陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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追走 ―――ディープ・ウォーター

推奨BGM:Deus Vult


 蛮刀に心の力を通す。そして力を通すのと同時に、不思議な驚きを得る。武器は自分の体の延長線上に存在するものだと俺は認識している。自分が一流だかどうかはわからないが、握って、振るえば武器の事は大体わかる。だからこそ、見た目とは裏腹に、この得物が良く整備されており、それでいて特別何か施されているわけでもないという事が解る。純粋に、この武器は大事にされている。何故だか妙にその事実に嬉しくなる半面、

 神経は、頭は、凍らせるかのように冷静になって行く。横で槍を握る正樹は―――正直期待できない。存在としては頼りにしている。だが、戦闘となれば期待できるかどうか、と言われてしまえ場駄目だ。俺の様に心意が使えるわけではない。ゴブリン……ウガチの筋力を見る限り、一撃で槍を折られても違和感はない。それでも、

 頼るしかない。

「これ、無理じゃないかなぁ……」

「あ、やっぱり?」


 目の前のボス倒せたところで周りが襲ってこないとは限らない。その事実には思い至っているが、それを口にし、対応策を検討する前に進み出る相手がいる。

 ウガチだ。

 緑色の皮膚を持った巨体が、姿に似合わない速度で一気に接近してくる。一瞬の意識の空白を突いてくる動き。まさに予想外といった動きだった。

「安心しろ、勝てたら返してやる。勝てたらな」

 そう言って振り下ろされる刃を―――受けたのは正樹だった。その一瞬で庇いに入り、槍で攻撃を受けた正樹は後ろへと倒れながら、槍を折られていた。武器を失いながらも倒れる正樹は、ウガチに向かって物を投げていた。

 それは細かい石礫だった。前投げたものよりももっと小さく、細かいもの。砂利、と呼べるレベルのものだ。倒れながら、受け身を取ることなくそれを正樹は投げていた。ウガチの顔へ。反射的に目を閉じたウガチは動きを止めている。動きを止めなかったにしろも目を開けていないという事は対応できないという事だ。

「俺、遊佐先輩に喧嘩殺法だけは習ったんだよね。嫌な思い出だけど」

 倒れつつ、正樹はもう一つ行動をとった。

 それは―――金的だった。

 鎧を装備しているとはいえ、股の間は動きやすいように、布地がある。そこに迷うことなく繰り出された蹴りはつま先からウガチの股の間へ突き刺さる。

 突き刺さった。

 思わず股を閉めた。

「ひぃ」

「た、隊長っ!」

「マサキ、それは……!」

 それに反応したのは俺だけではなく、ユージオよ周りを囲む様に見守っている兵士達もそうだった。正樹が躊躇なく繰り出した金的に対して恐怖を感じていた。俺も、正樹のまさかの行動に思わず股間を抑えそうになったが―――こんな外道的手段は”ふつう”はそのまま実行できないところだ。それがALO式や、中世式の戦いを知っていれば尚更だ。正樹の適応力には舌を巻くしかない。もしかして、俺以上にここが現実だと認識しているかもしれない。なぜなら、

 投石も金的も、どちらも仮想世界で出来る戦闘方法ではなく、現実だからこそ行える戦い方だからだ。それはおそらく遊佐司狼という、根本からして思考体形の違う人物に連れ回され、そしてそれ見てしまったから覚えてしまった技術かもしれないが―――今はそれが頼もしい。

 金的を食らって目を括目させるように開けたウガチに向かって蛮刀を振るう。卑怯に思われるかもしれないが、これぐらいやらないと純粋な力の差というものは埋まらない。いや、純然たるtからの差というものは何をしても埋まらない。少なくとも金的は通じたのだ。

 なら倒せるだろう。

 刃を振り下ろす。

 それは防御に入った刃ん依よって振り上げられ、地面に受け身を取る様に倒れた正樹をウガチが蹴り飛ばした。

「あっ、ぐっ」

 容赦のない蹴りは問答無用で正樹を吹き飛ばし、肺から空気を吐き出しつつ体を一メートルほどの高さまで蹴り上げる。フリーであればこのまま追撃が入るのだろうが、俺がそれを許すはずもない。迷わず心意を通した蛮刀振るう。

