陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

魔法少女リリカルなのはStrikerS ~不良騎士道~ 第7話 不良騎士夢を見る

「―――フェルナ、アティス、ティルク行けるか?」

『ま―――か―――て』

『問題ないよ』

『いける』

「チ、フェルナのヤツまだ念話を上手く使えないのか」


 木箱の後ろに赤毛の少年が隠れている。その姿は汚いと言われても仕方がないレベルに汚れている。赤毛とは言うが、その髪は泥や埃、多くの汚れや血を受けて固まっており異臭を放っている。だが異臭を放っているのは髪ではなくその少年の全てだ。着ている服もぼろぼろだったり赤く染まってたりと汚さが窺える。木箱の後ろに隠れる少年の手にはひび割れた鏡が握られており、それを木箱の横から出すことでその裏、先の光景を確かめている。

 鏡には幾つかの姿が映っている。その者たちは全て騎士の様な姿をした人間だ。四人で十字架を作るように隊列を組み、高そうな装飾品を見につけているから裕福な場所から来た人間である事が解る。警戒し、隊列を組んでいることまではすばらしい。だが赤毛の少年は思う。こいつらは甘い。ここの事を知らなさ過ぎる。だから、

 ―――こいつらは今から死ぬ。

「合図を確認したら殺れ」

 返事は待たないし合図とは何か既に話は終わっている。故に返答を赤毛の少年は待たずに黒い鉄の塊を取り出す。

 実弾銃。

 管理局の法では"魔力を使用しない科学、または火薬を使用する兵器"の事を質量兵器と定義している。魔力を使えない人間にとっては魔力を持って戦闘訓練をつんだ相手、所謂魔導師という存在は持たない人間の戦闘力を大幅に超えている。その差を埋めることを可能とするのが実弾銃、質量兵器だ。魔力を持たない人間でも簡単に扱うことが出来るし、何より魔導師が纏うバリアジャケット相手に絶大な効果を発揮することが出来る。バリアジャケットは魔導師の魔力が生み出す防護服。その効果は物理、魔力両方の衝撃に強い。だが銃弾の様な先の尖った一箇所への一極集中した攻撃には弱いという性質を持っている。そのための防御魔法であり、鍛錬である。

 だがそんな小難しい事を赤毛の少年は知らない。

 引き金を引けば魔導師を殺せる。

 それ以上もそれ以下の情報も必要としていない。

 赤毛の少年が銃を持たない手でポケットから一つの鉄の塊を取り出す。安全ピンの刺さったそれを引き抜き、スラムの中を歩く隊列を組む騎士に向かって投げる。

「襲撃!?」

「プロテクションで守れ!」

 即座に反応するがその前に鉄の塊は爆発し閃光を生み出す。それが純粋な爆発だと思っていた騎士達はシールドを張るが、それを直視してしまい目を失う。その瞬間に赤毛の少年が前に出る。比較的小さめで、子供で持つ事の出来る銃を走りながら構えると迷わず引き金を三度引く。狙って放たれた弾丸が光によって視界を失い、混乱した騎士の眉間に突き刺さり一瞬で絶命させる。見えはしないが、それでも音で質量兵器による襲撃だと判断した騎士が即座にデバイスである剣を抜く。

 が、さらに銃声が鳴る。

 剣を抜いた騎士達が次々とその場に倒れ始める。それは赤毛の少年とはまた別方向からの銃撃。赤毛の少年の仲間とも言える存在達による戦闘への参加だ。赤毛の少年の様に、無駄のない射撃で頭部だけを打ち抜くと周りを警戒したままゆっくりと死体となった騎士の体に接近する。銃を構えたまま、赤毛の少年もゆっくりと騎士の死体へと近づいてゆく。その視線は騎士へと向けてではなく、周囲へと向けてある。

