陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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プロローグ ―――ウェイクアップ

推奨BGM:Burlesque


 目覚めと共に見たくないものを見てしまった。言われてしまった。あんな野太い声でお兄ちゃんとか呼ばれて吐き気しかしなかった。しかもアレでシングルファーザーとか世の中は狂っている。イザーク君の苦労は想像できる。

 STLへと脳を繋げるヘッドセットを取ると、ベッドから起き上がるのをラインハルトが手を伸ばして助けてくれる。その手を取って、ベッドから降りる。流石というべきか、STLに使われているベッドも中々寝心地がいいもので、一度寝そべったら置きたくなくなる魔力が存在する。だがそれを振り払いつつ起き上がり、軽く体を動かしていると、

「この寂しさを紛らわそうとする心を理解してくれないとは……」

「その心遣いは嬉しいけどその方向性が圧倒的に間違っている」

 なんだ。なんなんだよ、おはようお兄ちゃんって。

「キルヒアイゼンから”ハイドリヒ卿、日本の文化を学ぶにはエロゲからです”等と言われてな」

「あの金髪が黒幕かよ。覚えてろよ」


 こうやって話せる程度には俺もラインハルトと仲が良くなったと思っている。少なくともSAOの頃であればここまで気安い会話は出来なかったはずだ。こうやって気軽に馬鹿な会話をするのもやはり、こうやってラースでアルバイトをしているからだと思う。こうやって一緒に仕事をしていると知らない部分などが解り始めて、色々と戸惑うこともある。

 ベイがシスコンだとか、シュピーネさんが書類仕事をしながらエプロンつけてお茶を入れている事実とか、エレオノーレがラインハルトに対して口答えした相手に問答無用で銃を見せびらかす所とか。知りたくもない事実だけ増えるのは何故だろう。明広も明広でマルグリットの写真を持ち歩いて手短なスタッフ捕まえては自慢ばっかり。ラースの変人奇人集団の筆頭とも言える黒円卓のメンバー。

 彼らは今、日本にはいない。ラインハルトが言うにはやってもらうことがあるらしく、全員ドイツへ行ったと言っている。明広についてマルグリットもドイツへ行ったらしく、日本に残っている黒円卓の人間は今の所ラインハルトだけで、ラインハルトの息子であるイザークが休みを利用して日本へ来ている。アルンやイグドラシルシティでよく見ていた顔が急にいなくなってからもう数ヶ月が過ぎている。

 知っている顔を見なくなるのは結構寂しいものだと思う。

 知っている顔、という所で何かを思い出す。

 ……そうだ。

 夢だ。

 STLの内容は基本的に全て覚えていられない様にできている。なのに今、ハッキリと自分の記憶にはある。STLでの内容を、詳細とは言えないが、何かが霞がかる感じで―――見たものを覚えている。何か、どこかで生活をしていたように思える。楽しく、笑って、おぼれて、そして激情を持って終わらせた。そんな記憶がある。これを聞くべきかどうかなのかラインハルトを見て口を開いて―――やめた。

「さて、これで三日間のバイトは終了か」

「うむ、実にご苦労であった。大義であるぞ」

「無駄に偉そうだなぁ!」

「実際に私は偉いからな。ここでも、本国でも、私は非常に重要なポジションに立っている。故に私は偉い。かなり偉い。そしてかあり金持ちだ」

「最後のはマジで余計だな」

 イケメン、既に死んでいるが既婚、息子がいる、銃要職にいる、金持ち、そして強い。この世のありとあらゆる良い所というか、神に愛されているとしか表現のしようがない程の人生の充実っぷりに呆れとか嫉妬を通り越して、もはや天晴と思えてくる。それだけこのラインハルト・ハイドリヒは恵まれている”怪物”だ。

 ラインハルトの視線から考える事は読み取る事が出来ない。俺の様な若造がラインハルトの真意を探る事なんて不可能だが、その発言や視線から何か読み取る事でもできれば良いのだが、やっぱり無理だ。もしかしてぼんやりと覚えている事もミスではなくラインハルトの計画の一部かもしれない、等と変に勘ぐってしまうのは俺の人生が基本的に謀略、策略、計画、カオスとインフレに塗れているからに違いない。

 溜息を吐いて、

「ラインハルト」

「なんだね少年」

「シャワー室借りてもいい?」

「あぁ、今の卿はかなり臭いからな」

「我慢してたことを言わないでくれっ」


                           ◆


 三日。それがSTLにつながれ、眠っていた時間の長さだ。起きてしまえばまるで一瞬の様に感じたが、俺の脳だけを活発に活動させ、三日間の間動かず過ごしていたはずだ。SAOから解放されたあの日も臭かったが、連日連続でダイブした時から解放された時の臭いは慣れそうにない。SAO解放以来、シャワーや風呂は毎日入っている。

