陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

失敗と成功  ―――ルッキング・フォー・パートナー

推奨BGM:Burlesque
*1推奨BGM:Krieg


 年が明けて僕らは再びアインクラッドに挑戦した。そして、また敗北した。だけど僕らは敗北から学ぶ。学ぶから次こそは勝利できる。そう信じてアインクラッドのボスに再び挑もうとすると、ボスは僕らが到着する前に倒されてしまっている。そうやって僕らはボスを倒す事が出来無い状態が続いた。悔しい。あと一歩、あと一歩という所で新パターンの追加されたボスには届かない。

 人数が足りない。

 それがスリーピング・ナイツの永遠の弱点。僕たちは名前を刻みたいから。永遠に忘れられない輝きとなって存在したいから。だから人数には限界がある。誰かを勧誘できたとしても、刻まれる名前の事を考えるのなら後一人しか誘う事が出来なかった。これで誰か弱かったりする人物を誘ったら、あまりにもお粗末な結果しか見えない。スリーピング・ナイツには、

 アインクラッドの攻略に長けたベテランが必要だった。

 アインクラッドに出てくるボスは強化されているが、元々の攻撃パターンや姿はそのままだ。なので、SAO時代からのプレイヤーをスリーピング・ナイツに引き込むことができればスリーピング・ナイツの戦闘能力は格段に上昇する。だがただ情報を知っているだけではだめだ。実際に攻略に参加できた程のベテランプレイヤーが必要だった。そして、それを見つけ出す事は簡単ではない。

 だから、

 スリーピング・ナイツに相談する前に、

 父親代わりの人物と話し合ってみた。


                           ◆


「ねぇ、明広」

「なんだいマイ・リトル・ガール」

「今のはスルーするけど、強い人といっぱい会うためにはどうすればいいかな?」

「強い人と会うかあ」

 明広がソファに座り、少し悩む様に顎に手を当て、そして数秒黙る。が、答えは意外と早く帰ってきた。

「デュエルしまくって有名になればいいんじゃね? 俺もそれで千人斬ったし」

「千人とか流石頭イカレてるね」

「俺も結構それは思う。若いって怖いわー。他にも武勇伝聞く?」

「うん」

 その後関係のない話で時間を潰してしまったが―――だが手段は悪くなかった。


                           ◆


 アルンの広場に立つ。周りを見れば多くのプレイヤーが歩いている。シウネー達他の仲間はいない。全員装備の調達や強化で忙しく動き回っている。スリーピング・ナイツ、最後のメンバーの勧誘は間違いなく僕の仕事だ。だから、

「≪マザーズ・ロザリオ≫」

 広場、正面に向かって十一連撃のオリジナル・ソードスキルを放つ。ここで説明するのであれば、オリジナルのソードスキルで十一連撃とはかなりレア、というか作るのが難しいのだ。オリジナルのソードスキルを作る事の出来るアップデートによって皆がそれぞれ好きな動きを登録するのはいいが、実用的かつ美しい攻撃を生み出すというのは簡単ではない。結構難しい話で、大抵の場合は五連撃辺りが限界になっている。それ以上はかなりの技術が必要になって、そして十一連撃のソードスキルなんておそらく僕以外には誰も生み出していない。

 だから偶然その光景を見ていた人たちが一斉に僕の方に視線を向ける。視線を集めているって理解して、マザーズ・ロザリオを放った状態のまま数秒動きを止めてから構えを解いて、息を吸い込む。

「今の片手長剣十一連撃OSS! 僕に勝てた人には秘伝書にしてあげるよ! 僕に勝てるって言う人はいないか―――!!」

 挑発にも似た言葉を、いや、確実に挑発だ。明広は餌をぶら下げて適当に挑発したら人間は結構釣られるって言ってたし、これで一気に釣れるはずだ。そう思って周りを見渡すと、早速というべきか。

