陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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Mistake And Correction

 もちろん、努力は怠らない。

 教わり、継承したものがある。だからといってそれがそのままでいいとは限らない。麻帆良が襲撃を受けているのであれば夜のうちに技を使えばいい。それだけの話で済むのだが、常に実戦が得られるわけではない。いや、むしろ少ないぐらいだ。良く考えればここは現代日本で、過激派と呼ばれる人間が襲いにかかったとしても、人員には限りがある。そうしょっちゅう襲われているわけではない。そんなに頻繁に襲撃があれば向こうの人員が底を尽きるからだ。

 だから傭兵を雇って襲うのか? そんな可能性があるのかと問われればノー、と言える。なぜなら傭兵たちも麻帆良の防御力の高さを知っているのだ。ただでさえ結界を張っているのに、その上優秀な魔法先生を多数保有しているのだ。最悪、記憶の大量消去を念頭に置いて行動すれば、出し惜しみのない行動だってできる。

 どんな場所であっても、防衛とは常に楽なものだ。

 特に防備がしっかりとして、優秀な土地であれば。


 そんなわけで、魔法や魔術、気、超人芸……なんでもいい。ともかくそういうものの訓練というのは非常にやりにくい。実戦が一番だと教わった身としては是非とも実践を経験したい所だが、相手にも相手の都合があってそれは出来ない。ならどうするか。知り合いにそんな施設を提供してくれる優しい人物がいないので、

 昔から使っている場所がある。

 流石麻帆良というべきか、近くには山が存在している。休みになると偶に忍者と遭遇してしまうのが玉に傷だが、お互いに見なかった事にしているので、忍者なんて知らない。まあ、これは完全に関係のない話だ。何が重要という事になると、山という場所は実に静かで、広い。

 誰もいないため、訓練や修行をするにはいい場所なのだ。

 そう、俺もここで修業をさせてもらっている。とはいえ、使う術のほとんどが大量虐殺必須のオーバーキル奥義の数々。そう簡単に使うわけにはいかない。だが、やはり偶には使っておかないと力加減を間違えてしまうのだ。最低出力、可能な限り手加減して。その限界をどこかで見極める必要があるのだ。だから人目につかず魔法の使える場所、山という所は最適だ。

 だから俺はいつも通り山へ向かい、まずはどれだけ行けるかと適当な術を発動させ、

 気合を入れすぎ、

「あ、やべ、気合入れすぎたっ」

 山が黒く染まった。


                           ◆


「―――あのね? アレ一応ワシの土地ちゃうの」

 正座。それは行儀のよい座りかた。正座、それは畏まった座り方。正座、それは反省の時に持ち出される拷問。つまり、俺は反省している。反省という姿を取らされている。正座は実にいい。土下座には劣るが反省している、許しが欲しいという姿を簡単に表す事が出来る。今、この場において一番必要なものだと理解している。

「本当に申し訳ありません。弁明の余地すらありません」

「うん。あったらマジ驚き」

 今一瞬イラッ、ときたが、実際被害を被ったのはこの土地の管理者である学園長、近衛近右衛門だ。そう、妖怪の様に長い頭部を持ったこの老人は俺を一方的に苛めるだけの権利を持っている。非常に残念な事実だ。こんなことがなければ学園長と会って話す機会などないだろう。何せ、俺はただの職員堕。魔法の使える職員。ほら、顔を合わせる理由なんて特にない。

「それにしてもお主、山で何をしてたんだ」

「久しぶりの休みだったんで練習を」

「気合入りすぎじゃろ。最初から全力で飛ばしてどうする」

「あ、いえ、はい。本当にすいません」

 過剰火力という言葉を是非とも両親に伝えたい。彼らはこれだけの火力を残しておいて何をしたかったのだろうか。あぁ、逢えるなら今すぐあってこの化粧したアホ火力を叩き返したい。それ以外に貰ったものだけでも十分だというのに。

「こほん」

「はい、すいません」

「うむ」

 だが現状非常に困った。この状況で春休みの間に新世界への渡航許可を貰えるわけがないし、貰ったところでなんか休みは貰えそうにない雰囲気だし、非常に困った。

 今回の問題はただ頭を下げればいい、という事ではない。現実に土地の一部である山がごっそりと剥げてしまったのだ。そう、緑で溢れていた山が一瞬にしてだ。これがナハツェーラー以外だったら山火事とか山雪崩だったかもしれない。激しく恐ろしい。こうなると、やはり、

