陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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辺境 ―――サダン・ムーヴ

推奨BGM:Mors Certa


 これが夢だと一瞬で気づいた。

 なぜならそれは幸福な夢だからだ。

 そこには俺がいる。

 そこにはユージオがいる。

 そこには―――アリスがいる。

 俺達は笑っているんだ。あの悪魔の木がある広場で。龍骨の斧を置いて、笑っているんだ。ユージオは今までにないぐらい輝かしい笑顔を浮かべ、俺は心の底からその状況をたのしい、何時まで続く様に願い、アリスはしょうがない、といった風に俺達を見ている。何時もの出来事。何時もの光景。何時もの流れだ。アリスもユージオも俺もそこにはいる。村に戻ればセルカが待っている。本当に楽しい日々だ。この木を伐り倒すだけの無意味な日々、と言ってしまえばそれでおしまいだ。俺達にこの木は伐り倒せない事は解り切っている。だってそれに挑戦した先祖たちがいる。そして彼らの成果は目に見えているのだ。

 もちろん俺達にだって夢はある。俺もユージオも木こりでとどまるつもりはない。何時かこの悪魔の木を伐り倒して、この田舎を飛び出すのだ。剣を片手に、もう片手に村長の紹介状を持って、そうやって中央の学園に入学し―――最終的には整合騎士になるのだ。どれもが憧れる、最高の騎士に。それが俺とユージオの夢だ。まあ、ユージオはたぶんそこにアリスとの結婚とか混ぜてるんじゃないかと思うけど。

 だけど、

 それも長く続かない。

 終わりとは常に唐突で、運命とは軽薄である。

 故に、我々は常に喜んで学ぶ必要がある。
Disce Libens


                           ◆


「……ッ!」

 酷い頭痛と共に目が覚める。頭が痛い。その事実に行きつくのと同時に頭を押さえ、低く唸る。

「キリト……?」

 敏感にそれを察した正樹が目を覚まし、此方の事を心配してくる。反応が早い辺り、元々眠りは浅かったのかもしれない。というよりも、早く起きれるように眠りを浅くしているのかもしれない。自分もそうだが、完全には安心できない性分の様で大変そうだ。

「キリト!」

「いや……悪い、少し頭が痛いだけだ」

「本当に? 言っておくけど今は何が起きてもおかしくない状態だぞ?」

 それも……そうだ。今は何が起きてもおかしくないのだった。だからと言ってこの頭痛は心配する程のものではない。そう、これは対価だ。思い出す為に必要な対価だ。夢がトリガーとなって、脳に悦を与えながら忘れられていた記憶を魂から呼び起こす。そう、フラクトライトとは魂。この世界は実験場であり―――もう一つの現実。STLとは魂に直接干渉する機械だ。

 何で、

「何でこんなことを忘れていたんだ……! クソッ!」

 この村で過ごした記憶が蘇る。正樹が集めてくれた最新の情報と併せて、自分の記憶が合致する。村がどのように変化してきたのか、この村がどんな場所なのか、この世界はだいたいどんな感じなのか―――それを思い出す。そしてこの村に行われた改変がどれだけ悲しく、残酷な物か理解した。なんてことはない、当たり前で、そして常識的な事だ。

「キリト、おい、本当にどうしたんだ?」

「いや、問題はない。そう、”問題”はないんだ―――」

 問題どころか色々と解決されたぐらいだ。少なくともルーリッドにはシステムコンソールがない事を確認できた。記憶のフラッシュバックか、それに伴う情報のせいか、脳が熱をまだ持っている事を感じられる。頭が熱く、痛い。だがこれは受け入れるべき痛みなのだろう。何より痛みとは生きている証だ。それにしても機能の夜は正直マズった。風呂から出た後にフォローのつもりで”件”の話をべらべらとセルカへと語ってしまった。彼女の性格を考えると……いや、今はよそう。

