陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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証明の証明 ―――イズ・ジス・ジ・ハッピー・エンディング

推奨BGM:Thrud Walkure
*1推奨BGM:Walhall


 もはや詠唱する暇は一秒たりともない。目の前の巨大な姿、ボスのライフポイントはもうすでに残り一ゲージという所まで追い込んだ。あとはこのまま押し切ればいい。だがその最後の一歩が厳しい。ライフが残り一本となったボスはまるでバーサーカーのごとくこの広い部屋を動き回る。走ったり突進したりするだけではなく、今まで全く見た事のない攻撃パターン―――とびかかってきたり、壁を蹴って大ジャンプ等という行動にまで出ている。鈍重だった当初の姿はもうどこにもない。そこには荒れ狂う巨人の姿しかなかった。その瞳を見れば傷つけられたことに対しての明確な怒りを感じられる。それはまるで、この巨人が生きている様な錯覚さえ与えられた。

 だが、

 それに怯む道理などない。

 ヒーラーという立場を投げ捨てて前にでる。弓矢は自分の領分ではない為、握る武器はもちろんレイピアになる。回復魔法のスキルを上げるのと同時にレイピアでの戦闘スキルも上昇させているため、このキャラクターは近接戦闘も得意だ。何かおかしいような気もするが、何も問題はない。だから踏み込んでレイピアを振るう。踏み込みから力と速度を乗せた一撃は綺麗な線を空に生み出しながら、衝突と同時にヒットスパークを発生させる。システムエフェクトが乱れ散り、攻撃に怯む様子も気にする様子もなく、開始当初の数倍の速度を見せるオーガは斧を狂ったように振るいながら縦横無尽に広間を駆ける。

 もはや前衛も後衛も関係のない戦闘だった。だがそれでも、懸命に走る。


「そっち!」

「解ってる!」

「避ける!」

「あ、危なっ!?」

 互いに声を飛ばし合いながら常に位置を把握し、指示を出し合う。見えない、死角に仲間がいたとしても、声を飛ばす事によってそれで居場所を把握する。そしてそうやって全員でボスの位置を把握し、居場所を管理し、そして攻撃と回避の動きをパターン化させる。相手は攻撃パターンが増えたとはいえ、結局はパターンなのだ。前衛後衛の概念が通じないのであれば、前衛後衛に分かれる以外の方法でパターンを組めばいいと言う事だ。タンクや壁と言った事を完全に無視した、全員が指示を飛ばし合ってパターンを構築する。大人数であれば絶対に混乱し、使うことのできない手段だ。対応の早さとは少数でこそ生かされる特権。

 故に、パターンは出来上がりつつあった。

「右来るよ!」

 言った途端、右へ向かってボスが突進した。進行方向にいた仲間は回避し、そして突進した体に矢が突き刺さる。怒りの声と痛みの声を叫びながら、更に怒りを燃やすオーガの姿はどう見ても虫の息。風前の灯火。今、死にかけているからこそ最大の力を発揮している。良くある話だからこそ、侮ってはいけない。

 っと、

「―――あそこね―――」

 矢が突き刺さった場所と、そしてライフバーの動きを把握し、巨体からの攻撃を避けるのと同時に声を飛ばす。もちろん声を向ける先は一人しかいない。誰よりもこの権利を持っているのは彼女だ。

「ユウキ! 首よ! 首が弱点よ!」

「首―――ッ!」

 ユウキが笑みを浮かべて視線をボスの首へと向ける。ライフバーも半分以下に減っている。弱点を狙えばワンコンボで行けるライフ量だ。いい加減長く続いた戦いも、終わらせる時間だ。ボスへと向かって踏み出す。一瞬でトップスピードまで加速すると一直線にボスの前まで踏み出る。今の自分の役割りは単純明快で、周りの皆もそれを理解しているはずだ。

「花を持たせるッスよ!」

「そういう事!」

「皆……!」

 踏込と同時に、硬直時間の長い、そして威力が一番高い単発重攻撃型ソードスキルを足に叩き込む。それが叩きこまれるのと同時に逆側の足が数人に、同じく単発重攻撃型のソードスキルによって攻撃される。硬直や反撃を無視しての決死の一撃は―――奇跡的にも、一瞬だけボスのバランスを崩す事に成功する。そう、一瞬だけ。

 だがユウキには十分すぎる時間だ。

 広間を反対側から疾走するユウキはもはやシステム的加速量を超える速度で加速し、バランスを崩した斧で体を持ち上げようとするボスの腕を踏むと、一気に体を駆け上がる。超加速しながら長剣を構え、一気に首の前まで駆け上がると―――長剣に光を溜める。

