陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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A Morning Gone

 頭が痛い。

 痛みを訴える頭をどうにかしたい。原因はわかる。それは周りに散乱しているビール缶が物語っている。この数をよくたった二人だけで捌けたものだと思う。体を持ち上げようとして、うめき声が口から洩れる。流石に飲みすぎた。偶にハメを外すとこうやって加減が出来なくなってしまうのは非常にダメな事なのかもしれない。だが、まあ、直そうと思って直せることでもない。

 素直に自分はだめ人間だなぁ、と頭を切り替えて後始末に入る。

 昨晩の内に用意してあったごみ袋の中にビール缶を捨てる。安月給の職員にワインを購入して飲みまくる余裕などない。故に安いビールで悪酔いして潰れる以外にはないが……今回はその量が多すぎた。最後の方の記憶が軽く飛んでいる気もする。

「うぐっ」

 頭が痛い。


 頭痛に耐えながら部屋の中のごみを纏め、そして袋を閉める。これで少しだけだが部屋がマシになった。床で倒れている友人には悪いが、次巻を見る限りは寝ている時間はない。そろそろ起きてもらう必要がある。部屋の床に倒れて寝ている友人の腹に軽い蹴りを入れる。

「おい、正太郎。朝だぞ朝」

「うぁ……ぁ?」

 大人になろうが朝に弱いやつは朝に弱い。また眠りそうな友人の腹にもう少し強い蹴りを入れながらゴミ袋を片手に、扉を出る。涼しい冬の風が吹く。気づけば何故か自分は上半身裸で、下半身はパンツ一枚になっている。そりゃあ寒いだろう、と軽く納得しながら着替える手間を考えて、戻る事を諦める。無駄に考えると頭が痛いというのが一番の理由だ。無駄に音を立てない様に気を付けながら職員用寮にある自分の部屋の外、廊下に出る。

 やはりまだ朝早い事もあって、誰もいない。良かったと安堵を抱きつつ階段を下りて、寮の外へと出、裏手へと回る。ごみ捨て場にゴミ袋を投げ捨てると、それで朝の仕事は終わる。首の裏をかきつつ再び寮の中へと戻って行く。再び階段を上り切ったところで、高畑が若干引きつった笑み浮かべてこっちを見ているのを見つけた。

 もうこんな時間か。

 言い訳どうしよう。

 そんな事を考えながら片手であいさつし、部屋の中に戻る。予想通りというべきか、友人はまた眠っている。しかも今度は人のベッドを陣取って。

 そろそろいい加減にしろ。

 適当にスラックスを拾い、それに足を通してベルトを締める。これで最低限人間らしい格好になった。今度は窓を開ける。昨日の夜から溜まった酒臭い臭いを窓から二がし、近くにあった消臭スプレーを部屋に撒く。

 準備完了。

「おはよう玖錠正太郎―――そしてさようなら」

 頭を先に、友人を窓から捨てた。

「尊い犠牲だった……」

 窓の下から悲鳴が聞こえる気がするが、勘違いったら勘違いだ。

 さて、着替えたらランニングを終わらせて―――始めますか。


                           ◆


 欠伸を噛み殺しながら珈琲に手を付ける。自分の部屋で飲めるといえば飲めるだろう。だが、やはり飲むのであればそれなりに拘りたい。そう言う思いもあって、勤務時間という事もあって、麻帆良の中央、学生の多いエリアに出店している店で朝食を済ませる事はほぼ日課となっている。舌が肥えているかどうかはわからないが、少なくともここの珈琲は気に入っている。故に朝食も今利用している店と決めている。

「ふぁー……」

 噛み殺しきれなかった欠伸が声となって漏れる。知り合いには情けなくて見せる事の出来ない姿だが、周りに知り合いがいないのであれば全く持って問題ない。朝のだるさに身を任せながら珈琲を口にする。これは経験上の話だが、珈琲は眠いときに飲んでも効果がない気がする。目が覚めている時に飲むから眠くならない。そんな気がする。

