陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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渇望 ―――モンスターズ・ハイ

推奨BGM:Thrud Walkure


 ―――頼もしすぎるだろ。

 横に立つ青年の姿は数年前、一緒に肩を並べて戦った男の姿を思い出す。これが意図的なのか、そうではないのか。正樹が剣を握る構えは完全に”サイアス”だった頃の明広と酷似している。どこまでも力を渇望し、そして数えきれぬ程の首を切り落とし、屍の山を気づいた最悪の剣鬼の姿に。自然とあの頃の、濁った瞳を持っていた明広の、赤い衣姿が今の正樹と重なる。背丈も近いし、筋肉の付き方もあの頃とは似ている。今では完全な別人だが―――なるほど、やはり兄弟なんだろう。似ている。だけど、唯一違う点が、一点だけ”サイアス”と違う場所がある。

 目だ。

 横に並ぶ正樹の目を見れば解る。そこには濁りの欠片もない。覗き込めばどこまでも吸い込まれそうに透き通って見える。その姿は湖に叩き落される前とは全く違う感じがしていた。そして、それは幻想の城で戦っていた”サイアス”が決して得る事がなかったものでもある。表現するのが難しい。だが解る事は、この刃は継承されたのだ。

 サイアス/明広に始まり。

 キリト/和人を通し。

 そして正樹へ。


 今、持つべき主の手へと渡った。不思議と、そんな気がする。……本来ならここで自分に握らせてほしいと頼みたくなるところだ。刃を持たせたところで正樹がそれを十全に扱えるかどうかは未知数だし、アレを握ればあの時……GGOで発揮した力を再び取り戻す事ができるかもしれない。力への渇望は強い。そしてそれが可能のであれば、この状況の打破のために俺が握るべきかもしれない。だが、正樹が構える姿を見ると、どうしてもそう思えなくなる。

 なんというか―――納得してしまうのだ。

 とてもだが、自分が握る気にはなれない。なんとなく、と。毒気が抜けてしまう。何をやっているんだ自分は、と。そして同時に、懐かしくも感じる。

 ……そうだよな。そう言えばそうだった。

 あの頃は……少し前までは、必死だったのだ。

「思い出せば何時だって”足りなかった”んだ。SAOも、ALOも、GGOの時も」

「キリト……?」

 特にSAOの時はそれが酷かった。覚悟も足りなきゃ知識も足りない。強さも足りなきゃ時間も足りない。足りない。何もかもが足りない。だけど、それで満足していたんだ。ないものは多い。でもそれで十分。持っているものを、与えられたもので満足していたんだ。与えられた奇跡はいらない。というかいらない。できる事なら自分でやってのける。俺達の力だけで、奇跡を起こしてみせる。そうやって意気込んで、挑戦し続けていたんだ。終わりの見えない戦いに。

 だから、これもそれと一緒だ。

「なんか、初心に帰るってやつかな、これって」

 今度は誰にも聞こえない様に呟き、一旦体を覆い、刃に通す心意を切る。一旦sべ手の心意を解除してから―――再び心意を発動させる。今度はもっとスムーズに発動する。素早く、強固に、しなやかに俺の心が、その色が反映される。今度は疑いようもなく、体が心意の光に包まれ、薄暗い洞窟を照らす。その色が、ユージオとセルカの目に届くのはもはや止められないし、

 止める気もない。

「―――ユージオ、セルカ」

「キリト……?」

 俺の声にユージオが答える。正直な話、俺の事だけを覚えていてくれないのは……かなり、堪える。悲しい、いや、寂しいというのが一番正しいのかもしれない。俺には確かにこの世界に生まれた記憶がある。だがそれはラースでのアルバイト、実験で出来たものだ。だからといって、その過去を否定はしない。俺は、

