陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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追走 ―――ランニング・アフター

推奨BGM:Mors Certa


 全力で疾走し続けて半刻ほど。目指していた世界の果てはあまりにも近すぎた。ルーリッドから世界の果てにある山脈、いや、人類の安全圏とそれを分ける山脈である果ての山脈。そこに到達するにはあまりにも近すぎる距離である。子供の時……テストダイブの時、ここでキリトとして生活していた時にも思った事だが、近い。あまりにも近すぎる。

「世界の果てがこんなにも近いのか……?」

「うん。子供の時、此処へ来たときに、僕もそう思ったよ」

 ユージオの顔の色は少しだが良くなっていた。飛び出した時は青ざめていたが、こうやって体を動かしたぶん、少しはマシになってきているのかもしれない。体を動かすと最悪の可能性を頭から追い出す事が出来る、って言うのは良くアr話で、アスナの件の時に既に実証済みだ。まあ、俺の場合は命がけでそれどころじゃなかったという点が凄まじくあるのだが。

「えーと、確か果ての山脈って場所が人類の生存権と闇の王国を分けている天然のボーダーラインなんだよな?」

 正樹の言葉にユージオが頷く。


「うん。闇の王国には多くの異形や怪物たちが住んでいるんだけど―――彼らは何か理由があるのか、ほとんど出てこないんだ。ただ侵入者に対しては凄い神経質で、領地に入り込んだものはすかさず殺すほどに残忍で共謀な連中なんだ。偶に警備隊みたいな連中が国境……なのかな? その付近でキャンプしてたりするのが見れる、って僕は話に聞いたよ」

 それは何ともまあ、蛮族っぽいというか、実に原始的だな、とは思う。こういうケースは純粋に相手側にそれだけの理性がないのか、何かを守っているというパターンが多いと個人的な経験で思考する。まあ、純粋に”敵対者”としてのロールを与えられた存在、と考えてもいいんだが、それはそれで何か嫌な感じがする為、素直に黙っている事とする。

 入り口から覗き込む果ての山脈の洞窟は真っ暗だ。肉眼では到底奥を見る事は叶わないだろう。

「松明か何かあるか?」

「任せて」

 ユージオが草を取り出すと、咳払いをしてからその言葉を呟いた。

「システムコール! エンライト・オブジェクト!」

 純粋に驚いた。システムコールなんてコマンド式の言葉が存在していた事に。いや、記憶をたどればアリスも似た様な事をしていなかったか? 正樹が驚いた表情でユージオへと問いかけてくる。

「ユージオ、今のは……?」

「うん? あぁ、神聖術を使うための言葉だよ。意味は解らないんだけど、こうやって草を燃料に明りを灯すから、シスター・アザリヤは”光よ灯れ”って意味の言葉じゃないか、って言ってたね。これ、習得するために結構練習したんだよね……」

 おそらくスキル性みたいなシステムがあるのかもしれない。練習すればするほどスキル……この場合神聖術が使いやすくなる様な、そんな感じのシステムが。そういえばユージオにステイシスの窓―――ステータスウィンドウを教えてもらった時、それに権限などが表示されているのが見えたはずだ。……今は余計な情報だ忘れておこう。

 それよりも、

「最悪の場合を想定しておこう」

「最悪?」

「キリト、それはつまり二つのケースの事だね? 一つは闇の国住人に殺されてた場合、……そしてもう一つはアリスちゃん同様禁忌目録を破ってしまった場合だね?」

 冷静になりかけていたユージオが再び焦りだすのが目に見える。今にも飛び出しそうなユージオを抑えるためにも思考し、素早く言葉を吐き出す。

「前者に関してはどうしようもない。けど、後者ならまだ余裕はある。アリスが禁忌目録を破ってから整合騎士が来るまでには時間があったんだろ? だったらその間に村からセルカを放せば逃がすだけの時間は稼げるはず―――」

「ま、待ってよ!」

 俺の言葉をユージオが遮る。その言葉は必死さを感じる。

「無理だよ! 整合騎士から逃げるなんて、それに禁忌目録に違反する事だよ? セルカができるわけないじゃないか」

「だけどアリスちゃんには出来たんだろ?」

 そう言った正樹に視線を向ける事無く、ユージオは俯いた。何かの視線から逃れる様に、俯いたまま小さな声でつぶやく。

「アリスは……違うんだ……」

 そう言って、ユージオは歩き出した。顔を青くさせたまま。これ以上ユージオが何かを喋る事もないだろう。洞窟の中へと進む姿は逃げているようにも見えるのは不思議だ。いや、本能的にシステムから逃れられず、こんな行動に出ているのかもしれない。だが考案などというものは後から幾らでもできる。今は今しかできない事を全力でやり遂げることが重要だ。

