陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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プロローグ ―――ドリームイング・センサード

推奨BGM:Et in Arcadia ego


 夢を見ている。


                           ◆


 純朴そうな少年は不釣り合いなほどに大きな斧を手にしている。それは金属でできている者ではなく、巨大な骨を削って生み出したような無骨な斧だ。とてもだが少年が持ち上げるようなものではない。だがそれに構わず、少年は大変そうにだが斧を持ち上げる。それを構えると目の前にある巨大な樹の幹に向かって全力で振り降ろす。少年にしては中々の速度と筋力だと言える。木の幹についている切りこみは二十センチほどある。それが全て少年の手柄であれば良くやったと褒める事も出来ただろう。

 木の幹にある斬りこみの中心点を穿った斧は綺麗な音を森に響かせる。

「なあ、※※※※」

 誰かがそれを言った。若い少年の声だ。だがその声の主が見えない。だから、たぶんこの声の主は自分なのだろうと判断する。自分がこの声の主で、この少年の声の人物なのだ。だが残念なことに自分が逝ったと思われる言葉の公判が聞こえなかった。まるで検閲されたかのようにそこだけ酷い砂嵐でかき消されていた。

「どうしたんだよキリト」


 そう言って斧を持っていた少年が振り返る。やはり若い。そして斧を持つには不恰好な少年だ。大人しく羊飼いでもやっている方が性に合っているだろう。とてもだが蚊を殺せるようには見えない。ただ慣れた手つきで斧を扱っている辺り、この少年はこの斧で木を切る作業を長い間続けているのかもしれない。出なければこんなに重そうあ斧を振り回せるはずがない。そして、名前を呼ばれた事実からして自分と目の前の少年はたぶんだが知り合いなのだろう。

「※※※※、俺達の一生ってギガスシダー伐ってるだけで終わるのかなぁ」

「そうなんじゃないかな? 僕の先祖にもできなかった事なんだ。見ろよこの伐りこみ。もう何十代って交代しながら伐り続けてるのに、この悪魔の木はソラスの恵みを吸収して再生してるんだよ? 僕らの一生もたぶんこれに傷をつけるだけで終わるよ。もう千年以上も続けてる事だし、これからも変わらないよ」

 少年の言葉がそれらを全て物語っていた。少年の声が、自分と少年の状況を全て説明し、完結的に伝えていた。つまり、自分達二人はこの”悪魔のような木”を着る役目にあるが、それを完了できないから千年以上格闘し続けている事となる。まるで悪夢の様で、少年は既にそれに関しては諦めている。

 まるで歯車の様だと思った。

 大きなシステムに組み込まれても、迷うことも戸惑うことも、そして憤慨する事もない社会のシステム、その一部の様だ。それは、

「なんだ※※※※。お前って案外つまらないやつだったんだな」

「つまらないって……」

 自分と思わしき人物の口から出た言葉が考えを代弁してくれていた。このキリトは本当に自分なのかもしれない―――こんな夢に覚えはないが。

「だって諦めてるんだろ? そんなのつまらない人間じゃないか。俺の親友はもうちょっと夢のあるやつだと思っていたぜ」

「現実的だと言ってよ。キリトは夢を見すぎなんじゃないか? あと不真面目すぎ。 この間の礼拝の時間だってずっと寝てたじゃないか」

「いやいや、現実的かどうかって言えば俺の方が圧倒的に現実的だぜ? 神様に祈るぐらいだったらその分斧を振っていた方が絶対に為になるね。どんだけ祈っても神様は救ってくれないんだ。ほら、疫病の時にそれは証明されただろ?」

「それを持ち出されちゃ何も言えないんだけど……話題を微妙にすり替えられている気分が」

「あ、※※※※今ので最後。次俺の番だ」

 会話している間にも斧を振っていた少年が動きを止め、此方を見る。その額には玉の様な汗ができている。やはりあれだけ大きな斧となると凄い苦労するのだろう。じゃあ、交代だね、と言って少年が此方へとやってきて斧を渡してくる。

