陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~不良騎士道~ 第8話 不良騎士絶望する

「ウィル、いないか」

 ベルを鳴らした直後にドアを開け放つ姿がある。背は低く感じる白髪の女だ。姿からして齢十八、十九程の少女はカリムと同じ、神殿騎士の制服であるカソックに身を包んでいる。流れるように腰まで届く白髪が特徴的で、牙に似た髪飾りをつけている。それ以外は他のシスター達とは姿に変化はない。ただ、特徴としては頭頂部、髪が犬か狼、その類の耳の様な形をしておりキリっとした顔とは逆に凛とした可愛らしさを与える人物だった。


 部屋の主の許可なく扉を壊す形で開けると、そこで侵入者を歓迎したのはウィルフレッドでもカリムでもなく、白の少女―――神殿教会第三位クゥーニャ・ストレガを歓迎したのは眼前に一センチの所に現れた巨大な鉄塊だった。

 轟音と共に扉が完全に粉砕され、そして入り口を破壊する形で鉄塊―――ウィルフレッドの得物が振るわれる。二メートルの大剣が振られできた破壊の中、女の声が響く。

「帰ってきて早々中々な挨拶ではないか、ウィル」

 直撃まで僅か一センチという距離にも拘らず、女は大剣を回避していた。

「ッチ、生きてたか」

「私はお前に逢いたかったぞウィル」

「かーえーれ! かーえーれ!」

「さぁ、私をお前の部屋に入れてくれ。そろそろ休みたい」

「いいから黙って帰れ。こっち来るな。俺の聖地を穢すな。早く聖王様のところへ逝きやがれ」

 二人のリアクションは対照的だった。帰ってきてウィルフレッドに会いたがっていたクゥーニャと、それを追い返そうとするウィルフレッド。明らかにウィルフレッドが一方的にクゥーニャを嫌悪しているのが解る。嫌悪と言うよりは苦手と言った方が正しいかもしれない。その様子を部屋の中から紅茶を淹れ、呆れた様子で見ていたカリムが口を出す。

「朝から元気ね、貴方達」

 ウィルフレッド一人ならまだしも、二人揃ったらもはや手の着けようがない事を知っているカリムは状況開始早々諦めていた。椅子に座ったまま、優雅に紅茶を飲みながら状況を傍観するに徹していた。

 しかし、クゥーニャはそうではなかった。逆手大剣を握るウィルフレッドの背後、カリムへと視線を向けている。ウィルフレッドに対して向けていた微笑はなくなり、その目には何処か対抗心らしき物が映っている。

「む、騎士カリムか貴様、朝からウィルの部屋にいるとは―――ウィルの寝込みを襲いに来たのか!」

 発言を無視してカリムは紅茶を飲み、ウィルフレッドに視線を向ける。

「さ、今日も見習い騎士の稽古があるから頑張りましょうね?」

「お前、神経太くなったよな。とりあえず」

 ウィルフレッドが逆手大剣をクゥーニャへ向けて構える。

「俺の高級酒コレクションは渡さん」

「ウィル、まだそんなものを……」

 そう呟いた瞬間、ウィルフレッドの視界から消えてクゥーニャがウィルフレッドの部屋の中に出現する。部屋の中に入る為には絶対にウィルフレッドを退かさないといけないため進入が不可能なはずなのに、そんな事を無視するように進入したクゥーニャは紅茶を飲むカリムを無視して高級酒を飾っている棚の前に移動し、

「処分だな」

「待て、それは三十万もした―――あぁ!?」

 躊躇する事無くボトルを窓を突き破るように外へ投げ捨てる。ただ、そこでやめる事無く高速でボトルを掴むと、それらを全て割れたガラス窓から外へ投げ捨てる。外からどんどんガラスが割れる音が何回も響き渡り、それが聞こえてくる度にウィルフレッドの体が崩れ落ちて行く。

「お、俺のコレクションが……」

「む、こんな物を飾るとは―――処分だな」

 次にクゥーニャが目をつけたのは部屋に飾られていたピンナップだった。此方も謎の高速移動で一気に接近すると、一瞬で壁から剥がし、爪でバラバラに引き裂く。もはやウィルフレッドの表情は一週間毎日葬式に参加した人間の様な表情をしていた。これ以上の地獄はありえない様な、もう全ての希望を捨て去ったような人間の顔だった。しかしクゥーニャはそれを全く気にせずうんうんと、自分の成したことに満足して頭を頷き微笑を浮かべる。

「うむ。これで良いだろう」

 満足そうなクゥーニャの存在を無視してカリムがホロウィンドウを出現させる。

「この惨状を見て満足できるって事が凄いわよね……あ、シャッハ? 適当に若い騎士を連れてきて。ウィルの部屋が壊れちゃったから修理したいんだけど」

『……また騎士クゥーニャですか』

 どこか諦めの色を持った声でシャッハがカリムのホロウィンドウから声をだす。実際、ウィルフレッドはクゥーニャの事をしきりに狂信者と呼ぶが、実際はそうではない。ただウィルフレッドの酒やピンナップ、秘蔵の本などを毎回来るたびに処分するので必然的に恐怖され、そして天敵として認識されているのだ。

