陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~不良騎士道~ 第10話 不良騎士貧乏くじを引く

 赤毛を後ろで縛りサングラスをかけた長身、キッチリ整えられたスーツ姿の男と横に並ぶように薄化粧の施された白いドレス姿の女性がホテルに進入する。その身長の差は凄まじく、長身の男が百九十を超える身長を持っているのに対して女の身長は百五十五に届くか届かないか、それぐらいだった。横に並んで歩く姿は髪の色から兄妹ではないと解るが、それでもそれに似た微笑ましさを感じる姿だった。並んで歩いている男は―――ウィルフレッド・カーストはこんな所にまで付いてきたクゥーニャの存在に辟易としていた。だが今更帰る訳にもいかず、そのまま入り口、フロントにいた確認を取っているホテルマンに近づく。


「招待状か身分の証明をお願いします」

 ウィルフレッドが懐からIDカードを取り出し、クゥーニャの物も一緒に取り出しそれを提示する。IDカードに書かれている事実にホテルマンの顔が驚愕に歪むが、即座にサングラスを僅かにずらし、人差し指を口に持って行く。

「あまり騒がれたくないから……解るよな? 俺達は仕事で来てるんだ」

「か、確認しました。どうぞお通りください」

 若干威圧されながらもホテルマンは頷き進入の許可を出す。IDカードを懐に戻すとウィルフレッドとクゥーニャが横並びに再び歩き出す。ロビーの中央、入り口から少し進んだ所まで来ると足を止め、近くのソファに足を広げるように深く座り込む。右腕に巻きつけてある時計を確認すればその時刻は六時半、約束された時間である七時よりも三十分ほど早い。本日ホテル・アグスタで開催されるイベントの開始時刻は十一時、開始までまだ四時間以上ある今の時間、まだ参加者は来ておらず来てるのはスタッフだけだ。ヴェロッサに指定された時間が七時なのだからおそらくユーノ共々既に来ていてもおかしくはないのだが、ロビーを見る以上ヴェロッサの姿もユーノの姿もない。

「ま、とりあえず来るまでは寛いでるぞ」

「うむ。そうだな」

 そう言ってソファに座ったウィルフレッドのまたの間にクゥーニャが座り込む。

「おい」

「特等席ではないか」

「背が低いのにそんな事やってたりするからガキに間違われるんだよ」

「私は周りの視線とかは特に気にしたりはしない。しいて言うのなら私が従うのは聖王様の仰った教義のみだ。それに私はちゃんと教義を守っている。だから問題はない」

 はぁ、と諦めの溜息をウィルフレッドが吐き出す。こういう事を場所を選ばずやるから女は寄ってこない。寄って来たとしても微笑ましい兄妹扱いだったりクゥーニャが威嚇したりで全く話などできない。付いてきた時点でだんなの目を離れて少し危険な火遊び……なんてシチュエーションを楽しもうと思っていた思惑が簡単に崩れてしまった。体をもう少しソファの奥へと引きずり、手をクゥーニャの腰に回して体を少し持ち上げながらその姿を寄せる。座らせるときはなるべくドレスがシワなどで痛まないように気をつけながら降ろす。

「ほれ、そんなに浅く座ってると落ちるぞ。あと高いドレス着てんだ、ちったぁ座り方に気を配れ。」

「む、助かる。が、あまりこういう場所へは来たことがなくてな」

「あー、お前は基本パーティー系全部スルーしてるからな」

「お前が出るのならドレスを見せる意味でも参加してもいいのだが」

「残念。オッサンばかりのパーティーに俺は興味なし。パーティーとか政治とか、そういう小難しい事は九位とか十四位の管轄だ。俺達脳筋族は平時はアホみたいに鍛えて危なくなったら無駄にぶっ壊してりゃあいいんだよ」

「実に解りやすくて私好みだな」

「そりゃどーも」

 ソファに寄りかかりながら体を後ろに倒す。柔らかいソファの感触を楽しんでいるとクゥーニャまで寄りかかってくる。体重は見た目よりもずっと重いのだが……それを全く気にする事もなくクゥーニャの存在をそこに置き、天井を見上げる。ミッドチルダでも有数の高級ホテルであるホテル・アグスタの内装はかなり豪華なものとなっており、ロビーの天井にはシャンデリアが見える。とはいえ、それなりに大きなホテルとなればシャンデリアの一つや二つあるだろうし、珍しいかと問われればそれほど珍しいものではない。個人的な価値観だがウィルフレッドはシャンデリアよりも教会の、大聖堂のステンドグラスのほうが美しいと思っているためそれほどの感動もない。

「ウィル」

 そんなウィルフレッドにクゥーニャが声をかける。完全に体を預けるように寄りかかりながら頭を上へ、ウィルフレッドへ向ける。

「なんだよクゥ」

「いや、呼んだだけだ」

「あ、そ」

 視線を向けると結構無防備な姿をさらして、ドレスから胸の谷間が見えてたりする。ウィルフレッドが軽くクゥーニャの頭を叩いて普通に座らせる。おそらくと言うよりも十中八九誘惑か挑発のつもりでの胸チラだろう。何時までたっても進歩しない事に若干呆れを感じていると目的の気配が近寄っているのに気づく。

