陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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渇望 ―――シャタリング・ランブリング

推奨BGM:Et in Arcadia ego
*1推奨BGM:Thrud Walkure



 眺めている。

 空を眺めている。

 木々は全て高揚し、美しい色に庭園を染め上げている。ほとんど手が加えられていない事を考えれば、これは自然が生み出して芸術だと評しても問題はない。その美しい光景を眺め―――眺め続ける。まだ時間までは相当ある。だとしたら少しぐらい時間をかけても問題はないだろう。なぜならばこれは自分にしかできない事だ。自分にしかできないからこそ、やってのける。自分の役割を果たそう。

 だから、眺める。

 この芸術を、この夜の庭園を。

 もう、見納めになるのだろうから。

 両手で握るのは布に包まれたものだ。それを両手で抱きながら、夜空に移る星々を見る。美しい夜空だ。空気が綺麗であるここでしか見れない光景だろう。この空を当たり前のものとして生きるものは多い。それがどんな犠牲で、どんな代償を持って維持されているのか。それは知らずに多くの人間はのうのうと生きている。非常に腹立たしい事実だ。この近辺はごくわずかな例外に含まれるだろうが―――それでも事実に変わりはない。

 狂気と血涙で作り上げたこの黄昏の国。


 これを生み出す事にどれだけの悔恨があっただろうか。ここに移るまでにどれだけ涙を流し続けたのだろうか。狂気におぼれる事でしか守り続けないその心中―――悟る事は誰にもできない。その半身以外には。彼女であれば悲しみを分かち合い、心を癒せるかもしれない。が、それはないものねだりだ。到底ありえない事だ。審判の時―――怒りの日以外には。

 だから、この黄昏が穢される事はその日までないだろう―――少なくとも数える事すら億劫になるほどの年月先の話だ。おそらく”帰ってくる”事は永遠にありえないだろう。だからこそ、この美しい黄昏を眺め、網膜に焼き付ける。一分一秒を、この刹那を絶対に忘れたりしない。そして悲願を達成するために、これから自分が行う事を肯定する。

 と、そこで足音を感じる。聞こえる、ではなく感じる。足で進んだ時に発生する微小な大気の動きを、それを肌で感じ取り、音が辿り着く前にこの場における来訪者を察知する。もはや気配は混ざりすぎて察知する事は出来ない。だが視線を向ければ、自分と同様の存在がそこにいる事が解る。木々の陰に隠れる様に、闇の中に姿を潜ませるその姿を見る事は出来ないが、それが誰だか疑う必要はない。

「で、行っちゃうんだ」

「あぁ、やるべき事を果たす。それだけだ」

「そ」

 影の中から話しかけてくる声は若い。いや、若く感じているだけかもしれない。その本質を見抜く事は常人には無理だろう。そしてその姿を見るに堪える事も、常人には不可能な事だ。だがその理が通じるわけもなく、闇の中に紛れる”赤”を見る。

「番犬ちゃん達は正直喜ばないんじゃない? あぁ、あと貴女のお友達とか。昔から張り合ってきたんでしょ? こうやって勝手に出て行ってらそりゃあ怒られるわよぉー」

 おちゃらけている様に聞こえるが、その実際、相手の声に遊びはない。理解はあれど、隠しきれない激情が存在する。怒り。信頼。悲しみ。嫉妬。これもまさしく狂っている。狂っているとしか表現できない。ここまでの艦上を秘めながら普通に会話をする事など、常識……いや、常識外からしても無理だ。

 普通ならば。

 混ざり合った感情を全てのみ込みながら、怒りと狂気に萌える瞳を闇の中の姿は向けてきていた。それは決して非友好的な目ではない。仲間として認めているからこそみられる、本質の瞳だ。そう、これが誰か別人であれば、決してこれが怒りからくるものであると気づけないだろう。視線に耐える事が出来て、それを除けるとしても、それが狂気としてか理解できないだろう。つまり、こうやって感情を見れるのはそれが相手に対して心を許している証拠に他ならない。だが、それこそ狂気だ。

 心を許してからこそ見えてくる本当の狂気。

 狂気。

 それだけだ。

 ここは狂喜と愛で溢れている。

「彼らには彼らの役目や役割がある。彼らにできぬことは私がやるしかない。幸い、私は貴様らと違って”薄い”からな。それほど影響を受けないで済んでいる。故に今のままではだめだ。貴様にも解っているのだろう、何をすべきか。そして何を成されているか。ここが落ちるのも時間の問題だ。だとすれば―――」

「そんな事今更言われなくても解ってるわよ。やぁねぇ、ツンケン真剣な顔をしちゃって。まあ、貴女は他の皆とは違って愛しの王子様がまだ元気だものね? そりゃあ私達よりは余裕があるわよ。ねえ?」