「あのぉ……」

「なんじゃ?」

「これ、やっぱり弁償なんですかね……」

 死ねる。損害額を弁償とか言われたらガチで死ねる。どれぐらいヤバイと言ったら今すぐ保険に入ったうえで内臓売ってそっから自殺しないとヤバイ。山、しかも麻帆良の土地って不動産屋が札束を叩きつける程欲しがる土地だ。それを広範囲にわたって台無しにしたのだ。植物系の魔法を使える魔法使いがいたとしても、数時間で元に戻す事が出来るわけではないのだ。損害額は計り知れない。

 迷わず土下座する。

「お願いします! 無理です! 弁償とかマジ無理です! ご勘弁ください!」

「いや、頭下げるの早すぎじゃろ!」

「内臓売るのは嫌なんです……!」

「発想跳びすぎじゃ!! 流石にそこまではやらんよ!! ワシそこまで鬼畜ちゃうもん! 弁償とかはいいから!」

 あ、それは良かった。

「あー良かった。弁償なしかぁ、言質取れて良かった」

「復帰早ッ! もう少し反省した方がええんじゃないかなぁ!」

「いやあ、お許しいただいたのならそれ以上畏まっててもアレですし……学園長程のお方が前言撤回する様にも思えませんし……ねえ?」

 女子高エリアの学園調質の中、机の向こう側で近衛近右衛門はその言葉に若干頬を引きつらせる。小声でこいついいよるとか言っている辺り、この老人、実は結構余裕なんだろうと思う。仮にも整地の管理を任されているのだ、お金がないなんてことはないだろう。まあ、少しふざけて学園長の印象に残ったのであれば、プラスであろうとマイナスであろうと、それは”縁”を結ぶ行動だ。

 実にお金につながりそうな関係ではないか。

「なんかあくどい事を考えておらんか……?」

「あははは、そんなわけないじゃないですか。こう見えても麻帆良の為に貢献してますよ? えぇ。卒業後すぐに就職したこの愛校精神を是非とも……!」

「いや、凄く白々しいんじゃが」

 呆れたような視線を向けてくる近右衛門だが、その視線は笑っている。まあ、山を丸ごと一つ潰したこと自体はそこまで怒っているわけでも深刻に思っているわけでもないようだ。となればここで退室したい所だが、近右衛門学園長の表情はまだ何か伝える事がある様にも感じる。この少しだけ、おちゃらけた空気が抜けるまで数秒舞ったところで、近右衛門が口を開く。

「やっぱり―――」


                           ◆


「ふぅ……」

 スーツの上着を脱いで、ベンチに座る。まだ学園長室から出たばかり、女子高エリアの内にいる。ただ軽い疲れを感じ、校舎の近くのベンチに座っている。手の中には近くの自動販売機で購入してきたチープな110円の缶コーヒーがある。チープというが、このチープさがまたいいものだと個人的には思うところがある。

 ただ、こうやって缶コーヒーをベンチで飲んでいる姿はどこからどう見ても会社にリストラされた人間のそれだ。まあ、面倒な頼みごと請け負ったばかりなのだ。弁償変わりだと思えばそれはそれだ安いのだろうが―――まあ、完全な気持ちの問題だろう。スーツの上着をベンチに書けたまま、背中をベンチに預け、溜息を吐き出しながら缶コーヒーを飲む。

 実に優雅……でもない。

「ふぅ……」

「はぁ……」

 と、そこで初めて、自分が座っていたベンチに先客がいた事に気づく。横に見るのは少年だ。赤毛の少年。年齢は十ぐらいなのだろうか、驚く事にこの年齢でメガネをかけている。生まれつき目が悪いのか、もしくはよほど目を酷使したのか、そのどちらかの影響で視力を悪くしたのだろう。だが一番驚く事はこの少年がスーツ姿であり、俺の様にニュースを見ない不良人間でさえ解るほどの有名人だからだ。

 ネギ・スプリングフィールド。英雄ナギ・スプリングフィールドの息子だ。

 その双肩には過度の期待が乗っており、親子二代で英雄であることを切望されている存在―――非常にクソ面倒な人生を送っているものだと思う。自分は両親が非常に優秀で周りの人間がすっごい”アレ”だったためにこんな風にいい加減な人間として育ってしまった為、ここまで真剣に生きようとする少年は見ていて中々珍しい。

 頼まれたこともあるし、少年の肩を軽く叩く。こっちを向くのと同時に、少し驚かれる。

「やあ、少年。若いくせに溜息とは中々ハードな人生を送っているようだな。そのまま溜息を漏らしていると幸運を逃す事になるぞ」

「あ、いえ?」

 突然話しかけられたのか少し混乱してから、申し訳なさそうな表情を浮かべる。

 あぁ、なんと十歳児らしからぬリアクション!

