陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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冬の日常 ―――ウォーキング・ダウン・ザ・ストリート

推奨BGM:Mein Kampf


 ユグドラシルシティからアルンの方へと移動する。首都機能は確かにユグドラシルシティへと移動したが、未だにアルンは人口量においては最高である事実に変わりはない。露店でアイテムを探す時や、少しコアなプレイヤーはユグドラシルシティよりはアルンを回った方が色々と面白いものが見れる。確かに新しい街に惹かれるプレイヤーは多い。だが、古参プレイヤーと言うのは新しい街に行っても結局のところは古巣に戻って活動する事が多い。だから歩いて街を見るのであればユグドラシルシティよりも、螺旋状に出来上がっているアルンを歩いた方が楽しい。

 なによりも、今のアルンはユグドラシルシティ同様、クリスマスデコレーションが施されている。

 街のそこらかしこには雪だるまが設置されており、歩き出せば足元で雪を踏む音がザク、っと鳴る。ユグドラシルシティは雲の上に存在するため、雪や雨といった天気の変動がほとんど発生しないのだ。特殊なアイテムか一部のイベントの時のみ、特別に天候を反映しているらしい。今夜のイベントはどうやら雪を降らせる、という噂は聞いている。

 ともあれ、こうやって雪の白に染まり、クリスマスを象徴する赤と緑色に染まった街を見るだけでもかなり楽しい。アルンに到着してから周りを歩くプレイヤー達も、変わっている街の様子にかなり興奮している様子だった。


 なによりも、

「おー、やっぱりすごいなぁ」

「豪華なクリスマスツリー……」

 世界樹がクリスマスツリーとしてデコレーションされている姿は中々壮観だとも言える。雲を抜く巨大な樹が雪を積もらせ、そしてライト等が装飾されている姿は現実では到底見る事が出来ない光景だ。だからこそアルンから見るこの光景は格別なのだ。アンナは既にみた事があるのか、普通に光景を受け入れたが、イザークは初めてなのか、驚きとともに世界樹の姿を見ている。

「大きいですね」

「これだけ大きなオブジェクトを維持するのは多分かなり大変だと思うし、ALOのサーバーって結構凄いと思うよ。これだけのオブジェクトを一切のラグもなしに動かし続けているし、グラフィックの歪みとかも今の所報告がほぼないし。これだけ大規模のゲームだったらアプデ直後はメンテ祭りのはずだけどそれがALOにはないし」

「機械に関しては良く解らないんですけど、とりあえず父の仕事が凄いって事だけは解りました」

 ……ん? 父?

 今、イザークが何か凄い事を言った気がする。

「えーと、ユウキ、さん」

 アンナに名前を呼ばれて、そちらへと視線を向けると、アンナが白い帽子を押さえながら、少し遠慮がちに言葉をかけてくる。

「……もしかしてハイドリヒ卿と明広さんがGMだって気づいていない……?」

「……ちょっとだけ待ってて」

「うん」

 頭に片手を当て、考える。確かイザークの父の名前がラインハルト・ハイドリヒだ。そしてイザークは父の仕事だと言った。そしてGMの名前はラインハルトだ。そこまで情報が揃えば嫌でもわかる。そしてよく思い出す。GMは結構良く姿を表に出している。そしてGMサイアスは―――どう見ても僕の保護者その人にしか見えない。というか絶対に本人だ。確実に本人だ。絶対にALOを進めてきたときは笑っていたに違いない。というか今も絶対に笑っているはずだ。

 今理解した。

 あの自称神様、絶対に性格が悪い。

 今度こそ両手で頭を押さえる。

「僕……何で今まで気づかなかったんだろう……本当に僕ってバカ……」

「あぁ、ユウキさん! お、落ち込まないで!」

「そ、そうですよ! 良くありますって! 身近すぎて気づかない事って!」

「たとえば?」

 そこでイザークが言葉に詰まり、数秒何かを思い出そうと沈黙を生み出す。そして顔を持ち上げると、

「―――」

「何も思いつかないのなら頑張らなくていいよ……!」

 今度は逆にイザークが泣きそうな顔をしていた。なんだか激しく申し訳のない気分になる。こんなつもりじゃなかったのに。とにかく、話題を変え、空気を一新するためにも一歩前に踏み出す。

「さ、せっかくのクリスマスなんだし、このままここにいるのもアレだし、街を見て回ろうよ、それだけでもきっと楽しいよ」

「うん、そうだね」

「あ、うん!」

 とりあえず同年代だけで遊ぶと言う経験も中々自分にとっては珍しい。患者仲間は基本的に全員自分よりも年上の人間が多いからだ。だから今、ちょっと新鮮なこの感覚を楽しんでみる。


