陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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重みと意味 ―――オン・ツォート

推奨BGM:Burlesque


 あの攻略も、スリーピング・ナイツも、まるで短い夢のように消えた。そう、まさしく夢のようだった。彼らがアインクラッドに存在していたという証拠は片っ端から探した。そして、確かに黒鉄宮に彼らの名前は刻まれていた。だがそれだけだ。プレイヤーに聞けば名前は出るし話題にも上るが、でもそれだけで―――本人たちとは連絡がつかないし、みつからない。見つからない。どこへ消えたのかも解らない。まるで突然ALOを引退したかのように彼らは姿を現さなくなった。まるで自分だけがのけ者にされているようで激しく傷ついた。いや、最初から分かっていた。自分一人だけが何か共有のしていない情報があったんだと。そして多分、原因か元凶は、あのユウキの咳だ。

 後日改めて調べ直したところ、VR世界の中では現実世界の現象はプログラムされない限りは発生しないという。そしてALOでは汗や涙を抜いて、一部の現象は発生しない。もちろん咳もそうだ。どんなに死にかけていても、どんな重病にかかっていても、ALOでは現実の体調が反映される事はないはずなのだ。なのに、ユウキはその法則を逸脱していた。それがスリーピング・ナイツが消えた理由であり、それ以外にないと確信している。


 だからと言って、

「見つかる訳じゃないんだけどねー……」

「アンタだらけてるわねぇ」

「うっさい」

「うわ、口答えしたよこの子」

「あはははは……」

 そうやってテーブルに突っ伏す私を叱咤したり、苦笑いするのはSAO時代での知り合いと、キリト君を通してできた知り合いのリズベットとシリカ。レプラコーンの鍛冶師とケットシーのビーストテイマーでキャラをビルドしているが、その姿はSAOの時と何ら変わりがない。特にレプラコーンは種族的に外見的特徴がかけている。そのまんまと言っていい姿にリズベットはなっている。今では大親友のこの二人はキリト君にも言えないようなガールズトークをする相手なのだが、今だけはそんな気力もない。普段なら紅茶でも淹れて楽しく談笑しているのだが。

「うー……」

「止めなさいよ見っとも無い。キリトが見たら千年の恋も冷めるわよ」

 なにをリズベットは言っているんだ。

「キリト君は私に超ゾッコンで私を裏切ることないし私の事大好きだしもちろん私もキリト君のこと大好きよ? というか愛しているわよ。今からキリト君の所へ行って胸に飛び込んで抱き合って頭を撫でてもらいたいけどそこは今のところ我慢しておいて、やっぱりキリト君って戦っている時が一番かっこいいと思うの。あ、でもね? キリト君ってばかっこいいだけじゃなくてかわいい所が結構あるんだよ? あのね―――」

「その自慢は私らへのイヤミか! イヤミなのだろう! イヤミなんでしょう!」

「リズベットさんは結構ノリいいなぁ……私にそういうノリは無理だよ」

「シリカちゃんもちょっと頭のネジを緩めれば結構イケルと思うわよ」

「駄目だよ頭のネジを緩めちゃ! たぶん一番緩めちゃいけないものだよ!」

 多分この中で一番常識に囚われているのはシリカだと思う。結構普段は物静かなのに私やリズベットの発言にことごとくツッコミを入れてくる姿勢は素晴らしい。慢性的にツッコミが不足しているこの空間どころかこの世界で、シリカの様な逸材は素晴らしい。私も昔まではおかしいと感じたら正そうかと思ったが―――ALO事件であそこまでインフレしたものを見ると些事だとして大体認める事が出来るようになった。多分自分の中での物事の許容量、その上限みたいなものが上がっただけだと信じたい。

 ともあれ、この三人が基本的な仲良し三人組。ここにキリト君の妹である桐ヶ谷直葉、リーファ、そしてシノンも追加されるわけだが、シノンはGGOに用事があるらしく今はGGOに、そしてリーファはリアルで剣道の大会があるらしく今はALOに来れないらしい。あの二人はかなり忙しそうだなあ、と家の稽古を投げ出してこっちへ来ている自分が言えることではないけど。