「っ、っは! っあっ!」

「ほう、これは中々に―――」

 全身に力を通し、刃に力を通し、細かく、素早い連撃を繰り出してウガチの動きを潰しにかかる。そう、心意での強化と言えど限度はある。今の俺には聖遺物もなければ超人的な身体能力の上昇も、再生能力もない。あるのは幾度もの激戦を勝ち抜いた経験と技術。それが今のキリトを構成するすべて。それを持って全力で攻撃する。

 見て理解する。

 ウガチの体、筋肉の構成はかなりしっかりとしている。その図体に相応しいだけの筋肉が詰まっている―――故に細かい動きは筋肉が阻害してできないのだ。仮想世界でなら意味のない情報堕が、此処が現実―――現実と同じ様な戦いができるのなら、明らかな隙だ。

「シッ!」

 刃を細かく動かし、ウガチに反撃させにくいように動く。事実、ウガチからの反撃は鈍い。その体に刃が届く事はまだないが、それでも少しずつ反撃が遅れているのが解る。だがこのままでは千日手だ。だからこそ、

「打破する何かが必要、ってことだよな」

 蹴りから復帰していた正樹がウガチの背後へと回り込む。その手には俺で、半分ほどの長さとなった槍の穂先が握られていた。槍の穂先が長い事から、それは一種のダガーとも言える状態になっている。それを両手で逆手に握りつつ、ウガチの背後から振り下ろした。突き刺す様に、一切の躊躇をすることなく、首に狙ってそれを正樹は振り下ろした。

 鮮血が舞う。

 首、とはいかぬも肩口に突き刺さった穂先は深々とウガチの体に突き刺さった。

 とった!

 そう思う反面、妙な違和感を感じる。

 確かに正樹という人間は破天荒な人生を送って来ただろうし、かなり抑圧されている人生を送って来たに違いない。それでいてあの二人を身内に持っていて―――教わったことはたくさんあるだろう。だとすればその技術を使用してきてもおかしくはない。おかしくはないが、

 なんだろう。

 俺も正樹も、こんなに好戦的だったか?


                           ◆


 血の臭いを感じる。

 いや、血の中にあるのだ。血に囲まれている。嗅覚が血液の臭いしか嗅ぎ分けられない。こんな状態になると不思議とこの異形達の獣臭さは感じられない。ただただ醜い、そして生理的な拒否反応。それだけが自分に存在している。

 手元を見れば両手で握った穂先が深々とウガチに突き刺さっている。習いたくもなかった事だが、仲間を囮にしたり、奇策を弄したり、利用しながら戦うのは嫌でも覚えてしまった。見ていれば覚えてしまうのだ。何度も犠牲になっているのは自分だし。だから、これで決着だ。どこからどう見ても致命傷だ。助かるわけがない。なのに、

「これで終わりか?」

 穂先を突き刺している俺の手首をウガチは掴んだ。

 右手、ではなく握力が消えているはずの左手で。

 ありえない。

 刃の突き刺さり方からして筋肉を断ち切っているはずなのだ。なのに目の前の怪物はそれを無視して左腕を動かしている。この世界が現実とほぼ同じロジックで動いている以上、筋肉の制限は必然的に受けるのだ。物理的に不可能な現象は、現実にはないロジックでしか超越できない。だから、目の前の怪物が何か、自分には理解できないロジックを持っているには違いない。

「発想は悪くない―――だが未熟だな」

 穂先を突き刺したまま、掴まれた手首を中心に、体が引っ張られる。

「なっ!?」

 急速に動く視界の中で見えるのはキリトだ。そして気づく。今俺は敵に、ウガチに手首を掴まれて体を武器の様に振り回されているのだと。得物を振りかぶっていたキリトが武器の動きを止めて、

 衝突する。

「ガッ」

「グッ」

 キリトが軽く後ろへと衝撃で押し込まれ―――反動で戻ってきた俺の体をウガチが大地へと叩きつける。

「があぁあ―――!」

「正樹!」

 口から出せるのは全身の骨を砕くような痛みに対する悲鳴だった。あまりにもリアルで、そして感じた事のない、神経をぐちゃぐちゃにする様な痛みを感じた。内臓を揺さぶられ、昨晩食べたものを吐き出しそうな気になってくるが―――それを堪える。