「……今の見た?」

「十一連撃とか超すげぇ」

「特定はよ。はよ!」

「俺の美少女センサーが反応してる……!」

 やっぱALOはどこかおかしい。

 だが前に踏み出すプレイヤーはいた。赤い防具で身を包んだプーカに見える。

「俺が相手するぜ」

 黒がベースのプーカにしては珍しい色の選択、そして珍しくまともな姿のプレイヤーだった。最近アルンは変態の巣窟だと思い始めていたが、存外そうでもなかったらしい。探せばちゃんとまともなプレイヤーもいるのだろう。少しキャラが薄い感じがして残念だ。

「俺、勝ったらカデ子さんにコクるんだぁ……」

 前言撤回。

*1

 プーカのプレイヤーが前に立つ。此方から全損設定でデュエルを申し込むと、少しだけ、全損設定に動きを止め、あ、そっか、と声を漏らしていた。その行動の意味は解らないが、何か意味を持つ事なのだろう。ともあれ、向こうが承諾を押した。これで両者共に承諾を押した。それを見届けたプレイヤー達が一気に広場にスペースを作るために距離を開ける。プーカが武器を……ランスを取り出す。互いに距離がある。此方も剣を構える。

 目の前にカウントダウンを示す数字が出ている。もはや無言で相手を敵として認識し、数字を片目、もう片目で敵を捕捉する。

 三……二……一……零、となったと同時に一気に前に踏み出す。だが先に踏み出すのが早かったのはランス使いのプーカだった。ソードスキルは使用していない。が、ランスとは突進に優れた武器だ。おそらく突進強化系のエンチャントか改造が施されている。凄まじい速度で一気に迫ってくる。それは速度に比率を置いている此方よりも早い。だから、

 後の先を取る。

 一瞬で間合いを詰めてきたプーカのランスに対して正面から長剣を突きだす。ランスの先端と長剣がぶつかり合い、筋力による対抗の結果―――僕の剣が弾かれる。だがその一瞬、ランスも体勢が崩れ、その穂先が此方から逸れる。

「ぬぅん!」

 だが穂先がずれたとこで相手は動きを止めない。両足で大地を踏みしめ、急ブレーキを掛けながら体を回転させる。ランスによる回転横なぎが襲い掛かってくる。それを飛び越える様に跳躍し、ランスを避けた瞬間に懐に入り込む。超近接距離である為剣を振るう事は出来ない。だから、その代わりに―――

「ハァ―――!」

 剣を握っていない左手を顔面に叩き込む。それで敵が一瞬怯み、距離も開いた。だからその瞬間に次の一撃、即ち剣による一撃を―――

「≪マザーズ・ロザリオ≫!」

 叩き込む。十一連撃のOSSは輝きながら全弾がプーカの体に叩き込まれる。攻撃力のあるOSS故、十一連撃全てが決まれば体力は残らない―――故に、対人であれば本当に必殺と呼べるスキルだ。

 攻撃を全て体で受け切ったプーカが吹き飛びながらライフを全損し、リメインライトにその姿を変える。まずは一勝。ワザと派手に動いて、マザーズ・ロザリオの姿も宣伝した。相手には悪いが宣伝に使わせてもらった。えーと、たしか、

『―――戦う時、最初の数回はなるべく派手に戦え。その方が客寄せにいい』

 だったっけ。まあ、その効果は出てるよね。

 視界の中で今の対戦を見たプレイヤー達が拍手を送り、称賛の言葉送ってきている。中にはおそらくSSの撮影をしているプレイヤーもいるだろう。そんな中、蘇生魔法を使えるプレイヤーが蘇生魔法で負けたプーカを蘇生させていた。負けたプーカが蘇生してくれたプレイヤーに感謝の言葉を述べた後、此方へと歩いてくる。

「いやぁ、強いなぁ。カデ子さんにコクる機会がなくなっちゃったよ」

「勝手にコクれば?」

「そうする!」

 そのままプーカは羽を広げ、どこかへと飛び去ってしまう。カデ子が誰の事かは知らないが、それでもいい結果になる事を祈っておこう。とりあえず立ち上がってコクるかどうかを話し合うってなんだ。ヤバイALOヤバイ。マジヤバイ。だから今の対戦はノーカンで。

