陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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辺境 ―――ルッキング

推奨BGM:Burlesque


 想像以上に教会での朝というものは騒がしく、あわただしいものだった。イメージではもう少し大人しいものだと思ったが、そうでもなかった。意外とこの教会、子供たちが多かったりして、そこそこ騒がしいのだ。まずは朝の井戸の前では水の取り合いが起きて、礼拝の時間は若干穏やかで、聖句の様なものを謳い、朝食の時はほぼ戦争のような始末である。もちろん俺と正樹がここに厄介している以上、俺達も貴重な労働現なのだ。朝食の準備、後片付け、それを手伝ったところで朝の仕事……宿泊代分の働きをしたことになる。

「ま、ここら辺でいいわよ。これ以上働かれたら他の子達の仕事を取られちゃうし」

「お、そうか」

「じゃあ、ユージオとの約束があるから……また夕方に」

「……えぇ」

 セルカに自由を告げられると、体を軽く伸ばしながら教会を出る。空は忌々しい程に蒼く、そして澄んでいる。これが現実のsらではなく、魂に刻まれている情報から生み出された世界だ、と言われても到底信じられない。だが持っている情報はそれだけなのだから、その言葉を信じるほかにない。軽く欠伸を噛み殺しながら、その場から村を眺める。


 のどかな村だ。中世のイメージ通り何もない村というべきか、目立つ建築物は今使っていた教会以外には何もない。と、そこで先ほどから昨日から苦楽を共にする相棒が黙りこんでいる事に気づく。

「正樹?」

「あ、いや、悪い。少し考え込んでいた」

 この相棒はなんだかよく考え込む癖を持っているようだ。個人的にはもうチョイ頭をパーにして、楽しめる事を楽しんでいた方が得だと言わざるを得ないのだが、

「いや、口に出さなくていい。言いたい事は表情で解る。でも俺キリトみたいな脳筋属性ないから」

「おいマテ。それは暗に俺が脳筋だと言いたいのか」

「暗もなにも顔に向かって言ってるんだよ。むしろ何故否定する」

「いや、面と向かって言われたら何となく否定したくなるから……」

「……」

 何やら正樹の中で俺に対する評価が変わってきているような気もするが、今更それを気にするほど細い神経をしているわけではない。軽く村を眺めながら時を過ごしていると、村の奥から昨日俺達二人を案内してくれた人物を見つける。

 ユージオだ。

 片手にバスケットを持ち、此方へと手を揚げながらやってきている。数秒すると、教会の前に到着したユージオが朝の挨拶をしてくる。それに挨拶を返す。

「やあ、昨夜はどうだった? ちゃんと眠れたかい?」

「あぁ、おかげでぐっすり眠れたよ。寝床がないってのはかなりキツイからなぁ……」

 野宿の経験はSAOで存分にしている。正直な話、もう二度と味わいたいとは思わない。柔らかい羽毛布団を知ってしまったこの体はもはや寝袋程度では我慢できないものになってしまっている。故に、こんな風に寝場所を提供してくれた事には感謝している。

「ん? もしかしてキリト、君は何かを思い出せたのかい?」

「……あ、いや、その」

 しまった、口を滑らしたと思ったが、

「たぶんそんな気がしたんじゃない? ほら、知っている知識だけで知ったかぶるってのは良くあるじゃないか。たぶんキリトもそんな年頃なんだよ……触れてあげないで」

「後で二人で話し合おうぜ正樹」

 困った様子を浮かべてから、今のやり取りが面白かったのか、ユージオが軽く笑う。

「歩きながらでいいかな?」

 それに頷いて答えると、ユージオは楽しそうに話しかけてくる。

「それにしても君たちは仲がいいんだね。話しててずっと楽しそうにしてるよ」

 まあ、そこで知り合いであり友人だから、と答えられれば簡単な話なのだろうが、そうもいかないので適当な理由をでっちあげる事でそれを回答とする。

「まあ、波長が合うんだよ。たぶん」

「まあ、そんな感じだよな」

 苦笑しつつ歩く。そうやってユージオと歩くと、彼の存在に対してなんら一切の違和感を感じないのは驚異的だ。出会ったばかりの人物とは大抵リズム感が異なり、会話のペースや話題の取得にそれなりの苦労があるはずなのだが、不思議とユージオとの間にはそれがなかった。正樹に関しては天来の才か、そういう話題や流に合わせるのが得意らしく、楽々と追いついている。……いや、状況を考えればそんな風に鍛え上げられたとも考えられる。

