陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

シローさんの宣戦布告

 タバコを口に咥えながら街の中を早足で歩く。歩きたばこは一部地域では犯罪となっているが、ここ冬木ではそうではない。まあ、人の健康を気遣う迷惑な法律だが、辺境にまでそういうのはえてして届くものではない。誰もいない道をゆっくりと自分のペースで歩く。タバコから立ち上る白い煙が動きに合わせて後ろへと流れてゆくが、冬木の冬は寒い。そんなものがなくとも、口を開けば白い吐息は漏れだす。冬は嫌いでもあり、好きだ。厚着をしなきゃいけないのは面倒だ。だが、冬にしか食えないものを食えるのは冬のいい所でもある。だから好きであり、嫌いだ。

 まあ、所詮戯言だ。

「ハッ」

 タバコの煙と一緒に白い吐息が漏れる。口の中に甘くも冷たい冬の空気が侵入し、タバコの煙と共に肺を満たす。その感覚を受け入れながらも色んな意味で寒い冬木の街を歩く。これだけ寒ければ次に雨が降るときには雪に変わっていてもおかしくはない。

 が、ま、正直どうでもいい話だ。


 雨でも雪でも正直どちらでもいい。情緒を感じる様な芸術派の人間じゃないのだ、自分は。適当に馬鹿やって楽しめればいい。それで俺は十分生きていける。

『―――楽しそうだな、マスター』

 冬の街を歩く中、声が増える。普通に聞こえる類の声ではなく、直接脳内に響くような、意志を伝えるような声。普通の人間では絶対に聞こえない声だが、これがマスターとサーヴァントなら違う。マスターとサーヴァントにはパスがつながっている。それを通して遠距離からの会話だって問題なくできる。

 真に不思議としか言いようのない現象だ。科学的ではない。だが、科学とは全く別の法則でこれは説明できる。

 それが魔導、魔術。魔法。言い方で意味合いは変わってくるが、”神秘”とは大体そんなものだ。科学とはまた別のロジックとソースを持って運用する法則なのだ。俺が覚えた魔術というのもそういう類に入るが、俺が”記憶”している魔術とはまた違う。

 これも、変わった証なのだろう。

「楽しい? 俺がそんなに楽しそうに見えるのか?」

『そりゃあもう、な』

「ハハッ」

 自分の後ろを半透明な存在が歩いて付いてくる。サーヴァント。それは過去の英霊を”英霊の座”という場所からくみ上げて作られた過去の影の顕現体。実に滑稽だ。特に”座”なんてネーミングがつく辺りが。

 魔術師という生き物はどうも救いようがなく、全員アホだ。

 そして迷うことなく首を突っ込む俺もアホだ。

 でも、このアホさが楽しい。

 真実を知ったものが正気でいられるわけがない、という事だ。

「ま、実際に今の俺は楽しいのかもしれねぇな」

『ほう』

 背後のサーヴァントは少し意外そうなそう漏らす。足を止めて振り返れば半透明な英雄の姿が見える。そう、英霊とはかつての英雄。彼らは過去の姿そのままで召喚されている。褐色、黒髪の青年だ。年齢は見た目、俺とほぼ変わらないように見える。上半身に服は着ておらず、軽い布のようなズボンを穿いている。全身をすっぽりと覆い隠す様なマントを着けている姿はどこからどう見ても現代人らしからぬ光景だ。これが過去から現れた英雄と言われてもピンとくる人は少ないだろうが、魔術師であればすぐさま納得できる。

 存在として、普通の人間とは桁が違うからだ。

 とくに、

 狙って召喚した英霊が自分と相性のいい存在だと、さらに原典に近い形で召喚で来ている。

『お前は人生そのものが娯楽で、何もかもが愉快でたまらないタイプの人間だと思っていた』

「実際間違ってねぇよ。俺は今の世の中が愉快で愉快で好きだぜ? まあ、気にくわねぇ事なんぞ山ほどあるけどよ、今の世の中が、それを生み出した女神が、俺は超大好きだぜ?」

 褐色の青年が問う。月光に金のサークレットを輝かせながら、

『なら何故”今の”、と言葉を付け加える必要があった。生きているだけで楽しいのであれば、その言葉がつく必要がないのではないか?』

 おいおい、と言葉を置いて、再び歩き出す。

「俺の人生が常に絶頂期でイケイケだって事はかわらねぇぜ? ただよ、それが楽しいか、そして”すっげぇ”楽しいかは別だ。ようはちょっと良い日にサプライズプレゼントが送られてきた、って感覚だ」

『また共感しやすそうでし難そうな事をお前は言うな』

「ま、そういうキャラだからな」

 キャラ、というのは非常に大事だ。それが周りから自分をどう見ているのかを決めるだけではなく、自分が自分の事をどういう風に思えるのか、それも見えてくる。アイデンティティというものが人間の人格形成において最も重要な事に違いはない。大体は子供のうちに出来上がる、っという認識は間違っていないが、結局のところは自己評価なのだ。自分がこう、自分はそう、自分はああだ―――そういう事故の認識から人格は生まれ、出来上がっている。