 こりゃあいかん。かなりあかん。何がアカンって、この坊主。

 まるでくたびれたサラリーマンみたいな姿をしている。十歳でこの風格は相当やばい。

 立ち上がり、自販機にまで行くと、そこで缶コーヒーを購入する。俺が飲んでいるものと全く同じものだ。自販機から出てきたそれを一回上に投げてからキャッチし、

「おい、少年」

「え、はい?」

「ほい」

「え?」

 缶コーヒーをアンダースローで投げる。ふわり、と柔らかく投げられた缶コーヒーは放物線を描きながらネギ少年の胸元にすっぽり、と収まる。キャッチに成功したネギ少年は少々目を丸くしているが、俺はそれを気にすることなく横に座り込む。

「少年、名前は?」

「あ、ネギ・スプリングフィールドです」

「うん。知ってた」

「え、じゃあなんで聞いたんですか?」

 人差し指をチッチッ、と音を鳴らしながら左右へと動かし、

「名前を知っていても名乗られない限りは名前を呼ばないのはごく初歩的なマナーだろ。戦の作法だぞ、ネギ君」

「あ、なるほど」

 戦の作法部分はスルーされたが、納得したようだ。何か質問したそうに口を開くが、その前に此方から口を挟んで黙らせる。

「で、どうしたんだネギ少年。ここに説教帰りでぼろぼろのお兄さんがいるから遠慮なく言うといいよ」

「説教帰りでぼろぼろって一体何があったんですか!?」

「クククク……いや、特に何もないんだけどね」

「じゃあなんで意味ありげに言ったんですか!?」

 まあ、これぐらい遊べば少しは元気が出るだろうか。これが正太郎辺りだったら容赦なく腹パンされるのだが、生憎と純朴そうなこの少年ではそこまでの外道数値を期待するのも酷な話だ。ここは素直にさっさと話題を進ませよう。

「で、どうしたんだ。なんか疲れている様にも見えるぞ」

「いえ……」

 この程度で初対面の人間相手に口を割る人も少ないだろう。故に少し笑みを浮かべ、軽く少年の背中を叩く。

「困った時は吐き出すのが一番いいぞ? それだけで苦労ってのはどうにかなるもんさ。ほら、俺君の話を聞いたところで別に何かするわけじゃないし」

 その言葉に、くすりと少年が笑いを零す。

「なんですかそれ、相談する意味ないじゃないですか」

「あぁ、意味などないさ」

 だけど人間ほど意味のない事に意義を見出す生き物はいないそうだ。

 ネギは少し戸惑いながらも、口を開く。

「その……実はつい最近教師として此方の方にやってきたんですけど……その、失敗ばかりで、あんまり仲が良くなかったり……」

「……要するに自信がないと?」

「……はい」

 何とも子供らしくない悩みだ。この年頃の少年と言えば新しいゲームが欲しい、友達と遊びたい、宿題が出来なくて困っている……大体そんなものなのだが、教師として赴任してきた事に対して真摯に向き合っている。その姿勢は非常に好感が持てるのだが、同時に少しだけ頭が痛くなる。

 ―――教師とはかなり責任の重い職務だ。

 教師は生徒に対して知識を授けるだけではない。知識を授け、それを知恵として生かす方法、様々な思想や発想、そういった若い時代の人格面を形成する重要なポジションだ。実際、教師の言葉を聞いてこうなった、等と言う話は多い。そんなポジションに天才とはいえ、十歳の少年を持ってくるとは何事か。

 運が悪ければ潰れるのは少年”と”クラスの両方だ。

 まあ、イザとなれば記憶の捜査でもやるつもりなんだろうが―――それは実に吐き気のする話だろう。

 まあ、あくまでも憶測の話だ。

「ネギ君さ」

「はい」

「頼れる人はいるのかい?」

「頼れる人です、か? でも……」

 大体解る。この少年は”秀才”派だ。あらゆる苦境を自分の努力で何とか突破しようとするタイプの人間だ。その人物が才能を持っているだけに厄介だ。放っておいても努力と研鑽でどうにかしてしまう。だから、学ぶべきことを学ぶのが遅れたり、後回しになってしまう。気づくべき事実の発見が遅れてしまう。

