陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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渇望 ―――アイ・アム・ボーイ

推奨BGM:Sol lucet omnibus


 どうでもいい。

 それがキリトという幼馴染とアリスに対する初めての印象だった、

 どうでもいい。心底どうでもいいと、そんな風に思っていた。だって僕の人生に彼らが介在する余地何て存在しないから。木こりとして一生を過ごす。それが現実。夢を抱く必要はない。なぜなら悪魔の気を伐り倒す事なんて無理で、夢を見るのは無駄なのだから。諦めるわけではない。ただ現実を知るだけだ。どうせ無駄だからと、諦めるわけではない。歴代の誰よりもうまく龍骨の斧を振るえると信じている。自信がある。だが、それだけであの樹に敵う事は出来ない。

 だから自分が一番であり至高であると証明するために、無心に斧を振るう。

 それだけで良かった。少なくとも、初めはそう思っていた。

 同じ木こりの天職を与えられたキリト共最初は口数が少なかった。幼馴染だから交流がある。そんなのは嘘だ。結局のところ、関わろうとするから交流が生まれるのであって、その意思がなければ交流が生まれる事はない。だから、一緒にギガスシダーを伐る少年。キリトがやってきた時だって有象無象としか認識がなかった。自分以外は限りなくどうでもいい。それが僕の考えだった。龍骨の斧を握って、それを叩きつける。それだけの日常。


 それだけで良かった僕。

 それでは満足しなかったキリト。

 ギガスシダーとの格闘が始まった初日から、キリトはしつこく僕に突っかかってきた。名前はなんだ。年齢は。誕生日は。どこに住んでいるのか。好きな食べ物は。好きな子は。両親はどんな人か。休息日はどんなことをしているのか。本当にどうでもいい事だ。日常のあたりさわりのない事。そんな事をキリトは迫ってくる様に聞いてきた。

 心底、どうでもよかった。

 だから初めて一緒にギガスシダーに挑戦した日、僕はキリトを完全に無視した。今では考えられない事だし、失礼極まりない話だと思っている。だけど子供ながら、僕は村の大半の人と同じ、他人に対して凄く無頓着、興味がなかった。だからそれは一日で終わらなかった。

 次の日、そのまた次の日もキリトは僕に話しかけてきた。休憩の時間にも、斧を振っているにも、興味が……いや、好奇心が尽きる事無く僕に話し続けてきた。幼い僕はそれでも結構ひどい人間だったと思う。その全てを無視して自分の世界に浸っていたんだから。なんだったか、キリトから言わせればチュウニビョー、何て言うやつかもしれない。僕が最高、僕が至高、僕は無条件でかっこいい。そんな風に思っていた。

 そしてキリトだけだったら今でもそんな風に思えていたかもしれない。

 頑なに他人を拒否する僕と、そして好奇心旺盛なキリトとの間を良好してくれる存在が現れるまでは。

 ―――アリス。

 彼女の存在は間違いなく僕の人生を変えた。あの村の中で、キリト以上に異常な存在だと僕は今更だけど思う。彼女は違う。根本からして、違う生物だと思っている。だって、

 彼女はあんなにあっさりと僕たちの心に入り込んできたのだから。

 流れる様な金髪、青いドレス、何時もの姿で僕たちがいるギガスシダーの下までやってくると断りもなしにズカズカと入り込んで、勝手に世話を焼き始めた。キリトとは遠慮なしに話して、そして僕を勝手にキリトと一緒に引っ張り回していた。アリスは凄かった。本当に凄かった。だって、アレだけ他人を拒絶していた僕の心に入り込んで、そして一緒に笑い合うことができるまでそう時間をかけなかったのだから。

 自然と、僕はアリスに惹かれて行った。アリスは気づかなかったようだけど、キリトには早い段階で見抜かれていた。凄い直観力の高い相棒で、何時も下手で、引っ込み思案な僕を助けてくれる、唯一無二の兄弟とも言える存在だった。

 僕とアリスとキリト。そして時々セルカ。

 この三人と一人が、ルーリッドの村での、僕の生活の全てだと言っても過言ではなかった。ギガスシダーの下で、パイを食べて、斧を振るって、馬鹿な話をしながら夢を語る。そう、誰だって夢を見るものだ。僕だってアリスやキリトと触れ合った事で夢を見るようになった。一生をギガスシダーを伐るためだけに過ごすなんてもったいない。何時か二人でこの村を飛び出す。ギガスシダーを伐ったら剣士になる。そして街へと行って、入学し、整合騎士になってルーリッドの村に帰ってくる。そんな、男の子ならだれもが抱くような夢を胸に抱いた。いや、一緒に抱いた。