 ……そんな風に考えてしまうのは、やはり逃げなのだろうか。


                           ◆


 ユージオが神聖術で灯した光のみを頼りに、洞窟の中を進む。位洞窟はそれだけではなく、恐ろしい程の寒気を感じる。正直な話、防寒具の一つや二つを持ってきた方がよさそうな気さえする。だがそれをするだけの時間はないし、生み出せる気もしない。だからこそ早足で、洞窟の中に潜む存在がいたとしても、それを刺激しない様に音を殺し、早足で進む。慣れた俺や正樹と違って、ユージオのそれは普通の早足だ。多少ながら音は漏れてしまう。いや、木こりという天職にある事を考えればで来てなくて当たり前なのかもしれない。

 だが、誰もが終始無言となっている。もはや否定のしようがないのだ。

 洞窟の奥から漂う悪臭を。

 強い、生理的な嫌悪感と、そして悪臭が漂ってきている。まるで獣の様な臭いだ。生々しい、そんな臭い。はっきり言っていい臭いではなく、吐き気を催すような臭いだ。そしてそれが人間などに生み出せるようには思えない。知識としてのみ知っている。こういう臭いを発する存在を。それがいったいどんな生物なのか。本来ならここで減速し、気を付けながら行くべきなのだが、更に加速したユージオを追いかけ―――洞窟の奥へと到達する。

 今にも飛び出しそうなユージオを首根っこでつかみ、後ろへと引っ張る。何か音を上げる前に口を塞ぎ、目と手の動きでユージオに黙る様に指示を出す。少し離れた位置、別の岩陰に正樹は実を隠している。ハンドシグナル……ALOでのパーティープレイ用のそれだが、それを使ってこっちに無事を知らせてくる。

 声をなるべく小さくする。

「ユージオ、なるべく音を立てるなよ……?」

「う、うん」

 ユージオの目を見る。―――理性的で、冷静な目だ。禁忌目録を敗れ、といった時とは全く違う目だ。やはり、禁忌目録という存在は一種の絶対的システムの壁なのかもしれない。だがアリスがそれを破ったと考えるのなら―――いや、余計な事を考えるのは悪いクセだ。いい加減どうにかしよう。毎回思っている事だが。

 岩陰から僅かにだが、顔を出す。本来ならハンドミラーでも使って、鏡の反射を通して状況を窺うところだが、ないものねだりは仕方がない。そうやって向こう側に見えるものは―――明りだ。

 広く、そして天井の高い空間の中央にたき火がある。そのすぐ横に縄で縛られたセルカの姿がある。直ぐに助け出したい衝動を唇を噛む事で抑え込みつつ、更に周りを観察する。たき火の周りにはセルカの姿以外にもキャンプや、馬らしき生物まで見える。馬らしき、というのはそれが四脚ではなく六脚の生物だからだ。心なしか、表情も禍々しく見える。たき火の中央にはなんかの肉、それを焼いているようでもあった。傍から見ればセルカも同じ末路を辿りそうで一層の恐怖心をくすぐられる。

 だが獣臭い臭いに交じって、漂ってくる肉の臭いは別だ。香料を使っているのか、肉の焼ける匂いに交じってハーブの匂いがしてくる。”キリト”としての生活の間、シスター・アザリヤから習った闇の国関連で、確か闇の住人は”理性の欠片も、モmラルも存在しない純粋な怪物”と教わったものだが、

「……とても理性がないようには思えないな」

 見る。

 テント……キャンプ地を中心に展開されている姿を見る。まず最初に、彼らは人と似た様な体形をしていた。一部に関しては人間と全く同じ姿、解いても過言ではない姿をしている。褐色で耳がとんがっている者、肌が緑色で醜い姿の者、巨大な体を持つ見にくい化け物……ファンタジー世界観ではおなじみのダークエルフ、ゴブリン、トロールといった種族たちだった。だが本能的に彼らが敵として理解しているのか、ン認識しているのか、生理的な嫌悪感しか彼らに感じる事は出来ない。友好的に話しかける、という選択肢は消えている。いや、セルカが掴まっている時点で友好的な接触は無理だろう。となれば、素早く接近、撹乱、そして救出が必要な事だ。だが、

 警備だろうか、それに当たっている姿の装備を確認する限り、その場限りのつぎはぎの装備ではなく、ちゃんとした装備を付けている事に違和感を感じる。金属に関して高い技術を持っているのかもしれない。出なければ一つの種族に対して、同じ装備を幾つもそろえられないはずだ。……理性がないという話は真っ赤なウソ、もしくはでまかせとして認識する。

