陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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失敗と成功  ―――バトリング・ノーバディー

推奨BGM:Thrud Walkure
*1推奨BGM:Burlesque


 かつてない程に神経が尖っている。

 もはや余裕はない。余計な事を思考する暇もない。

 倒せ。倒せ。倒せ。倒せ。倒せ。

 目の前のこれは敵だ。

 ―――倒せ!

「―――!」

「―――!」

 互いにひとことも口から言葉を零す事はない。ただひたすら無言で、敏捷ステータスが許す限りの最大速度で動き回る。もはや空も地上も、関係なくアルンの市内を縦横無尽に駆け廻る。街の道路を走ったと思えば今度は壁を蹴り、壁を足場に走る。そして道が途切れたのであれば瞬間的に翅を動かし体を浮かび上がらせ、飛行して加速する。とにかく加速する。最初に加速する。まだ加速が足りない。

 敵は、加速しているのだから。

 この勝負の行く先、まず最初に速度が来ると言う事は一歩目で理解していた。奇遇な事に相手も全く同じことを考えていた。だからまず最初に刃を交わし合ってから、互いにアルンの市内を駆け巡る。何度も何度も剣をぶつけ合いながら加速し、

 そして最高速に乗った時点でアルンの広場へと戻ってくる。交差する様に剣を交わし合っても速度を殺さず、速度と威力を乗せて反転し再び襲い掛かる。斬撃一つ一つを狙ったところへと寸分の狂いもなく叩きこむ。全損決着モードであるため攻撃を食らってもそれで終わりはしない。だが、それで体力は削られる。


 何故か、

 この相手にだけは負けたくなかった。

 闘志を燃やし、長剣を片手剣と交える。火花が舞い、そして鉄が鉄を叩く嫌な音が鳴る。黒い刃に一瞬だけ自分の顔が映る。女の子なのに、何とも真剣で獰猛な表情をしているものだと思う。だがどうしても目の前の存在が気に入らないのだ。もはや生まれ持っての宿命にも感じる。ともかく、目の前の黒い青年が気に入らない。実力は間違いなくこのゲーム、ALO最強クラス。だが、それでも、多分負けても認めない。

「―――」

 声を漏らさずに交差と同時にソードスキルを叩き込む。まるで鏡合せの様に同じことを相手もやってきた。同じだ。発想も動きも似ている。違う、片手剣というジャンルを相手も僕も探究した結果、スピードと一撃の重みを求めたのだ。究極とは陳腐なもの、と明広は言っていた。実際そうなのかもしれない。誰もが究極という点を求めるのであれば、

 行き着く終点とは一つ。

 だから相手と自分のスタイルが似てしまうのはどうしようもない事。ただ一つ自分と相手の違いを加えるとすれば―――動きだ。

 なにか、相手は持て余している様に感じる。いや、違う。相手は足りない様に感じている。何かが失われて、それなしで戦おうとしている。そんな事を直感的に感じ取る。

 だがこれらすべては刹那の思考。考えたのも考えないのも全ては刹那の夢。その時間の間では行動したのかしなかったのかも曖昧で、その領域に踏み入れるものにしか理解できない。

 だから今の思考はほんの一瞬だけ現れたがすぐに流れて―――再び剣は舞う。

 敵対者もまた真剣な表情に、獣の様な獰猛さを見せている。一瞬でも隙を見せればその瞬間食らいつく事は間違いない。だが隙など与えない。体は情熱と本能のままに任せる。だが脳は冷静に、極めて冷静に保ちながら理性で肉体を制御する。かつて今までここまで奮戦したことが、本気で戦った事があろうか。今、確実に少し前―――ボスに挑戦した時よりも強く、輝いて戦っていると言える。

 この瞬間の僕は誰よりも輝いているから。

 だからさらに加速する。長剣が片手剣の切っ先とぶつかり合い、互いに得物を弾きあう。だがその瞬間には左拳を突きだしている。それを黒いスプリガンは蹴りあげる。だがそれでスプリガンは急な回避行動が出来なくなっている。こっちがまだ残す片足で蹴りを食らわす。

