陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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失敗と成功  ―――ファースト・チャンス

推奨BGM:Kreig


 新年まであと数日。

 世間ではクリスマスのムードを抜かし、お正月ムードへと入ろうとしている所が多い。商売上の戦略だろう。早い所では既に十一月からおせち料理の看板などを出しているが―――年末のこの時期に、僕らはアインクラッドにいた。

 石の床を踏み、曲がりくねった迷宮区の一番奥、そこには巨大な石の扉がある。ホラーゾーンとして有名な六十台の階層は突破する上ではまるでハロウィンに戻されたような気分になった。半透明のゴーストや、腐った死体の姿をしているグール等、様々なホラー型モンスターが行く手を防いだ。おかげでこの階層の攻略も少々時間がかかったが、こうやってみんなで一番乗りを決めているので今の所は問題ない。

 事前にボスの動きも調べられるところまでは調べた。

 あとは……僕たち次第。


 既に腰の剣は抜いてある。僕は長剣を好んでいる。これが、戦う上では一番しっくりとくる。正面の巨大な石扉に背を向けて背後を見れば、武器を抜いてスリーピング・ナイツの皆が笑みを浮かべている。誰もが悲観した表情をあの頃の様に浮かべていない。そう、ゲームとはこうでなくちゃいけないんだ。終わりがあるから終わりを考えるのではなく、終わりがあるからこそ今の大切さを思わなきゃいけないんだ。だから、楽しそうに、笑っている今が一番なんだ。

「皆、準備はいい?」

「おう!」

「いけるよユウキ!」

「問題ないわ」

「アイテムもバッチし!」

 装備の調達班には本当に感謝している。この短期間で良く古代級武器を人数分集めてくれたと思う。古代級武器一つが超高額アイテムなのに、人数分揃え、それにエンチャントに強化改造済みの防具まで持ってきた。流石に武器まではエンチャントや改造するまで時間がなかったが……十分すぎる程の成果だ。確実にツキはあるのだ。

「軽く勝利しようよ!」

「おぉ!」

 声を揃えての返答。気持ちのいい声だと思う。誰もが負けないつもりでいる。だから、此処は純粋に僕たちがどこまで頑張れるかの勝負だ。長剣を右手に握ったまま、左手で石扉に触れ―――軽く押す。

 それだけで扉は開く。

 まるで僕たちを招き入れる様に静かに開いた扉は完全に開ききったところで動きを止める。既に下見で一度侵入している。わずかに緊張し、汗を垂らしながらボス部屋に進入する。僕が踏み込むのと同時に暗かったボス部屋の四隅に存在していたランプに青い炎が灯る。全員が部屋に踏み込んだ瞬間、音を立てずに扉が閉まり、そして部屋の中央に黒い影が現れる。最初は半透明だった姿が少しずつだが実態を帯び、そして十秒後には完全な姿をさらす。それは悪魔だった。ボロ布に包まれた、悪魔の様な角を生やした怪物。左手には黒い杖を、そして右手には青いカンテラをもった、三メートルほどの巨大な悪魔。ボロ布の下からは強じんな尻尾と足が見えるが、それが床に触れる事はない。床から五メートルほどの高さで浮かび、此方を見下すような視線を向けている。

 無言で見下してくる悪魔の頭上に名前が表示される≪Arcrich≫、≪アークリッチ≫と名前が出現し、その名の横にライフを示すバーは……出現しない。アインクラッドのボスモンスターは少々特殊な仕様を持っており、そのライフは最初は出現しないことになっている。ライフをある程度まで減らすまでは見えないライフ。豊富な行動パターン、そして絶望的なほどに高いステータス。かつてSAOで恐怖を振り向いたボス全てがこのALOでは強化されている。完全に上位プレイヤー向けのコンテンツとなっている。

 だからと言って、負けるつもりは欠片もない。

「―――」

 低い音の様な声でアークリッチが何かを詠唱する。それが完了するのと同時に、グレムリンの様な小さな悪魔が多数出現する。アークリッチの召喚スキルだ。こういう大型ボスの中には厄介ながらも雑魚モンスターを召喚するタイプがある。そしてこのアークリッチは特定の行動に反応してモンスターを召喚してくる。幸い、最初に召喚してきたグレムリン型モンスターは召喚される中でも一番対処が簡単なタイプだ。