 斧に触れた瞬間、砂嵐が視界全てを覆う。


                           ◆


 夢を見ている。時間も場所もバラバラだ。どの時代のどの場所のどの世界のどの空間の誰がどこで何を。それを理解するには情報が断片的で難しい。ただ解るのはこれが自分自身の過去で、そしてどうしようもない夢である事。だから睡魔に体を任せ、意識だけは夢の世界へと流れる。


                           ◆


「全く、しょうがないわね」

 青いドレスに金髪の少女が草の上にバスケットを置き、そこからパイや水筒を取り出していく。それを自分と、先ほど一緒に斧を振るっていた少年が受け取る。

「あ、こら、キリト!」

 受け取った自分は迷いもなくパイにかぶりつき、その味を堪能する。パイがまだ熱い事を考えれば出来立てらしい。夢であるはずなのに舌の上に触感や味、中の具材までが判別できる辺り、かなりリアルな夢だと思える。が、少年は苦笑いで、少女はキレた様子を見せていた。


「なにをお祈りなしに食べてるのよ」

「だって俺神に感謝してないし」

「そういう問題じゃないと思うんだけどなぁ……」

 困った様子の少年と、怒りを見せる少女のまえでパイにかぶりつきながら答える。

「いいか、※※※※、※※※? 俺達が罅を祈ろうが、祈らなかろうが、髪って生き物は凄い傲慢で気に入ったやつにしか祝福しないんだよ。たぶん人間よりもすっごい傲慢で欲深で、自分が愛せるやつしか愛さない、そんなやつだ。だから平気で祈ってるやつを見殺しにするし、見殺しにされる。俺はつくづく思ってるよ。祈る暇があるのなら両手動かせって」

 宗教に対する冒涜的な発言に少年と少女は呆れたような表情を浮かべる。見た所、二人とも服装は中世のそれに近い。だとしたら思想のベースとして宗教画来る時代だろう。その時代にこんな考えをしている者がいれば明らかな異端だ。排除されてもおかしくはない。が、少年も焦女も呆れたような表情wお浮かべてから溜息を吐く。

「まあ、キリトだし」

「あんまり人前で言わない方がいいわよ」

「俺だってそれ位わきまえてるさ。って、それよりも早く食べないとパイの天命が尽きちまうぜ」

「あぁっと、それもそうだね」

「貴方は何時か絶対に説得しなきゃいけないように思うわ」

 そう言って二人がパイに手を伸ばし―――砂嵐が視界を遮る。再び音も景色も味も消えてゆく。


                           ◆


 夢を見ている。ただひたすら怒ってしまった出来事を見ている。や、これは見ているだけなのだろうか。追体験と言える現象ではなかろうか。彼らが常識の外側に立っていたように、俺もまた常識の外側に立っているという事はありえないのか? だとすればこれは間違いなく追体験堕。夢として過去の出来事を思い出しているのではないだろうか。しかし夢は夢。朝を迎えれば水泡の如く儚く散ってしまうのが夢の定め。それは避けようのない事実であり、そして同時に水泡だからこそ美しく映ってしまうものである。


                           ◆


「さ、寒い」

「こんなに世界の果てが近いだなんて思ってもいなかったよ……」

「本当にね……」

 変わらない。また少年と、少女と、自分の三人だ。ただ場所は変わっていて、洞窟の中を進んでいる。それもかなり寒い。まるで北国にいるかのような寒さだ。都会にはない、純粋な冷気を感じるのだ。それを少年少女三人で進むとは一体何事なのであろうか。

「えーと、奥はこっちかな?」

「た、たぶん……」

「帰り道様に目印置いた方がいいんじゃないか?」

「なんかキリトだけ余裕なのが少し癪に障るわね……」

「ま、この程度なら、な?」

「何の同意なんだろう……」

 弱気な少年を引っ張り、勝気な少女を追いかける。まるでクッションの役割を果たしながら三人で奥へと進む。一歩歩く度に会い音が壁に反響し、洞窟内に響く。足音と三人の話声以外には何も聞こえない事から、この洞窟で生きている者はこの三人だと断言できる。それもこの三人以外の生物が息を潜んででいなければ、という制約がつくのだが。

