陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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プロローグ ―――ミート・ピース・シティ

推奨BGM:Nacht der langen Messer


 ポツポツとだが、外で雨の音がする。

 この世界へとやってきて初めての雨かもしれない。そんな予告も予兆も全くなく唐突に降り出した雨は今、夜の街を濡らしている。窓の外化r見るその光景はとても寒そうに見える。飴と同時に濃霧も発生しており、とてもだが外にいられる状況ではない。あのまま外をうろついているのであれば今頃雨と霧でびしょぬらになっていたことは間違いない。だからこそ、こうやって屋根の下でティーカップを片手に椅子に座っていられる状況に感謝する。

「や、待たせたかな?」

 チュニックにそでを通した男が奥からやってくる。外で会った時の様な服装ではなく、家着を意識した軽い服装だ。整った容姿に均衡のとれた肉体、年齢以上の若さ男感じさせる姿にその服はあっていた。爽やかな笑顔と共にある郷愁を胸に抱かせる。俺は知っている、この人物を。この顔を何度も見ている。それを再び確認する様にティーカップを手に、男の顔をまじまじと見る。


「あ、えーと」

 そこで照れたような表情を浮かべ、

「その、迷惑だったかな?」

 頬を掻く姿でさえどこか絵になりそうな様子の男が少々困った様子をしている。そこで自分が少々無遠慮だったのかもしれないt気づき、急いでティーカップを置いて頭を下げる。

「い、いえ! 寧ろ申し訳ない感じです! なんというか、ありがとうございます」

 頭を下げて目に映るのは木のテーブルの茶色だけだが、その向こう側で男が少し慌てているのはなんとなく気配で理解できる。

「頭を下げないでくれると助かるかな? ほら、かしこまれると少し恥ずかしいし……ね?」

「あ、はい」

 顔を上げる頃にはテーブルの対面に彼が座っていた。淹れたてという事もあってカップの中の茶はまだ暖かく、再びそれを手にと取る。直接飲む事よりもこうやって手に取って温度を感じると……そう、まだ熱を感じられると安堵しているおかしな自分がいる。熱も痛みも生の証だ。こんな不確かな、意味の解らない世界で自分の存在を証明でもしたいのだろうか。

 ともあれ、

「本当にありがとうございます、到着したばかりで右も左も解らない次第でして、こうやって一晩でもいいので泊めていただけるのは助かります」

 改めて感謝の言葉を口にすると、彼は笑みを浮かべる。

「”袖で触れ合うも他生の縁 ”って言うからね。そこらへんは気にしないでくれるかな、マサキ君」

 そうやって笑みを向ける相手が女性だったら確実に落ちている事だろうと確信できるぐらいのイケメンだった。たぶんこういう男は何をしても許される……のではなく似合うのだろう。男女の関係なく相手を笑顔と発言で恥ずかしがせるこの笑顔は一種の才能であり兵器だ。

 つまるところその言葉をこっちに向けないでほしい。恥ずかしい。

「確か旅人の天職をしているんだっけ? 初めて聞くんだけど一体どういう感じなのかな? もしよかったら色々と教えてくれると嬉しいんだけど」

「えーと」

 こういう時の備えて幾つかネタはあるし、言い訳もある。”彼”に対して嘘をつくのは心が少しだけ痛むが、

「実際の所西から東へ、北から南へと旅をするだけで、そう冒険しているわけでもないんです」

「そうなのかい?」

 つい最近異形の軍勢と戦いを繰り広げた事はもちろん黙る。アレは簡単に口にしていいようなことではない。この世界であの異形達を相手にするのは整合騎士の仕事であり、それに匹敵する戦力があると知られれば、確実に整合騎士がセントラルカセドラルへと俺達を連れて行くだろう。いや、それも手段の一つかもしれない。そうすればキリトとユージオの目的は達成できるかもしれない。だがそれは同時に多くの不確定要素を相手にする話でもある。