                           ◆


 さくさくと踏みしめる雪の感触は中々気持ちのいいものがある。現実、都会ではここまで雪は積もらない。だからこんな風に気持ちよく雪を踏むこともほぼない。ゲームの中でなら何時でも、と無粋な事を言う人間も少なくはないが、少なくとも何時もと同じ場所が何時もとは違う景色になっていれば、それだけでも結構楽しめるものだと個人的には思っている。

 アンナとイザークは恥ずかしがっているが、二人の間に立って、両手を繋ぎ、歩くのは爽快な気分だ。なんだか二人ともかなり押しの弱い、というよりは自己主張しないタイプの人間だから僕の様な人間が引っ張るぐらいが丁度いいと思う―――こういうケースでたいていの場合相手は煩わしく思うか邪魔に思っているのだろうけど。

 と、そこでちょっと珍しいお店を見る。

 屋台風のお店だが、これはNPCの商店ではなくプレイヤーの露店だ。ワゴンの上には料理が並べられている。そういえば今日は装備を売る露店よりも料理を売る露店が多いような気がしなくもない。

「ちょっと見てみようよ!」

「は、恥ずかしいから手を―――」

「だが断る! このユウキ! 楽しい事に妥協はしないんだよ!」

「もう犬にかまれたと思ってあきらめた方がいいですよ」

 そうやって苦笑するイザークだけが何故か大人に見えた。

 ワゴン型の露店に近づいて改めて並べられているものを見る。それはお菓子だった。お菓子と言っても現実で購入を考えれば少々値が張るであろう高級菓子の類で、クリスマスの雰囲気に合うようなやつだった。ケーキやらクッキーが置いてある。

 上半身裸なのにネクタイとシェフの長い帽子をかぶったプレイヤーが店番をしていた。端的に言って恰好が変態的でアンナが泣きそうな顔をしているため、なんでこの店を選んだのだろうと一瞬で後悔している自分がいなくもない。たまに、というか結構な頻度でこういうプレイヤーはいる。服装が凄いフリーダム勢。パンツ一枚だったり何故か上半身だけ裸だったり男なのに女ものを着てたり、ALOは自由すぎるので自由すぎるプレイヤーが色々と湧きやすい。最近は変態のエンカウント率が低いのですっかりこういうゲームだと言う事を忘れていた。

 ともかく、話しかけたら意外とまともかもしれない。

「(´・ω・`)<いらっしゃい!」

 絵チャットで話しかけてきた。

 やだこいつ。キャラ濃すぎ。

 思わず顔を背けてイザークとアンナへと向ける。もうアンナは目に涙をためてイザークの背後へと隠れている。咄嗟のアイコンタクトでイザークへ逃げていいか質問するが、

『訪れた露店を言葉もなしに出て行くのはマナー違反ですよ―――』

 イザークからダイレクトチャットで笑みと共に死刑宣告が出された。大体わかってたけどイザークも実は結構いい性格していると思う。少なくとも大人並みの胆力は持っている。多分ラインハルトレベルの奇行ではないと動じない可能性が高い少年だ。ともあれ、改めて上半身裸の店主へと……向かず、並べられた食べ物を見る。正直モンブランとかブッシュ・ド・ノエルとかを購入しても今は困るので、

「え、えーと……クッキーの袋詰めください」

「(`・ω・´)まいどあり!」

 3000ユルドはクッキーにしては少々高いが、料理を確認したところ料理のランクがマスターランク料理になっている。つまりは、料理スキルカンスト後に作成された料理だ。これだけの高レベル料理を口にすれば普通に美味しいだけではなく色々とステータス上昇も発生するはずだ。しかも袋詰めクッキーという特性上、何度かに分けて食べる事が出来る。

 ……意外といい買い物だった?

 キャラが濃すぎて若干引き気味になってしまったが、ALOでフリーダムというか、エキセントリックなキャラクターは古参になればなるほど増えるらしい。いわゆる”普通には飽きた”というプレイヤー達だろう。それとももしくはGMから流出している未知の物質に汚染されているとしか思えない。ハイドリン? アキヒロン? 多分そんな感じの物質が流出してALOを染め上げているに違いない。

 露店から離れ、イザークとアンナの所に戻ってくると、クッキーの袋を開けて、そこからクッキーを一枚取る。クッキーは以外にも可愛らしく、ピクシーのシルエットを模った形をしていた。

「アーンナ!」

「うん?」

 言葉を発した瞬間、口が開いた。その瞬間を狙って電光石火の勢いを持ってクッキーをアンナの口に投げ入れる。突然の行動に驚いたアンナは抵抗するまもなくクッキーを受け入れ―――