 その言葉に、怒りをあらわにした。

 それだけでまるでこの場が異界に引きずり込まれた様な感覚が広がる。いや、実際に一つの異界が現出していたのだ。今の言葉は愚弄でしかない。生きているからそれでいいだと。何だそれは。貴様、ふざけるなよ。

「それはあのお方にも、そしてヤツに対する侮辱だぞ、貴様」

 それを聞いて闇の中の姿は笑みを浮かべた。闇の中にいて、姿は見えない筈なのに。しっかりと、歪な笑みを―――背の低い女は浮かべていた。子供、と言ってもおかしくない背の高さ。見下ろす様に視線を送るべき相手―――だが、その強さは差異でしかない。戦い合えばともに滅びる。今は、互いにそういう存在だ。

「ま、忘れてないのならいいのよ忘れてないのなら」

 正真正銘の、自分へと向けられた敵意と殺意に対して、まるで柳の葉の如く受け流すと、飄々とした態度で話しかけてくる。

「まあ、元々疑ってないんだけどね、貴女の事は。たぶん、私達の中で一番冷静に物事を見れるのって貴女ぐらいだし。それを持ち出してるのだって―――どうせ、独断じゃないんでしょ? たぶん、というか確実に貴女―――」

「それを理解していて貴様は来たのか」

 呆れたような声―――に聞こえて、その実はそうでもない。もう互いにほぼすべてを理解しあっている。違うのは自分たちが元々どちら側の者であったかであり、そして今の自分がどこに立っているかだ。彼よりか、そうではないか。それだけの違いだ。そして、縁が薄いからこそできる事がある。いや、過去に縁が薄かったからこそ、出来るのだ。だからこそ真意を汲み取り、その為の行動をとる事が出来る。

「しかし、最初は子供に見えていたのに……大きくなったものねぇ」

 その声には感慨が含まれている。互いに、誰について話しているのかを言葉にする必要はない。名前を出さずともそれは通じあっているし、此処には”敏感”な番犬がいる。不用意に名前を出せば、その瞬間に反応してくるだろう。今はむしろ静かに出て行った方がいい―――気づかれている可能性が大きいが。だからこそ、答えずに歩き出す。見上げれば空は段々と明るくなり、地平線の向こう側では白んできた空が見えてくる。段々と地平線より変わりつつある夜空の姿。

 この終わった世界で唯一変わり続けるもの。

 人も。大地も。季節も。その全てに変化がない。彼に意識がない限りは変えられない。何とも終わった世界。その中で唯一変わって行くもの。それを純粋に美しく感じる。それは他の者達も同様だろう。

 命などないこの大地で、唯一生きているものを美しいと感じるこの感性は間違っていないはずだ―――。

 歩き出す。

「行くのね?」

 そう言って闇の中の姿が、闇の中を歩く。その姿は止まらず、ついてくる様子だった。

「時が無くなろうとも、それが止まる訳ではあるまい」

「それもそうね」

「で、貴様は来るのか」

「頭の中をぐちゅぐちゅ、ってやれば行けなくもないのよ。距離的にはそこまではなれらる訳じゃないけど。まあ、アンタと違ってすっごい嫌な気分になるけどね。えぇ、もうなんか内臓とかゲロりたくなるほどにね」

「言ってくれるな」

 そう言って歩き出す。布がめくれ、その隙間から―――黒色の鉄が見えた。



                           ◆


 ごぽっ、と音を立てて口から大量の空気を吐き出した。理由は解っている。今見た光景だ。見た事のない光景に、聞いたことのない声に、知らない人。何故そんな光景が見えたのかはわからない。だがこんな状況で見たのだ。それが偶然ではなく、目の前の物体に触れたからこそ発生した現象であることを疑う必要はない。

 黒く、真直ぐに伸び、分厚く、そして鋭い。一目見ればそれが長い年月を経て風化しつつも、その姿を失わず、朽ちずにあったことが解る。触れたはずの物体からは手を放している。息苦しさにも拘らず、それが持つ魔性に魅惑され、見続けるしかなかった。それは幾度となくキリトによって振るわれる事を見た魔剣だ。

 黒の魔剣。黒の大太刀。

 兄を通しキリトへと継承されたはずの業物が湖底に突き刺さっていた。間違いなく、それは羅刹と呼ばれた剣鬼の剣だ。話に何度も聞いているし、SAO内の事を知るし本……兄が物語に出てくるたびに語られた黒い剣だ。何十、何百、何千という血を啜った魔剣。

 それが目の前にある。

 武器だ。

 そう武器だ。得物だ。力だ。敵を殺す為の道具だ。これを握れば、おれにも昔の兄の様な、そし今のキリトの様な超人的な力が、能力が宿る。そうすればあの醜い化け物を問答無用で殺す事が出来る。暴力こそが力の本質であり、そして渇望に対して与えられる能力だ。何事も渇望より生まれるのは消費と浪費と破滅だ。そう、人間という主は生まれた瞬間から消費する事しかできない生物なのだ。生産できるのは事故に関する者のみ―――それが新たな何かを生み出す事は出来ない。