 俺とお前となら不可能はない、っとキリトが迷うことなく言ってくれたのが何よりもうれしかった。そして信じた。僕とキリト、そしてアリスが応援してくれればできない事は何もない。今の僕たちはこうやってギガスシダー相手に格闘しているけど……何時か、この悪魔の樹を伐り倒す日が来る。そしてそれを成したら二人で剣士になる―――疑う事はなかった。

 だけど、あの日が来た。

 後悔している。今でも、何故賛成してしまったのか。解り切った事だった。好奇心の塊のキリトと、僕たちを引っ張るアリス。あとは僕が知識を少し零せば、もうやる事は決まっている。氷柱を探しに洞窟へ。ついでに”ベルクーリ”のおとぎ話の真偽を確かめればいい。ワクワクドキドキと、旨を高鳴らせながら始まる小さな小さな冒険。それが発生してしまったのは僕のせいだ。止めるべきだったんだ、何に変えても。止められなかったからこんなことになってしまった。

 果ての山脈、冒険。

 冷えていれば天命の減りは緩やかになって、もっと長く食べ物を保存できるんじゃないか。そんな考えから洞窟へと向かった僕たちはその奥で骨となった龍を見つけた。国境の守護者の無残な姿を見つけた。青薔薇の剣を見つけた。整合騎士の無残な敗北を見た。

 アリスが、国境を超えるのを見た。

 アリスに躊躇はなかった。躊躇することなく国境を踏み越えた、僕は動けなかった。踏み出す、何て考えさえ生まれなかった。まるで心の奥底kらそれに対して縛られているようで、アリスを連れ戻さないと。そう思った瞬間には指さえ動かなくなり、目が異常な痛みを訴えていた。今だからこそ覚えている。僕の頭から連れ戻す、という言葉が消え去っていたのだ。理屈ではなく、本能なのか、それが命令を拒否―――いや、消し去っていた。

 だから、憧れてしまった。

 アリスを迷わず連れ戻そうとしたキリトに。悲鳴を上げ、頭を押さえ、目を血走らせながらも、アリスを連れ戻す事に必死で手を伸ばして、掴んだ。僕はそのキリトの行動、姿に間違いなく憧れを抱いたんだ。禁忌目録を破って、もう処罰は決まっているアリス。自分が禁忌目録を破る事になるかもしれないのに、恐れる事無くアリスを連れ戻したキリト。僕は、

 あの二人とは違う。

 ルーリッドへと戻ってきて、待っていたのは整合騎士だった。

 整合騎士の要求は―――アリスだった。

 そう、迷うことはない。アリスは禁忌目録を破ったのだ。だから罰せられるために中央へ―――セントラルカセドラルへと連れて行かれる。禁忌目録を破った者の末路だ。だからアリスは連れて行かれた。整合騎士に。それは当然の結果だった。当然すぎて、受け入れるべきものだった。

 だけどキリトは抗い、僕は見ているだけだった。

 足を前に踏み出したかった。叫びたかった。アリスを放せ。そうやって言葉を出したかった。だけど、無理だった。できなかった。あの時、アリスが禁忌目録を破った瞬間と同じで、体が命令を実行する事を拒否していて、アリスの為に動く事が出来なかった。だからあの時、迷わず前に踏み出せたキリトが何よりも羨ましくて、眩しくて、

 嫉妬していた。あの瞬間間違いなく、僕はキリトに嫉妬していた。動けるキリトに対して。恥ずべきだと。それを僕は理解していた。それでも、真直ぐだったキリトに、彼の姿に僕は嫉妬していた。彼は僕とは違う。一番違うのはアリスだったけど、

 キリトは、アリスとはまた違うベクトルで”違う”生き物だった。

 気付いたんだ。キリトは、この世界では誰にも染まらない、従っていない、自由な存在だって。だから走り出せた。だから手を伸ばせた。だから救おうとした。どこまでも縛られる事のない自由の姿に嫉妬して、憧れて、そして嘆いた。

 僕は何て無様なんだ。

 憧れも嫉妬も、そして自分自身に対する落胆も簡単だ。そんな事、誰にだってできる。重要なのはそれを抱いて、それでも前に進む事だ。後悔なんて何時だってできる。重要なのは今で―――それでも体は動かない。頭は命令を拒否する。心で強く思っても、動けない。動いてくれない。

 そして、キリトが叫び、罵倒し、怒りの咆哮を上げている間にアリスは連れ去られた。

 体が凍り、僕は見ている事しかできなかったワイバーンの背中に乗せ、アリスが連れ去られるのを。そうやって、去って行く姿を。そしてキリトが無力を叫びながら大人たちに抑え込まれる姿を。誰も疑わない。誰も止めない。誰もがこれを正しいと思っている。屑だ。僕も皆も屑だ。止めなかったセルカも同様屑だ。

