陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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エピローグ ―――サンセット・タートル

推奨BGMDisce libens


 目が覚める。

 いや、意識は半分だが既に前から覚醒していた。たった今の時刻を持って完全に意識を覚醒させただけだ。だから目が覚める、という表現は少々おかしいかもしれない。だが体に感じる眠りから得ただるさは確実に時運の体が休止状態に入っていた事を示している。この重さを愛おしいと感じる。なぜなら、超人、魔人、神の類の超越者はこの感覚を感じれないのだから。この美酒でも味わえぬ甘美な味わいを放棄してしまっている。だからこそ、自分はこれを愛おしいと感じる。そして手放す事に躊躇を覚えている。非常に珍しい話だ。珍しい話だが―――。

「同時に寂しくも感じる」

 もう、あの頃の喧騒はない。こうやって眠っていたとしても時間になれば自分を起こしに来てくれる副官がいた。悪ぶりながらも世話を焼くアルビノがいた。何時も賑やかに雰囲気を盛り上げてくれる部下がいた。人よりも劣っている事認め、だからこそ自分にしかできない事を極めた人がいた。自分は確実に部下に恵まれていた。


 だが彼らはもういない。そうやって自分を助けてくれる者達は一人もいない。彼らができる事は己一人で全て成す事が出来る。だからといって決して不要なわけではない。いや、彼らは必要な存在だった。今でも必要な存在である。だが戻ってこない。どんな結果であろうと、部下だった彼らは二度と帰ってこない。あのような生活を再び送る事はありえない。もはやその現実は幻想となった崩れ去ってしまった。

 たった一度、一度の敗北によって。

 苛烈な闘争の果て―――その果てに生まれる敗北。それによって散るのならそれもまた運命。ここで生にしがみ付くべくではなく、散るのを良しとすべきだったのだろう。実際、そこで死ぬことに関しては何の異論もない。寧ろここが壊せぬモノ、ついに見つけた己を超えた存在として喜び受け入れるものだったのかもしれない。

 修羅道は結局修羅道。壊して取り込んで、世界が修羅に染まったら―――内側少しずつ壊れてなくなって行くのだ。おそらく、そんな終わりを迎えるのが”正しい”結末なのかもしれない。

「友よ……明広よ。卿はしかし、私に託したのだな」

 敗残者として、抗う者として残った友と、そしてそれにさえなる事を許されなかった自分。その単純な違いは意識の仕方から来るのだろう。

 ただひたすら闘争を求めていた修羅。

 ただひたすら勝利の向こう側を望んでいた処刑人。

 そして、

 ……ただただ未来だけを追い求めた水銀。

 あの二人は自分とは違う。先を見ている勝利した後の未来は考えて動いていた。私は違う。闘争の果てを考えず、永遠の闘争しか求めない。求められない。それは幾ら意識が変わろうが根本的な部分で”ラインハルト・ハイドリヒ”という存在である限りどうしようもない事実だ。

 獣は死ぬまで獣だ。黄金の獣。なるほど、確かにそうだ。畜生に落ちるつもりも落ちたつもりもないが、それでも自分の事を獣として表現する事は一切の間違いはない。だからこそ、私はあそこで滅ぶはずだった。そしてそれが生き残ったのには、意味があるはずなのだろう。

「もどかしいのは自覚している」

 実にもどかしい。今は動くべきではないと理解している。いや、そもそも自分が行ったところではどうにもならない。守られている男が一人戦場へと向かったところで仲間を死なすぐらいにしかならない。情けない。守られて後ろで待っている事しかできないことが情けなく、もどかしい。が、今はこれぐらいしかやる事がない。そして、それが丁度いい。

 レギオンはいない。が、一人、同じ境遇の友がいる。そして友は既に姿を隠している。

 つまりは”そういうこと”だ。

 友が、

「カールが動いている時は既に終わっている。故に心配はいらぬ」

 それを理解しつつも胸は衝動に駆られる。求めている、闘争を。飽くなき闘争を。修羅道を。あの時あの敗北を味わい、そして処刑人がただ一人で抗い続けると知ってから、自分の胸の内では友共々彼を内倒し征服したいという欲望が存在する。

「あぁ、私は何とも罪深い男だ。そうは思わんかカールよ。卿なら私をどう思うかね。私を愚かだと断じるかね? もしくはそれこそが私だというか。或いは……いや、憶測しても仕方のない話だな。ふ、どうやら私もとことん弱っているようだ。この感覚は実に……」

 愛おしい。

 レギオンを全て剥がされたこの体は今、人一人分の力と命しかない。ここまでこの身が貧弱なのは実に愛おしい。愛おしく、愛おしく……そして、同時に腹立たしい。あぁ、実に腹立たしい。ここまで憎悪に身を燃やすのも久方ぶりだ。いや、初めてかもしれない。あぁ、これが明広やカールであれば部下を討たれた事、奪われた事、敗北した事。それを素直に受け入れ敗残者としての矜持を守るだろう。