 だから、暴力は人間が渇望から、欲望から生み出せるハイエンドだ。

 所詮何かをしたい、何かをする、誰かの為に。それらは綺麗ごとでしかない。そう、きれいごとなんだ。人間の本質とは力への渇望、自己の確立、そして自己愛でしかない。だからこそ、

 手を再び魔剣へと伸ばす。

「―――」

 力、力だ。力が欲しい。敵に屈しない力が。敵を斬り殺す力が。塵を圧倒的力で振り回し、斬り殺し、そして滅尽するだけの力が。力だ。そう、この世の真理であり、そして真実。

 なにを言ったところで、全ては力であり―――己の為。

 黒の魔剣に触れる。


                           ◆


「―――愛はきれいごとでは済まない。だが、いや、だからこそ美しい。そして、それに守るだけの価値を見出せるのだ。愛しい愛しい輝きよ。俺は心の底から君たちの輝きを愛している。あぁ、抱きしめたい。手を取って一緒に歩みたい。君たちに降りかかる火の粉を全て振り払ってあげたい。だがそれはとても邪悪な事なのだろう。とてもだが許される事ではないのだろう。あぁ、口惜しい。そして残念だ。愛している。信じている。君たちの中に眠る可能性を、私は誰よりも愛している。だから負けないでくれ。染まらないでくれ。穢される君たちを見るのは心が痛む。あぁ、許さない許さない許さないぞ。あぁ―――負けないで。愛しているよ。誰よりも、君の可能性を―――」



                           ◆

*1


 湖の中から飛び出す姿がある。強引の強力な一撃を打ち込み、ウガチとの間に距離を作る。だがそうやって生み出す距離、体は疲弊と痛みを感じている。全身には傷が多く存在し、そして自分の不利を証明している。心意を練ろうにも中々練れない。まるで何か、心に巣食う何かが本当の心を邪魔しているかのように、真の実力を発揮せずにいた。

 その時、横に着地する様に現れた存在を見て驚く。

 姿に変わりはない。正樹だ。だがその手に握られているものは、

「―――待たせたね」

 黒く、大太刀。それは俺が前まで握っていたもので、もう持っていなかったはずのものだ。

「悪いね……なんか今の俺、負ける気がしないんだ」

 どこまで澄んだ瞳でウガチを見据える正樹はそう言った。

 奇しくも―――大太刀を構えるその姿は、幻想の城において、剣鬼がとっていた構えと全く同じものだった。
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| 断頭の剣鬼 | 11:43 | comments:12 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

「奇しくも―――大太刀を構えるその姿は、幻想の城において、剣鬼がとっていた構えと全く同じものだった。」

読み終わって涙してる。

| zane | 2013/01/16 12:34 | URL |

ラストで感動的な場面が…
しかし、正樹が三代目にw

| | 2013/01/16 15:25 | URL | ≫ EDIT

あぁ…妖怪が、また1人増えるのか……

| | 2013/01/16 16:48 | URL |

これ二人とも天狗の影響受けてね?

| | 2013/01/16 17:14 | URL |

妖怪の増殖とか、天狗道の汚染とか、マキナとか黄昏の海辺とかイロイロあるが。とりあえず、
トウカ復活ktkr!

| 空 | 2013/01/16 17:30 | URL |

祝! 首切り妖怪三代目就任!!
皆の者、各自供物(首)を捧げよう(笑)

しかし、ああしかし、あの人はやっぱり黄昏から離れるのかぁ――
生き様が粋すぎて画面が滲む°・(ノД`)・°・
にしても、番犬ってこの場合彼女に対するベア子さん? それともAAでホモさがupしているらしいマッキーなんだろうか? 個人的にすごく気になります(≧∀≦)

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2013/01/16 17:54 | URL | ≫ EDIT

どいつもこいつも人間やめやがって……(褒め言葉)

| | 2013/01/16 19:14 | URL |

おめでとう正樹!!
君も、妖怪首置いてけになるとは…。
さすが兄弟www

| とっつき | 2013/01/16 19:43 | URL |

お前らなぁ、正樹は妖怪の弟だぞ?



――――最初から人間辞めてたに決まってんだろうが!

| | 2013/01/16 20:01 | URL | ≫ EDIT

こうして妖怪伝説は受け継がれていくのだ。
永遠に……。

| 裸エプロン閣下 | 2013/01/16 21:05 | URL |

更新お疲れ様です。

あー、やっぱりこうなったか。
妖怪の系譜ェェ・・・・・・。

| 断章の接合者 | 2013/01/17 07:46 | URL | ≫ EDIT

妖怪の三代目を受け継いだか・・・・・( ̄◇ ̄;)

| ガリバー | 2013/01/19 03:00 | URL |















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