「俺は……桐ヶ谷和人で、キリトだ。あぁ、終わったら少し話をしようぜユージオ。昔の話を。俺やお前がまだ一緒にアリスとそこらへん駆けまわってた頃の話だよ」

「なにを―――」

「思い出す必要はないさ。結局のところ、自己満足だし―――謝罪でもあるし」

 蛮刀を一回振るう。心意が体に張り付き、刃に浸透し、今まで以上に軽く感じる。くるり、と刃を一回転させながら握り直し、得物を構える。正樹の横で。確か、とえーと、とかと、言葉を口にしながら自分の構えや動きを確かめる。本気で、殺す気で戦うのは本当に久しぶりだ。体がそれを忘れるわけがない。だが今までの自分とは違う。もっと、もっと昔を思い出す。足りなかった自分を。至らぬ自分を。そう、此処にいるのは桐ヶ谷和人であって、キリトであるのだ。

 黒の剣士でも、黒の英雄でも、最強のスプリガンでもない。そう、今まで背負ってきた称号は全て捨てて、此処にあるのは素のままの自分だと”認める”事が始まりだ。そう、認識し、自覚する。これが何より大事だ。状況などを飲み込む事よりも、ありのままの自分を受け入れる。そして認める。

 何てザマだ……!

「さあ、改めて仕切り直しだ、ウガチ!」

 蛮刀を片手で構える此方に対して、ウガチは肩口に突き刺さった矛先を引き抜く。勢いよく噴出する血を無視し、握ったものを捨てる。そしてウガチが剣を片手で握り、構える。もはや驚く必要はない。その道に入った構え、敵は間違いなく強敵で、自分よりも強くて、何か武を収めていて―――あぁ、それは何時もの話だ。

「なあ、そうだろ正樹!」

「基本的に強い相手としかたたかってこない嫌な人生だよな!!」

 全く持ってそうだ。だが、そこに付け加えなくてはならない事がある。

「俺の方が苦労してるし強いやつと戦ってる。だってほら、おれってSAOがあるし」

「なにを言ってるんだよ。俺なんか馬鹿な兄を持ってるんだぞ」

「それに関してはほら、SAOでずっと世話したし」

「はあ? なにを言ってるんだよ。俺は人生ほぼずっと一緒だったよ。しかもそこに馬鹿な兄の破天荒な幼馴染がセットでついてくるし」

「おいおい、それだったら俺だって経験してるよ、結構最近」

「そっか」

「あぁ、そうだ」

 だったら、と声を揃えたところで、ウガチが吠える。

「―――どうした! 臆したか薄汚い塵が!」

 それに対して、同時に吠えて返答する。

「―――アレをぶっ倒してから議論の続きと行こうかぁ―――!!」

 吠え返すのと同時に走り出す。同時に二手に分かれるのと同時にウガチへと向かって斬りこむ。それをウガチは、敵は士かk理と見据えている。両目で、一瞬の動きを見落とすことなく。一挙一動を、網膜に焼き付ける様に。

 懐かしい感覚だと思う。

 やっぱり、SAO以来なんじゃないかと思う。

 こうやって、剣を握って戦うことはあっても、二人で剣を握って戦う事なんて―――記憶にある限り、ほとんどなかった気がする。正樹のせいだ。正樹があんな構えをするせいで思い出してしまう。そして今も、

「―――ッツア!」

「ッテヤァ!!」

 俺が斬りこんだ痕、僅かに時間差をかけてから正樹が斬りこむ。それはほんの数瞬の差だが、純粋な剣術で相対する場合、その刹那は人体の構造上、絶対に防御の出来ない瞬間だ。だから回避するしかない。ウガチは選択肢を与えられることなく後ろへと素早いステップで回避する。

 そこで体重も、そして動きも軽い俺が前に出る。ワザと一撃は軽くして、この動きへと繋げやすくしてあった。だからウガチが後ろへと、その巨体に似合わない速度で下がった時、俺は素早くその体に追いつき、攻撃を繰り出していた。下がりながらもその動きに反応し、剣を弾くウガチは流石としか言いようがない。が、それでも、

「―――たしか、いや、たぶん……こう―――」

 確かめる様な言葉を口しながら横から現れるのは正樹だった。黒の大太刀を肩に担ぐように構えながら踏み込む姿はまだ剣鬼だった頃の兄の姿に瓜二つだ。それにどういう意味があるか解らない。だが、今、正樹は完全に技術を剣を通し、継承していた。体重、速度、踏み込み、全てが完璧に計算されて、そして完成された動きで、

