陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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追走 ―――イン・ザ・ダーク

推奨BGM:Schutz Staffe
*2推奨BGM:Deus Vult


 光が灯る。同時に洞窟の広さは復活し、自分の状況が最悪に位置する事が理解できる。

「ユージオ!」

「うっ……くっ……」

 その名を叫んだのは俺でも正樹でもない。口が自由になっているセルカだ。つまりユージオは一定の成果を上げることに成功しているだがそこまでだ。セルカの猿轡は外され、両手足を縛っていた縄も切れている。だがあそこまでだ。セルカは肌の黒い、ダークエルフの様な種族のアーチャーに抑え込まれ、そしてユージオ自身は―――ゴブリンの様な種族に頭を踏みつけられ、身動きが取れない状態にあった。その状況に対しセルカは悲痛な叫びをあげ、たき火の位置にいる俺と正樹は黙って状況を見る。

 俺と正樹はこの広間の反対側にいる。そしてユージオ達がいるのは中央部分だ。身体能力が現実レベルへと落ちている今、俺と正樹、走れば早いのは背が俺よりも高い正樹だ。足が長い分、同じ速度で走れるとしたらあっちの方が早い―――俺よりも体を使った人生を送っているようだし。

 それだけならばまだやりようがあった。

 だが改め広間を見渡せば、隙がない事に気づく。入り口に四体、出口に四体。体の大きいトロールと、小回りが利きそうなゴブリンと、そして遠距離で攻撃の出来る弓もちのダークエルフ。多分種族があっているかどうかはわからないが、見る分にはそんな感じの姿の敵対者が入り口と出口を固めている。そして槍を装備した歩兵がぐるり、とキャンプを囲んでいる。そう、隙がない。知性がない、理性がない、汚い。教会の教義として教えられてる闇の国の兵士達とはだいぶかけ離れている。理性があるし、理解力は高く、何より技術力が高い。


 ―――詰んだ。戦えばまだ活路があるのだろうが、その場合はセルカとユージオの身の安全を確保できない。あの二人の無事をどうにか確保できるまでは、何もできない。故に、完全な詰みだ。これ以上は動きようがないのだ。

 何時でも動きだせるように体勢を変えようとした瞬間、俺が何かを言える前に正樹が動き出していた。その動きはシンプルに、両手を頭の後ろへと動かすものだった。

「まいった。ストップ。泊まろう。待て、話せばわかる。Lets talk。降参、降参ですよー。ほら、文明の時代に生きた知能者として話し合いましょうよ? ね? ほら、無防備な一般人ですよー」

 素質は確実にあったはずだ―――司狼レベルに狂ったかコイツ。


                           ◆


「―――ほう」

 そう言って声を漏らすのはユージオを踏むゴブリンだ。鎧姿に腰に差している蛮刀。その醜い姿からは想像の出来ない知性を感じさせる声だった。たった一言。たった一言でこの場を支配し、生殺を握っているのが彼だと俺達に気づかせた。この男には強者としての気配、そして黒円卓の上位に立つ者、指揮する者にある特有の”支配者”の雰囲気というべきものが存在していた。間違いなくこの男がこの舞台の指揮官だ。正樹の一言がこの存在の興味を引いたのには間違いない。問題は、

 何故だ。

「……」

 黙って正樹の方を見る。背後から槍を、そして弓を向けられているが、その表情には余裕がある。いや、余裕があるように見えているだけだ。実際の所はどうなのかは解らない。正樹があの世界で一番関わりたくない男のトップスリーの内、二人と長い時を過ごしているのは解る。そのうち、片方でもいいからそいつらの交渉術を覚えていたら―――確実にアウトだ。いや、待て。こいつはなかなか頭のいい頭脳派のキャラだ。

 だとしたら期待できるのか!?

 自分の中でいろいろ思考していると、ゴブリンの指揮官が口を開いた。

「―――貴様、何故戦わない」

 それがゴブリンの言った言葉だった。何故戦わないのか。それは正樹、そして俺へと向けられた言葉だった。ユージオ、そしてセルカが抑えられたこの状況に対する言葉だったが、何を言っているのだろうか。

「人質を取られたら動けなくなるのは万国共有の認識だと俺は思ってたんだけどな」

 正樹の言葉にゴブリンは少しだけ、驚いたような表情を浮かべ、そして俺へと視線を向けてくる。その視線は何かを探っているようで、そして何かを見極めようとしているかのようにも思えた。視線も此方に向けられたため、軽く肩を揺らす。

「むしろ前に進む様だったら狂人」

 その言葉に、―――ゴブリンは笑った。こらえきれぬ、と言った様子で笑い出した。大きな声で、洞窟全体に響くような声で、笑いはじめていた。腹を押さえながら、そしてユージオから足を退ける事無く、笑っていた。異様にも思える光景に俺も正樹も、ユージオもセルカも黙り込んでいた。だがこの場の緊張感は笑い声とは裏腹に引き締まっていた。理解する。

 今、火に牧を加えたのだ。

 あのゴブリンの中で燃える炎に、燃料を投下した。

 そして、再び口が開かれる。

「笑えんな」

 笑い声は消え、残ったのは底冷えのする視線だった。まるで此方を見透かし、そして何かを理解しているようで、探っている様な、良く解らない視線だ。ただ事実として、この相手は好ましくない。いや、この相手は此方を好ましくないと言う事を認識している。突き刺すような視線を受けながらも、正樹は動じない姿勢を見せている―――少なくとも、表面上は。

 ―――殺るか?