「遅ぇぞロッサ」

「君が早すぎるんだ。まだ約束の時間まで十五分もあるんだけど」

「んな事解ってらい」

「久しいなヴェロッサ」

「おや、騎士クゥーニャお久しぶりで」

 クゥーニャが立ち上がり、それに続いてウィルフレッドも立ち上がる。ヴェロッサの姿は常日頃から変わらない。長い緑色の髪に白いスーツ。管理局でもかなり優れた査察官だが、ウィルフレッドと同じサボリ癖が存在する為、扱いにくいとされている人物だ。立ち上がったクゥーニャはそのまま真っ直ぐアコースの前に歩き出し、無言で立つ。数秒、しばし無言でヴェロッサと見つめあうとヴェロッサが何か気づき、空中から小さな袋包みを取り出す。

「今日はこれしかないから許してくれないかな」

「聖王様は許すと仰るだろう」

「人に甘いもんをたかってんじゃねえ」

 クゥーニャのデコに軽くデコピンを食らわせ、その衝撃にクゥーニャが悶絶している間にヴェロッサに近づく。

「で、ユーノの護衛だっけか」

「今ユーノ"先生"は品物の検分中だからね。しばらくは自由に行動できるよ」

「おいおい、なら何こんな早く呼んでくれてんだよ。俺もうちょっと惰眠貪りたかったぞ。具体的に言うと十時ぐらいまで」

「流石にそれだけ寝てたら間に―――合うか」

 ヴェロッサの視線がヴェロッサから受け取った袋をあけ、その中からクッキーを取り出すクゥーニャへと向けられている。ヴェロッサとウィルフレッドの視線に晒され、頭をかしげるクゥーニャから目を離すと向き合う。

「そういえば護衛っつーけどよ、軽く調べたら俺なんかいなくても十分そうな警備見てぇだけど?」

「ん? 言ってなかった? ガジェットだよ」

 ヴェロッサの額に高速のデコピンが放たれヴェロッサの体が大きく後ろに傾く。いきなりの衝撃にバランスを崩しそうになるも、寸での所でバランスを取り戻したヴェロッサがギリギリの所で醜態を晒す事無く復帰する。痛そうに擦るヴェロッサの額はデコピンの衝撃で赤くなっている。それでも軽い苦笑を漏らしている。

「馬ぁー鹿。こっちに気遣いしすぎなんだよ。お前はお前の心配だけしてろよ。査察官なんだ、それなりに有能なんだからお前も恨まれてんだろ」

「ははは、君も"急進派"への牽制とかで本当は色々と忙しいんだろ? 少しぐらい僕を頼っても罰は当たらないさ」

「ふん、安心しろヴェロッサ。"原典派"と"急進派"の件は私が動いてるからな。ほら、褒めてもいいぞウィル」

「あまり喋んな」

 胸を張るクゥーニャの額にウィルフレッドが視線も合わせずにデコピンを食らわせ黙らせる。しかし、ガジェットと言う単語にウィルフレッドは頭を悩ませる。ガジェット絡みの事件は全て機動六課に一任されている。そして聖王教会、一部ではあるがその存在は機動六課のバックとして存在している。ヴェロッサの余計な好意のおかげで機動六課、そしてガジェットを見極める良い機会が巡ってきたとも言える。

 が、正直な話―――ウィルフレッドはなるべく表舞台に立ちたくない。むしろ自分の領分は裏側での工作やハニートラップ、そういった面での活躍のほうが適切だと判断している。そのためこうやって大々的に何かに参加している、というのはよろしくない。

「まぁ、その心配は必要ないと思うよ」

 思考を読むようにヴェロッサが言葉を放つ。

「君が何を心配してるかは解るけど、そのために遠まわしに護衛なんて役職を用意したんだから。ま、今回は諦めて楽しむといいよ」

 ヴェロッサの額にもう少し強めのデコピンを放つ。

 流石に少し強く打ったデコピンには耐えられなかったのか、元々戦闘系ではないヴェロッサはその衝撃で頭から後ろへ勢い良く倒れる。整っていた緑髪は若干乱れ、倒れた衝撃で頭を床に打ちつけたために後頭部を押さえ、軽く悶絶している。

「さ、流石にこれは、い、痛い……!」

「余計な気遣いを年下がするからだよ」

「年下って言っても義姉さんと同じ年齢だから僕よりも一つ上ってだけじゃないか」

「おう、つまり俺よりも若いって事だろ? ほら、俺は偉い。偉い先輩様の靴を磨こうぜ」

「あー、解った解った。勝手に進めた僕が悪かったよ」

 後頭部を擦りつつ上半身を持ち上げたヴェロッサが手を前に出してくるのでそれを掴み、ヴェロッサを一気に引き上げる。同時に勢い良く引き上げられたヴェロッサが此方に衝突し、ほぼ抱きしめる形となる。そのままヴェロッサが周りに聞こえないような大きさにまで声を落とす。