「あ」

「どうしたの?」

 思い出した。

「そう言えば私お母さんと喧嘩してたんだった……まぁいいや。ラインハルトも破壊して愛せって言ってるし、お母さんを壊そう」

「アスナさ―――ん! いい加減正気に戻って! 破壊したらアウト! アウトですよ!!」

「冗談よ冗談。流石にキリト君と一緒にいる事に反対する親っぽい生き物を破壊するわけないじゃない……?」

「アスナ、何でアンタ今疑問系なのよ。しかもテーブルの耐久値ゴリゴリ削れてるから壊す勢いで握るの止めてくれない?」

 気が付いたらテーブルを壊しかねない勢いで強く握っていた。まあ、母親を破壊するなんて嘘だし、そんな事をするわけがないが、世の中は色々と大変だ。母親には自分のこと、そしてALOの事を理解してもらいたいし、そしてキリト君のことを認めてもらいたい。特に最後だ。最後が一番重要だ。

「人生ままならないわね……」

「だから折角の顔が台無しだから、そうやってテーブルに突っ伏さないでよ」

「えーだってー」

「アスナさんただの駄々っ子になっちゃった」

「駄々っ子になるわよそりゃあ……」

 なぜなら今の状況は色々と心労が多いからだ。母親はALOもキリト君も認めないし。スリーピング・ナイツは消えるし。そしてユウキの体調も心配だし。なんだか今は心配する事が多すぎて疲れでダウンしてしまいそうだ。だが、大変だと言う事はまた、充実していると言う事の裏返しでもある。そう、私の今の人生は充実している。昔の、ただ漠然と家に従っていたあの時とは違って、今の自分はしっかりと自分の足で立っている……気がする。

 それが事実かどうかは、私には判別する方法がない。

 だが、今一番の問題は、

「どうしたのかなぁ……」

「スリーピング・ナイツ?」

「うん」

「確か消えちゃったんですよね」

「ログインしたらギルド解散、フレリスから全員消去されてて驚いたわ。ありえない事じゃないけど、こうやっていきなりされると本当にどうしたのかと思うわ」

 ギルドに解散、そしてフレンドの削除。基本的にALOのフレンド登録は双方の承諾があって初めて成功し、片方がフレンドリストから名前を削除すると、もう片方もフレンドリストから消えるのだ。既に何度かフレンドを送り直してはいるが、返事はない。というよりも反応がない。もはやあの面子がALOへログインしているかどうかさえ怪しい。

「相談もなしに?」

「うん。なんか私以外は既にこうなるって解ってたみたい」

「アスナだけが新参だったもんね」

「そうねぇ……」

 リズベットが紅茶を人数分運んでくるので、顔を上げてテーブルの上に置かれたカップに手を伸ばす。これで少し心を落ち着かせる。紅茶の匂いを嗅いで楽しんでいると、シリカの膝の上で眠っていたピナが軽く欠伸を漏らしながら目を覚ます。辺りを見渡し、そしてまた目をつぶって眠り始める。小さな龍からは静かな寝息を感じ取れる。シリカのマスコットとでも言うべき相棒の頭をシリカは撫でつつ、

「もちろん探したんですよね?」

「そりゃあ色々と情報屋に頼んで探してもらったけど、逆に私がスリーピング・ナイツの事を聞かれる始末だったわよ。今の所調べてわかったのは、みんながALOにはインしていないってことぐらいよ」

「ログインしてないのならどうしようもないわねぇ」

「ですねー」

「そうなのよねぇー。ログインしたらとりあえず一回リメインライトになる様にPKして捕獲するんだけどね」

「アンタそんなことしてるからバーサークヒーラーって呼ばれるのよ」

「何のことかわからないわ。キリト君の常識に合わせてるだけなのに」

「本当に似た者同士ですよねー。―――特にバーサークっぷりが」

「シリカちゃんも結構言う様になってきたわね……?」

「っひぃ」

 この少女の変化を成長と見るべきか、もしくは吹っ切れたとみるべきか、未だにその判断はつかないが、一度吹っ切れて此方側へと転がり込むと色々と楽になる―――大事なものを何か犠牲にした感じはするが。たぶんそれが常識ってやつなのだろう。ALOでトッププレイヤーを目指すうえでは捨てなくてはならないものだ。