「連中が嗅ぎ付ける剥げ」

 周囲を警戒したまま仲間に死体から金目の物を奪えと指示した赤毛の少年に対し言葉が返ってくる。

「リーダー」

 振り返る事無く返答が返される。

「どうした」

「こいつどうする」

 そこで初めて赤毛の少年が振り返る。その視界の中には初め見たときはいない存在がいた。少女だ。おそらくは赤毛の少年よりも年は低い。金髪に合う、質素ながらも美しい白いドレスを着た少女は騎士の死体に囲まれるようにしてしゃがみこみ、怯えるように震えている。デバイスを所持していない少年達は少女が何を喋ろうが理解できないし少女もデバイスを持っているようには見えないために言葉は通じないだろう。

「いい服だけど返り血浴びてる」

「ねだん。さがる」

 結局の所、心配するのはそれだ。金になるかならないか。それだけが少年達の世界で大事な事。金があれば生きていける。金があれば食っていける。

「若いけど売る?」

「持って帰って遊ぶ?」

 どうするか聞いてくる仲間達に対して赤毛の少年は金髪の少女を見る。状況から分析するに、おそらくだが今の騎士は護衛か何かでこの少女を守るためについてきたのだろう。考えられる理由は何個かあるがそれはさして重要な情報ではない。重要なのがこの少女が金になるかどうか。

 体をバラして売るか。

 もしくはこの少女をモノ好きの慰み者にするか。

 もしくは奴隷にでもして自分達のために働かすか。

 実際自分達も体を売ってお金を稼ぐのは最終手段として使っている。一部の変態共は結構な金額を払ってくれる。

 だが、

「―――解放する」

「解放するの?」

「こいつ金持ちだ」

「金持ちだったら人質にしないと」

「ころさなきゃ」

 物騒極まりない仲間の言葉にいや、と赤毛の少年が頭を横に振る。

「ディーター達の様な大人だったら交渉とかも出来るかもしれない。だけど俺達はまだガキだ。なめられて殺されて終わる。こいつに手を出したら俺達皆殺されるかもしれない。だからこいつには手を出さない。こいつは逃がして恩を売る。それでも外の連中が来るかもしれないけど、その時は他の連中のせいにしてなすりつける」

「解った」

「わかった」

 頷く仲間達に死体から装備を剥ぐ事を急がせながら赤毛の少年が怯える金髪の少女に近づく。

「おい」

 赤毛の少年が近づいて声をかけるが金髪の少女は顔を上げないが、すすり泣く声が聞こえる。しきりに何かを呟いているようだが、その言語を赤毛の少年は知らないし興味もない。

「おい」

 反応はない。金髪の少女は泣き続けている。時間とは有限である。赤毛の少年が金髪の少女の髪を掴み、持ち上げる。金髪の少女の喉から悲鳴が漏れ、おそらく助けを呼んでいるのだろうが無駄だ。そんな光景そこでは日常茶飯事なのだ。一々悲鳴をあげたって誰も助けに来ない。そういう地獄に少年は産まれて、この少女は知るべきではなかった。少女の悲鳴に興味を一切持たない赤毛の少年が金髪を引っ張りながら歩き出す。それを痛がる少女が少年に逆らえるわけもなく立ち上がりながら引っ張られてゆく。幼いが整っているはずの顔は恐怖に染まっている。特にそれをどうとも思わずに少女を引っ張り続ける。

 やがて少女を引き連れ数分、誰にも邪魔されることなくスラム街でも安全な部類に入る場所に出る。ここまで来ればレイプや暴行に直ぐ手を出すような連中がいないから、少女の足でも走れば十分に逃げ切れるだろうと、そこで髪の毛から手を放し少女を押す。

「イケ」

 カタコトだが公用語を話した赤毛の少年に対して金髪の少女が大きく目を開ける。一瞬でも会話が通じるとでも思ったのか、口を開こうとし、それを遮るように赤毛の少年が知っている公用語で少女に話しかける。

「イケ、ハヤク、ニゲル、ハヤク、オソイ、コロス」

 途端に少女が恐怖の表情を浮かべる。あっちだと、出口を示す為に指を向ける動作に一瞬ビクっとされるが、即座に背を向けて金髪の少女がそちらへと走り出す。これでいい。これで終わりだ。騎士の着ていた服とデバイスは高く売れる。今日の儲けはいいからしばらくの間メシには困らない。だがそれも全て上手く売れて合流できたらの話だ。ここは地獄。誰もが自分勝手に生きて人の命が塵屑同然の価値しか持たない場所。