「ガジェットの大元、何処か知ってるよね?」

「スカリエッティだろ」

「あぁ。彼のバックは完全には把握できてないけど、聖王教会の一部の人間が付いていることが判明した」

「マジか」

「大マジだよ。それだけならまだマシだけど、スカリエッティに付いたのは"急進派"の連中でもかなり強引なやつらだ。おそらく管理局に敵対していて一番成果を挙げているところに目をつけたんだと思う。資金提供をしてるみたいだね。ついでに言えば最近"急進派"の騎士達が何名か消えている。おそらくそっちに合流されたと思う。"そういう意味"でも今日はここに呼んだんだ。ロストロギアも出品されてるし、何が起こるか解らない。頼んだよ」

 告げたいことだけを告げるとヴェロッサが体を離し、少しコミカルによろめく様に演じるとスーツの埃を掃う。

「頭を使いすぎなんだよ馬鹿野郎」

 対してウィルフレッドは軽い溜息を吐きながらそう呟く。

「それじゃ僕は一度"先生"にウィル達が来たことを教えてくるから、十時ぐらいまでは自由にやっていてくれ。色々とやりたいことはあるだろうしね?」

「うるせっ、とっととどっかに行きやがれ疫病神」

「ははは、それじゃあまたね」

 ヴェロッサが髪の毛を整えながら去って行く。その後姿を見ながらも、ウィルフレッドはまためんどくさい事になりつつあるな、と思う。実際ウィルフレッドのこの手のカンは外れたことがない。それにどうやらヴェロッサも確信している様子であった。このままただでオークションが終わることはないな、そう思ったとき軽い衝撃を胸に受ける。視線を下げてみれば胸にしがみ付く白い姿がある。

「何やってんだお前」

「いや、ヴェロッサとお前が抱きついてるのを見たら軽く嫉妬した」

「男相手に何嫉妬してんのこの子……! あと俺の本命はカリムだから。それ以外の選択肢は存在しねーから! 俺はカリムと結婚してヒモになるの!」

「私と結婚してもヒモになれるぞ」

「う、ぐっ」

「何故そこで揺らぐ。そこは普通に違うことを言う場面ではないのか?」

「堕落ライフを送ることが俺の夢だからな。ネオニートって言われても俺は構わない。っつーか激しくセルマのヤツが羨ましい」

「お前はもう少し聖王様の仰ったことを見習え」

 体を離したクゥーニャが聞き分けのない子供に言う様なポーズを取る。それが少し面白く、どこか薄っぺらく見えて、ウィルフレッドは歩き出す。その直ぐ後ろをクゥーニャが追う。

「―――"皆、聞いて欲しい。私はこれから歴史に残るような戦いを始める。多くの血が流れ、そして骸が山を築くだろう。だがそれでも私はこれから戦を起こす。何百何千何万と骸がつみ上がろうとも私はその頂上で常に拳を振るい続け、新たな骸を生み出すだろう。多くの人々が理不尽に泣き、そして住まう場所を失うだろう。だが、それでも私は戦う。何故か? それはこれが避けて通れない道だからだ。何時か、どこかで、誰かが絶対にやらなくてはならない事だ。だから、その返り血は私が浴びよう。私が浴びて道を作ろう。私達には何も残らないかもしれない。しかし、私達の子孫には残すことが出来る。だから、私は始めよう。この戦を"」

「うむ、聖王様が統一戦争を決意なされた時の言葉だな。良く一字一句間違えずに覚えられた物だな」

「あぁ、そりゃあこれが俺が聖典の中で一番気に入ってる所だ。聖王様が生きてたら確実に惚れてる。もう超ゾッコンだね」

 ホテル・アグスタの廊下に入り、曲がった所でエレベーターホールに到着する。エレベーターのボタンを押し、エレベーターがやって来るのを待つ。

「で、それがどうしたのだというのだ?」

「いや、言いたかっただけだが?」

「……」

「そう睨むなって」

 ウィルフレッドが両手を挙げながら苦笑する。ベルを鳴らすような音と共にエレベーターが到着し、扉が開く。
ホールドアップするように両手を挙げたままエレベーターの中へと入って行く。

「それに何も感じないんだったらいいんだよ」

「そうか。言っておくが私は死ぬまで離れる気はないぞ」

「はいはい。こう、何で地雷女とばかり縁があるかねぇ」

 クゥーニャがエレベータに乗り込むと屋上へと繋がるボタンを押し、エレベーターの扉を閉めさせる。静かに、音を立てずにエレベーターは二人の姿を上へと運んだ。
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| 不良騎士道 | 11:16 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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