 と、そこで鐘の音が鳴る。ここ、ルーリッドの教会の鐘は一刻……一時間ごとに時を刻む。外の明るさからして、もうすでに起きていなくてはいけない時間だ。

「正樹、後で色々話したい事がある」

「まあ、じゃあ、それまで待つとするよ」

 理解のある隣人がいるのは本当に心強い。


                           ◆


「セルカを見ていませんか?」

「セルカを、ですか?」

「えぇ……」

 顔を洗ってから食堂ではとやってくると、困り顔のシスターがいた。そして同時に俺の予想が的中してしまった事を理解してしまった。

「セルカが……いなくなりました?」

 シスターの言いたかったことを完結させると、シスターが驚いた表情でえぇ、そうです、と答えてきた。完全に俺のミスだという事だ。奇異奥を封じられていたとはいえ、此処まで馬鹿な自分を殴ってやりたい。無駄に他人を信じてしまうのは悪い癖なのかもしれないが、

「シスター、今朝、セルカの姿を見ましたか!?」

「え、えぇ、一刻程前に手伝いの為に―――」

「ありがとうございます! 正樹、行くぞ!」

「どこにだよ?」

 急な展開ながら、俺の脳は全力で回転していた。この状況でセルカが向かう場所は二つしかなく、そしてその片方の確率が非常に大きい。だがその前に、もう一人連れ出す必要がある。

「行くんだよ、セルカを追いかけに!」

 迷うことなく教会を飛び出す。ルーリッドの姿は記憶にあるものと寸分の違いもなく……とはいかないが、その姿はほとんどそのままだった。俺がこの世界からログアウトしてから数年間、その程度では大きく変わらないという事なのだろうか。いや、たった数年で―――ユージオ達はあんなにも変わってしまった。

 自分の庭の様に知っているルーリッドを駆け、真っ先に向こうのはある家。両親は流行病で亡くしてしまった為、一人で広い家を使って生きている一人の青年。その家に到着すると同時に扉を叩く。

「おい! 起きてるんだろ! 早く扉を開けるんだ!」

「キリト! 焦ってるのは解ってるけど少し落ち着け!」

「ッ……! ユージオ!」

 声尾上げて家の主を呼ぶ。すると中から少々慌てた音がし、数秒後には普段着に着替え終わったユージオが出てくる。少し困った様子を浮かべてくるのは最近よく見る顔だ。だがそれに構っている暇はない。

「やあ、キリトにマサキ。どうした―――」

「セルカが消えた! 追いかけるぞ!」

 言った途端、ユージオの顔の色が変わる。ユージオは解っているこの村の人間はまだ”マシ”だが、比較的に自己中心的な人間が多い。セルカが、人が一人消えたり、失踪した程度で騒ぐこともないし、別段興味も示さないだろう。それよりも消えたセルカの事を愚かとして罵る事さえするだろう。許す事の出来ない事実だが、そんな連中とユージオは違う。

「本当!? どこへ行ったか見当はついてるのかい!?」

 ユージオが驚愕に表情を歪め、そして言えから飛び出し、両手を掴んでくる。

「もし、もしセルカに何かがあれば僕はアリスに合わせる顔がない……!」

 ―――やっぱり、ユージオはアリスの事を忘れていなかった。

 思い出した。俺は、あの日、整合騎士に連れ去れるアリスを見る事しかできなかった。ユージオも一歩も動けず、見送る事しかできなかった。あの時は現実の知識にフィルターを賭けられていたから、ルーリッドのキリトだから解らなかった。だけど今なら解る。自由なフラクトライトと人口フラクトライト。俺だけが禁忌目録に縛られていなかったんだ。ユージオは本質的に禁忌目録に逆らうことができない―――そんな風に生み出されているのだ、この世界の住人は。