「≪マザーズ―――」

 神速の連撃が首に叩き込まれる。美しい十字を描く様にまず十の刺突が突き刺さる。その全てが突進の速度も上乗せされた必殺の一撃。一撃一撃が命中する度にオーガの体は震え、そしてライフバーは見る見るうちに減って行く。だが十連撃目をくらっても、僅かにライフは残っている。耐えきった、そんな表情をオーガは瞳に見せて、

「ロザリオ≫―――!!」

 十字の中心点を貫くような十一連撃目が首を貫き、斬り飛ばす。凄まじい威力を持った突きが最後に残ったライフを奪い、そしてオーガは完全に敗北した。咆哮を揚げながら、ゆっくりとオーガの姿が分解されて行く。必殺のOSSを決めたユウキは攻撃の反動を利用して回転しながら着地すると、呆然とその光景を眺める。

 誰もが無言だった。

*1

 ただ無言で、ボスがゆっくりと分解されて行く姿を眺めていた。最後の最後の瞬間まで分解されるオーガの姿を眺めていると、目の前に経験値と報酬ウィンドウが出現する。その場にいる全員の前にウィンドウが出現する。ボスが落とした経験値やドロップが表示されているのは理解しているが、それに反応できない。ただ誰もが無言で数秒間それを眺め続けると、

 ふと、声を漏らした。

「勝った……勝ったんだ……」

 漏らした声に皆が反応する。

「勝った! 勝ったんだよ!!」

「うおおおおお!!! 死ぬかと思った! 死ぬかと思った! 生きてる! 超生きてる!!」

「ヒャッハー!! もうわけわかんない!!」

 誰もがこの少数でクリアできた事実に狂喜乱舞していた。たったこれだけでボスの攻略を成し得るなんてそれこそ前代未聞の珍事だ。たったこれだけの人数で攻略される事を想定していないのだ、このアインクラッドは。だからたったこれだけの人数で攻略できる事はまさに奇跡としか表現のしようがない。

「ユウキ!」

 急いでユウキに駆け寄ると、ユウキがぺたりと、床に沈み込む。先ほどの青い顔を思い出してまた苦しんでいるのではないかと心配になったが、駆け寄って見るユウキの様子は悪くはなかった。ただ、瞳いっぱいに涙を溜めていた。

「……出来た。勝ったんだ、僕たちだけで」

 まるで信じられないと言った様子でそう呟いていた。と、そこでボスの部屋の扉が開く。ボスが倒されたことによってボス部屋の扉は常に開かれる状態となり、そしてここの攻略が終了したという事が示される。同時に、

『―――アインクラッド第六十五層の攻略が完了しました。六十五層のボスは以下のプレイヤー達により攻略を―――』

 カーディナルによる攻略完了のアナウンスが放送としてALOに響いている。少人数で攻略を完了したため、パーティーリーダーの名前のみが放送されると言う事はない。この一戦に参加していたスリーピング・ナイツのメンバー全員と、そして私の名前が放送され、

『―――以下の名を黒鉄宮に永遠に刻みます。おめでとうございます、≪スリーピング・ナイツ≫様』

 何やら普通の放送らしからぬ終わり方だったが、それは問題ではない。扉があいたところで外にいたギルドが―――

「アスナ!」

 ―――はいってこない。真っ先に入ってきたのはライフを半分まで減らしたキリト君と、そして同じく半分ぐらいまでライフを減らしたクラインだった。その後に続く様にぼろぼろのローブを着ている集団が入ってきた。誰もが無事ではなく、頭上のカーソルが緑色からオレンジ色になっている―――つまりはPKを行おうとした犯罪者プレイヤーの色になっている。

 そこに、先ほど妨害していたギルドの姿はない。つまり、キリト君達の勝利だ。

 三十を超えるボス攻略装備のパーティーに十人ほどで勝利したキリト君達の戦闘力はいろいろおかしいとツッコミたい事があるが、とりあえず今はその集団を置いて、

「アスナ、勝てた……勝てたんだよ僕ら……」

「うん、解ってる。解ってるから」

 ユウキが涙を流しながら抱きついてくる。そしてその体を優しく抱擁する。

「キマシタワー」

「キリト氏! キリト氏! 嫁を取られてますよ!!」

「お前ら絶対に斬る。ちょっとそこに座って首を前に出せ」

「落ち着けよキリト……」

「さんをつけろよ!!」

「さんをつけろ!」

「さんをつけろよデコ助野郎!!」

 こっちが祝勝ムードで若干喜びつつしんみりしてるのにあっち側は平常運転過ぎた。その声を聴いて胸の中で泣いていたユウキの声が泣き笑いに変わる。いや、笑っている。涙を流しながら、勝利した事実に笑っている。