 まあ、正直どうだっていい話だ。

 広域指導員という仕事は存外暇なものだ。何せ、生徒が常に争っているわけでもない。いくら麻帆良がカオスの権化とも呼べる場所であっても流石にそこまで世紀末ではない。確かに、麻帆良には結界がある。それこそ日常生活で感じる違和感を解消する結界が。だからといってそこまで馬鹿になる訳ではない。常に誰かがなぐり合っているようであれば流石に学園として機能できていない。それに、広域指導員の本来の役割りとは指導にはない。

 ぶっちゃけた話、魔法に対する守備人員なのだ。

 麻帆良は控えめに言っても混沌としている。世界有数の聖地の上に存在し、”強大な力”を内包し、伝説の賞金首を隠し……と、この学園都市が所有、隠蔽している物をられる都sレばきりがない。もちろんそれを狙う存在はいるし、襲ってくるものもいる。それに対する防衛戦力が広域指導員であり、学生のイザコザを収めるのはあくまでも表向きの理由だ。

 まあ、実際に学生が暴れて困るってのもある。麻帆良が整地だという性質からか、麻帆良という場所では”覚醒”しやすいのだ。気、魔力、才能、そういったものに目覚めやすい土地になっているのだ。だから麻帆良にやってきた才能を開花した者や、知らぬうちに気を習得してしまい、それを無意識に使用している学生……そういった存在も結構存在している。そういう連中が面倒を起こさないようにするのも、仕事だ。

 だから朝と昼は存外暇だ。特に出勤や登校が終わった後の時間からが暇だ。なぜなら暴れる学生たちが全員そろって授業を受けているからだ。武道系の大学サークルか、工学系の大学サークルが暴走でもしない限りは午後までは比較的平和で暇な時間を過ごせる。

 まあ、”比較的”であって、毎日そう言うわけではない。

 そういう事もあり、この時間帯はゆっくりと朝食を取る事が出来る。朝食を戴いた後の優雅な珈琲タイムを演出できる。実に良い。平和な時間はこのまま止まってくれ、と思うのは完全な戯言だ。珈琲の味も香りも別に理解しているわけではニアが、美味しいと思うし、優雅だと思うので優雅なのだ。そこらへん教わった気もするのだが……まあ、覚えてないのは諦めよう。

「おい、黄昏の」

「毎度の話だが、名前で呼んでくれないかなぁ」

「お前がその領域に至るにはまだまだ遠い。名前を呼ばせたかったら最低でも私を満足して見せろ」

「無茶言うな……」

 俺に過度の期待をしているのか、ゴスロリ服装の少女、エヴァンジェリンは横の椅子に座ってくる。こいつは何故か俺の名前だけは呼ばない。満足させれば名前を呼んでやる、とこのドS吸血鬼は言っているが、それは何も戦闘能力や知性の話ではないことぐらい俺には解る。おそらく”生き様”としてエヴァンジェリンを納得させてみろ、という話だ。

 実に面倒極まりない。

 だが今はそんな事よりも、

「授業はどうした」

「こうして貴様の前にいるのが答えだろうに」

「いや、そういう意味じゃねぇよ。何でここに来たかって話だよ。英雄様の息子に会えることが楽しみだったんだろ。狸爺が喜びながら2-Aにぶち込むって宣言してたし素直に授業を受けていれば顔を見る事ができるんじゃないのか?」

 そう、三学期に入ったばかりのこの日。イギリスより前大戦の英雄、そのウスコデアルネギ・スプリングフィールドが麻帆良学園へと修行の為に来ている。天才と呼ばれているにふさわしく、主席卒業の上に十歳。そりゃあもうメディアが好みそうな設定の少年だ。まあ、日本の常識で言えば確実に労働基準法違反で、子供に教鞭を持たせるという学園長の発想は狂気の何者以外でもない。