 運がいい。

「皆! 行くよ―――!」

 声を上げて叫ぶのt同時に真っ先にアークリッチへと突貫する。長剣をレイピアの様に構え、前に出るのと同時にオリジナルソードスキル、通称OSSを起動させる。自分が習得している中で最強最速の技、

「≪マザーズ・ロザリオ≫―――!」

 攻撃を叩き込む。開幕から必殺を叩き込む。いや、開幕だからこそ必殺を叩き込む。一発目は景気づけの意味と、そして純粋にアドバンテージを取る意味でもデカイのをぶちかましておきたいのだ。片手長剣で繰り出す十一連撃、そのラスト一撃は敵を大きく吹き飛ばす一撃となっている。アーマー属性のついている敵でも強制ノックバックさせられるぐらいには威力が込められている。だから、この一撃でアークリッチは後ろへと吹き飛び、囲むように召喚されていたグレムリン達と距離を生む。跳躍しながら放った為、着地している間に後ろの皆が追いついてくる。戦闘前にバフ系の魔法をかけてもらっている。皆動きがいつもよりも軽い。

 いける!

 絶対に勝利して、僕らの名前を黒鉄宮に刻むんだ!

 確かな思いを胸に、雑魚を処理する班にグレムリンを任せ、メインアタッカーとしての役割を果たす為に自分は前に出る。後ろから盾役の仲間も数人来る。僕以外のアタッカーは全員グレムリンの処理に回っている。合流まではそう時間はかからないだろう。

「はぁ―――!」

 吹き飛ばされ、杖を掲げたアークリッチに渾身の突きをくりだす。それがアークリッチに触れる前に、見えない障壁によって攻撃を防がれる。攻撃パターンの一つに登録されているバリアだ。耐久値が設定されているタイプではなく、時間経過で解除されるタイプだ。そしてそのバリアの裏では―――アークリッチが詠唱している。

「―――」

 詠唱が完成するのと同時にアークリッチの頭上に直径一メートルほどの氷の槍が六本出現する。プレイヤーも使用のできる魔法、フリーズランスだが、同時に六本出現はかなりの高レベルが必要だ。それにこれだけのハイレベルな氷呪文となると、攻撃に凍結のバッドステータスまで付与される。

「抑えるぞ!」

 後ろへと攻撃の衝撃で自分を吹き飛ばすのと同時に、横を通って盾持ちが前に出て構える。基本的な防御陣形で僕を守る三人を氷の槍が襲う。高速でぶつかった槍は盾に触れるのと同時に盾を持つ三人を後ろへとわずかに押し、そして氷の破片を飛ばす。そこで発生するはずの凍結はアクセサリーによって発動しなくなっている。だから次の瞬間、並行して同時に詠唱されていた十数の火球もしっかりと盾で防げた。彼らの後ろでしゃがむ様に、完全に体を隠す様にしながら隙間からアークリッチを睨む。

「三……二……一」

 零。

 カウントが終わるのと同時にアークリッチの周りにあったバリアが消える。それが消えるのと同時に盾を持つ仲間の肩を踏み台に再びアークリッチへと突貫する。突進系のソードスキルをアークリッチの顔面に叩き込む。まるで山羊のような顔が痛みに歪み、目を閉じる。だがそこでは攻撃を止めず、体が重力に従って落ちるのと同時に攻撃を叩き込み続ける。

「終わったわ!」

「お願い!」

 体が地面に着地するのと同時に雑魚モンスターの処理が終わっていた後続グループが合流する。バックステップで下がると同時にアークリッチに炎の矢が連続で命中する。偵察でここへ来たとき、一番ダメージが高かったのが炎系の魔法だったのだ。それ故、今回使用する攻撃魔法は炎系で統一されている。