 そんな地獄が一人の男の手によって消え去るまで数ヶ月もなかった。


                   ◆


「ッッ!」

 ウィルフレッドは自分の意識が覚醒するのを感じる。急速に浮上した意識は眠気を一気に拡散させ体を起き上がらせる。右手で顔に触れるとそこには確かな"自分"の感触を得られる。起きている。夢ではない。そのことを確認してウィルフレッドがベッド脇のテーブルに置いてある時計を見る。

「まだ五時か……もう一眠りするか」

 自分が活動するには到底早すぎる時間だと思い、再びベッドに倒れる。懐かしい夢を見てしまったせいで眠気は一気に吹き飛んでしまった為、また寝るのは難しいだろう。とはいえ早朝訓練何て他人に見られる可能性のある時間に鍛錬をするわけにもいかない。

「んー……んんー! ……やっぱ起きるか」

 しかし、やっぱり起き上がる。やることがないのなら適当にそこら辺をぶらつけばいいのだ。たまには自分で朝食の準備をするのも悪くはない。料理の腕は壊滅的だが。とりあえず何か出来ることがあるだろうと思い、起き上がらせた体を真っ先にシャワーへと向かわせる。


                   ◆


 シャワーと歯磨きを終え、何時ものスーツ姿に着替えカーテンを開けると本格的にやることがない。いつもなら朝食にする所だが、生憎とまだ六時にもなってないので朝食にはまだ早い。どうするか、と思ったところで部屋にベルが鳴る。こんな時間に来客とは珍しいなと思いつつもウィルフレッドが立ち上がり部屋のドアを開ける。

「おはよう、ウィル」

「あれ、お嬢?」

「ほら、違うでしょ」

「あ、お、おう、おはよう」

「よろしい。それじゃ私が朝食を作るから中に入れてくれるわよね?」

「どうぞどうぞ」

 来客とはカリム・グラシアだった。一歩後ろに身を引くとカリムが部屋の中に進入する。そのまま真っ直ぐキッチンへと向かい、冷蔵庫や戸棚から必要な食材を取り出し始める。慣れた手つきで必要なものを取り出すカリムの姿はまるでその部屋の主の様だが、実際はウィルフレッドの食事関係を彼女が作っているだけで、何度も何度も料理をしに部屋を訪れているうちに自然とカリムの使いやすいように配置されてしまったと、それだけの話なのだ。

 既に朝食の準備を始めてしまったカリムにやや押され気味だが、その勢いに押される形でテーブルを整える。キッチンを軽く覗いてみた所、パンケーキとサラダを作っているのでナイフとフォーク、あとパンケーキにかけるハチミツをだす。人によってパンケーキにかけるものは変わるだろうが、基本的にカリムとウィルフレッドの中でその議論はハチミツということで合意を得ている。

 一足先に椅子に座り、カリムの姿を見る。既に服装はカソックのそれになっているが、その上からエプロンをかけているのが見える。

「なぁ、カリム」

「どうしたの?」

 フライパンから手を放す事無くカリムが答える。

「何で俺が早く起きたこと知ってんの。まさか監視されてるとか……!」

「勝手な被害妄想はやめなさい」

「はい……」

「別に、ただなんとなくよ。私達の付き合いは短くないんだし」

 それだけを告げてカリムは料理に没頭する。包丁が野菜を裂き、まな板を打つ音が静かな部屋に木霊する。ただ黙って料理するカリムの後姿を見ているとウィルフレッドの脳を懐かしい記憶が掠める。

「カリム」

「どうしたの?」

「……いや、なんでもねぇ」

「どうしたのよ。そんな風に急にやめると気になるわよ」

「いや、いいケツだなぁ、と思って……」

「ここに熱したフライパンがあるんだけど」

「あ、はい、すいませんでした」

 何時もと同様軽口をするウィルフレッドだが、カリムは敏感にウィルフレッドの様子が何時もとは少し違うことを感じ取る。というよりも、カリムからすれば若干露骨過ぎる、とも取れるほどのリアクションだった。故にカリムはそのまま黙るウィルフレッドの事をそのままとし、黙々と朝食の準備を進める。フライパンの上でパンケーキが狐色になるまで焼くとそれを皿に移し、ボウルの中に入れたサラダと一緒にテーブルにまで運ぶ。