 が、

 政治やメディアの深い部分には魔法関係者が存在している。ネギ少年一人ぐらい、もみ消す事も通す事も容易い。世の中なんて真っ黒なんだろうか。あぁ、くわばらくわばら。

「もう見た。完全に腑抜け切ったガキの顔だ。やつの息子が”アレ”だとは見るに堪えん」

「一応十歳のガキなんだから少しは多めに見てやれよ」

「ほう、同じように”英雄”を親に持つ者同士、シンパシーでも感じたのか?」

 このゴスロリ信者、嫌な事を言ってくれる。だが、

「あってもいない相手にシンパシーは感じないね。気持ちが解るとか言って近寄ってくるのには実に吐き気がするね……と、言えば満足か?」

 そうだな、とどこか満足そうな様子でエヴァンジェリンが頷く。と、せっかくエヴァンジェリンが来たのだ、何も出さないのも失礼だろう。ウェイターを呼びつけ、適当に紅茶とケーキを頼む。

「私は金を出さんぞ」

「これぐらい余裕はあるわ」

「そうか、タダなら受け取ってやろう。。ま、茶々丸が作るものよりは劣るであろうがな」

 店の奥で店員が頬を引きつらせるのが見えた。これで誰かが頬を引きつらせるのは二回目だ。そのリアクション流行っているのかどうか、一瞬だけ考えるが、馬鹿な事だと自分い言い聞かせ、忘れる。実際に考える必要もない馬鹿な話だ。きっと流行ってるんだ。

 大抵の怪現象は”麻帆良だから”で済むのが麻帆良クオリティ。それで済ませていいわけではないが、それで済ませた方が精神衛生上いい。何故ならそれ以上悩む必要がないのだ。あぁ、何て精神に優しい考えなのだろう。

 と、そこで紅茶とケーキが届く。迷うことなくそれにフォークを進めるエヴァンジェリンの姿はどこからどう見ても年相応の少女だ。だがこれで中身五百オーバーの婆となると、こう、非常に勿体ないものを感じる。

「おい」

 エヴァンジェリンが呼ぶ。

「貴様、なんだその微笑ましい目は。抉るぞ」

「やめて。マジやめて。お前抉ると言ったらガチで抉ってくるだろ」

「決まっているだろう。お前に対して遠慮する理由はない」

 その言葉にげっそりする。この女は俺を過大評価しすぎだ。確かに俺を育て上げてくれた人物たちは何にも代えられない英雄であり、偉大な人物達であり、そして尊敬すべき永遠の憧れという事実に変わりはない。だからといって彼らに育てられた自分までがそんな存在であることはありえない。

「俺の事過大評価しすぎだよ」

「ククククク」

 ケーキを食べ終わったエヴァンジェリンは小さく、悪者の様な笑い方をしながら紅茶のカップを握っている。視線を此方に向けると、何とも残忍な笑顔を浮かべた。

「貴様、自分が継承したものの重さと、そして異質さを理解しているのか?」

「勿論。そして俺には不釣り合いだと言う事もな。でもなあ……」

「うん?」

 あぁ、そうだな。

「―――そのロリフェイスにその表情這わないな。実に可愛らしい。おい、人形でも持ってる方が似合ってるぞキティちゃん」

「もぐ」

 素早く地面を蹴って椅子を後ろへと向かってスライドさせる。次の瞬間には白い糸が陽光に反射して通り過ぎたのが見えた。そう、腐っても数百の年月を生きた吸血鬼だ。力を失っても自衛手段の三つ四つぐらい持っていてもおかしくないはずだ。いや、むしろ魔力切れを想定した武道を持っている方が普通だ。というかこいつは持っている。

「小粋なジョークじゃないか」

「最近の日本ではキレる若者というのがいるらしいな」

「かっかするなよ婆ちゃん」

「貴様は死にたいようだな」

「ぶっちゃけ考えずに喋ってるだけだ」

「なら考えながら死ね」

 迷うことなく逃げた。懐のサイフから二千円抜いてテーブルの上に置きながら、逃げた。背後で殺意を燃やすエヴァンジェリンが迫ってくる気配がする。現状、能力を封印されているエヴァンジェリンが普通に走って追いつくわけがない。だから本気で走れば追いつかれないのだろうが―――まあ、仕方がない。

 どうせ暇だし、サボ理に少し付き合ってやろう。

 後で後悔すると解っていても、人間という生き物は何で目の前の餌に食らいつくのだろうか……。
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