 ……正直、かなり””頭の悪い話”と司狼だったら言うだろう。

「それに給金を貰うわけでもないので、あちらこちらでお手伝いでお金を稼いだりして……まあ、結構辛い感じですよ」

 あまり話を自分からするべきではない。あはは、と軽く苦笑しながら自分の頭を掻き、そして軽く部屋を見渡す。正直な話、彼と出会ってからずっと同様続きで上手く心を落ちつけられない。故に今自分の事を語れば不用心にも何か口から滑らせてしまいそうで、怖い。だからこそ話題を切り替える。

「そう言えばそちらの天職は……?」

「あぁ、そういえば言ってなかったね」

 そう言って男は片腕を持ち上げると、力こぶを作る様なポーズを取り、そしてその腕をもう片手で軽く叩く。

「僕の天職は鍛冶師なんだ」

「鍛冶師?」

 ALOでも現実のでも知っている。ここがキリトの言うようなバーチャル世界だとしたら鍛冶の現場はALOの様なものなのだろうか、興味が湧く。

「君と会う前も丁度学校の方へ納品に向かったところなんだよ、刃を潰した剣の」

 鍛冶師が納品する学校、と言ったら現状の情報を合わせて一つしか場所を知らない。

「それって……?」

「あぁ、うん」

 男は再び照れるようなしぐさを見せ、

「たぶん君の思うとおり―――僕は小さいけど学園の方と武器を納品する契約をさせてもらってるんだ。おかげで懐事情はそれなりに悪くはないんだ」

 だから、と男は言葉を置き、

「従業員を一人増やすぐらいの余裕はあるよ?」

 笑顔でそんな事を言ってのける姿がとても眩しい。雨雲で遮られたはずの太陽がこの部屋に降臨したかのような勢いだ。

 イケメン、マジイケメンなんて電波が一瞬だけ受信されたような気がするが、イケメンなら仕方がないと結論付ける。あぁ、だがしかし、

 この人ってこんな感じだっけ? と心の中で軽い疑問も生じる。

「えーと」

「うん?」

 笑みを浮かべる男に対して思い切って質問した。

「その、俺達って今日、初めて会いましたよね?」

「うーん、そうだね。僕の記憶が正しければ、今日初めて会った仲だね」

 そう言って、男は笑みを浮かべる。なら、と言葉を続けようとした時に、それを遮る様に彼が話を進める。

「君は”何でこの人はこんなにも優しいのだろう”って考えているんだろう。だけどね、実際は完全な善意から来ているわけじゃないよ? 僕は決して聖人ではないから、もちろん打算などがある訳なんだ。まず僕が注目したのは君が旅人という点で、旅をしている事は何よりも多くの物を見ている事だからね、それを教えてくれれば僕はもっと入り路作れるかもしれないし、もっと上を目指せる。それに従業員を雇うという事は”私はそれだけ裕福ですよ”という証にもなるんだ。まあ、つまるところ常識的で”当たり前の話”だけど、自分の為なんだよね」

 彼の言ったその言葉に言葉を詰まらせる。そうだった。ここはそう言う世界だった。何をするためにしても自分の為、自分だけの為。母が子を庇っても、それは母の自己満足で自己愛の為の世界。酷く歪んで頭の狂っているこの世界。冒涜にも、凌辱にも、酷いものを見た。穢された、そんな感じを受けた時、

「だけどね」

 と、彼が言葉を置く。

「なんでかな。君を見ていると凄く懐かしいんだ。遠い昔を思い出しているようで、何かが胸をこみあげてくるんだ。おかしな話だよね? 生まれも育ちもここ、セントリアなのに……君を見かけた時、不意に思ってしまったんだ……こうしなきゃ、と」

 頬を掻き、困った様子を浮かべながらあいまいな笑みを浮かべる男は此方を見る。

「えーと、ごめん。ちょっと意味の解らない話だったよね? 僕でもちょっと何を言ってるのか解らないんだけど―――」

「―――いえ」

 今の言葉を聞いて確信した。名前を聞いても、姿を見ても何も反応しなかった。だからこの人は”あの人”をベースに作られたNPCか、コピーなんじゃないかと。だけど違う。……たぶん、違う。フラクトライトにロックでもかけられて此処にいるのかもしれない。ともあれ、理由はどうでもいい。