 と、そこでユージオと共にパン屋へと向かう。

「基本的に僕の昼食とかは一日の給金を朝にもらって、それで使って買っているんだ……まあ、昼になる頃には冷たくなっているんだけど」

「あー……」

「うん、気にしなくていいよ。いつもお金は余ってるし、一人で食べるのも寂しいと思ってたし」

 俺達の分も購入しているユージオの姿を見て、申し訳のない気分になる。だがそこで、正樹が少し、驚く事を口にする。

「―――なあ、ユージオ。地図借りていいか?」


                           ◆


 キリトとユージオが森の中へと消えてゆく姿を目で追いながら、ユージオに貰ったパンを片手に、もう片手に地図を持つ。これが今、この世界で持っている全てだ。あとは技術的な物しかこの体には存在しない。ユージオに関してはキリトが何かを感じ取っているようだったし、キリトに任せればいいだろう。個人的にだがキリトはこういう探索や探り、交渉よりは体を動かす方が性に合っていると思う。ともあれ、ユージオからはキリトが聞きだすだろう。

 となれば、此処は分担作業だ。

 キリトが木を切っている間に、此方もそれなりに情報を掴んでおかなくてはならない。その為にワザとわかれたのだ。布にくるまれたバスケットを小脇に抱えて、村の広場までやってくると、近くにあったベンチに腰を下ろして地図を見る。

 その地図にはこの村、ルーリッドの周辺と一番近くの街までの道が描かれている。これがユージオの持っている地図の限界だ。そして次の街へ行くにも数時間は最低で必要らしい。

 どうなんだろう。走って行ったとして、暗くなる前に帰ってこれるか……?

 いや、それを考えるのはルーリッドの探索を終了してからがいいだろう。まずはこの村周辺で……システムコンソールがありそうな場所を調べることが先決だ。範囲を広げるのはその後でも十分遅くない。地図を広げてみたところ、このルーリッドの村というのは北の果てにある村らしく、直ぐ傍に山脈があるらしい。その向こう側は、

「……地図には載ってないのか」

 システム的に存在しないのか、もしくは純粋に地図に乗せられていないのか。そこは気になるところだが、キリトが自信をもってこの存在を規格外だと昨夜、主張していた。とすれば、迷うことなくこの世界は規格外なのだろう。しかし疑問に思った事は解消しておきたい。軽く周りを見渡す。が、そこには誰もいない。それもそうか、と軽く思い出す。

 この世界の住人はルールに縛られているのだった。天職という絶対外れる事の出来ないルールから。通行人を捕まえて質問する―――ALOでは普通にやっていた事は、此処では通じないのだ。軽く頭をかいてから、先ほどパンを焼いて貰ったパン屋までいく。店主が椅子に座りつつ、此方に視線を向けてくる。

「……なんだ」

 なんというか、客に魅せるような態度ではなかった。何とか笑顔を浮かべつつ、店主に質問をする。

「えーとすいません、地図を見てたら解らない事があったので……」

 言い終える前に店主が口を割り込ませる。

「―――何故俺が商売以外で他人と関わらなきゃいけないんだ」

「え?」

 予想外の言葉に驚き、何かを言い返そうとして―――店主の目に気づく。見た事のある目だ。社会見学とか言われて兄や司狼に引っ張り回された過去で、何度か見た事のある人種の目だ。

