陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~不良騎士道~ 第6話 不良騎士爆走する

 昼を過ぎると聖王教会全体はそれなりの忙しさに包まれる。修道騎士や見習い騎士は修練場にて訓練を、シスターは勉強を、司祭や司教は聖堂や礼拝堂でお祈りをと、そんな風にそれぞれがそれぞれの忙しさに追われる時間となる。そして必然的に一部の場所からは人気がなくなり、誰もいない状態となる。


 そのはずであるのに、聖王教会の中庭には二つの姿があった。ひとつは赤毛の巨躯、ウィルフレッド・カースト。もはや彼が滅多なことでは働かないという事は周知の事実であり、何故神殿騎士の一員でいられるか疑問視さえされている人物である。その横に、ウィルフレッドと並んで木陰にしゃがむまだ幼さの残る子供の姿がある。

 齢十の少女、シスター・シャンテとウィルフレッド・カーストのコンビは木陰でしゃがみながらジュースを飲んでいた。

「―――いいか、シャンテ」

「うんうん」

「人生楽して生きたいよな」

「うんうん」

「だからさ、俺気づいたんだ」

「うん、何を?」

「俺―――カリムと結婚してヒモになるわ」

「うん。チョイスはいいけど夢見るのはやめようよ騎士ウィルフレッド」

 意外と辛辣な口調だった。

「ですよねー」

 ウィルフレッドも発言が本気ではなかったのか小さく笑いながら後ろに倒れる。中庭の隅にある一本の大きな木。そこは昼には木陰が出来るおかげで夏は涼しくすごせる場所の為、こうやって熱い日には重宝するウィルフレッドのお気に入りの場所のひとつである。
倒れたままジュースの缶を口に運び、顔に零さないように気をつけて傾けると喉を冷たいアップルジュースが潤す。それを見ていたシャンテがウィルフレッドの真似をするように地面に倒れる。二人が倒れ見上げる空は陽気のいい日らしく青く澄み渡っており、白い雲がゆっくりと流れるのを観察できる。

「こうやって空を見てると色々と馬鹿らしくなるよなぁ」

「ですねー。修行とかめんどくさいですよねー」

「俺も昔は勉強はよくサボってたなぁ」

「そうなんですか?」

「その度に三十ヒットコンボぐらい決められてたけど」

「シスター・シャッハよりも厳しい人なんて初めて聞いた……」

 シャンテの嫌そうな声にウィルフレッドが笑い声を上げる。

「ハハハハハ! 温い温い! そりゃあお前、シャッハ何てまだまだ優しい方だよ! シャッハは教育係としての実績があるからかなり優秀だぞ。ちゃんと個人の資質と限界を理解して稽古をつけてくれるからな。優秀な人間を育てるんだったらシャッハはいい先生だろうよ」

「倒れても無理矢理立たせるとか嫌な記憶しかないけど」

「そりゃあお前がそれが出来るって期待されてるって意味だ」

 そこで言葉を止めてウィルフレッドが缶から残りのリンゴジュースを飲み干す。それが完全に空になっている事を確認すると横の地面に置く。中庭は聖王教会の関係者しか使用が出来ない為に平和だが、一般公開されている聖堂のほうからは参拝客の声が聞こえてくる。束の間の平和を感受しながらも小さく笑いを零す。

「お前、変態の弟子になってみろ。アレはマジで死ぬぞ」

「変態?」

「上位ナンバーの事」

「そんなにハードなんですか?」

 シャンテの興味津々な声に対して"あぁ"、と答えるとウィルフレッドは思い出し始める。自分がまだ普通の修道騎士でもベルカの騎士でもなかった頃、見習い騎士でもなくて、ただの"ウィルフレッド・カースト"だった頃を。先代騎士長という最高の人材によって拷問に近いというよりそれそのものとしか言いようのない修行を強要された時代だ。日常的に血反吐を吐いたし、マメが潰れて手が赤く染まる事も珍しくない。体も打撲や裂傷で無事なところはないし睡眠時間だって計算されていた。