 互いに鼓舞し合う様に少し声を大きく話し合い、三人d寝先へと進む。何度も洞窟は分岐する様に広がって行くが、洞窟にお目当てのものが見つからない様子で、少年少女たちは洞窟の奥へとぐいぐいと進んで行く。本来ならこの危険な行動を誰かが止めるべきなのだが、それを止める事の出来る人物がここにはいなかった。

 そうやって、奥へと進んだ三人は洞窟の奥へと到着した。

 そこは広場だった。洞窟の中にできた広い空間。そこには、

「なに、アレ……?」

「ドラ、ゴン……?」

 龍の骨だった。財宝を守る様に、龍の死体がそこにはあった。その体には無数の傷があり、”自分”がそれを指摘していた。その事実に少年も少女も絶句し、言葉を失い、そして龍の守る財宝を見つめる。

「……持ち帰っちゃバチがあたるな、これは」

「青薔薇の剣が目の前にあるのに……勿体ない……」

「キリトってすっごい神経太いわよね」

 やっぱり夢の自分は自分らしいのか、こんな状況でもレアアイテムを持ち帰れない事に嘆いていた。財宝は一つも触れるべきではないと全員で決めると、目当ての品だったつららを回収してバスケットに入れて、小走りで洞窟の出口を目指し―――砂嵐が視界を覆う。再び場面は切り替わる。


                           ◆


 夢を見ている。これは本当に夢なのか? 夢なのであろうか? 夢であってくれるのだろうか。知らない。こんなものは知らない。知らない。知らないったら知らない。


                           ◆


 洞窟を抜けて出てきた。

 ただし入り口ではなく、反対側に。

 ―――美しい。

 それが率直な感想だった。緑は広がっているが、道のない、手が加えられていない、野生の自然だ。野生の動物たちが山の出口から見える程に命で溢れていた。高い所に位置する洞窟の出口の中から、その光景を絶句しつつも眺めていた。出てはいけない方の出口から出てしまった、等という事実を少年少女達は思い出しつつも、動きを止めていた。

「これが……闇の国……?」

「嘘よ……私、闇の国は命のない地獄だって、魔王や魔神達の済む魔界だって習ったわよ」

「だけど、俺達の前に闇の国は広がっているぜ?」

 そうやって三人は教えられた事実と、見る事実の二つを比べていた。改めて知る真実は、教えられた事実とは全く異なっていた。その出来事に脳を全力で稼働させて情報を飲み込みつつ、三人は空を見上げ、そこで見た。

 何かが戦っている。

「アレは―――整合騎士だ!」

 ワイバーンの背中で槍を握り、空を駆ける白銀の騎士は空の上で何かと戦っていた。この距離からでは良く見えない。かなりの高高度の戦いだ。だが少年が言葉を零す。

「アレが……暗黒騎士?」

 空の上に立つ姿があった。飛んでいるのではなく、立っている。赤い。全身が赤い鎧に包まれている姿だった。それは整合騎士と呼ばれる存在の攻撃を体で受け止め―――微塵も揺らがなかった。そして、片手で握る剣で一撃で整合騎士を殺した。傷ついたワイバーンと、整合騎士の死体が空から落ちてきて―――偶然にも洞窟の外に落ちた。

 少女と、少年は前に落ちてきた。整合騎士を見ている。だが自分の視線だけは空に立つ騎士の姿を捉えている。顔はフルフェイスのヘルムに囲まれていて見えない。素肌らしきものは元々赤い鎧に包まれて見えないのだ。ただ異質で別次元に見える存在は―――どこまでも吐き気しかしない。生理的に体が拒否している存在に対して、何故だか視線を向けるしかなく、少少女が接合騎士へ【検閲されました】を【検閲されました】時に、