 今はこの偶然の出会いに感謝する。

 手を前に出す。

「―――最上正樹です、しばらくの間、よろしくお願いします」

 手を伸ばし、そう言った事実に少なからず彼は驚いているようだが、その表情も一瞬で消え、手を伸ばしてくる。

「カイン。カイン・チェリウェル」

 そう言って手を握ってくれる男の姿は東洋の青年の顔だちをしており、俺が知っている櫻井戒という男に瓜二つの姿をしていた。このカインと名乗る男が本当に戒本人なのか、もしくは彼をベースにコピーして作られた存在なのかは判断は完全にはつかない。それもそうだ。

 何かを覚悟した、何かを決意した。

 そう言って本当に決断できた人間は稀なのだ。誰だって悩んで進み、覚えて成長する。だから確かな事は言えないが、

 たぶん、たぶんだがこの人は―――。

「……あ、まだ五歳になったばかりの妹がいるから、気を付けてね?」

「え?」

 ―――五歳?


                           ◆

 その部屋からは街の姿が良く見える。雨と濃霧に包まれているとはいえ、それでも街の姿は端から端まで見渡せるぐらいには目はいい。いや、この程度は出来て当然だと自負している。寧ろこの程度出来ぬば何が成せる、そんな考えさえある。

 そんな窓から見る街の姿は何時だって薄汚れている。

 整理された町並み、健康的な生活、誰も傷つけあわない世界。それだけ見れば確かにすばらしい。素晴らしすぎる世界だ。過去に原罪を全て滅ぼした存在がいると言われた。その者が生み出した世界は今の、この姿に似ていたのかもしれない。が、それとこれとでは決定的に違うところがある。そして、それは致命的な違いなのだ。

 だからこそ、吐き気がする。

 していた。

 もうその感覚はだいぶ薄れて、消えて、そして、だからこそ忘れない様に見る。

 そしてそうやって覗く外の世界、ある家を見る。霧がかかろうと、雨粒が邪魔しようと、その家は見えるし、そしてその家の中の気配は感じる。感じるからこそ、察す。

「そうか」

 言葉から洩れるのはその短い言葉だけであり、それ以上の言葉はない。窓から視線を外し、そしてワークデスク前の椅子に座る。なg年使い続けてきた椅子は体重を乗せただけでキィ、と小さな音を鳴らして自己主張してくる。ステイシスの窓を開いて、残された天命値を確認すれば、この椅子がそろそろ変え退きなのは理解できる。が、だからといって今まで使ってきた者には愛着がわく。中々か行けようという踏ん切りはつかない。

 だが、

「これからか」

 もうそろそろなのかもしれない。そんな試行と共に明日、新しい椅子を発注しようと考える。そして再び窓の外を除き、

「明日には晴れるか」

 そんな言葉を残し、再びデスクの上の書類に視線を戻した。




 ここまでくればもう卿らだったらどうなっているのか解るのだと思う。解らない人向けに言葉にはしないけど。ともあれ短いプロローグでしたが、これで一番平和で最後の平和が始まります。そんな長くする予定はなく、ただひたすら平和と生活と、そして謎を追いかける。そんな感じの章ですこれは。

 更新は日曜の時間不定の更新です。
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| 断頭の剣鬼 | 16:27 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

兄さん!?

兄さんじゃないか!

いや、まだだ、まだ完全体じゃない・・・

ていうか5歳の妹って
あの人だよねぇ・・・

| マ王 | 2013/03/10 17:08 | URL | ≫ EDIT

なぜにいさんが?
ダークテリトリーで天職:天魔をやってるものだとばかり。
人数増えたから取りこぼしたのか?

| シオウ | 2013/03/10 23:22 | URL | ≫ EDIT

ふむ。
兄さんと妹がいるなら恋人さんもいるのでしょうか。

最後のシーンに出てきた人物って、やっぱあの人かな?

| 断章の接合者 | 2013/03/12 20:32 | URL | ≫ EDIT















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