 密かに心意を使う準備を進めておく。だが、心意を使うのはあくまでも最終手段だ。戦闘に入って無事でいられる保証はないし、俺が無事だとしてもユージオとセルカがどうなるかは解らない。それに心意というカードを晒す以上、必然的にそれに付きまとう説明を入れる必要がある。それをするとなると―――色々と面倒な事態になる。必然的にルーリッドから外れる必要がある。

 冷たい汗が背中を伝う……気がした。

「……一応聞いておく得k度、そこの二人を返してもらえないかな? 元々そっちの子を連れ帰る為にここに来たんだし」

 答えは早かった。

「返すと思っているのか?」

 ま、だよなあ、と小さくつぶやき、これはいよいよ心意使って戦うべきか、等と想い、行動に移し始める。イメージ。想像から創造を始める。まずイメージするものは―――

「―――だが、答え如何によっては解放もあり得る」

「……―――隊長」

「……」

 それを聞いて集中力が霧散する。予想外の言葉に俺は驚き、そして正樹は笑みを浮かべる。うん、と小さくうなずくのが見え、

「だって俺達に対して興味を持ってる、からね」

 隊長と呼ばれたゴブリンは言葉で返答を返さず、少しだけ強くユージオを踏みつけた。動けないユージオからうめき声が漏れる。セルカも何か言葉を言おうとし―――黙る。今の状況、自分の居場所がない……介入する場所がないと言う事を、悟っているのだろう。聡い子だ。だが、黙っても喋っても状況は好転しない様に思える。

「貴様ら、勘違いをしているな?」

 嗜虐的な笑みを隊長格のゴブリンは浮かべた。

「貴様ら肉塊を踏み潰そうと俺の気は晴れん、正直どうでもいい。糞に塗れた肉塊がまた一つ減った。それだけの認識だ」

 その言葉に俺と正樹は汗を浮かべ、ユージオは痛みから声を上げる。

「で、答えてもらおうか―――」

 敵は俺達を見て、言う。

「何なんだ、貴様らは」


                           ◆


「何なんだ、って言われても―――」

「貴様ら二人だ。この糞二つは”見ればわかる”が、お前ら二つはなんだ」

 ゴブリンは俺達を見て言う。

「何故貴様らは人の形をしているのだ」

「はあ?」

 流石の俺でもその言葉には首をかしげるしかなかった。なぜ人の形をしているのか。そんな事を問われても、答えるべき言葉がない。だって、

「人間が人間の形をしている事に意味を問われたって……」

 そう答えるしか答えはないのだ。だって、俺達は人間なのだ。どんな苦境でも互いを鼓舞し、助け合い、理不尽に立ち向かう。そんな人間なのだ。そう、俺達は人間なのだ。こうやって生まれてきた。だからその事に意味を問われたって、俺達に出来る事はない。肩を振って、人間だから、としか答えるすべがない。

「だって俺達人間だし、なあ?」

「あぁ、人間だしな」

 ゴブリンは、その答えに頷きなるほど、と答えた。今の言葉に何か納得させるようなものがあったらしい。足をユージオから退ける。

「あ」

 解放されたユージオにセルカが駆け寄る。今まで踏みつけられていたせいか、激しく咳き込みながら顔を抑えている。駆け寄ったセルカがユージオを抱きしめているが、それを無視してゴブリンは腰から蛮刀を抜いた。それを振り上げ、

「さて、貴様らは確か人間だったのだな」

 激しく嫌な予感がする。片目をゴブリンに対して向けながらも、もう片目で必死に状況を窺う。

「私も”人間”という生き物に対してはある程度の話を聞かされ―――理想像というものを持っている。いや、持っている、のではなく共有しているのだろうか。もしくは教えられたものだろう。そして私の知る”人間”という生き物は理不尽に抗い、戦うそうだ」

 視線の先で矢を見つける。疾走している間、闇を裂いて疾走した矢だ。それが直ぐ傍にあつらえた様に落ちている。これはもはや神が使えという啓示違いないだろう。いや、待て。神と言えばロクなのがいない。故にこれは確実に悪魔か何かの啓示だ。少なくとも神よりは信用できる。

「―――どうする」

 そう言った途端、刃が振り下ろされる。予想通り振り下ろされた刃に向かって、素早いステップで俺は前へ進みながら、

*2

 矢を蹴った。

 矢じりの部分を、力を込め、蹴る。必要なのは集中力と手加減。まっすぐ、狙ったところへと、おれない様に狙って蹴った矢はまっすぐ飛翔し、ゴブリン隊長の顔へと向かって飛翔する。