「生活の全てが一秒に至るまで管理されてたよ。この時間からこの時間はこうすれば体がこう変化するからとか、今日の修行量で七時間眠れば筋肉が付くからそれ以上は睡眠は必要ないとかさ、食事、睡眠の時間、動かす筋肉、目に映すもの、ぜーんぶが修行だ」

「うわぁ……そりゃあ逃げたくもなりますよね」

「ん? いや、俺が逃げたのは勉強だけで修行の方は一度も逃げなかったぞ」

「騎士ウィルフレッドはマゾだった!」

「美女相手だったらSでもMでも俺はイケルぜ」

「本当に節操がないですね……」

 若いシスターとウィルフレッドはそれっきり黙って地面に倒れたまま空を見上げる。基本的に聖王教会での娯楽といえばそう多くはない。電子機器も置いてあるし探せばゲームもあるだろう。が、それに触れずに生きてきたシャンテと、ゲームの類に興味を持たないウィルフレッドとしては暇つぶしにならない。何よりこうやってぐーたらやっているのが一番落ち着くと考えている。

「そう言えばシャンテ」

「何ですかぁー」

 シャンテが緩みきった声で返答する。とてもだが神殿騎士の人間に対する態度ではない。神殿騎士団の実態を知らない人間からすれば発狂ものの態度だろうが、

「シャッハがこっちの方へと向かって来てるから逃げた方がいいぞ」

「マジすか!?」

 緩みきっていたシャンテが即座に立ち上がるとすぐさま木を昇りその姿を枝と葉の中に隠す。ウィルフレッドもシャッハから逃げるときによく使っている手だ。木の上で色々ハンドサインをシャンテが繰り出し、それを倒れたままのウィルフレッドがサングラスの向こう側から確認する。

 数秒後、カソック姿のシャッハが登場する。中庭に踏み込むと頭を動かし中庭の全体を見渡すと、木陰で倒れているウィルフレッドを発見し、そこへ真っ直ぐ歩いてくる。倒れているウィルフレッドを上から覗き込むようにして、

「シャンテを出しなさい」

「その木の上に隠れてる」

「即行で裏切られたー!?」

「よろしい。ここで寝ていた事を不問としましょう」

「流石シャッハ。よく解っているじゃないか。うんうん―――シャンテを足止めしておいて良かった」

「この人でなし―――!!」

 数秒後、シスター・シャンテの抵抗むなしくシャッハに捕獲され、そのまま修行の続きをさせるべく連行されていった。


                   ◆


「ふぁーわ」

 口から欠伸を漏らし、上半身を持ち上げる。寝る気はないが、しかしこうも暖かい日だと眠くなってくる。気の持ちようで眠気ぐらい吹き飛ばす事もできるが、それがなんだか勿体無い気がして完全に目を覚ますのをやめ、少しだけ眠気を保ったままで体を木の幹に寄りかかるように移す。時間は昼後を少し過ぎる頃となっている。アフタヌーンティーが恋しくなってくる時間だが生憎と面倒だから絶対にやらない。これからどうするべきか、そう思っていると一枚のホロウィンドウがウィルフレッドの前に出現する。そのホロウィンドウには緩いウェーブのかかった金髪の女性、カリム・グラシアの姿が映っていた。即座に眠気を拡散させながらホロウィンドウを覗き込む。

「何だお嬢、ついに愛の告白か! ウィルフレッドヒモ化計画ここに始動!」

『そんな事はないから馬鹿な事を言ってないでバイクの準備して』

 ばっさりとウィルフレッドの言葉を切り裂き、カリムがバイクを起動させろという。そう、それは違法パーツがアホみたいにつぎ込まれた超のつくモンスターマシン。違法改造の塊ゆえに現場到着と同時に没収されたそれを少将権限を利用し取り戻したものだ。

