

 そして相対する相手は少々驚きつつも、明確な反応を示す。

 両手で持ち上げる様な大剣を片手で握る姿は圧巻の一言に尽きる。片手で大剣を操り、盾を扱うかのように自分と大太刀の間に刃を挟み込み、攻撃を受け止める。その衝撃で大剣とそれを支える体が後ろへとわずかに押し込まれる。が、呻き声も苦しそうな声も漏れない。漏れるのは呼吸音だけであり、それも一定のペースを持って保たれている。大剣の主、カインは自身の傑作である大剣を通して大太刀の感触を感じ取っている。

 俺、正樹対カイン。

 これが始まるきっかけとなったのは一時間ほど前の出来事となる。


                           ◆


「これが君の持ってる、そして知っている珍しい剣だね?」

 そうやってカインの前に布にくるまれた大太刀を広げる。テーブルの上に置き、その黒く染まった刃を惜しげもなく披露する。相変わらず重く、大きい刃だと思う。カインは此方を見て、いいかい、と視線で訴えかけてくる。どうぞ、と言葉を入れるとカインは早速刃を持ち上げる。

「重い……」

 それは此方に対する言葉というよりは自身に対する感想であり、思わず漏れてしまった言葉にも思える。慎重に刃を両手で持ち上げ、その重さをカインは改めて実感している。完全に布から解放された黒の大太刀は窓から差し込む陽光に辺り、光を反射することなく吸収している。まるで刃そのものが生きているようで、陽光を食料に呼吸しているようだった。魔性の刃をカインは手袋に覆われた両手で持ち上げながら、視線を改めて此方へと向けてくる。

「これは凄く重いけどマサキ君は一人で持ち上げられるのかい?」

「えぇ、まあ」

 それを握ったら人間卒業とか言えるわけもないので、此処は余計な情報を与えずに普通に頷いて肯定する。その事実にカインは驚きつつ、表情から自分がこれを運んでくるとき、苦も無く持って来たことを思い出しているようだった。少々興奮した様子でカインは視線を向けてくる。

「マサキ君、これ、素材は……?」

「あー……実はこれ、元々は兄の所有物でして、色々あって巡りに巡って今自分の手元にありまして……」

「そっか、材料は解らないのか……」

 確かに光を吸収する程にまで黒い刃を生み出せるような材質、材料となれば知りたくもなるだろうが、それも無理だ。第一インクラッドで生成されたものだとかキリトが言っていた記憶があるし、おそらく材料は虚空の物質ではなかろうか。しかし、

「これを作るに必要な製法は知ってますよ」

「本当かい?」

「えぇ、少々珍しい方法でカインさんがやっていた方法とは全く違います。これと同じものを作るのはたぶん不可能ですけど、似た様なものを作るなら」

「いや、それでもいいんだ」

「では後で文章にまとめておきますね、たぶんそっちの方が解りやすいでしょうし」

 昔レポート書いたし。何故だろう、若いときは好きなレポートを書け、と言われるとどうしても厨二くさいというか、かっこいいものに引かれてしまう。刀とかを調べて利する事は若ければ一度でもあるはずだ。そしてそう言うのを調べていると種類やら作り方やら、そういう事にまで知識が伸び始める。

 社会生活と大学生活では全く必要のない知識、中学生時代の黒歴史が役立つとはだれが思ったであろうか。いや、案外ライトノベル的知識が役に立っている状況なのでバカにできないかもしれない。ともあれ、今は纏められるだけの知識があると言う事に感謝しよう。

「ふむ……これは少し振ってみてもいいかな?」

 大太刀を持ち上げて観察していたカインが聞いてくるので素直に頭を縦に振る。ありがとう、と言葉を置いてからカインが両手で柄を握り、椅子から立ち上がる。慎重に刃を両手でつかみ、カインは構える。そう、両手で。俺でなら片腕で支えられる剣もカインからすれば両手で握らなきゃ運用の出来ない超重量の得物。両手で支え、そして構える。

「これを振るのか……」

「本来はもっと軽い得物なはずなんですけど、とりわけそれは筋力が要求されまして……」

「たぶん、これも魔剣やら名剣と呼ばれる持ち主を選ぶ様な剣なのかもしれない、ねっ!」

 上段に構えた剣をカインが振り下ろす。鍛冶師西田は恐ろしく綺麗で、そして修練の見える剣筋だった。

 ―――悲しいことに、それは記憶にある櫻井戒の剣術に遠く及ばないものだった。

 一回振り下ろしたところでピタリ、と刃の動きをカインが止める。そしてそこで刃の形状を見ながら、此方に視線を送ることなく質問してくる。

「これってもしかして使い方がサーベルとかと同じなのかな?」

 刃の反りを見ての質問だ。

「サーベル、とは少し違います。叩き斬ることではなく、技術を持って斬る事を目的として作られている形状なのでそのまま叩きつけるのではなく、刃を押し当てて引く感じで使うんです。修練はそれなりに必要ですけど普通の剣じゃ出せないような鋭さを出す事が出来るようにできてますよ。まあ、これはその中でもかなり大きな部類に入ってご存じの通りの使い方ができますけど」

「うーん、と言う事は使い方を学ばなきゃいけないのかな……となると、うん。作れたとしても売れないかなぁ……」

「ですね」

 まぁ、そう言う事に案る。刀の技術は剣ではなく刀がメインとして活躍していた日本だからこそ使われていたもので、鎧を相手にするときやはり有効なのはクレイモア等の両手剣だ。そういう社会では刀は趣味や芸術を超える範疇の活躍は出来ない。そこにあくまでも”ふつうの”という符号がつくわけだが、カインに魔剣を生み出す様な技量がない以上、それも忘れていい話だ。

