陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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Child and Help

 教会という場所は意外と身近だった。それは俺、という人物を育ててくれた人たちの内、教会で働く人が三人もいたからかもしれない。神父とシスターの夫婦。そして人一倍、父の事を強く想っていた姉代わりの人物。今更の話になるのだろうが、本当に違和感のあるメンバーだと思う。それはこうやって一人で生活を始め、世俗に染まってやっと見えてきた事だ。だけど、あの頃は疑いもしなかった。小さな孤児院の直ぐ傍に、小さな教会。

 その小さな世界が俺の全てだった。

 教会がある、といっても実は礼拝とかお祈りをするわけでもないし、教えを説くわけでもない。基本的に懺悔専用だったんだ。本当に、おかしな教会だ。教会といえば神様をまつる場所で、何らかの宗教に属している者が訪れる場所なんだ。なのに神父も、シスターも、姉代わりも、そして他の皆も。誰も信仰を持っていない。その事が不思議だった。服装はカソックだったりするのに、何故あの夫婦は信仰をしてないのだろうか。

 子供の頃、その疑問を思い切って姉代わりに聞いてみた。


 彼女は苦笑しつつ、律儀に答えてくれた。

『たぶん、アレはもうクセなんじゃないかな』

  癖、だと言われた。癖、という事はさぞや長い事あんな恰好真似事をしているんだろうな、等と思った。今思えば、彼らがそうやって自分であり続けた年月は常識を逸脱している。何故、何故彼らにもっと優しくできなかったのか。何故もっと感謝しなかったのか。何故、何故もっと言葉を選べなかったのか。今でもまだ後悔している。こうやって過去にすがって、思い出している辺り、完全に親離れができていない。情けない、情けないけどこれがいい。この記憶が全てなのだから。

 だから、覚えている。

 この後になんて聞いたのかを。

 祈る神がいないのなら何に祈ればいいの、と。

 思えばものすごく残酷な言葉だったのかもしれない。子供、という者は言葉を選ば無し、選べないから。だから当時の俺はどの言葉が抉り、どの言葉が傷つけるか。それすら理解できない餓鬼だった。出来る事ならあの頃に戻って謝りたい。だが、それは不可能だ。だからこそ、思い出すんだ。

『いい? ―――神様はちゃんといるんだよ』

 嫌がることなく、姉代わりは答えてくれた。

『どこに、とか誰? って言われちゃうと本当に困っちゃうんだけど、そこだけは信用していいよ。神様はちゃんといるよ。皆を見てくれている。今もちゃんと頑張って、受け継いだ役目を果たそうと頑張ってくれている。うん、悪い神様じゃないんだ』

 少々切ない表情を浮かべる彼女の姿が印象的だった。ただ彼女は幼かった俺にも分かる様に、ゆっくりと言葉を選びながら話してくれた。思えば、父たちは何かを遺そうとしていたんだと思う。あの頃は意味さえ理解しなかったけど、形としてではなく、想いや記憶としてしっかりと刻んで、何かを遺したかったんだと思う。もし、何かあった時に、俺や俺の妹や弟達が踏み外さない様に。

『だけどね、頼っちゃ駄目なの』

 頼っちゃ駄目なの?

『うん。駄目。友達とか幼馴染とか恋人とか妻とか……そう言う人なら何時でも頼っていいんだよ。だけどね、神様にだけは頼っちゃ駄目。それはとても当たり前の様だけど』

 それはとても当たり前の事だが、

『神様は、絶対に手を伸ばしてくれないから』

 そう言った彼女の顔はステンドガラスから差し込んでくる光を受けて、更に美しく感じられた。まるで絵画の様だと、神聖ささえ感じる事が出来た。その姿に見惚れてしまった俺はそれがどんな感情か解らず、知らず、ただ恥ずかしさに顔を逸らした。今でもあの時持っていた顔の熱を思い出せる。恥ずかしさに顔を逸らすと、柔らかいものを感じた。彼女が、両膝を教会の床につき、そして両手で小さかった俺の体を抱きしめてくれた。俺の顔を、彼女の胸に押し付け、