 だからこそ、キャラは自分を”言い聞かせる”為にもかなり重要だというのが俺の考え。だが、正直どうでもいい話だ。そんな事を考えてもタメになる訳でもない。そう、所詮は戯言。サーヴァントとの会話の為に繰り出したくだらない言葉。このサーヴァントはかなり頭のキレるやつだ。それ位理解しているのに付き合っている。それはつまり”そういうこと”なのだろう。

 実に相性のいいサーヴァントだ。

 やっぱ俺って天才だわ。

 と、そこでサーヴァントとの楽しいコミュニケーションタイムを終了させる。前方、見えてくるのは冬木市にある古い教会だ。そこそこ庭が広く、手入れもされており、そして都心に住んでいれば間違いなく見る事のない光景だとも思う。都心に住んでいれば教会は見る事があったとしても、ここまで広いものはないだろう。教会の敷地内に入ったところで片手を持ち上げる。

『俺はここでお前の帰りを待つとしよう』

「お前、姿がすっげぇ特徴的だから見られんなよ」

『把握している』

 といっても、この状況で他のマスターと遭遇する確率なんてほぼない。監視されているのならまだしも、現状監視されている様子も尾行されている様子もない。サーヴァントとマスターの普通の会話だ。そう、これから始まるのは戦争なのだから、自分の手札を隠すのは当たり前だ。

 手を下げ、サーヴァントの気配を背に感じながら、

「ちぃーっす」

 ―――教会の扉を蹴り開ける。

 それに応えたのは一つの気配と声だった。

「―――君は扉一つ満足に開ける事が出来ないのかね?」

 教会の奥、待ち受ける様にそこには一つの姿がある。


                           ◆


「おいおい、登場は派手にやらなきゃ意味がねーだろうがよ」

 タバコを口に咥えたまま教会の中に踏み込む。教会の奥では神父が一人、立って待っていた。暇な男だと思う。おそらく一日中だとは行かぬも、サーヴァント召喚の気配を感じてから適当に待っていたに違いない。

 言峰綺礼とはそんな男だ。少なくとも、切嗣からはそう教わっている。クソつまんねぇやつだと。

 俺としてはとことん気に食わない男だが―――。

「神の家の門を叩くにしてもやり方があろう」

「悪い、俺不良だからんな事知らんわ」

「主は嘆いておられるぞ」

「この程度でアイツの女神がどうかするかよ」

 寧ろ泣いているのは姉代わりとして頑張ろうとしているクラスの担任の方だ。教師に就職したせいで毎朝うるさいし。こっちの家事スキルが壊滅してるのを知っているはずなのにメシをタカリにくるし。雷画の爺さんとなら意気投合できるのに、藤村大河の方は正直、苦手なジャンルに入る人間だと思う。

 まあ、タイガーだから、だと言ってしまえばそこまでの話だ。

「ふむ、君と私とでは宗派は違うようだな」

「おぉ、そりゃあそうさ。キリストなんていもしねぇ神様祈ってねぇでお前もこっちに鞍替えしろよ。なんてたって俺達の女神様は超優しいぜ? 誰もかれも抱きしめて幸福を願ってらっしゃってんだ―――耳を澄ませば聞こえてくるかもしれないぜ?」

「ふっ」

 それを冗談として受け取ったのか、綺礼は軽く笑うと雰囲気を正す。此方が扉を蹴って入ってきたことも、タバコを吸っている事も関係ない。聖職者ではなく、執行者言峰綺礼として、底知れぬ雰囲気を放つようにスイッチを完全に切り替えていた。戯言の時間は終わり、聖杯戦争―――その監視役としての任務を果たす為の準備が完了した。

 その変化を見ながら、タバコを口から話す。

「では、少年。問おう」

 神父の姿をした悪魔が問いかけてくる。

「汝、聖杯を求めるマスターであるか否か」

 それに対して、タバコを綺礼の足元に投げ捨て、笑う。小さくだが、挑発する様に笑みを浮かべ、笑う。

「この衛宮”シロウ”様がアーチャーと一緒に殴り込みしてやるよ、聖職者。今はそこで偉そうにふんぞり帰ってろ。あとで遊んでやるよ」

 背中を向けて歩きはじめる。宣戦布告は終わらせた。義理と個人的な感情を込めて参戦するこのクソくだらない聖杯戦争は―――これで終わりにする。

「では」

 教会の外へと向かう此方の背中に言葉が投げかけられる。

「私の心臓に刃を突き立てようとするその瞬間に私は期待しておこう」

「親父から10年越しの”プレゼントだ”。クソが漏れねぇように今からケツの穴閉めておけよ」

 その言葉が面白かったのか、綺麗は小さく笑いながら此方に言葉を投げる。

「あぁ、それは何とも―――楽しみだ」

 ほんとうに、本当に楽しそうな声でそういう言峰綺礼の声は、過去に戦った者を思い出させる。が、彼らはもういない。女神に抱かれて輪廻の中に編まれて、今を平和に過ごしているはずだ。忘れてはならない事だが、思い出す事でもない。