 流石にもう没収されるのは嫌なので外装"だけ"は合法っぽい姿になってはいるが。

「デートか! そうかデートから始めるのか!」

『デートもないからバイクの準備をしなさい。"レリック"に関する事件が発生したからはやてを機動六課の本部まで最速で送り届けて』

「了解した」

 ウィルフレッドの緩みきった雰囲気が拡散し、体が起き上がる。

「よっと」

 そのまま一息で飛び上がり最寄の建物の屋根に飛び上がると再び跳ねる様に移動を開始する。その行き先は大聖堂裏手、一般的には開放されていない部分のエリアだ。そこは基本的にシスターや騎士といった人たちもあまり寄らず、大聖堂で働く人間が偶に通る程度の場所の為、ウィルフレッドがバイクを置く場所としても使用している。

 何度も屋根の上を跳び移りながら移動を繰り返すと十数秒で大聖堂の裏にまで到達する。そこに停めておいたバイクにポケットから取り出したキーを差込回し、一気にエンジンを起動させる。外装は無骨な旧式の大型タイプとはなっているが、それはあくまでも趣味でありカモフラージュ。その中身は外装とは全く別物、魔力駆動型の高性能バイクとなっている。その上でエンジンを起動させたまま待機すること数秒、大聖堂裏手のドアが開き二つの姿が現れる。

 ひとつはホロウィンドウを通して見たカリム・グラシアの姿。そしてもうひとつはよくある聖王信仰の信者が着る様なローブを着て、顔を隠すようにフードを深く被った女の姿だった。ただその下から見える管理局の制服は隠しきれていないため注意してみれば局員だとすぐに解ってしまう。

「隠しきれてねぇぞポンポコ」

「ポンポコ言うな!」

 軽口を出すがはやての口調が何処か急いでいる事に即座にウィルフレッドが気づく。おそらく口では心配してない、と言っても心の中では全く違うのだろうと予想をつける。そのまま後ろのシートを二回叩く。

「ほれ、タンデムすっからとっとと乗れ」

「私、一応取り締まる側なんやけど」

 ウィルフレッドがカリムの方へと顔を向ける。

「最速だろ?」

「えぇ、最速よ」

「おい、そこの二人だけで何通じあっとんのや!」

「いいからポンポコしてないでとっとと乗れよ」

「嫌な予感しかしないんけどなぁ……」

 渋々、と言った様子ではやてがウィルフレッドの後ろに乗る。ローブを抱きしめるようにして締め、そこから更にフードを深く被りウィルフレッドの腰に抱きつく。カリムの方に顔を向けたままでウィルフレッドは質問する。

「マジで最速?」

「思う存分に」

「え、ちょい待って、何でそんな事を確認するん」

「え、あ、いや……キニシナクテイインジャナイ?」

「ちょい待ち。なんやねんその明らかなカタコトは! 死亡フラグしか感じられないやないか! 今からでも遅くないからシャッハ辺りに車の運転を―――」

 動こうとするはやての動きを押さえつけるようにアクセルを全開にし、バイクをウィリーするように前輪を持ち上げる。

「ハッハー!! 死ぬ気で掴まってろよポンポコ! 今日の俺はハイってやつだぁ―――!」

「ギャア―――!?」

 五月蝿いほどにエンジンとタイヤの音を鳴らしながら前輪が地面に触れた瞬間、爆発するようにバイクが前に出る。今時珍しいホイールタイプのバイクが大地を進むたびに土煙を背後に巻き起こし進む。大聖堂裏の道を全速力で進むと数秒後にはミッドへと繋がる公道に出る。軽いバイクのジャンプと共に土の道からセメントで完成されている道の上に着地すると更にバイクの速度を上げる。