 だが本人は別にこれを悪い事とは思っていないし、別段悪事と言うわけでもない。聖王教会の教義とはベルカの戦乱終結時代、"聖王統一戦争"から来ているのだ。ベルカの統一を果たそうとした聖王が人々に伝えた教えが元となっており、地球で言うキリスト教や仏教と言った"死後"を考えての宗教ではなく"今をどう生きるか"と言う考えから来ている。モラル等の崩壊が起こりやすい戦乱で、そういったことを防ぐ為に自由と戒め、その二つを与える事で人の調和を図った、と言った所だろう。"聖王統一戦争"時代でこそ一番輝き、意味を持つこの教義は現代、戦争がなくなり戦いの相手が次元犯罪者やテロリストとなってからはあまり意味がない。しかし、それでも尚現在に続き多くの信者を聖王信仰が持っているのは純粋に聖王が人々の心に深く残る人物であり、称えるべき人物であったから。そして、今を生きると言う現実を見る考えに多くの人々が賛同したからだ。

 話は長くなったが、クゥーニャの行動は純粋な善意であり悪意の存在は一欠片も存在しない。

「さぁ、ウィル」

 これさえなければ。

「次は私と結婚だ」


                   ◆


「死にたい……俺は今……猛烈に死にたい……」

「む、それはいかんぞ。聖王様は仰った、"どんなに辛い現実であろうが、未来を諦めずに歩み続ける事こそが大事"、であると。ウィル、一体どんな不幸がその身に降りかかったかは解らない、だけど私は何時でもウィルを支え、生きて行くことを誓っているぞ」

「うん。黙ってようか元凶? あと降りろ」

 場所は少し移ってカリムの執務室となっている。大聖堂の奥に位置しているこの場所は限られた人間しか入ってこれない為、秘密話には丁度良い。もちろんクゥーニャ、そしてウィルフレッドも執務室を持っているが、基本的に物置き場と化して、必要な書類仕事は全部自室でやっている。ウィルフレッドの部屋が修理されている現在、カリムは自分の椅子に座り、ウィルフレッドは後ろから首にぶら下がる女を体の動きで振り回す。

「おい、降りろ」

「待て。私は今欠落した夫分を補給している」

「何時誰が結婚した」

「五年前のクリスマス、お前とだ。情熱的な告白だったな」

「お前を拾っただけだろそりゃ……」

 自由奔放なウィルフレッドの一番にして最悪の天敵がこのクゥーニャである。 聖王教会に拾ってきた事すら後悔しているが、それはもはやどうにもならないと諦めている。そして首からぶら下がっているのも、止めさせても避けるだけの速力がウィルフレッドにはない。つまりまたぶら下がってくるだけなので諦める。それよりもと、

「ほれ、とっとと報告報告」

「む、そうだな。報告は大事だな。―――最短で全部終わらせた。以上」

「うん。報告完了だな」

「少し黙ってようかしらね、貴方達。クゥーニャ、報告なら大丈夫よ。貴女のデバイスから既に報告書は送られているから」

「私はそんな物書いた覚えはないぞ」

「俺も書いたことないな」

「貴方達二人が馬鹿だって事は知ってるから仕事中の記録は全部デバイス任せなのよ。だから報告書の事は気にすることはないわ」

 直接的に馬鹿にされたことに二人は気づいているがウィルフレッドは気にしないし、クゥーニャに関しては至福の時間を満喫しているので聞こえてすらいない。ならばする事はなくなったな、とウィルフレッドが思っているうちにクゥーニャが口を開く。

「そういえばジンに会ったぞ」

「五位に? お前が今期の担当してたのって第二十三管理世界だよな」

 クゥーニャの基本的な役目は布教となっている。特に管理世界を目的とされており、個人で管理世界へ行っては定められたノルマを達成するまでは本部へ帰ってこない、と、そんな風になっている。そのため、基本的に本部でクゥーニャの姿を見ることは少ない。そして今回クゥーニャが担当していたのは第二十三管理世界。聖王信仰以外の、別の宗教があるために介入のし難い世界だ。そのため第二十三管理世界での布教活動はまだ時間がかかると予想されていた。

「うむ。早くウィルに逢いたいからな。頭の弱そうなのを攫って教えてやった」

「またか」

「またね」

「ノルマは達成しているから問題ない」

「二十三管理世界の宗教戦争開始まだー?」

「洒落にならないから絶対に言わないで……」

 とはいえ、起きてしまった事は起きてしまった。教義的に考えてそういう類の出来ごとは発生し難い。だからそうそう心配は要らないだろう。それよりも問題は五位だ。何故そんなところにいたかと言うのが問題だ。