 衝撃。

 音と共に発生したのは上げられた足が踵落としの要領で蹴りを防いだ事による衝撃波。相手も間違いなく本気だ。今、この瞬間、自分と戦いながら磨かれているのが解る。そして自分も、間違いなくこの敵を相手に刹那ごとに強さを刻んでいる。故に、迷う必要など欠片もない。

「―――ォ」

「―――ッ」

 歯を強く噛みながら、接敵する。長剣を振るい片手剣をぶつけ合い、回り込みながら回転を咥え、最速で斬撃を繰り出す。軽い跳躍と共に妖精の翅を使い地上では得る事の出来ない旋回速度を実現させる。本来ならデュエルは地上か空中、そのどちらかのみで行うものだが、この相手だけは両方と指定してきた。そして自分もそれに応えた。だからその両方を使って戦っているが、

 誰がここまで激しいものになると予想したであろうか。

「―――ォオ」

「―――ッァ」

 声を漏らしながら高速で旋回し、バックハンドで握った刃を叩きつける。速度の乗った刃はそれだけで脅威だ。だが速度が乗っているのは相手も変わらない。素早い動きで剣線を見切り、僅かな動作で相手が刃を弾いた。今までの様な衝突ではなく、弾いた。それは動作の最適化、そして此方の動きに対して慣れて来たという事実でもある。驚異的だ。なるべく見切らせない様に似た様な動きを一つもとってないはずなのに、この黒いスプリガンは驚異的なセンスで此方に食いついてきている。だからと言って、

 ―――僕だって負ける理由がないんだ。

 ずっと入院してた。誰よりも早く、そして長くVRというものに触れていた。あの時、あの病室の、あの仮想世界で、僕は電子の申し子とまで呼ばれた。それは僕が誰よりも電子機器を操る事に長けているからでも、それについて詳しいからでもない。ただひたすらあのVR世界に僕が存在し続けたからだ。

 だから、

 僕は誰よりもこの世界と近い。この世界が確実にもう一つの現実なんだ。

 だから、この経験だけは……絶対に裏切らない。

 誰よりも、何よりも早く―――反応して見せる。

 そんな思いと共に、

 相手の斬撃の軌道を見切り、予知する。極限まで高められた集中力が見えるものをスローにする。加速する思考の世界でまるで体が海の中でもがく様に重い。思考に体が追いついていない。だがそれには構わない。全力で肉体を追いつかせようとしながら見切った相手の斬撃の予測地点に長剣を動かし、流す。超高速の斬撃を受け流し、スプリガンの体勢が崩れる様に見えた―――が、スプリガンは紙一重の所で剣を放した。剣を放す事によってそれ以上体が流される事を阻止し、逆に踏み込んでいた。

 普通の人間はこの動きに反応できない。故にスプリガンの青年がとったこの行動は王手にも近い一歩だった。

 ―――だけど、

「―――ォオオオオオ!」

「―――ッァアアア!!」

 それに、反応する。

 誰よりもVRに触れていたため、この世界との親和性においては誰よりも高いものを持っている。そして生まれ持った反射神経はこのVR世界との親和性を含め、常人には至れない領域にある、と信じている。だからこそ、見切った。見切れた。反応できた。

 接近の一撃をギリギリで回避できた。

 成功した瞬間、スプリガンの表情に驚愕が浮かぶ。そして、

「君は―――いや、まさか―――」

 何かに気づいた様な表情をスプリガンが浮かべた。だがその先を聞く前に、

 長剣を体に叩きつけて、体力を奪う。

 それで戦いは終了し―――勝利を得た。


                           ◆


「はぁ、はぁ、はぁ……ひ、久しぶりにこんなに頑張った……」

*1

 勝利したというのに勝利した気分になってない。両手を膝にとつきながら荒い息を吐き出していると、黒いスプリガンが片手剣を回収し、此方へと歩み寄っていた。まっすぐに近寄ってから手を差出し、