「さしあたっての問題はこいつ等が装備を扱えるレベルでの練度が施されているかどうかだな……」

「キリトッ!」

「解ってる……解ってる……! 俺だってセルカを救いたいんだよ……」

「……っ、ごめん」

「いや、ユージオの気持ちもわかるから―――」

 いや、何が解るだ。俺が消えてからユージオはずっとセルカを見守り続けて来たに違いない。アリスを失って、セルカだけは失いたくないって思っても、その気持ちに耐えてずっとギガスシダーと孤独に格闘してきたのだ。その気持ちを解っただと? ……なんて陳腐で空虚な言葉なんだろう。だがいい、それもあとだ。

 見た所、光源はあのたき火だ。キャンプ地を見渡せば他にもたき火が複数見える。一……二……三……全部四つ。四か所だ。この四か所を”俺と正樹だけ”でどうにかしなくてはならない。正直な話、ベースとなっている身体能力はユージオの方が高いだろう。だが俺と正樹には戦闘経験という絶対的な武器がある。それのあるなしは大きな違いだ。一対一でユージオと戦えば俺達は間違いなく勝てる。身体能力などなくとも、小手先の技術と策で勝利する事は出来る。

 なにより、

 明広とかラインハルトとか、ああいうやつらに挑む様な絶望感がない。

 ―――いける。

 確信する。

 正樹に向かってハンドサインを送り、たき火を指す。意図を理解したのか、正樹が了解、と合図してくる。何時でも岩陰から飛び出せるように構えている。それを確認してから、ユージオへと向き合う。

「ユージオ、今からセルカを助け出すが……約束して欲しい事がある」

「な、なにかな?」

「これから俺と正樹でたき火を潰す。そうなると辺りが真っ暗になる。その隙にセルカを連れて逃げるんだ。このライトは一旦ここにおいて、逃げる時に拾っていくんだ。いいな、絶対戻ろうとしたり助けようとしないでくれ―――俺と正樹だけなら多分何とかなる」

「たぶんって……!」

 ユージオが何か言いたそうにするが、口を塞いで黙らせる。正直分の悪い話は百も承知だ。だができる人間とできない人間と見事に分かれているのだ。だったらできる人間が残り、出来る事を成すべきなのだ。と、そこでユージオが驚くような表情を浮かべる。

「もしかしてキリト、記憶が―――」

「振り返るなよユージオ―――!」

 ユージオに次の言葉を言わせないためにも弾丸の様に飛び出す。俺が飛び出すのと同時に準備の終わっていた正樹も飛び出る。友に一気にトップスピードに乗る。俺は真っ先にセルカの横のたき火へ―――スライディングで蹴りをかます。勢いよく燃え上がっていたたき火が肉と共に飛び―――入り口からは見えなかった湖らしき中へと落ちて消える。予想外の幸運にほくそ笑む。一瞬だけセルカと視線を合わせる。口に縄を噛ませられ、喋られない状態だ。縛られているし、自由には動けないだろう。

「ユージオを待て」

 短く、セルカにだけ聞こえる声でつぶやいた瞬間、走り出した。

 次の瞬間、頭のあった位置を矢が通っていた。

「奇襲!」

 短いが、響く声で奇襲が即座に伝えられる。光源が一つ減ったことで洞窟が暗くなり、そしてもう一段階暗くなる。おそらく正樹が成功したのだろう、だが予想外に相手方の反応が早い。混乱する隙さえ見せない。何が理性がない、だ。よく訓練されている軍隊を相手にしているような気分だ。だが、それでも、

「俺の方が早い」

 身体能力は並でも、駆けだした瞬間が早い。妨害が入る前に、一気に接近し、今度は狙ってたき火を蹴る。炎が少しだけズボンへと燃え移るが、それを気にすることなく湖へと向けて蹴りを繰り出す。勢いよく吹き飛んだ薪が宙を舞い、湖の中へと落ちてゆく。薪が比較的に水源の近くにあってよかった。ついでに炎が小規模でも良かった。燃え移った部分のズボンを千切り、それを踏んだところで―――洞窟が完全に暗くなる。

 あとはユージオがこの間にセルカを連れて逃げている事を祈るだけだ。

 金属の、軍靴が洞窟の大地を踏む音が聞こえる。

 だが、

 革靴が大地を踏む音はしない。

 光がつく。




1日休んで申し訳ありません。正直な話、昨日は色々と無理でした。
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| 断頭の剣鬼 | 14:58 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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