「次! 僕に勝利してOSS手に入れようって人はいないかぁー!」

 今の対戦を見て一気にヒートアップしたプレイヤー達が我先にと声をあげる。が、逆に人が多すぎて困る状況となった。挑戦してくるプレイヤーが多すぎて選ぶのに時間が掛かりそうだった。これならシウネーあたりを連れて来て、整理でも頼めば良かったと思うが、それはもう遅い。予想外の盛況に困ったところで、

「おいおい、お前ら! そんな風に叫ぶからせっかくの美少女が困ってるだろ!」

 赤毛のサラマンダーがそんな事を叫んだ瞬間、一斉に静まり返った。

「あぁ、美少女を困らせちゃ駄目だよな」

「美少女はALOの宝だ」

「愛でるんだ。優しく、優しく……手折っちゃ駄目なんだ……」

 まともな人間がいない気がしてきた。と、静かになったところでこの場を落ち着かせたサラマンダーの男が、

「んじゃあ俺が挑戦するな!」

「あ、うん」

 思わず対戦申請が来たので了承してしまった。目の前に対戦設定ウィンドウが現れ、周りの声が爆発する。

「クライ―――ン!!!」

「てめぇ―――!!」

「抜け駆けしやがったなぁあ!!」

 クラインと呼ばれた赤毛の男はいい笑顔を浮かべ、後ろで叫んでいたギャラリーに顔を向ける。

「お前らが頭を使わないのが悪い」

「そりゃあそうだ」

「納得しちゃうの……?」

 なんというか、ALOのプレイヤーには妙な結束力が存在する。普段はバラバラなのに、こんな会話の流れになったり、なにかイベントがあると一丸となって挑む、そんな不思議な結束力がある。それはやはりALOの人口には多くの元SAOプレイヤーが食い込んでいるからだろうか。

 だが聞いた話によると変態率は元SAOプレイヤーが圧倒的らしい。

 SAOって一体どんなゲームだったのだろうか……。

 まあ、そんな不安はあるが、

「俺はギルド【風林火山】のギルドマスタークラインだ!」

 そう言って、クラインは腰から刀を抜いて構える。構えだけでもかなりの修羅場をくぐったプレイヤーだと言う事が解る。構え一つに隙がない。先ほどのプーカはそこそこの手練れだったが、この男はその上を行く実力者だろう。変態性から見ても元SAOプレイヤー―――SAO帰還者。

 常に前線で戦い続けてきた相手だとしたら、かなりの強敵だ。

「ギルド【スリーピング・ナイツ】のギルドマスターユウキだよ! よろしく!」

 クラインが名乗ったことにならって、自分も名乗りを上げる。

「ユウキちゃんぺろぺろ!」

「あ、今の奴グラズヘイムに召された」

「無茶しやがって……」

 なにやら背後で聞こえるが、もうこの際細かい事には気にしない。気にしていてはいけないと天の声が聞こえる気がする。ともあれクラインは得物である刀を構え、対戦申請を送ってきている。その設定は―――初撃決着モード。体力を半分にするか、もしくは一撃先に決めた方が勝利するというルールだ。ステータスよりもプレイヤーの腕前が勝利のカギとなるルールだが、このルールを選ぶ人間は珍しい。

 特に含むところはないので、了承を押す。構えている間のクラインは此方を見つめ、体を動かす事はない。鋭い眼光で此方の動きの全てを見ている。まるで鷹の様な目だと評価する。鋭く、動きの起点と始点を見極めようとしている。

 ……下手なブラフは通じなさそうだなぁ。

 元よりそんな賢い戦いは出来ない性格だ。素直にブラフなどは諦めよう。

 そして、

 カウントがゼロになる。

 瞬間、前へと飛び出す。長剣という武器は受け身になるよりは攻め込んだ方が圧倒的に有利だ。だからこそ神速を心掛け一気に向かう。そして相手もそのはずだ―――と、予想していたが、それは外れた。相手は一歩も動かなかった。こっちを迎え撃つように睨み、

「ッシ―――」

 攻撃を繰り出してきた。踏み込みと踏み込みの間、息の間を狙って鞘を投げてきた。急な方向転換や動きがしにくい一番のタイミングを狙って攻撃を放った。だが、

「っせぁ!」

 反応し鞘を打ち上げる。長剣をその為に使った瞬間、クラインがやっと接近してくる。だがこっちが素早く接近した事もあってクラインが踏み込んだ位置は刀を振るえない距離。いや、武器を振るえないという点では僕も変わらない。どちらにしろ、距離を開けなくては攻撃できない位置にいる。なら、必然的に使用する攻撃方法は、