「……一体、どうしたんだろ」

「うーん」

 三人で頭を捻るが、答えは出ない。出る筈がない。結局のところ、あのギルドと自分の間には見えない境界線が常にあったのだ。此方からは踏み込めない、絶対的な境界線が。あちらだけが何かを知っていて、私だけが除者だった。それが仕方のないことだってのは理解している。だけどそれでも、出来る事なら自分も教えてくれて、仲間の一人にしてほしかった。スリーピング・ナイツ以外に入った事のあるギルドは血盟騎士団―――つまり、スリーピング・ナイツだけがSAOの後、唯一入る気になれたギルドだったのだ。もう、あのギルドが存在しない事を思うと……少々精神的に”クル”ものがある。

「あー、その……ほら、元気だしなって」

 予想外に落ち込んでいる顔を見せていたのか、リズベットに気を遣わせてしまった。これは親友失格かなぁ、と思って笑おうとした時に、リズベットの店の扉が開く。今いる場所はリズベット武具店の奥、私生活スペースでカウンターの裏にある扉の先にある部屋だ。来客があれば入り口のベルが鳴って、直ぐにわかる仕掛けになっている。

「はいはーい! ちょっと対応してくるわね」

 リズベットがエプロンを脱ぎながらカウンターの方へ小走りで向かってゆく。その姿を目で追いかけていると、扉の向こうから知った声と名前が聞こえてくる。

「よ」

「あれ、キリトじゃないの」

「キリト君?」

 カウンターを乗り越えてきたキリト君が扉のこちら側に頭を伸ばし、笑顔と共に片手を上げてくる。

「お、やっぱりここにいたか」

「やっぱり? って事は私の事さがしてたの?」

「そうそう。っと、悪い、リズベット、知り合いを中に通すぜ」

「あ、うん。別にそれは問題ないわよ」

 キリトは家主の許可を得ると、再び扉の向こう側に消える。

「おーい、こっちこっち」

 キリトが戻ってくると、その横にはピンクの髪の、少女の様な背丈の人がいた。が、軍服を着ている事からその人物がただの少女ではない事は解るし、その人物が少女ではない事も知っている。その軍服は、その人物が黒円卓に所属する人間であることを証明している。両手の人差し指を両頬に当てると、笑顔とポーズを決めながら、

「はぁーい! 皆のアイドルアンナちゃんでぇーっす!」

「うわぁ……」

 アンナ・シュヴェーゲリン以外の全員の声が揃った。キリト君でさえこいつ何を言ってるんだ、何て表情を浮かべている。明らかに空気を外したのに、アンナはそれに臆することなく手を上げておいーっす、等と体育会系染みた挨拶を飛ばしてくる。異常なテンションと若干時代の遅れたポーズで一気に空気を掴むと、ずかずかと部屋の中に入ってきて、椅子の一つに座る。これで、今この場にいる誰よりも高い戦闘能力を持っている集団の一員なのだから恐ろしい。

 だが、彼女がここに来た意味が解らない。頭をキリト君の方へと向けて、説明を求めるが、キリト君は頭を横に振る。

「答えはアンナさんが教えてくれる」

「答え?」

 そう言ってアンナへと視線を向ける。小悪魔的、というべきなのだろうか。そんな表情を浮かべている彼女はゆっくりと口を開く。

「私、”木綿季”ちゃんのいる場所、知ってるわよ」

「ッ! ユウキの……!」

 その言葉に私は食いつく他になかった。 
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| 断頭の剣鬼 | 12:49 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

アスナさんが獣殿みたいになりかけ始めてる!?

(`ω´ )真に愛するなら壊せ!!

| ガリバー | 2012/12/13 15:41 | URL |

ロリババァ無理すんな

| 臣 | 2012/12/14 06:55 | URL |















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