「―――美味しい」

 ちょっと呆然とした様子でそう呟いた。視線を背後、露店へと向けると先ほどの店主が半裸のまま、両腕を組んでいた。そしてグ、っとサムズアップを向けてくる。激しく暑苦しい。今日のALOは温度設定がマイナス五℃ぐらいのはずなのに、今のだけで十℃は上昇したように感じられた。

「ユウキ」

「ん?」

「えい」

「あんむ」

 ……何時の間にか袋をアンナに強奪されていた。そして自分がやった様に、口の中にクッキーが突っ込まれた。アンナの場合、その予備動作がみえなかった。自分もかなりALOをやっているが、アンナの領域の速度は未だ見た事がない気がする。虫を殺せないような顔をして実は凄腕だったりしないだろうか。

 ……いや、まさかねー。

 アンナがとてもだがそんなキャラには見えない。

 口に放り込まれたクッキーをかみ砕いて味わってみる。その元々の形がなんだったかはわからないが、噛んだ瞬間口にはジンジャー、生姜の味が広がる。感じるクッキーの甘さは多分蜂蜜だろうか。なめらかであって、そしてほんのりと体が温かくなるような気がする。普通に美味しい。どうやらクリスマスの定番のお菓子、ジンジャークッキーだったようだ。

「えへへ、お、お返し」

 そう言って恥ずかしがるアンナだが、恥ずかしいのならやらなければいいのに、と少しだけ思ってしまう。しかし、

「これ、熱保護の効果がついてる。食べたら体が温まる様になっている」

「え? そうなんですか?」

「うん。食べてみたら解るよ」

 そう言ってイザークにクッキーを渡す。イザークがクッキーを食べるのを確認しながらも、自分も体が結構温まってきているのを感じる。料理のバフ内容は料理の質や材料などで大きく変動するので、これを狙って作ったのであればあの変態、実は結構凄腕ではないかと疑う。とりあえず変態に罪はあってもクッキーに罪ははない。普通に美味しいと評して食べる。

「それにしてもここまで来るといい匂いがするね」

「ここらに入ってから一気に料理系のお店が増えましたね」

 アルンの転移門から奥へ、とりあえずは世界樹へと向けて歩く様にルートを通っているが、少し歩くにつれて熱気が増えている。もちろんそれは人が密集している事にもあるが、それだけではなく屋台型露店の上で料理していたり、並べている料理が湯気を発し、それが風に乗って流れてきているのだ。湯気に合わせて匂いを嗅げば様々な料理が入り混じったような匂いが伝わってきて、それで腹を空かせる自分がいる。自分が思っている以上に僕は食いしん坊なのかもしれない。

「うーん、少し食べ歩きしたいかも……」

「ふふふ」

「さすがに全部は無理ですよ?」

 流石に全部食べる予定はないが、イザークからすれば僕は食いしん坊キャラなのだろうか。まあいい。ともあれ、回る店はいっぱいあるのだ。

「いこ!」

「うん!」

 二人の手を引いて露店を巡る。
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| 断頭の剣鬼 | 08:55 | comments:9 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

そして、無垢な子供たちは“怒りの”クリスマスに足を踏み入れてしまったのだった……

| | 2012/11/29 11:57 | URL |

やべえ、ほのぼのとしてる(当たり前)

これは、カオスの前兆か!前兆なのか!?(フリ)

| 名状し難きナニカ | 2012/11/29 12:10 | URL |

そうだよね、クリスマスってこうあるべきだよね(遠い眼)

あの二人が何もせず終わる筈が、いや・・・なんでもない。

| 断章の接合者 | 2012/11/29 12:20 | URL | ≫ EDIT

これはあれだね。
嵐の前の静けさってやつだね!

| 裸エプロン閣下 | 2012/11/29 12:58 | URL |

もうすぐ廃プレイヤーが集まって
変態祭りになるのを思うとなんかのフラグに感じる…。

| 烏 | 2012/11/29 13:43 | URL | ≫ EDIT

あぁ……こんなのも見ていて良いなぁ。
と、思う反面、
カオス!もっとカオスを!もっと変態共を!
なんて。
なんというか……次回期待してます(・ω|チラッ

| | 2012/11/29 14:19 | URL |

落とす為に上げているんですね、判ります(にっこり

| | 2012/11/29 15:47 | URL |

さて、これからどんな未知なる混沌を与えてくれるのか楽しみだ。

| nao | 2012/11/29 16:19 | URL | ≫ EDIT

次話か?次話なのか!?
このほのぼのとした雰囲気
…もうすぐカオスが来る前兆なんですねわかります

| | 2012/11/29 16:31 | URL |















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