 振り下ろした。

「グッ、クハ……!」

 少し、笑うような声がウガチから洩れる。何かをこの男は見ているし、知っている。だが敵だ。そう、敵なのだ。そして敵は―――斬る。敵が発する殺意は本物だ。疑いようがなく、こっちを殺す気で刃を振るっているのだ。だから殺さなくてはならない。これはフィクションではなくノンフィクションだ。ファンタジーのジャンルに足を突っ込んでも現実はどこまでも現実で、話し合って説得すれば敵が味方になるとか、敵を倒したら改心して事情を話すとか……そんな子供にやさしい夢は到底ありえない話なのだ。

 現実は何時だって辛い。

 だって、なあ。

「……消えちまったもんな―――お前ら」

 気づかないフリは―――出来ない。

 もう、出来ない。

 現実は何時だって辛くて苦しくて、認めたくないものだ。優しい言葉はどこまでも優しく、美しく見える。だがそれは毒であり、邪悪なのだ。厳しく、現実的な言葉こそが醜く正しい修羅の道で、真実とは決して納得のできるものではない。それでも、それらを飲み込んで認めるしかない。そうでもなければ、

「無様な俺にだけはなりたくない……!」

 正樹の踏み込みからの斬撃は紙一重で回避される。カウンターに繰り出された蹴りはしかし、正樹を捉える事がない。まるで風に舞う葉の様に蹴りを交わすと、ウガチの足の動きが止まる。その巨体からして、重心を片足で支えるのは辛い。ひょんなことから体勢を崩し、倒れる事は容易い。何より、この体勢では力が入らない。

「心意……≪ヴォーパル・ストライク≫」

「―――!」

 ウガチが言葉を発するよりも早く、青い閃光となった刃が、武器のジャンルを超えて必殺の奥義を叩き込む。片手重単発スキル≪ヴォーパル・ストライク≫は曲刀ではなく本来は片手剣で放たれるべきスキルだ。だが武器の種類を無視して繰り出すだけの力量が、自信がある。そして何よりも今、横と背中を任せる相棒に対しての信頼の証として、心意を、奥義を成功させる。叩き込まれる奥義はウガチを正面から叩き―――防御に入った剣と衝突する。

「ォ、オ、ォ、オ、オオォ―――!」

「フッ」

 凄まじい膂力だ。たった片手で心意の込められた刃を防がれた。しかも不利な体勢で。だが、

 その瞬間には正樹が動いている。ウガチの背後へと既に回り込んでいる。両手で刃は握られている。俺も蛮刀を戻し、それを振り直す。コンパクトに、素早く、一瞬で勝負をつけるたえの動きだ。そしてそれに反応するウガチではあるが、足を戻してから―――その動きは鈍い。いや、鈍くならざるを得ない。この挟撃はウガチの身体能力を考慮して、追いつめたのだ。タミング、連携、誘導、全てが完璧だ。ようもなく避ける事が出来ないタイミングで放ったのだ。

 避けられては困る。

 故にウガチが攻撃にも防御にも入る前に、

 両側から鋏高揚に蛮刀と大太刀が挟み込む様に―――首に叩き込まれる。

 一撃必殺。

 挟み込むように放たれた斬撃がウガチの首を一撃で根元から断ち、斬首する。

 噴出する血が噴水の様に飛び出し、雨のように降り注ぐ。跳ね飛ばされた首が宙を舞い、数メートル先で落下する。刃を振りぬいた格好で動きを止め、数秒間そのまま動きを制止させる。そのまま言葉を口に出す事もなく、降り注ぐ血を浴びつつ。正樹と共に無言でウガチの死体を見る。ユージオとセルカが息を飲むのを感じる。戦闘のせいか鋭敏になって感覚が余計な情報まで拾う。そのおかげで拾ってしまう。

 音を。

「―――約束は守ろう」

 そう答えたのは斬首されて、跳ね飛ばされたウガチの首だ。ウガチの体は斬撃の影響を受けて倒れ込む。尚も血を流し続ける体を無視し、ウガチの首は視線を此方へと向け、言葉を放つ。