「どうして、友を受け止めないのか? ―――血管が切れるぞ」

 再び俺の体をウガチが振るう。ウガチが言った通りに、一振り一振りガ凄まじい膂力で行われるこれは、俺の体内の血液の循環を阻害し、圧迫し、そして切らせる。事実、既にダメージを受けてすりむいていた頬が切れて、そこから血が流れている。

「クソッ!!」

 キリトが蛮刀を使わずに防御に入り、俺の体とキリトの体が衝突する。俺の体を心配してか、蛮刀を使わない防御ではキリトへのダメージがデカい。キリトは再びダメージを受けて後退し―――俺はおもちゃの様に振るわれる。が、その状況に甘んじる自分でもない。

「ッァ!」

 振るわれながらも自由な両足で蹴りを顔面に叩き込む。だが蹴りを叩き込んだところで答える様子がない。むしろ笑みを浮かべている。

「あぁ、実にいかんな……楽しくなってきている。長く此方側に居すぎた、という事だろう」

 蹴りを食らって意味不明な事を言ったウガチは唐突に俺を解放し、体をキリトに目がけて投げつける。迷わず叫んだ。

「避けて戦うんだ!」

「おうっ!」

 キリトは答えてくれた。俺を信頼して、俺を受け止めずに避けてくれた。それによってキリトは致命的な隙を生み出さずに済んだ。現状、打破できるような攻撃力を持っているのキリトだけなのだから、この選択肢は間違っていないはずだ。堕が足りない。そう、足りない。そう、足りないんだ。もっと力が必要だ。もっと力だ。敵なんて一瞬で粉砕する事が出来る様な力が。枯れ木の様に厄災を振り払える力が。

 塵を蹴散らすだけの力が。


                           ◆


                  「■■■■■■■■■■■■」


                           ◆


 ―――体が冷えた。

 次の瞬間感じたのは冷水だった。冷たい、ではなく寒い。寒い。体のそこまでが冷え込む様な寒さだ。まるで体が凍って行くようにも感じる。そうだ、そう言えばこの洞窟の中には湖があったのだ。ウガチが投げ、そしてキリトが避けた先。そこには湖があったのだろう。ウガチに強く握られていた手首は赤くはれており、寒い湖の水を得て、冷えてきている。だが同時に、戦闘によってできた傷口にもし見て、かなり痛い思いもしている。

 何事も一長一短だな、と思いつつも、

 体は力なく沈んで行く。

「―――」

 口を開こうとして、自分が沈んでいる事を思い出す。寒い。あぁ、寒い。

 ……なにをやってるんだろう。

 今の状況を考えるのであれば、今すぐ泳いで水面を目指すべきなのに、全身に力が入らない。まるで水底にへと引きずりこまれているかのように。水妖に引き込まれているかのように、引力を持って水底へ落ちている。何故だろうか。それに抵抗したくないのは。

「―――」

 突然の水没だから息は吸い込んでいない。となれば、そう長くこの中にいられるわけでもない。その証拠に息は苦しくなってきている。キリト一人でウガチに活のは―――可能かもしれないが、かなり厳しい。だからここは俺が手伝うべきなのだろう。そうなのだろうが、何故だろう。

 何故か、沈むべきだと直感が言っている。

 だから落ちる。落ち続け、沈み続ける。全身で寒さに耐えながら、全身で寒さにおぼれながら、静かに沈む。水中の中では剣戟は響いてこない。静寂の世界がこの湖の中にはある。目を開けばここには魚が一匹もいない事が解る。もしかしたら魚が生きられない程に綺麗な水なのかもしれない。となると、少し汚してしまったのだろうか。

 水底についた。

 そこから見上げる光景は美しい。光の反射を受けて水面が、洞窟が、美しく輝いている。

 その光を受けつつ、

 水底で黒く光る物体を見つける。

 それに見覚えは―――ある。

 だからこそ―――反射的に手を伸ばし―――そして、

 意識はそこで途絶えた。
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| 断頭の剣鬼 | 17:23 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

更新お疲れさまです。

マサキィーィィイイ!?

これは、あれですか。
サイアス、ユウキ、に続く第三代・妖怪首おいてけの就任フラグですかぁあああ!?

| 断章の接合者 | 2013/01/15 18:03 | URL | ≫ EDIT















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