 そうやって体臭を落とし、体を綺麗にして、元々用意しておいた着替えにそでを通すと、体がサッパリとした感覚に包まれる。体に異変を感じる事はないが、三日間も寝みっていた後にシャワーを浴びる快感はまた格別だった。着替え終わってからラース社内の食堂へ向かうと、優雅に茶を飲んでいるラインハルトの姿と、ノートパソコンで作業をしている比嘉の姿があった。その姿に片手であいさつしつつ、近くの棚からトレーを取って社内の食堂カウンターで昼食とも朝食とも取れない微妙な時間の食事を始める。

「三日ぶりの食事であるからに、お腹に優しいものをオススメするぞ―――なんなら私が」

「コタツの中に引っ込んでろ黄金の猫」

 ラインハルトを黙らせるが言っている事には間違いはない。比較的にお腹に優しいそばを頼み、それが茹で上がるのをカウンターの前で待っていると、今度は別人の声が食堂にやってくる。

「おや、キリト君はあがりの時間だったのかい?」

 声に釣られてその人物を見ると、そこにいたのはスーツ姿の男だった。自分も良く知る人物、菊岡誠二郎だ。彼もトレーを握って、いちごパフェを頼むとカウンターの前で待つ。この男は毎度のことながら何か甘いものを食べている所しか見た事がない。基本的にこいつの体は糖分で出来上がっているのじゃなかろうか。

「丁度シャワー済ませたから三日ぶりの食事でもとろうかと思ってね」

「じゃあパフェ食べるかい?」

「なにが”じゃあパフェ食べるかい?”なんだよ。なんでそこでパフェを食べなきゃいけないんだよ。しかも社内食堂にパフェとかあるのかよ」

「なにを言ってるんだよ―――この食堂にパティシエを呼んだのは僕だよ」

「反省しろよ」

 なんというか、比嘉以外は凄い残念な人間が多いのがここ、ラースだと思っている。あくまでも黒円卓は変人奇人の”筆頭”であって、それ以下のレベルであれば菊岡の様に結構多い。たとえばエロゲを持ち込むやつとか、フィギュアで自分のデスクを埋める者とか。基本的に思考が腐ってるやつとか。常人には並みの物しか作れないという発想から技術者の中でも変人ばっかり集めた結果がこうなっているらしい。

 流石厨二国家ドイツ。

 流石魔改造の歴史日本。

 誇りたくない。

 だが時給で給料が、しかも結構高額なので絶対に縁は切らない。正直三日寝ているだけで給料がアホの様に入ってくる今回の話はうますぎた。縁を切りたくてもお金に釣られて切れない。所詮俺も俗物だったというわけだ。お金万歳。これで夢のモンスターマシンが組める。

 ただ何故だろう。

 恋人と妹とかにタカられてなくなって行く給料の姿が思い浮かぶのは……。

 と、そこでそばが来たのでトレーに乗せて、それをラインハルトが座っているテーブルへ持って行く。比嘉の方は忙しいのかノートパソコンに向き合って顔を放さない。ただ挨拶をすると片手で返事してくる辺り、完全にピンチというわけでもなさそうだ。ラインハルトの対面側に座る、トレーを置いて、端を割ってからさっそく食べ始める。久しぶりに食べるメシの味は美味しい。

「比嘉さんピンチ?」

「今回の三日ダイブで色々見つかった所修正中ッス。まあ、三日じゃなくともよっかとか一週間とか黒円卓の皆さんにはお願いしてたんッスけど、やぱり人間やめてる方々にテストしてもらってもデータ的には……」

「あぁ、うん。そうだね……」

 そんな事を言ったら素で半人外達成とかアスナに喜ばれた俺はどうすればいいのだろうか。アスナもユウキが死んでからは何か抑え込むのを止めたというか、前以上に積極的になった所がある。母親との問題もなにやら愛で解決したとか恐ろしい事も行っていたし、やっぱりアスナはアスナで少し壊れている所があるんじゃないかなぁ、と思う。まあ、そこが可愛いからいいんだけど。

 っと、嫁の可愛さにトリップしている場合ではない。いや、確かに大事な事だが、それを考えているうちにそばが延びてしまっては目も当てられない。アスナの事に関してはそばを食べ終わってからトリップすればいいのだ。