 すごく傲慢で、自己中心的―――己の事しか考えない者の目だ。

「……ありがとうございました」

 軽く頭を下げ、その場から離れる。店主があんなではパンの方も期待できないな、等と思いつつ視線を移す。辺りを見回し、他に話を聞けるような人がいないかを探す。と、そこで偶然外を歩いている人を見かける。今度こそ何かを聞き出そうと、そう思い話しかけるが―――

「―――なんで自分の事以外の事で興味を持たなきゃいけないの?」

「は?」

 少々失礼な態度で返答してしまったような気もするが、特に気にすることもなく通行人はそのまま去ってしまう。驚いた。今の人も、先ほどの店主と同じ様な目をしていた。傲慢で、それでいて自己の事しか考えてない様な人間の目だ。

「……運が悪かっただけだろ」

 自分にそう言い聞かせる。教会の中であったセルカやユージオは普通だった。だとすれば今に連続でそんな人間にあったのは偶然のはずだ。そうに違いない。そんな事を自分に言い聞かせているのは解るが、どうしようもない不安が胸を侵食する様に広がって行く。だから、情報を聞き出すためにも、近くの店に入る。

 が、

「―――興味ない」

「―――自分でどうにかできないのか?」

「―――私に関わるな」

 誰も、関わろうとしない。誰も助けようとしない。誰も自分に関すること以外はどうでもいいとみている。異常だ。何なんだこれは。どうしてそんな考えを持っているのに社会が形成できているんだ。明らかに狂っている。

 既に十を超える人に話しかけている。だが誰もが似た様な反応を示し、そしてユージオとセルカの様な反応を示さない。明らかな異常性の前に、軽い恐怖を覚える。何故、こんな明らかな異常性を抱えて生活できるのか―――それを思考し、思い至った。

 天職だ。

 天職というシステムにここの人間は縛られているのだ。だからこそギリギリでながらこうやって社会を気づけている。社会というものは一人の人間が歯車時異能氏、それが他の歯車と合致し、そうやって繋がって行き、広がって行き、形成されるものだ。こんな風な自己中心的態度、自分以外への無関心、こんな態度で到底生み出せるものではない。それなのにこうやって社会が出来上がっているのは天職のおかげだ。

 天職というシステムにここの住民が縛られ、労働を課せられているのだ。

「いや、違う……多分天職じゃなくて……戒律とかあるんじゃないか……?」

 そういえば教会では守られるべきルールみたいなものがあると聞いたような気がした。だとすれば、それに従っているからこそこうやって秩序が保たれているのかもしれない。……地図何かを調べている場合じゃない。もっと、大事な何かに到達できそうな気がする。言葉として表すのなら……そう、

「法則」

 脳の奥で、それがチリチリ、と何かを刺激する。そう、着眼点は間違いなく悪くはない。これがシステムコンソールへと繋がる直接の鍵とはならないが、この世界の謎を紐解くパーツとしては―――。

 と、その時、

「もしもし、そこの貴方」

 この村に来て、初めて声をかけられる。驚きつつも振り返った先で、

「困っているようだけど、手は必要かしら?」

 俺が見たのは赤髪の女性だった。




投降する時間が遅くなってるよぉ……ふぇぇ……。
もっと早く投稿したいで御座る。
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| 断頭の剣鬼 | 15:08 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

アレー??
住民が、天狗道の人間になっているでゴザル

| とっつき | 2013/01/04 20:14 | URL |

おいこの世界天狗道に染まってんじゃねえかナニコレコワイ

| 裸エプロン閣下 | 2013/01/05 12:41 | URL |

こんなところまで波旬の影響が!?

| ガリバー | 2013/01/05 17:51 | URL |

面白いです

こんにちは、毎日この作品を楽読ませてもらっている一読者です。にじファンからのファンでもあります。
ここで差し出がましいようですが提案があります。
このいい作品をハーメルンで掲載してみてはどうでしょうか?
かなり人気の作品になるかと愚考します。
それでは、自分のペースを保って頑張ってください。
応援しています。

| s | 2013/01/05 21:55 | URL |















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