「ハア!」

 体術。長剣を握っていない手で拳を叩き込む。が、それはクラインの体には触れない。触れる直前でクラインが体を捻り、片手で拳を流す。反射神経には最新型VRギアだけではなく、旧型から誰よりも長く使用している事から絶対的な自信があった。だからこそ自分は咄嗟に反応できた。だがこのクラインは違う。

 彼はある程度戦闘を予測して、経験で戦っている。

 ―――これが……!

 SAO帰還者の実力。

 攻撃を受け流されたことで互いに横を抜ける様な形になる。鞘を弾いた長剣を戻す。そしてクラインも刀を一旦鞘に戻す。その動きから出てくる答えは一つしかない。全武器中、全ソードスキルの中で、最も攻撃スピードの速い―――抜刀、居合系のソードスキルを発動させる前準備だ。

「≪ザンコウケン≫―――!」

 一撃必殺を狙って超高速のソードスキルが剣を戻したばかりの姿に襲い掛かってくる。一瞬で首へと向かって直進する刃を前に―――前転する。

「貰ったぁ―――!」

 あえて刃の前へと飛び込む。刀の最大の弱点。それは距離だ。刀という武器は少々特殊な判定を持っていて、敵に叩きつけただけではカスリ判定しかもらえない様になっている。相手に刃を当て、そして刀を引いて”斬って”から初めてダメージ判定が出現するのだ。故にリアルと同じ技術が要求される刀は人気はあっても、非常に扱いづらい得物になっている。

 だからあえて飛び込む。刃が体に当たる。

 だが刃を引く事は出来ない。

 カスリ判定で、初撃としてカウントはされない。

 そして、前転しながら刃を、クラインの頭へと叩き込む。

「ッハァ―――!」

 刀を引こうとクラインの体が後ろへとスウェーしている。だがその動きは此方の攻撃と比べて遅い。故に、クラインは防御する事も回避する事も出来ず、攻撃を食らう。

 瞬間、ブザーが鳴って勝者を告げる。

 クラインの背後に着地し、額を擦る。

「あ、危なかったぁ……!」

 もちろんスリーピング・ナイツの協力者は強い人物でなきゃ困るが、負ける気はない。というか自分を倒せるほどの相手が理想だ。それを考えるとクラインは実に理想的な人物だが―――ギルドマスターに頼むわけにもいかない。

 初日で釣れたと思ったらリリースしなきゃいけない魚だった、そんな気分になった。

「これは、時間かかりそうだなぁ……」

 負けて、項垂れるクラインへと向かいながらそんな事を呟く。




 優秀な変態が多いゲーム―――アルヴヘイム・オンライン。貴方もいかが?
スポンサーサイト

| 断頭の剣鬼 | 12:51 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

行きたいに決まってるじゃないですか!!あ、どうも始めまして、ROGUEといいます。いつも楽しく読ませて頂いております。

| ROGUE | 2012/12/03 18:55 | URL | ≫ EDIT

同じく、行きたいに決まっとるであろう!!

| 黒原 | 2012/12/03 19:36 | URL |

同上!逝きたいわあ…!!

| 樒 | 2012/12/03 20:34 | URL |

カデ子ちゃんうへへへへへへへ
鉱石ちゃんうへへへへへへへ
薬草ちゃんうへへへへへへへ

| 暇人 | 2012/12/03 21:24 | URL | ≫ EDIT

行ってユウキに斬られたいよぅ・・・(ォィ
初めまして、枝豆・銀杏・瑠璃夫、略してEGIRUと申します。(半分嘘)
なろうの頃から読ませていただいております。
いつも楽しくあり、感動もある物語をありがとうございます。
そしてこれからも頑張ってください

| EGIRU | 2012/12/03 21:42 | URL |















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://tenzodogeza.blog.fc2.com/tb.php/282-fff02ec8

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。