 だがアレを許せるものか。

 あの程度の者に全てを奪われた等と―――あぁ、そうだ。私は全てを愛している。あの邪神も愛している。破壊すべき存在だ……だがこの胸の濁りは間違いなく憎悪の感情だ。久方ぶりに胸に感じるこれは実に珍しく、そしてこうも猛々しいものだったのかと、自分がまだ”人間”であることを思い出させる。

「飢えていればいい。飽いていればいい。もはやこの身では届かぬ」

 しかし、あの女神が座に座るとなれば話は変わる。全ての生命を平等に抱きしめ……いや、特別なものを一層強く抱きしめるだろうが、それでも彼女は命にチャンスを与える。新たな生を得る機会を。まだ未来を信じる力を。あれは女神と、心の底からそう呼んで差支えない存在だ。それだけにあの女神の在り方は尊く、そして険しい。だが全てgアきれいごとでは済まさない。それを知った彼女であればまた―――。

「ハイドリヒさーん……?」

 一人だけの部屋に己以外の声が響く。音源を求めて振り返れば、入り口から着物……いや、浴衣姿のメガネをかけた男性が一人入ってくる。手が浴衣についているポケットの内側を探ると、そこからアメが出てくる。それを人差し指と親指で顔の前まで持ち上げてくると、小さく揺らした。

「食べます?」

「頂こう」

「あ、どうぞ」

 部屋の中に入ってきたのは菊岡誠二郎。とてもだが公務の最中の様な恰好とは思えない。……が、誠二郎も自分もラースへとやってきてかなりの時間が経過している。この海上の城ももはや第二の我が家の様な場所だ。ここにいるスタッフもそう感じているだろう。少なくとも、自分はこの場所に安らぎを感じられる程度には慣れている。

 誠二郎から受け取ったキャンディを見てみる。包装紙はピンクの色をしている。大賀やイチゴか、もしくはさくらんぼ。どちらかの味だろう。そうタカをくくって包装紙の中のキャンディを迷うことなく口の中に放り入れる。

「ん」

 甘くはなく、すっぱかった。

「あ、騙された」

「ふむ、梅か」

「正解」

 なにやら悪戯が成功した子供の様な笑みを浮かべ、誠二郎が横の壁に寄りかかり、姿を並べる。自分も誠二郎同様背中を壁に預け、もたれかかっている感じで立ち、そして数分前まで眠っていたわけだが、さて。

「何か、時間か?」

「いえ、神代博士が来るまでもう少々時間があります」

「では」

「いえ、ちょっと雑談でもどうかと」

「ほう」

 今の誠二郎の言葉で目が覚めた。少々珍しい話だ。なぜなら、この菊岡誠二郎という男はどことなく勘が鋭く、決して自分から棄権へと近寄ろうとはしないし、そういう危険を察知できる能力などから色々と重宝されている人物だ。俗に”世渡りが上手い”人物の典型に入るタイプだ。故に、彼が話しかけてくるのは珍しい話だ。

「私の事を避けていたのではないのかね」

「……あはははは……解ってましたか……」

「私程の男であれば誰だって気づくであろう」

「ハイドリヒ卿程の人物がごろごろいても困りますよ。いや、まあ、それはもう他に二人ぐらいいますけど」

 誠二郎の様な一般人レベルの身体能力の持ち主からすれば自分や友達の様な超人、超越的生物は一生関わりたくない存在だ。仕事上の付き合いで会わなくてはならない以上、誠二郎は必要以上に会わないで、不快感を与えない絶妙なラインを引いている。引いてはいるが、人生経験の差だ。こればかりは誠二郎でも仕方のない話だ。数十年しか生きていない様に見える自分はその二倍の人生を経験し、記憶している。昔の自分と今の自分は違うものだが、それでも経験と記憶は人を大きく変える。

「それで、どのような用事なのだ? 卿が私へ来るときは大体何かがあるときであり―――このように何もなく来るというのは少々珍しいものを見ている」

「いえ、それがぶっちゃけた話、なんとなくでして」

「ほう」

 決して暇だと言う訳ではないのに、”なんとなく”という理由でここに来た。

 ふむ、それはまた、

「酔狂な話であるな」

「自分でもそう思います」

 少々自分でも意外そうな声で誠二郎は話、そして口の中に何かを抛りこんでいた。おそらく先ほど渡してきた梅飴と同じものだろう。中々の甘党で誠二郎は知られている。何時も服の中にはクッキーやらキャンディ、角砂糖まで入っている。何がここまでを、と言う者もいるだろうが、情熱や狂信に向ける意味は理屈ではないのだ。