『ねえ、聞こえる?』

 もちろん、聞こえた。

『こんな風にね、人は必死に頑張って生きてるの。自分の力で、支え合いながら』

 俺を離して、肩を握り、目線を合わせてきた。

『今は言葉の意味が解らないだろうけど、忘れないでいて欲しいの。君は、君たち人間は必死に生きている。そして私達はそれが何よりも愛おしく、正しく思っているの。もう私達みたいな間違った存在は生まれないし、生むような者が現れる事もない。今の治世はそれだけ頑張っている』

 だから、

『奇跡を求めないで、”自分らしく”を頑張って。私が、リザが、そしてトリファが、神を信仰しないのは存在を疑っている訳からでも、何も信じていないからでもないの。私達が、私達として生きる為に必要な事だから』

 本当に、意味の解らない言葉だった。優しく、かみ砕いて話してくれたんだと思う。それでも、言葉の大半を理解できなかった。だから彼女の言葉に対して、あいまいに頷き、解ったと答えた。全く解らなかったのに。あぁ、何時思い出しても後悔だらけだ。過去を振り返るという行動の無意味さは誰よりも理解している。過去は変わらないし、戻る事も出来ない。だから振り返れば後悔ばかりで、思い出せる光景が美しく映る。

 あの頃の俺は幸福だった。自分は与えられていた、自分は愛されていた。それを何か特別な事ではなく当たり前のこととして受け止めて生きていた。だけど、それでは駄目なんだ。受け継いだものとして、知ったものとして、それがどんなに幸福で希少なものか、理解すべきなんだ。当時の俺は、まだ若かった。

 こうやって、夢に見るたびに思い出し、噛みしめる。

 そして思う。

 父なら今の状況を、永遠と続け、そう願いながらその願いをくだらないと、そう否定するだろう。

 控えめに言って個性的な人たちだった。そんな人たちに支えられ、育てられ、俺は―――。


                           ◆


 ゴスン、と痛みと共に目を覚ます。聞こえるのは五月蠅くなる携帯電話の音だ。気付けば自分の上半身がベッドから落ちている。上半身だけ、ベッドから落ちて頭を打った。なんともまあ漫画っぽく、そしてふざけた格好だと思う。こんな寝相も、昔の事を夢に見るのも、中々久しぶりの事だと認識する。

 視線を向けるのはテーブルの上の本。古びた本だ。

 ”神州東征物語”、

 第一次東征軍の始まりから第二次東征軍の終了それまでを描いた物語だ。

 昔、数百年以上もの前の事を描いた物語だ。

 こんなものを興味本位から読んでしまったのがいけない。今日は非番だというのに、寝起きは最悪だ。物語の内容を含めて、実に最悪だ。事実が記されている事と違う、という事自体はそう珍しくない。何故なら歴史とは積み重ねではあるが、それは”勝者”による歴史の積み重ねだ。弱者、敗北者は逃げる様に、隠れる様にしか真実を記すことを許されない。

 だとしたら、本当の勝者である人達がこう扱われないといけないのは何故だろう。

 本の内容を思い出して、少し胸糞が悪くなってきた。

「ナハツェーラー」

 ベッドの下の闇が揺らめく。そこに赤い瞳が現れ、そして口を開く。そこらから闇は影となって伸び、テーブルの上に乗っている本を一口で飲み込む。ぺろり、と本を平らげたナハツェーラーは満足そうな笑みを見せながらベッドの下に消えてゆく。そう、やはり出力の問題だなぁ、と改めて理解する。

 燃料が魔力でも気でもない以上、麻帆良で習った魔法の使い方は無意味だ。

 胸に刻み、使い続けるのは昔、あの人達から習った事だけだ。

 時よ流れよ、そう願っていた父が、こうやって時が凍ったままの馬鹿息子を見れば一体なんていうのだろうか。呆れるのか、悲しむか、はたまた怒るのか……確実に喜びはしないだろう。そんな男だ。嬉しく思って、そしてそれがいけない事だと伝えてくるのだ。

 あー。あの頃に戻りたい。

 あの頃に戻って、またあの人達と刹那を味わいたい。

「……あ」

 そこで、携帯電話がひっきりなしに鳴り続けている事に気づく。起きてから既に十数秒は経過しているのに、まだ電話は五月蠅くなり続けている。これが正太郎からの電話であれば大体三コールで諦めて直接部屋の扉を叩きに来る。