 今の自分―――衛宮士郎として真面目に生きる為に。

 遊佐司狼として残されている事の意味を清算する為に。

「あばよ」

 特に反応を見せずに教会をでる。出るのと同時に足で扉を閉める。ぎぎぎ、と少し錆びたような音をしながら閉まる教会の扉にはもう興味も示さず、教会の前庭を中ほどまで歩くと、上から飛び降りてくるようにサーヴァント、アーチャーが戻ってくる。

『その顔を見るに宣戦布告を済ませたな』

「失敗するようなタマか?」

『それもそうだな。で?』

「で?」

 アーチャーが笑みを浮かべる。

『宣戦布告した程度では止まらんのだろう? お前は』

 解っている。このサーヴァントは実に俺の事を解っている。それでこそ俺のサーヴァント。それでこそ俺の狙った英霊。それでこそ、今次最強のサーヴァント。わざわざ最強と呼べるような英霊の召喚を見送ってまで召喚した意味はあった。

「―――聖剣の鞘を捨ててまで召喚したんだ、しっかりと働いてくれよ、相棒」

『任せろ。お前の願いは理解し―――共感できるものだ。お前の矢となり敵を貫き、”焼き”滅ぼそう』

「ハッ!」

 笑い声をあげ、夜の冬木へと繰り出す。

 魔術師の夜は始まったばかりだ。

 軽い跳躍と共に土手から飛び降り、数十メートルの距離を落下してから、大地を蹴る。

 落ちたのと同じぐらいの高さまで飛び上がる。すぐ背後には半透明ではなく、実体化したアーチャーの姿がある。

「行くぞアーチャー! いっちょ派手に挨拶回りするぞ!」

「了解だマスター!」

 腰に忍ばせていた銃を取り出し、握る。

 ―――運命の夜はまだ幕を開けたばかりだ。




 好評だったので。

 ┏(┏ ∴)┓インドォ……。
スポンサーサイト

| 短編 | 01:01 | comments:9 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

続いた!
鞘を捨ててまで喚び出した英霊・・・一体何者だ?
召喚前に振られた騎士王はドンマイ。例え喚ばれても司狼とは彼の義父同様、相性悪いでしょうが。
あと、「冬樹」ではなく「冬木」。

| reficul | 2013/02/08 03:43 | URL | ≫ EDIT

ま た イ ン ド か
やばい、インド鯖で冬木がやばい

| とろつき | 2013/02/08 07:01 | URL |

おお!続きktkr

まあ、このシロウじゃセイバーとは相性悪いし仕方なし。
鞘を捨てたってどこに?神父あたりが回収して凛に渡してたら面白いんだが。
あとこのシロウなら凛ルート一択だろ(普段猫かぶりつながりで)

| シオウ | 2013/02/08 21:45 | URL | ≫ EDIT

歩きたばこは駄目だって(山岡)士郎さんが言ってたぜ!(83巻3話参照)

| hunting ground | 2013/02/08 23:11 | URL | ≫ EDIT

インドはやばい
主にインド核とか不死性とか

| モグラ | 2013/02/09 01:42 | URL | ≫ EDIT

相変わらず面白いなぁ~てんぞーさん。続きがすっごい気になってしまうのは悪いこと?いいや、悪くないはずだ!!

| ガリバー | 2013/02/09 02:40 | URL |

久しぶりに来たら、随分懐かしいネタですね。
ぜひ、ぜひとも続きをお願いします。

ところで、KKKの新OP見ました?

| 断章の接合者 | 2013/02/09 15:37 | URL | ≫ EDIT

更新お疲れ様でした、てんぞー様。
相変わらず続きの気になる展開ありがとうございます。
衛宮シロウの呼び出したサーヴァントが気になりますね。
インド、火、そしてアーチャーですか。



あれ、これってまさかのカル……いえ何でもないです。

| 黒羽鴉 | 2013/02/13 02:29 | URL |

もっとド派手に暴れるのを期待しますぜ
中の人ネタと言えば、意外とされてないネタはバイオハザードのレオンのCVは昔のドラマCDではルネ(ry……前田さんだったんですよね。誰か前田ボイスレオンものをやってはくれないのだろうか。
妄想はしても書き出すことができない……。

| しろ炭素 | 2013/02/16 11:37 | URL | ≫ EDIT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://tenzodogeza.blog.fc2.com/tb.php/330-6d8e1b03

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。