「エンチャント・ファイア!」

 剣に付与されていた炎属性付与が切れかかっていたため、再びそれがかけられた。属性は追加ダメージ扱いされているため、なるべく強力なのが好ましい。いや、これもかなり高レベルの属性付与だ。文句を言う必要はない。あるものを駆使して倒す。それだけだ。それだけを行うのだ。

「はぁ―――!!」

 大型の魔法が命中し、アークリッチの体がノックバックによって下へ降りてくる。落ちてくるアークリッチに素早くソ-ドスキルを叩き込み、ダメージを蓄積させる。連続で攻撃を叩き込み、最後の一撃を叩き込もうとしたところで刃が再び弾かれる。再びバリアが張られたのだと理解した瞬間、後ろへと下がって防御態勢に入る。

 そして、

「―――!」

 アークリッチが魔法を発動した。今度は頭上に名も表れない。その代わりに、

「毒!」

 ボス部屋全体が紫に染まっていた。フィールド全体に毒を蔓延させる魔法だ。これが発動すれば強制的に攻撃を受けてないプレイヤーでもライフの管理を始めなくてはいけないため、一気に戦況が苦しくなる。だが戦うことに慣れているプレイヤーなら対策は基本だ。だから全員毒避けの指輪を解除している。

 意味はない!

 毒を展開したアークリッチが雷やら氷やら、様々な魔法を撃ちはなってくる。それを壁役が抑えているうちに、小さくつぶやく。

「……うん、いい調子だ……勝てるよ!」

 魔法が止まる。瞬間、アークリッチのバリアも消える。消えるのと同時に回り込むように動き、一人ではなく複数人でアークリッチへの攻撃に移る。正面、背後、側面、四面同時からの攻撃は自分一人で攻撃していた時とダメージの量が違う。魔法もその中に加わり、比較的防御力の低いボスであるアークリッチの体力はガンガン削られ―――ついにライフバーが表示されるようになる。

 出現するライフバーは四本。

 そのうち、上の二本が削れている。ようやくアークリッチのライフの全容が見えてきた。それを理解しつつ気を引き締める。アークリッチはボスの中では典型的な高火力タイプだ。予備動作が解りやすく、潰す事も避ける事もできる。だが一撃食らえばそれで全滅しかねない火力の持ち主。タンクキャラが本気で防御しなければ倒れてしまうような、そんなタイプのボスだ。だからこそきっちり状態異常の対策を施して、弱点属性を堅実に責める。時間をかけても、確実に倒す方法を取る。

 それが大火力型のボスを倒すための一番の方法だ。

 だからこそ、攻める。剣を手に、バフを体で受け止めながら、積極的にソードスキルで攻撃する。一撃を繰り出し、それが命中する度にアークリッチのライフが減っているのを目視できる。スリーピング・ナイツは数は少ないが、

 僕たちは、強い……!

 ただ遊んでいるわけではなく、明確な信念を元に活動しているグループなのだ。そう、ぼくらが集まって、本気になって、簡単に負けるわけがない。故に徐々に減って行くアークリッチのライフポイントを見ながら確信する。これなら倒せると。

 だから何も考えず、必死に戦う。

 勝利が見えてくる。心が逸る。剣を握る手が汗でにじむ。アークリッチへの総攻撃でライフが四分の一まで削れる。そこでアークリッチの動きに新たなパターンが追加される。雷と火球、そして氷柱が降り注ぐ。タンクでも防げない攻撃は避けるしかない。何とか攻撃の発生を潰そうとするが相手がアーマー状態へと突入し、ノックバックが発生しなくなる。それでもダメージレースでは勝っている。このまま攻撃を―――

 ―――アークリッチが青い炎の灯ったカンテラを持ち上げる。

 誰も止める事の出来ないその動作に、

 ボス部屋が青い炎に包まれ、全てが砕け散った。

 ―――スリーピング・ナイツのみによるボス攻略、初挑戦は儚くも燃え散らされた。




ほのぼのギャグしすぎでいい加減話を進めるべきだと思ったの。
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| 断頭の剣鬼 | 16:15 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

あれ、ネームの前にTHEが付いてない・・・
まさかこれが前座だとしたら、3閣下がんばりすぎですw

| | 2012/12/03 18:19 | URL |















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