 迷うことなくゴブリンの隊長はその矢を刃で弾いた。それはまるでこう来るのを予想していたかのような動きだ。いや、予想はついていたのかもしれない。こっちが突飛綱行動でもしない限り、この相手は対処してくるだろう。だからこそ、

「シッ」

 次の行動で相手は避けた。

 空間を飛翔したのは―――石礫だった。投擲したのが俺以外の人間だとすると、それを成し得る人物は一人しかいない。即ち正樹。前方へと向かって全力でダッシュしながら見る視線の中で、正樹は片手でイシツブテを投擲しつつ、背後へと向けてもう片手でイシツブテを投げていた。持っている量から、ここに来る途中で補充していたに違いない……抜け目がない。

「セルカ、ユージオ、走れ!」

「出入り口を固めろ」

 言われたとおりに敵が動き、そしてゴブリン足を持ち上げる。今度は手加減することなくセルカとユージオを踏み潰すつもりだ。だがその動きよりも早く俺がゴブリンにまで追いつく。もはや迷う時間などない。

 ゴブリンによって弾かれ、打ちあがった矢が落ちてくる。

 それを掴みつつ、ゴブリンに接近する。

「―――心意……!」

 迷うことンくキーワードを口に、矢を心の力でコーティングし、その全てを強化する。シャフト部分を握り、そして脳内からナイフやダガーの扱い方を思い出す。長らく使っていない種別の武器だが、問題はない。記憶から引き出したうごきに体は追いつき、完全とはいかぬもトレースする。

 矢の矢じりと、ゴブリンの握る刃がぶつかり合う。火花が舞い、一方的に弾かれたのは俺だけだった。技術がどうとかではなく、現実の体を精巧にトレースしたこの体では筋力が足りなさすぎる。これがALOのキリトであれば、エクスカリバー二刀流で迷わず塵にできたものだが、無いものねだりは仕方がない。

 ”予想以上”に自由がいかないこの世界ではこの程度の筋力が限界だ。このままであれば、

「まだまだぁ……!」

 心意の力を得物だけではなく、体に通す。再び刃が振るわれる。それに合わせてさらに早く矢を振るう。再び刃と矢がぶつかり合い、弾かれる。だが今度の衝撃は先ほどよりも大きく、弾かれる距離は短い。だがミシッ、と音を立てて矢に罅が走る。あと一合。あと一回。それでこの武器は壊れる。そして、

 壊れた。

 勝負にすらなっていない。矢は完全に砕け、刃は依然、変わることなく此方へと向かって振るわれる。だからこそ冷静になる。そう、キリトという存在は一体何に対して一番強いのか。……対応だ。そう、対応力。反射神経。後者に関してはユウキにお株を奪われたが、この一点に関しては自信がある。SAOでも、ALOでも、GGOでも、怒涛の展開に最後までついて行った自信と実績がある。だから、今回もそうだ。

 息を短く吐き出し、今の身体能力、筋力、体力、……それらすべてを最大限とし、発揮する。

 振り下ろされる刃を前に―――踏み込む。そう、踏み込むんだ。何度もやってきた事だ。ほとんど勝手に体が動く。もう半年以上前の出来事だ。

 生死を分けた戦いなんて。

 ここまで来て―――ようやく闘争本能が蘇る。

 殺人用の技術が再び、目覚める。

 踏み込みから片腕を掴む。それに軽い力を持って流れを変え、真直ぐ振り下ろされるはずだった刃を逸らす。完全にではない。が、肩を浅く咲き、その横を通過させるには十分すぎる肩口から軽く地が流れ、赤い液体が腕を伝う。この世界で見る初めての現象にあるのは驚き―――ではなく納得で、

 あぁ、またか。

 またロクでもない事に巻き込まれた認識で諦めで、

 信頼だ。

「これだけやれば―――できるだろ?」

 振り下ろされた刃、それを掴む腕を脇の下にとす様に積んだ瞬間、信頼にこたえる様に投擲されるものがあった。それは寸分抜く類もなく刃を握る手首に連続で衝突し、衝撃を腕に伝える。そしてそれに反応する様に手は解放され―――刃が落ちる。素早くそれを回収し、振るう。

 それは避けられる。後ろへと下がるような動きで、あっさりと。

 だが、

「ここの守備を任されているウガチだ」

 負けるつもりはないし、その気もしない。後ろから部下に投げさせた剣を握り、醜い姿の化け物は此方を試す様な視線を送ってきている。

「キリト、ルーリッドのキリトだ」

 横に槍を持った正樹が追いついてくる。武器を得た、という事は此方を手伝っていない間に奪ったという事なのだろうか。何気にコイツ多芸じゃないか、と思いつつ、横に並ばせ、

「―――正樹、ただの正樹だ」

 武器を手に同時に前に出た。

 ―――何か、大事な事を見逃している様な気をしながら。




そんなわけでお久しぶりです。また明日から毎日更新をしますぜ。大変お待たせしました。気が付いた。そして思い出した。てんぞーは追いつめられてからが本番だと……!
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| 断頭の剣鬼 | 14:02 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

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ウガチさんかっけえ!

| | 2013/01/14 23:32 | URL |















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