 隣に住んでるし。

 そんなわけもあって今もなり続ける携帯電話を少々睨んでから取ろうとして、

 目の前で携帯電話が止まる。

 中空で床空伸ばした手が止まる。そしてばたん、と力なく落ちる。取ろうとしたら電話をきるとか、非常に面倒だ。実に面倒臭い。今日は完全にオフなのに、何故こんな早起きをしなくてはならないのだろうか。

 あれもこれも全部冷泉ってやつの仕業に違いない。

 実際、父たちは東征軍を褒めていたし。

 眠い。電話が鳴らなくなったことだし、と、上半身を押し上げる様に持ち上げ、そして再びベッドの中に体を戻す。たまの休日を怠惰に過ごすのも悪くはないはずだ。いや、結構な頻度で休日は怠惰に過ごしている気がする。前回の休日も知り合いを連れてきて四人で一日中脱衣マージャンやって、結局全裸になって朝を迎えるという何時も通りの光景じゃなかったか。

 ドキ☆男だらけの全裸マージャン。

 吐き気しかしないのは間違いではない。正太郎が女顔じゃなかったら即死だった。

 まあ、どうでもいい話だ。

 寝る。

「おやすみぃ……」

 ベッドのなかにもぐりこんで、目を閉じる。再び眠気が襲い掛かってきそうになったところで―――再び電話が鳴る。

 今度は携帯電話ではなく、部屋に置いてある電話の方だ。

 折角眠れそうだったのに、うるさい呼び鈴の音によって起こされた。大方先ほど電話をかけてきた人物と同一人物だ。何か火急の用事があるに違いない。はぁ、と深く溜息を吐き出しながらベッドから出る。やっぱり季節も三月という事で結構冷えてきている。

 パンツ一枚で寝るには結構つらい季節だ。

 欠伸を噛み殺しながらテーブルの上からタバコを取ると、それを口に咥え、ライターも取る。タバコもお酒も、どちらも一番ふざけている様な恰好をしていた兄から教わった。だけど、彼こそが誰よりも一番真面目に生きていた事は覚えている。

「なに感傷的になってんだよ……」

 全部あの本が悪い。こんなセンチな性格じゃないのに、夢に見てしまったせいでなんだか迷子になった気分だ。

「クソ」

 上半身裸のまま部屋の電話を手に取ろうとすると、あと数センチという所で電話が切れた。

「うぜぇ……!」

 もしもこれを狙ってやっているのだとしたら相当嫌な奴になる。咥えているタバコにライターで火をつけると、部屋の窓の下まで動き、窓を開ける。窓枠には灰皿が置いてある。それを片手で握りながら朝の寒い空気を肌で感じ、タバコを吸う。

 今日もタバコがまずい。

 タバコを吸いながら外の光景を眺めていると、箒に乗った赤毛の少年が見える。スーツ姿で赤毛の少年なんてこの麻帆良と言えども一人しかいないだろう。もちろん、ネギ・スプリングフィールドだ。魔法の隠匿は義務で、それを注意すべきなのだが―――こうも堂々と杖に乗っている所を目撃すると本当に隠す気があるのかどうか悩みたくなる。まあ、見なかったフリをすればそれだけで済む話だ。

 故に見なかった事にしよう。まあ、その姿が職員寮へと向かってきている事のみが唯一の気がかりだが、ネギとタカミチは仲がいい。相談事があるのであれば来もするだろう。

 と、そこで、

 ドンドンドン、と扉を叩く音がする。

「忙しい朝だなぁ、おい」

 そんな事を呟き、タバコを加えながら扉へと向かう。おそらく友人の誰かに違いない。

 そう思って扉を開けると、

「助けてください! お願いします!」

「お前、絶対来るところ間違えてるって」

 ネギ・スプリングフィールド少年がそこにはいた。

「助けてください! お願いします! 僕、僕……―――人生で初めて無理って言葉の意味を感じてるんです! アスナさんたちに勉強とか……!」

「お前、数日見ない内にいい性格になったよな」

 何やら必死そうな赤毛の小動物の首の後ろを掴み、その姿を部屋に放り入れる。

 全く。

 あんな夢を見た後じゃ子供を追い出せないじゃないか。
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| 短編 | 21:13 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

すごい今更かもしれんがネギまって確か女子高じゃなくて女子中だったはず

| 時計 | 2013/01/30 13:19 | URL |















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