「いいかい、少年よ、今からお兄さんは凄いいい事を言うから、その言葉を一字一句逃すことなく覚えておくんだぞ?」

「え、いや」

 何やら言いたそうなネギを無視し、告げる。

「―――君はまだ子供なんだ。存分に失敗するといい」

 その言葉にネギは一瞬固まる。が、すぐさま反論を口にしようとする。

「でも」

 でも、も、もしも、もない。

「いいかい、ネギ君。君は子供だ。そして子供とは大人になるまでのモラトリアム期間―――失敗なんてして当たり前だ。どうでもいい事に躓いて、転んで、そしてまた立ち上がる。それが”子供”に与えられた唯一にして最大の特権なんだ。君はそれを無意味に投げ捨てている」

「ですが!」

 と、ネギは声を大きくする。

「僕は! 教師です!」

 じゃあ質問しよう。

「じゃあ君は全ての問題に対して一人で解決策を実行できると言うんだね?」

「はい。熟考の末、解決できない問題はないと思います」

「だけどそういかないから君はさっき困ってたんだよね?」

 なるべく優しく言った言葉に、ネギは言葉を詰まらせる。自分で握る缶コーヒーの缶がだいぶ冷たくなってきているな、と思いつつも残った液体を全部口に押し込み、喉に流し込む。

「ネギ君、君家族構成は? あ、いや、環境の方ね。パパが英雄でしたとか解り切ってるから」

 俺の言葉に多少戸惑いながらも、

「姉一人と……祖父が一人……」

「君、負担をかけたくないからなるべく頼らなかった、ってタイプだろ?」

「……どうして」

「今の状況を見れば嫌でも解るよ」

 苦笑しつつ飲み終わったコーヒー缶を両手で挟み、潰し、近くに見えるゴミ箱に投げ捨てる。投げ捨てた缶は綺麗にごみ箱の中へと吸い込まれ、消える。

「まあ、頼る頼らないってのは正直君の勝手だけど、大人ってのは君たち子供の面倒を見るためにいるんだ。迷惑だとか、面倒だとか、新しい世代の為だったら別にそう思いはしないんだよ。喜んで助けるさ」

 あの人達がそうだったように。次に生まれ、育つ者を愛し、祝福し、少し厳しいながらも優しく見守ってきたように―――俺も、それに労力は惜しまない。

「魔法や生徒の事に関して、だったら高畑先生。学校や授業、社会について困ったことがあれば新田先生に聞けばいい。高畑先生も新田先生も、どちらもいい人で、困ったことがあればいつでも相談に乗ってくれるぞ?」

 タカミチに関しては正直言って学園長、というよりもメガロメセンブリアの思惑で自由に動ける事はほぼないだろう。彼がネギの助けになる可能性は極めて低い。だが、それでも助けがあるのを知るのと知らないのとでは大きな違いだ。

「ほら、冷めるぞ」

「あ、すみません」

 ネギの手の中の缶コーヒーを指さすと、急いでネギが缶コーヒーを開ける。それを口に運んだところで、

「げふっ!?」

「ははははは!!」

 ネギに投げ渡したのはブラックのコーヒーだ。子供には到底無理な代物だ。それも紅茶が主流の英国人には人一倍キツイものだろう。

「それが大人の味ってやつだ。ま、それが美味しく飲めるようになったら一人で頑張っても大丈夫だろ!」

 そう言って俺は立ち上がる。舌を突きだして苦みを逃がそうとしているネギの姿はショタコンからすれば涎が出そうな姿だが、生憎とそんな趣味はない。会立ち上がり、ベンチに引っ掛けた上着を取る。言うだけの事は言った。これを聞き入れるも入れないのもネギの自由であり、俺はその意思を尊重する。ネギ少年ががんばって頑張って一人でどうにかしてしまった時も、頑張ってダメで全部終わってしまった時も、

 神様にでも奇跡を祈らなきゃ、それはとても人間らしい事で宜しい、と納得しておく。

 と、去ろうとする俺の背中に声が投げかけられる。

「貴方は」

「うん?」

「貴方は助けてくれないんですか?」

 ……確かに、これだけじゃあ無責任かもしれない。

 ならばこそ、

 背中を向けたまま歩きだし、手を振る。

「人生相談と悪戯の相談になら乗る。たぶん激しく成長によろしくないけど」

 まあ、自分なんて所詮こんなもんだろう、と、自分とネギ・スプリングフィールドの奇妙なめぐりあわせに関して評価する。そこまで信頼のおける人間じゃないし、まあ、最低限の切りは果たした。個人的興味もあるし、ここら辺が潮時だ。

 この時はもうしばらく、顔を見る事はないだろう。

 そう思っていた。
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