「馬鹿やないの!?」

「ぬーすーんだーバイクーではーしーりーだすー」

「何で地球の歌を知ってんねん!?」

「細けぇ事は気にするな!」

「細かくないわ! 芸の幅が広すぎるやろ!」

 聖王教会の土地を抜けて公道に出るとまず最初に見えてくるのは公道を挟むようにして続く森林だ。聖王教会本部が位置する場所はミッドに一番近いベルカ自治領で、それはミッドチルダの北部にあたる場所にある。車で約三十分ほどの距離に位置するそれを普通のバイクで行けば十五分にまでは短縮できる。だが生憎とウィルフレッドの乗っているバイクはそんな可愛い物ではなくモンスターマシンだ。公道に入ってもしばらくは続くはずだった左右を森林に囲まれる道は直ぐに開け、直ぐにミッドの端にまで到着する。道路にも車が見られ始め、ミッドに戻ってきたと言う印象を受ける―――そんな余裕ははやてに存在しなかった。

「こ、これ下手な飛行より早うないか!?」

「スピード狂が弄ったからな! アイツ狂信者だけどこういう所だけはなぜかぶっ飛んでるし!」

「ぶっ飛んどるのはおんどれら全員や!」

「これは一本とられた」

「何この上手い事を言ったてきなオーラは! 何で私の時だけこんないい加減なん!?」

 返答の変わりにウィルフレッドが更にアクセルを深く踏み込み、バイクの加速を更に上げる。明らかに法的に許された速度を大幅に超える速度が出ているので何時管理局の人間が止めに来てもおかしくない状況の中、ウィルフレッドは陽気に口笛を吹きながらバイクを操作している。前を通る車の波を簡単に避けながらバイクを走らせる姿は確実になれている人間のそれで、こういうことが初めてではないと言うことが解る。が、そこで初の障害がウィルフレッドとはやての前に現れる。

 赤信号。

「ポンポコ、しっかり掴まっておけよ」

「え、ちょ、何? 何すんの!?」

 赤信号の所でバイクが直角に、九十度曲がって真っ直ぐ道路の外へと向かい始める。が、道路の外側には何も存在しない。なぜなら今まではやてとウィルフレッドが走っていた道路は魔力によって宙を浮く道路であり、そういう道路が何個も重なってミッドチルダの交通関係は成り立っているのだ。つまり空。何もない空間へと向けてバイクは突進していた。

「ストップ! ストォ―――ップ!!」

「安心しろ。お兄さん結構慣れてるから!」

「慣れんでええわ!」

 跳ぶ。ウィルフレッドの体の動きで持ち上げられたバイクは道路横のガードレールを跳び越し空に飛び出す。はやての悲鳴をバックに勢いをつけて跳んだバイクは数十秒前に前進し続けてから下へと落下し始める。衝撃と共に下の道路に着地するとそのまま一度も動きを止めずに機動六課本部へと向けて失速した分の速度を取り戻し始める。

「ほら、簡単でしょ?」

「アホー! アホー! アホー! あとで豚箱ぶち込んだる―――!!」

「ワンモア?」

「普段は死んだ魚の目をしてるのに何でそう生き生きしてるん!?」

「ほら、俺チンピラだし」

「理由になっとらんわ!」

 そうこうはやてが怒鳴っているうちに機動六課の本部が間近にまで迫る。その所要時間僅か五分。ありえないほどの速度で機動六課本部前に到着すると速度を殺すためにブレーキをかけながら車体を一気に横に倒し速度を殺す。片足で地面に踏み込み大きく地面が抉られるがバイクはそれにて動きを完全に停止させる。

「ヘイ、到着したぜ」

「も、もう絶対にバイクに乗らん事をここに誓うわ……」

「それはいいから早く降りてくれ。これから管理局交通課の皆さんから逃げなきゃいけねぇから」

「おどれは常連さんか何かか」

 流石戦闘経験のある人間と言うかすぐに持ち直したはやてがバイクから降りて駆け足にビルの中へと入って行く。振り返ることはないが手を振りながら感謝の言葉を叫ぶ。それを最後まで見届けたウィルフレッドがバイクを再び動かし始める。

「さて、と。機動六課の初陣か。レジアスのおっさんはこの戦力をどう見るかね」

 怪しげな笑みを浮かべながらもウィルフレッドはバイクを走らせる。とりあえず、まずは管理局交通課から逃げる為に。
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| 不良騎士道 | 10:32 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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