 赤い騎士の言葉が聞こえた気がした。

『―――【検閲されました】【検閲されました】【検閲されました】【検閲されました】【検閲されました】【検閲されました】【検閲されました】【検閲されました】』

 それを聞いて、

「あ、ぁあ、ぁ―――」

 精神が砕け散る一歩手前まで追い込まれる気がした。

「ぁあああああああああアアアアアア―――!!!」


                           ◆


 夢を見ている気がした。どうかこれが夢であってほしい。


                           ◆


 街の広場へと到着すると【検閲されました】は【検閲されました】されていて、そこには【検閲されました】が【検閲されました】していた。もはや※※※が【検閲されました】というの事実であり、自分は※※※を【検閲されました】しようにも、ほぼどうしようもない状況が出来上がっていた。

「クソ! 行くぞ※※※※! ※※※を逃がすんだよ!!」

「む、無理だよキリト、僕らには【検閲されました】を破る事なんてできないよ」

「タマなし野郎が、根性見せろよ!」

 ※※※※は頼りにならない。その存在に軽く失望しつつ突き飛ばし、広場へと向かって疾走する。そこには【検閲されました】に【検閲されました】されそうな※※※の存在がある。思考はまるで霞がかかったかのようにはっきりしない。先ほどから意図的に何かを抜かされている気がする。だがそれに構う自分ではない。肺を潰すつもりで全力で疾走し、大人たちが反応する前に※※※の前へと走る。邪魔なのは【検閲されました】一人だ。

「……」

 無感情の目で【検閲されました】は”俺”を抑え込んできた。

「さっきから人の頭の中でうるせぇんだよ……!」

 抑え込んでくる【検閲されました】は俺を蹴り飛ばすと、※※※と俺の間に距離を生みだした。ワイバーンの背中に※※※を乗せると、そのまま【検閲されました】は※※※を連れて飛び立とうとする。それを追いかけようとする俺を大人たちが数人で押さえつける。

「黙れ! 放せ! クソったれぇ!」

 叫んでもが九が、解放される事はない。そこで顔面蒼白で辞退を見つめる※※※※の姿を見つける。彼の姿は怯えている。【検閲されました】から※※※を救い出そうとすることなど不可能だ。だが、それでも今動けるのは彼しかいない。最期に一回信じて、声を出す。

「根性見せろよユージオォッ―――!!」

「―――……」

 長年、親友だと思い込んでいた少年は何も答えてくれなかった。動いてくれなかった。去って行く接合騎士の姿を見ながら叫ぶ。

                      「アリスッ―――!!」

 それから俺は【検閲されました】。


                           ◆


 夢は終わった。

 目が覚める。

「おはようお兄ちゃん。目覚めのチューしてあげよっか」

 そう言われて目を開けた俺の前には―――ラインハルト・ハイドリヒが頬を染めて立っていた。反射的にその顔面に拳を突き込みながら、肺の底から、ラース分社に響く様に声を張り上げながら叫ぶ。

「やめろおおおお―――!!!」

 本日のバイト、完了。




断頭の冬休みは終わって、いよいよアリシゼーション編開幕です。いよいよ本編ですね。
今までの話は全てプロローグです。あぁ、言っておきますが神咒神威神楽のキャラクターは基本的に一人も出ません。似た様なポジションとか話はあっても、曙光曼荼羅が出る事は一切ありませんよ。
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| 断頭の剣鬼 | 13:45 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

更新お疲れ様です。
検閲されまくりwwww

あと獣殿、あの戦闘で頭打ちました?

| 断章の接合者 | 2012/12/29 15:15 | URL |

おい、…おい。
どうしたんだ、獣殿。

| 樒 | 2012/12/29 18:07 | URL |

さすが主人公キリトさん……獣殿の攻略お疲れさまです……!

あの、攻略方法教えてもらって【検閲されました】。

| オベリスク | 2012/12/29 20:38 | URL |

嘘だろう?遂にキリトさんはあの獣殿を攻略したというのか!?

| ガリバー | 2012/12/29 23:09 | URL |

ダメだ!
――他にコメを思い浮かべる前に獣殿が衝撃的すぎて全ての空気を破壊する―――あ、平常運転かw
いや、狂い方が斜め上すぎて追い付けないです閣下w
せっかく登場した暗黒騎士、恐らく散った内の【検閲されました】だろう印象を全てかっさらう破壊力でしたwww

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/12/30 20:05 | URL | ≫ EDIT















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