「貴様らは勝利した。去るがいい。だが次ここへとやってくるのであれば、手加減はしない」

 その光景は完全なホラーだ。首だけとなった敵が話しかけているのだから。ここでトドメを相手に対して差し込むべきなんだろうが、不思議とそれは意味がないように思える。いや、違う。それは正しくない。≪羅刹≫を使って斬首したのにこいつは死んでいないのだ。そう、

 ―――こいつは何をしても殺す事が出来ない。そう理解した。

 おそらくコイツが特別なのではない。周りにいる兵士全てが”こう”なのかもしれない。いや、そう考える。何となくだがそれが正しく感じる。だがそう、それは、

「……勝ち目がないな」

 今の状況に対してではなく、この軍勢と戦うこととなる人類に対して、という意味だ。だが正樹はそれを気にした様子もなく刃を肩で担ぐと、ありがとうございます、と斬首された敵に向かって言い、そしてユージオ達へと向かう。

 そうだ。そんな場合ではない。

「ユージオ、セルカ、大丈夫か!?」

 駆け寄り、ユージオとセルカの様子を見る。二人とも、目の前の現実が直視できていないのか、酷く顔が青ざめている。正樹と視線を見合わせ、互いに頷くと、俺がユージオを、そして正樹がセルカを持ち上げる。そうやって二人を担ぎ、洞窟の入り口へと向かって歩き出す。その際、自分たちに対して視線が集められている事は認識しているし、そして統率されて、指揮官を討たれたこの状況で黙っているという事も一つだ。不気味だが、

 正直どうでもいい。

 これ以上俺の人生に絶対関わるなよ、と思いつつユージオ達を運ぶ。

「さあ、帰ろうぜ」

 まだ顔を青くするユージオに対してそう言いながら運ぶ。そう、帰ろう。あの思い出の詰まった村に。もう闇の国やその軍勢と関わる人生は必要ない。巻き込んで悪かったな、ユージオ。ちょっと自己満足に付き合ってくれたら……それで終わりだ。ルーリッドで平和に暮らしていてくれ。

 俺は……やるから。

 現実に帰る事も。

 アリスを救い出す事も。

 その覚悟を胸に洞窟を去ろうとしていた時、担いでいるユージオの口からか細い言葉が漏れ出していた。

「―――なんで……僕は、こんなことを―――忘れていたんだ……!」

 青ざめて、力なく、そしてか細く。それでも、その言葉には深い後悔と罪悪感が感じられる言葉だった。

 それは俺に、波乱はまだ終わりそうにはないって事を感じさせていた。




 戦闘自体は短め。そして新時代妖怪コンビ結成。原作通りに行けば、ユージオも剣握るようになるしトリオるのかなぁ、とか思いつつ、アリシゼーション1巻もいよいよここまで、って感じにトントン拍子に進んできましたね。えぇ、ですがトントン拍子はここまでです。アリシゼーション2巻分はどっぷりやる予定なので、アリシゼーション・ターニング(現行巻)まではちょっと時間かかるかもですね。

 まあ、次巻分はハイパー癒しタイムと信じて。
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| 断頭の剣鬼 | 09:27 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

やはり正樹も妖怪だったか。
そして妖怪トリオだと……? ユージオも妖怪化すると言うのか、胸が熱くなるな。

| とろつき | 2013/01/17 10:23 | URL |

本人不在でも尚衰えを知らないヒロリ菌の感染力w
トリオとかカオス過ぎる(笑)

ハイパー癒しタイム、スッゴい期待して待ってます!
明日は土下座待機だなw

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2013/01/17 10:34 | URL | ≫ EDIT

まだだ・・まだきれいな妖怪だからセーフ
いや、妖怪な時点でアウトかw

| モグラ | 2013/01/17 15:47 | URL | ≫ EDIT

正樹にも妖怪の血は確実に流れていたのか。これから、さらに無双する期待をわいてきた

| | 2013/01/17 16:24 | URL |

断頭の主人公が病んでない…だと!!

| アル | 2013/01/17 18:01 | URL |

この物語における整合騎士の実力がどれほどなのか気になる!

| | 2013/01/17 22:34 | URL |















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