 あの時は口汚くののしってしまった事に後悔はあるが―――。

「行くぞ!」

 それも全部後だ。全てはセルカを連れ戻してからの話だ。全てはセルカを連れ戻して、ゆっくりする時間ができてからの話だ。

 だから、

「どこに!?」

 答えた。

「北に―――果ての山脈だよ!」

 その言葉に、ユージオは顔を青ざめさせた。


                           ◆


 アリスが何故ルーリッドから離れなくてはならなくなったのか。その理由は単純で―――アリスが禁忌目録を破ったからだ。禁忌目録を俺も、そして正樹も一種のシステム的制限だと思っている。禁忌目録この世界では犯してはいけないルール―――いや、超える事の出来ない制約なのだ。禁忌目録という名で伝わり、そしてフラクトライトへと書き込まれるデータなのだろう。その表現形は別に問題ではない。だが重要なのはそれが破ろうと思って破れるものではないという事実だ。

 ユージオを見ればいい。俺が知っている人間の中で誰よりも禁忌目録から離れ”かけている”人物だと自信を持って言える。だがユージオでさえ禁忌目録が課した使命から逃れる事が出来ていない。天職という行動に縛られ、ギガスシダーとの終わる事のない格闘に身をやつしている。そう、逃れられないのだ。なのにアリスという少女はそれを成してしまったのだ。奇跡に近い現象だ。いや、奇跡そのものと言ってもいい。出来事が偶然にしろ、意志だけでシステムの枠をアリスは飛び越えたのだ。

 その為に、アリスは整合騎士にセントラルカセドラルまで連れて行かれた。もはやアリスの処分が執行されたのかを判断するすべはない。いや、ルーリッドにいる間にそれを知るすべはないと言った方が正しいだろう。そして、ユージオは確実にこうなった事の原因を自分にあると思っている。なぜなら、

 ユージオも発端の一部に関わっていたからだ。

 あの日、果ての山脈へと三人で向かった時、ユージオは気づいて口にしてしまったのだ。寒いと天命……この世界におけるライフポイントの減りが緩やかになるという事を。それを持ってアリスが運んでくる昼飯、それを保存できるようにって言い出したのが俺で、思いついたのがユージオで、呆れながらも賛成したのがアリスで、たぶん―――ユージオは俺がいなくなって、この責任はすべて自分にあるんだと思い込んでいるんだ。止める事ができなかった自分、思いついてしまった自分。アリスを止める事が出来なかった自分。それに対して激しい罪悪感を感じているのだ。

 だから、残されたアリスの妹のセルカだけは、絶対に、失わない。

 悲痛にも思える思いがユージオを全力で動かしていた。優しそうな表情の青年からは予測がつかない程にパワフルな走りを見せている。正直な話、俺も正樹も追いつくだけで精一杯で、かなりつらい。やはり毎日龍骨の斧を振るっていただけのことはあるのかもしれない。

 果ての山脈。そこへとセルカが向かった事に間違いはない。彼女はアリスに対してコンプレックスを持っている。

 しかし、

 果ての山脈とhア限りなく”あそこ”に近い。

 ―――妙な、胸騒ぎがする。




明日から大学で御座る。
出来たら執筆1日休みたい……。
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| 断頭の剣鬼 | 16:07 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

| | 2013/01/06 17:23 | |

――ちょっと待て。
気のせいか、キリキリの思考に水銀が混入してる気が――あんたこんなとこでなにしてるww

まあ、比較的マトモだった弟君もこうしてキリキリとセットである以上、順調に人から外れていくんだなと思うと物悲しく――ない、ぞ?
むしろもっと逝っちゃおうぜw

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2013/01/06 17:38 | URL | ≫ EDIT

おいおい「この世界」の記憶を音速で取り戻しやがった…
記憶消去が仕事していない!
比嘉さん、アンタの理論が早速崩壊しているぞ…

| | 2013/01/06 23:27 | URL |

キリトが妖怪だけでなく水銀に汚染されていると聞いて―――
嫁も愛=破壊と言う感染を経ているのに、もし、仮に二人の間に子がなされたら、どんな成長を遂げるんだろうと恐ろしい電波を受信した………
あ、その前に電脳娘が影響受けるのか―――やめてください(必死

| 形成(笑) | 2013/01/08 10:25 | URL | ≫ EDIT















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