「ジンさんと話したの?」

「誰がお前に教えるか」

「話したのかワンコ」

「うむ、もちろんだウィル」

 基本的にウィルフレッドに近い女性に対して同じようなリアクションをとるクゥーニャに対して、カリムはもちろん、知り合いは諦めていた。これもまた、ウィルフレッドがクゥーニャの存在を苦手視する要因の一つに他ならない。

 と言うよりもウィルフレッドからすればナンパを毎回妨害されている上に逃走不可能と言う時点で天敵だ。

「妻と娘と一緒に観光に来ていたぞ」

「またか……アイツ仕事してるのかなぁ……」

 第五位は妻子持ちの三十代の男で、外に出るときは毎回娘と妻を連れて観光気分で回っている。騎士団の中でも一番特異な任務を帯びている為に聖王教会に戻ってくるのは報告の為に一年に一度か二度、あるかないかだ。
悪癖を抜けば一番常識的な人物かもしれない。悪癖さえなければの話ではあるが。

「ちゃんとやっていたそうだぞ? ただ自由に旅行できるのなら家族サービスするべきだと彼は言っていた。狂人にしては中々良い言葉だと思う。そんな訳で妻である私に対して何らかのサービスを要請する」

「結婚してないし、俺は将来カリムのヒモになるから却下」

「騎士カリム! やっぱり最大の障害は貴様か!」

「私もこんな男は嫌よ」

「ウィルの何が悪い!」

「俺もう帰りたい」

「残念、ここが貴方の家よ」

 場が段々と混沌としてくる。ウィルフレッドの肩越しにカリムを威嚇するクゥーニャの存在を振り回すことで何とか意識を拡散させる。今朝起きてから悪夢の様な事件が連続してウィルフレッドを襲っている。クゥーニャの相手を含めて既に結構精神的に疲れているウィルフレッドだが、流石に質問しないのは困るのでクゥーニャに質問する。

「……クゥ、お前今回はどれだけ長くいられるんだ?」

 おそるおそるといった様子で聞いてきたウィルにクゥーニャは無表情、首からぶら下がったまま言う。

「ふふふ、何と聞いて驚け。年末までは休みだ」

 ウィルフレッドを深い絶望が襲う。

「それよりどうだウィル。背中のこの感触、お前の好きな胸だぞ」

「恥じらいの欠片もないわね……」

「年末……まで……いる……だと……?」

「先月確かめたらEカップになってたぞ。ほら、揉んでみないのか? 好きだろ、大きな胸は」

 普段なら食いつくかもしれない餌をウィルフレッドは全力でスルーしていた。その頭は絶望的な状況にて冷静だった。クゥーニャが居るという事は大体どこまでも着いてくるということだ。基本的に聖王教会にいる時はそうだ。そしてその時は酒を砕かれる。ナンパは邪魔される。稽古の手伝いだけは本人も面倒だから一緒に逃げられるが、つまりは年末までワイン以外の酒類は一切禁止という事だ。

 もちろん、ウィルフレッドにそれに耐えられるほどの神経は存在しない。

「お?」

 左手でクゥーニャの頭を掴むとそれを窓の外へと向かって放り投げる。ガラスで出来た窓を粉々に砕きながら外へと飛んでいったクゥーニャが空中で体勢を整えながら着地しようとしている。だが、その前にウィルフレッドが懐から一枚のカード、逆手大剣の待機状態のものを取り出し、一瞬でそれを起動させる。逆手大剣を構えながらウィルフレッドが叫ぶ。

「お前を殺して俺は酒とナンパライフを取り戻す!」

「ならば私は今日こそお前を倒して二位となり、そのまま既成事実を作る!」

「部屋の修理代は貴方達の給料から引いておくわね」

 既におなじみの光景となっていたカリムは静かにホロウィンドウを開き、シャッハに修理を頼むのと同時に、
自分の執務室のデスク、その下から一つのアイテムを取り出す。

 胃薬。

「一応用意だけはしておこうかしら」

 久しく使ってない相棒を取り出したカリムはそれをそっとデスクの上に置いた。





おまけ

第一位???:最強で無敵でロリコン。法律には勝てなかった
第二位ウィルフレッド・カースト:不良。自由奔放で掴み所のない聖王教会の恥部
第三位クゥーニャ・ストレガ:最速。第二位が大好き。割とノーマル……のように見えてかなりズレてる
第四位セルマ:デバイスマスター。しかしニート。色々と廃人。ミッドの地下300mの個人用セルターでヒッキー中
第五位???:妻子持ち。何時も子供と嫁の自慢しかしない。同僚からウザがられる。
第六位???:女大好きだから目隠しをしている。しかし心眼を会得してしまったため無意味。一番普通の信徒……のように見えるだけ。
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| 不良騎士道 | 10:58 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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