「だよな?」

「なにがだよな? なのか俺に解らないんスけど」

「卿も律儀であるなあ」

「比嘉君をスカウトした理由はそこにあるあらね。いやぁ、いいよ、比嘉君。ツッコミが」

「そっちよりも仕事に対する評価をください」

 比嘉のその声はかなり切実なものであった。そりゃあプログラマーとしてやってきてプログラムよりもツッコミで評価されてちゃあ泣ける。まあ、ラースに入社したら最期、とだけ同情しておこう。

「で、比嘉君。お仕事の方はどうなのかな?」

 パフェを持ってきた菊岡がいつの間にか比嘉の横に座って、パフェを食べながらノートパソコンを覗き込んでる。それにしてもパフェがタワーの様にデカく、真剣にスクリーンを覗き込んでいるはずなのに笑えてくる。これがいわゆるシリアスな笑いというやつであろうか、直ぐ傍で優雅に飲んでいるラインハルトの姿と非常にミスマッチしている。

 なにやら比嘉と菊岡がそこから専門的な話を始めているが、一切の興味が湧かないので無視して、そばを食べる事とする。

 しかし、

「寂しくなったなあ……」

 数ヶ月―――ユウキの葬式から半年程経過している。彼らが日本を離れたのも大体そのごろだ。連絡をしようにも連絡できないし、ALOにログインしているようでもない。唐突に隣人と連絡ができなくなる状況は少々寂しいものだ。それだけ向こうが忙しく、そして充実していればいいのだろうが、……何故だろう、

 何故か、彼らの事を思うと不安になってくるのは。

 どうしようもない不安に駆られてくる。ありえないと思う。自分が知っている人間の中で、明広は最強の部類に入る生命体だし、残りの黒円卓だって最強とは行かぬも、ほぼ無敵の集団だ。彼らが力を合わせて立ち向かえない事態などあるのだろうか。少なくとも、自分にはそれを想像するだけの想像力はないようだ。あの連中をどうにかできる存在など思いもつかない。だから、大丈夫、なはずなのだが……。

「キリト少年?」

「少年は止めてくれ。俺ももう十八だぞ」

「あぁ、そう言えばそうであったな」

「SAOが十四の時だったから、そっか。もうVRを巡るこの流れや関係も四年続いてるのか」

「奇縁というものはどこまでも続くものだからな―――キリトよ、その奇縁、どこまでも大事にするがいい」

 ラインハルトが告げたその言葉は今までのふざけた態度はなく、どこか真剣なものだった。とはいえ、

「言われるまでもない。誰が好きでこんな面白い連中との縁を切るかよ」

「そうであるか、ふふふ」

 こんなとっぴゅしもなく、カオスな連中、世界を探しても他にはいないだろう。それこそ金銭ではどうにかなるような奇縁ではない。間違い悪一生の宝だ。そして宝だからこそ、……こうやって連絡が取れない事実が寂しい。

「なあ、ラインハルト」

「なにかね?」

「ドイツへ行った皆とは連絡を取り合えないのか?」

「ふむ」

 ラインハルトは片目を閉じて、此方を見て、数秒動きを止める。そこから一同な頷き、

「もう少々したら会えるだろう」

「マジか」

「あぁ、マジだ」

 ラインハルトがマジ、何て言う光景は違和感で溢れていた。ただラインハルトが真剣な所を見ると、嘘ではなく、もう少しすれば会えるみたいだ。それを聞いて、少しだけ安堵する。

 ―――ん?

 何故、会えるって事実にここまで安心してるんだ俺……?

 僅かな違和感を覚えながらも、そこで食堂に会った時計を確認する。確認した途端、全身から血の気が引くような音が聞こえる気がした。残りわずかだったそばを全力で射の中に押し込むと、素早く会立ち上がる。

「急いで食べると消化によくないぞ」

「待ち合わせの時間に遅れる!」

「交通法は守ってね、キリト君」

 それどころではないので、急いでラースから出てゆく。会える会えないはどうであれ、俺がこれから急がないと約束に遅れるという事実は変わらない。シノン達にドなされるのは死ぬほど嫌なので、急いで約束の場所であるダシー・カフェへと向かうとする。

 ……渋滞がない事を祈りながら。
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| 断頭の剣鬼 | 14:50 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

キリトさんΣ(゚Д゚)スゲェ!!ハイドリヒ卿に向かって黄金の猫だなんてバイトしている間でどんだけ仲良くなってんだよwww

| ガリバー | 2012/12/30 21:53 | URL |

>母親との問題もなにやら愛で解決したとか

染まってやがる。遅すぎたんだ

| Y | 2012/12/31 21:18 | URL | ≫ EDIT















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