「実はですね」

 少々勿体ぶりながら誠二郎が口を開く。

「―――なんだか、最近のハイドリヒ卿はとっつきやすい気がしまして」

「ほう」

 その言葉に少しだが、笑い声が零れてしまう。とっつきやすい。つまり察しやすくなったと言う事だ。だが、

「私は元々それなりに交友のしやすい人物であったつもりだが」

「いや、その……言っていいのかどうかって―――」

「許す、話せ」

「……まあ、前から感じていたハイドリヒ卿の威圧感? プレッシャーというか、オーラというものがやっぱり目に見えたて減った感じでして」

「あぁ、それは確実に敗北した影響だろうな。私も私で人間に落ちるという感覚がここまで弱々しく愛おしいものだとは思いもしなかった。皮肉なものだ。勝利し続けるからこそ見えず、そして敗北してからこそ初めて見えるものがあるなどとは……くくくくあぁ、私の人生に対するあてつけだな、これは。まるで今までの人生、その探求が無意味だったと言われんばかりの衝撃だ」

「楽しそうですねぇ……」

 実際に、楽しい。腹立たしい。愛おしい。様々な感情と感覚が今、自分の中で乱れ、混ざっているのが解る。だが、そう、

「自分は変わった様に見えるか」

「少しだけですけどね」

「ふふ……」

 思わず声が漏れてしまう。

 これも”人”の特権なのだろう。

 あぁ、そうだ。そう言えばこう言っていたな。

「神とは完成された存在故にそれが変わる事など永劫ありえない」

「それは……?」

「カールの言葉だ」

「あー、クラフト氏なら確かにいいそうですね……」

 カールの言葉だが、神とは完全に完成された存在だ。何かに気づかされ、共感する事はあるだろう。だがその存在が根本的な精神改革や変調を迎える事は永劫ありえない。神へと至っている時点で既に成長と進化は終了し、人間としては死んでいる。故に、そこに変化はない。精神の形成、迷い、渇望、狂信、情熱―――それが生み出せるのは人間であり、神とはそれを変えることはできない。

 なら、今の自分は人なのだろうか。

 いや、それは違うだろう。自分はまだ人の定義を満たせていない。誠二郎が自分をとっつきやすいと言ったのも、おそらくこの体から力の大半が失せており、尚且つ己の身以外の全てが封じられているからだろう。人間と変わらない体に能力。だからこそ誠二郎の勘に引っかからないだけだ。

 一皮むけば、化け物だ。

 事実がそう簡単に変わる訳がない。現実は常に厳しい。

「しかし」

 と、誠二郎は正面、グラスの向こう側の”惨状”を見る。

 そこには機械のベッドと、そこに寝かされる二人の青年の姿がある。眠っているように見える青年たちは眠っているわけではない。

「これ、どうやって説明したらいいんでしょうねぇ……」

「それも卿の仕事の範疇であろう」

 と、そこでラースに近づいてくる気配を感じる。こういう感覚だけは力を失っても残っているのだから、自分が相変わらず人ではない事を認識できる。そして、気配が飛行している事を考えると―――これがおそらく神代凜子のものだろう。そして、

「ふむ」

「ハイドリヒ卿?」

 この気配は―――。

「誠二郎よ」

「はい?」

「卿は覚悟しておくべきなのかもしれないな」

 体を起き上がらせ、部屋の出口を目指す。STLにつながられた二人の青年の姿はもう映らない。だが脳裏には刻まれている。自分が利用している存在の事は忘れてはならない。

「”アレ”は中々壊れている。好いた男の為であればどこまでも修羅に落ちるだろう」

「アレ?」

 小さく笑い、

「誠二郎、卿が結城明日奈に対し―――」

 一度だけ振り返り、言葉を告げる。

「―――桐ヶ谷和人と最上正樹の死をどう伝えるのか、期待しているぞ」




このブログ、更新してないときでも平均500人も来てるんですね。結構驚いてたり。
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| 断頭の剣鬼 | 01:26 | comments:9 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ついにヤンデレなバーサークヒーラーの登場かw
そして、菊岡さん逃げてー、超逃げてー

| tk | 2013/02/25 03:02 | URL | ≫ EDIT

あ、これは菊岡さん死んだな(達観)

| | 2013/02/25 09:17 | URL |

菊岡さん、ご冥福をお祈りいたしますwwww

| 岳の子 | 2013/02/25 12:43 | URL |

ご冥福をお祈りします
(-∧-;) ナムナム(-∧-;) ナムナム(-_-)゜zzz…

| マ王 | 2013/02/25 15:42 | URL | ≫ EDIT

キャーハイドリヒ卿マジカッコイイ。
そして菊岡がwww

| 空 | 2013/02/25 16:07 | URL |

菊岡さん逃げてーww
殺されちゃうwww

| とっつき | 2013/02/25 20:53 | URL |

神とは完成された存在故にそれが変わる事など永劫ありえない。

いやはや良い言葉ですね。
そして獣殿。
彼ははたして人間足り得るのか。
これからの展開が楽しみです。

菊岡さん? はてナンノコトヤラ。

| 黒羽鴉 | 2013/02/25 20:56 | URL |

菊岡さんのご冥福をお祈りいたしますm(_ _)m

| 尚識 | 2013/02/25 21:53 | URL | ≫ EDIT

バーサークヒーラー(弱感染)がくる・・・!
菊岡さんは病みかけ(手遅れ)のアスナから逃れられるのか・・・

| 枝伐屡 | 2013/03/01 23:51 | URL |















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