「サンキュー。毎回毎回助かる」

「いいわよ。もう何年も続けてるから慣れちゃったし」

「そっか、そうだったな」

「私の分も今作っちゃうから先に食べてて」

「了解」

 皿の上に乗ったパンケーキにバターとハチミツをかけるとフォークとナイフでパンケーキを四等分にし、そのままそのピースを半分に切って口に運ぶ。ウィルフレッドが無言でパンケーキを食べる。その動きによどみはないが明らかに意識がここにあらず、と言った様子だった。

「ウィル」

「ん?」

「悪い夢でも見た?」

 フォークとナイフを一旦置き、椅子の背もたれに体を寄りかかせる。

「お前と初めてであった時の事を夢に見た」

 なるほど、とカリムは納得しながら自分のパンケーキを完成させ、火を止めると皿の上に載せ、テーブルへと運ぶ。自分の分のパンケーキにバターを乗せ、その上からハチミツをかけて切る。昔に言うべき事は全て言ったと、カリムはそう思っている。だから特に今はいう事はないと。それを示すように静かな朝、何も言わずに朝食を口にする。が、ウィルフレッドは朝食を一口食べただけで、

「いや、終わった話だったな、こりゃ」

「そ、終わった話なの。カースト先代騎士長は逝ってしまったし、ウィルもこうやってまだ元気にやってるの。それ以上に大事なことはないでしょ」

「ま、そうだな」

 ウィルフレッドがフォークとナイフを再び手に取り、パンケーキを口に運び始める。静かな朝に僅かな喧騒が混じり始めるのが遠くながら聞こえてくる。カリムとウィルフレッドのいる場所は神殿騎士、つまりは階級的に上位の人間用の宿舎の為に人は殆どいない。が、普通の騎士やシスターは相部屋だったりするのでそんなことはない。誰か一人目を覚ませば連鎖的に残りも目を覚ます。そんな風に、教会が朝の活気に飲まれるのもそう遠くはないだろう。

「そういえば」

「何だ?」

「―――クゥーニャが顔を見せに来るらしいわよ。長い間帰ってきてなかったし」

 凍った。フォークとナイフを手から離しウィルフレッドの動きが盛大に凍った。まるで石像になったかのような動きの停止っぷりにカリムが軽い笑い声を作る。

「何、そんなにあの二人と会うの嫌なの? 二人ともいい人たちよ」

「人間性が問題じゃねえ! いや、実は凄い問題だけどそういうことじゃねえ!」

 ウィルフレッドの視線が部屋を見渡す。そこにはダーツのセットや棚に飾られた高級なお酒、ピンナップが張られている。ダーツセットはいいとして、酒やピンナップは明らかにアウトだ。どこからどう見たってアウトだ。

「俺が三位に消毒される……!」

「あの子、貴方を更生させる事に一番積極的だったからね」

「く、糞! カリムの笑顔が凄い邪悪に見えるぞ、これ!」

「ちなみにこの話を聞いたの二日前だから」

「計画的犯行かよ! 狙ったな! カリムさん狙いましたね!」

「少し話を忘れてただけよ到着は五日後―――というのが普通だし、もう到着しててもいい頃かしら」

「く、食ってる場合じゃねぇ、早く隠さねぇと……!」

 そうは言うが、カリムは朝食を取りつつもその顔には笑顔が浮かんでいる。どこからどう見たってこの状況を楽しんでいることは一目瞭然だった。

 だが、無情にも部屋のベルは鳴る。

「き、来た……! 来やがった……」

 不良騎士、人生最大のピンチが訪れる。
スポンサーサイト

| 不良騎士道 | 10:48 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://tenzodogeza.blog.fc2.com/tb.php/29-bc5326cf

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。