 キリトだけが、英雄だ。

 この腐りきった世界の中で、キリトだけが輝いて見えた。アリスを助けようとしなかった僕も村の皆も同罪だ。僕は許さない。許せない。動けなかった自分を。動こうとしなかった自分を。だから、あの時、アリスが連れ去られたあと、

 キリトが僕に向けた獣の様な眼光。

 アレは、正しい反応なんだ。

 僕は……僕は―――なんて浅ましいんだ。

 安心してしまったんだ。自分に買いが及ばなかった事が、キリトがまだ無事な事に。セルカが残っている事に。その事実に気づいて、激しく嫌悪した。自分自身を、そう思ってしまった自分自身に。なんて吐き気がする事だったのだろうか。こんなこと到底許せない。

 ―――そして、キリトが消えた。

 村の皆が忘れた。

 セルカが忘れた。

 僕が忘れた。

 あの事件は僕とアリスの二人だけ。だから全ての責任は僕にある。

 十八になってまでも、ずっとそう思って時運を責め続けてきた。キリトを忘れて、いなかった事にして、彼のしたことを自分の功績の様に思い続けて。そうだ。アリスを救ったのは僕じゃない。キリトだ。アリスを助けに行こうとしたのは僕じゃなくてキリト。アリスと一緒に話す機会をくれたのはキリト。

 キリト。

 僕の親友。

 僕の幼馴染。

 何で、何でこんな大事な事を忘れていたんだろう。

 何で、忘れる事が出来たんだろうか。

 そんな自分に吐き気がする。そうだ、そう誓っただろ。ずっと昔に。キリトとアリスは僕が守る。だからキリトは僕とアリスを守って。そうやって一緒に強くなろうって。その約束を守ろうとしたのはキリトだけだ。僕は、最初から、約束を―――。



                           ◆


「なに一つ守れてないじゃないか……」

「……ん?」

 キリトの背中にしがみ付く。数年間あっていない間に大きくなったと思う。そして、強くもなった。おそらく……ベクタの迷い子なんて嘘だ。そんなの見れば解る。だけど何かが違うのは確かだ。その違和感も一緒にいると段々と増えてきた。昔と違うその事に不安を覚えるのは間違いのない事実だ。だが……―――変わっていない。

 あの、キリトの輝きは欠片も変わってはいなかった。

 逆境の中でも変わらず自分らしく、輝き続けるキリトの姿。それを見た瞬間思い出した。キリト共に過ごした幼少の年月を。アリスとの思い出を。

 そして、僕の夢を。

「僕は……なんでこんなことを忘れていたんだろう……」

「ユージオ?」

 約束したじゃないか。

 守るって。

 剣士になるって。

 まだ何一つ約束を守れていないのに、キリトだけはなんか新し相棒を見つけて、もっと強くなって、不思議な力を使って……一方的に前に進んで行っている。だから、僕も

 覚悟を決めよう。

 ―――ギガスシダーを倒して、止まっていたこの時間を進めよう。

 何時だって願っていた。時が止まればいいと。アリスと、キリトと、僕との三人で、楽しく過ごしていたあの時を。永遠に過ごせれば最高なんだろうって。だけど、それは違う。何時だって進まなきゃいけないんだ。自分で時計の針を進めなきゃいけないんだ。

 だから。

「キリト……」

「大丈夫かユージオ」

 うん。だから、

「アリスを、僕たちで迎えに……行こう……!」

「お前―――」

 キリトが驚いたような表情を浮かべ、そこで僕の体に重い披露が伸し掛かる。今まで張りつめていた緊張が今の一言で途切れたような気がした。結果、

 僕の意識は闇へと落ちた。

 何時もの暗く、寒い闇ではない。

 ようやく見つけた―――懐かしい微睡に。




思う様に書けない。マジ笑えん。
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| 断頭の剣鬼 | 15:07 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ユージオ「僕は、屑だ」

| hunting ground | 2013/01/19 22:21 | URL | ≫ EDIT

初コメAND一気読み疲れた・・・

にじファンの時代から読んでたものが再び見れるのは感動ものです。
なまじ好きな作品だったものだから余計に。

これからの続きに期待して待ってます

境界線上のホライゾンの方も待ってます

| マ王 | 2013/01/21 18:43 | URL | ≫ EDIT

ユージオに急成長フラグか?

なんだろう、化け物共と行動したらすぐに染まりそうな気がしてきたぞ。

| | 2013/01/22 22:53 | URL |















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