「ナイスファイト。久しぶりにいい勝負をしたよ」

「うん。楽しかったよ」

 握手を交わす。周りのギャラリーも凄まじい試合が見れたおかげか、興奮が凄く、そして称賛の声も多い。

「キリト―――! もげろ―――!」

「既婚者死ね―――!」

「キリト爆発しろ―――!」

「俺らのユウキちゃんを奪うなぁ―――!」

 最後の奴は一体何が言いたいのだろうか。ともあれ、発言を聞いて苦笑している辺りこの人物―――キリトにとってはこのぐらいの発言日常茶飯事なのだろう。ここまで他人に恨まれるとは、この人物は一体何をやっていたのだろう。

 あぁ、だが、しかし。

 ……この人で決定かな?

 自分に負けたとはいえ、今まで戦った中で間違いなく最強のプレイヤーだった。いや、ALO全体から見ても間違いなく最強の一角だ。それは手合せした自分が誰よりも理解している。それにキリト、といえばSAOを解放した英雄と全く同じ名前だ。ゲンを担ぐにしてもこれほど縁起のいい名前の持ち主もないだろう。それにこれだけ実力があるのであれば戦闘では活躍するに違いない。もはや彼で決定と言っていいだろう。口を開こうとした時に、

「君は、ええとユウキはどっかの研究所で働いてたりしてないかい? 動きが異常にVRに慣れてたりするから少し気になってたんだけど―――」

 ……え?

 たったあれだけのやり取りで、正体をほぼ半分見抜かれていた。戦闘力だけではない。この男、キリトは自分に匹敵する反射神経、そして何より情報を集めるための洞察力が異常に高い。今は研究所と言っているが―――メディキュボイドまでたどり着きそうな気がする。いや、この男は間違いなくメディキュボイドまでたどり着く。僕の正体までたどり着いてしまう。そう確信させる何かがキリトには存在する。そう、あえて言うのなら―――キリトは、真実へと辿り着く事に長けている。そんな考えが浮かんだ。

 ……初対面の相手に何でこんなことを思うんだろう。

 不思議な事だった。

「あぁ、うん。保護者の人がVR関係の人で、その関係でよく触れてるから……」

「あぁ、なるほど。だからかぁ。俺でも反応できなさそうなものに反応していたし、君がSAOにいたら二刀流は君の物だったんだろうなぁ……」

 何やら一人で浸り始めているキリトの姿があった。しみじみとつぶやく姿はなんというか、非常に歳と疲れを感じさせるものだった。まだ年齢でいえば十八ぐらいにしか見えない青年だろうに、もう三十を過ぎる男の様な話し方だった。なんというか、哀愁が言葉の端に漂っている。

「かぁー! キリトでもダメだったかぁー!」

「あ」

 群衆の中から出てきたのはクラインだった。クラインの方向へキリトが片手をあげる。

「紹介サンキュー。久しぶりに純粋に本気になれたよ」

「まぁたお前ぇは含みのある言い方をしやがって……」

「いやぁ、別に何ともないぜ……?」

「何でそこで疑問系なのかな?」

 だけど、またアテが外れてしまった。もうこうやってデュエルをしてプレイヤーを誘い続け、かなり上位ランクのプレイヤーが現れ始めている。いい感じに餌と釣り針が機能している。新年に入って、学校へも通う事が出来た。間違いなく運は向いてきている。ツキはある。僕は今までにない程の幸福を感じている。

 だけど、

 僕は何時まで人生の絶頂にいられるんだ……?

 これが永遠なんてありえない。なぜならこれは契約だから。

 だから、

 ―――早く、しないと。

 約束の時が来るまで、最後の一人を見つけ出して、生きた証を……この世界に刻みたい。




さて、もうそろそろMR編も、原作の所に入ってきたなぁ……。
キリトさん、二刀流使わないナメプでナイスファイトとか言っちゃう人 (
たぶん二刀流使ってたら勝てるんだろうなぁ……。
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| 断頭の剣鬼 | 10:54 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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