「でもな、うーん」

 刃をテーブルの上に戻しながら、カインは頭を捻る。その顔には”勿体ない”と書かれているように見える。確かにそうだろう。実際ここまで珍しいものを手にして、使えないと切り捨てるのは簡単だが、実にもったいない話だ。知り、そして覚えた技術は死蔵させるべきではない。そこらから研鑽し己の一部にすべきだとカインは判断している。

 故に、

「マサキ君」

「はい」

 カインの直後の提案は驚きと共に来た。

「ちょっと実戦形式でその技術というものを見せてくれないかな?」

「へ?」


                           ◆


 そうやって戦闘が開始し、もう既に何度か刃を切り結んでいる。

 切り結ぶ、とは言うもの実際刃と刃をぶつける事はほとんどしない。刃がぶつかるのはカインが大剣で防御する時だけであり、カインからの攻撃は基本全て回避する事で刃と刃の接触を断っている。その様子を眺めながらカインが口を開く。

「なるほど、繊細な武器なんだね」

「本来は、ですね。これは頑丈にできていますから平気ですけど」

「本来は繊細な武器で損耗を控える為に接触はタブー、とあかなりピーキーな武器なんだね」

 そうやって口を動かす合間にも動きを止めない。突きをくりださず、踏み込みから冗談の斬撃を繰り出す。それがサイドステップで避けられるのと同時にカインが大剣を突きだしてくる。上半身の動きですれ違う様に回避し、今度は体を落としながら刃を上へと向け、跳ね上げる。再び大剣で防御に入り、得物と得物がぶつかり合い金属音が響く。大きく弾かれた大剣を確認する前から、体はそれを知っていたかのように勝手に動き出す。

 無論、刃を首へと向けて。

 思考する必要もなく繰り出される動きはカインの回避の動きによって不発に終わる。今の一撃は殺す事を目的にしていない。攻撃を寸止めできるようにギリギリのところで勢いを殺している。それ故に回避できたのだ。もしこれが殺すための一撃だったら―――ずっと前に鋼ごと首を断っているだろう。その姿が幻視できる。

 だからこそ、

「ここまでかな」

「はい」

 待ったを書けてきたカインの声に動きを止める。息を荒げていないものの、玉のような背をカインが浮かべているのは見間違いではない。こうやって体を動かしていたのもそう長い話ではない。ほんの数分の出来事だ。だがそれだけの集中と緊張がカインにあった。という証だ。それに比べて自分は汗も疲労もない。

 改めて自分の兄と、そしてキリトがどんなでたらめな存在だったかを思い知らされる。

 さよなら、剣を握るまで弱かった俺。

 こんにちわ、人間卒業した俺。

「うーん、強いなあ、全く歯が立たなかったよ」

 苦笑しながらカインは歩み寄ってくる。その手に握られている大剣は模擬戦を始める前と比べて大幅に傷ついている。それに比べてこの大太刀が傷一つついてない事から武器の性能差は察せられる。

「武器の差が大きかったんですよ」

「謙遜はいけないよ、さっきだって手加減されなかったら首が飛んでただろうし。なんというか、怖かったね」

「ごめんなさい。ごめんなさい。本当にごめんなさい」

 いいよ、と言ってくれるがこっちからすれば冷や汗をかくような出来事である。良く考えれば現在泊めてもらっている居候先の家主の首を背丈ほど長い刃で追いかけていたのだ。攻撃は通じない、避けられる、首が狙われているのは解る、これはもうトラウマになってもおかしくないような出来事である。というかいやすぎる。

 頼まれているからとはいえ、なんてことをしているんだ……!

 い歩間違えれば確実に殺している。苦笑はしているものの、カインはまるで嫌がる様子は見せない。逆にいいものを見せて貰ったと、そんな様子さえ見せている。かなり太い神経をしているようで、少しだけ安心した。

 だけど、

「それにしてもカインさん肝が太いですね、もし間違えて死んでしまったらどうするんですか……」

「あははは……」

 カインはそう言われ苦笑し、

「なにを言ってるかよくわからないけど、僕がこんな所で死ぬことはありえないよ」

 自信満々にそう言うものだから、呆れかえって何も言えなくなる。しかしこの根拠のない自信は一体どこから来るものなのだろうか。少しだけ、不安になってくるところがある。

 と、そこでカインが笑みを浮かべる。

「ありがとう、おかげでなんか色々と掴めてきた気がするよ。午後は鍛冶の方に集中したいからマサキ君少し頼みごとをしてもいいかな?」

「あ、はい、自分でよければ」

 カインに対して抱いた不安を消し去りながら、改めてカインへと向き直る。何の不安だったかは忘れ、此処においてもらっているという恩と、そして条件を満たす為にできる事ならなんだってやるつもりだ。

「学園の方に納品しなきゃいけないものがあるんだ。僕の代わりにやってくれるかな?」

 答えはもちろんの事、決まっていた。




 スゴイヘイワジカン。

 まあ、予め宣言していた通り凄く平和な時間です。面白みなんてないです。平和で、平和で、糞です。平和故に皆糞まみれです。糞に塗れている事に気づけない程に糞です。だってここは天狗道だから。

 みんな自分が何をやっても当然だと信じちゃってる。

 それではまた次回。
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| 断頭の剣鬼 | 20:21 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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