「あぁ、勝ったんだ! 僕たちは勝ったんだ!」

「リーダー!!」

「やったわね!」

 スリーピング・ナイツの面々がユウキの周りに集まりだし、そして、ローブ姿の変態達まで集まり、全員でユウキを持ち上げて、胴上げを始める。

「うわわわ!?」

「ははははは!!」

「ノリとテンションに任せるが良い」

「初対面のメンバー多いのにかなり図々しいわねこれ……」

 まあ、オレンジプレイヤーになってまで相手を全滅させてくれたのだ。これぐらいの役得はあってもいいかもしれない。ともあれ、そうやって私達はスリーピング・ナイツのリーダーであるユウキを胴上げで空高く飛ばして、この結果を喜び合った。最終的に力を入れすぎて天井にぶつけたのは些細な話だ。


                           ◆


 そうやって、スリーピング・ナイツの挑戦は終わった。だがスリーピング・ナイツ自体は終わらなかった。カーディナルによってギルド名が盛大にアナウンスされたことにより、話題は一気に少数精鋭の謎のギルドの事となり、その噂を聞いたプレイヤーやギルドが挑戦したり勧誘したり同盟を申し込んで来たり、てんやわんやの事態となった。

 それだけには終わらず、祝勝会等というものを勝手にキリト君が計画、そして実行した結果知り合いの大半や見た事のないインプやプーカの領主までやってきて、その後勢いに任せてその場にいるメンバーでアインクラッドを一気に六十八層まで攻略してしまった。

 本当の馬鹿騒ぎとはこういうことなのだろう。

 スリーピング・ナイツの誰もが笑って、そして楽しんでいた。スリーピング・ナイツの最上の目的である名前を黒鉄宮に刻むことが完了して、何か新しい目標でも作るのではないかと思ったが、そんな事もなく、祝勝会のムードにズルズルと引きずられるようにただ笑って、そしてあの日の事を話し合う日々が数日続いた。

 そしてある日。

 ―――私の元にあるメッセージが届いた。

『―――ギルド≪スリーピング・ナイツ≫は解散しました』

 ギルドの解散報告、そしてフレンドリストからスリーピング・ナイツのメンバー、全員が消失したのであった。




さて、楽しい楽しい明るいお話もここまで、なのかな。
救いがあるのか。救いがないのか。全てはアスナさん次第と言う事で。
少し、鬱っぽくなるのかなぁ。
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| 断頭の剣鬼 | 13:00 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

>ユウキが笑みを浮かべて視線をボスの首へと向ける。
弱点を見つけたから笑ってるんだよね? 首を攻撃するからじゃないよね?

| とろつき | 2012/12/12 15:50 | URL |

うわぁあぁああああ!!!ユウキちゃんが閣下みたいになってる!?しかもキリトさんが首置いてけ発言したぁ!!

( ^ω^)二人共妖怪化してるねwww

| ガリバー | 2012/12/12 16:18 | URL |

妖怪化は進行する、そう、確実にな……!
そしてタイムリミットか……。

| 空 | 2012/12/12 17:01 | URL |

質(キリト、ユウキ)の妖怪、量(変態)の黄金ですね。わかります。

| ROGUE | 2012/12/12 19:50 | URL | ≫ EDIT

キリキリさんとユウキチャァァァァンの妖怪化が進んできてるw


ユウキチャンユウキチャンクンカクンカスーハースーハーゼッケンノユウキチャアアアアアアアアアン!!!!!
ユウキチャンユウキチャンクンカクンカスーハースーハーゼッケンノユウキチャアアアアアアアアアン!!!!!
ユウキチャンユウキチャンクンカクンカスーハースーハーゼッケンノユウキチャアアアアアアアアアン!!!!!
ユウキチャンペロペロペロペロペロペロゼッケンノユウキチャアアアアアアアアアアアン!!!!!

(※このプレイヤーはカデ子さんにより、グラズヘイムに送られました)

| 尚識 | 2012/12/12 23:57 | URL | ≫ EDIT

あぁ・・・アキヒロンェェ・・・。

| 断章の接合者 | 2012/12/13 12:34 | URL | ≫ EDIT















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