陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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冬の日常 ―――メリー・クリスマス

推奨BGM:Burlesque


「メリークリスマス木綿季」

「おはよう。そして、メリークリスマス。良く眠れた?」

「メリークリスマス!」

 朝はいつも以上に早く目が覚めてしまった。見慣れたはずのマンションの一室もクリスマス用のデコレーションが施され、クリスマスツリーがリビングの隅に飾られていた。数日前から飾られているこれは明広が突然購入し、持ってきたものだ。良く売られている模倣品ではなく、本物のモミの木らしく、持ってきたときは相当驚いたものだが、もはや明広だからって理由で何もかも納得できるような気がしてきた。彼には大体不可能が存在しない気がする。

 ともあれ、

 十五年ぶりの生身のクリスマスだ。これが興奮しないわけがない。もうすでに暖かい服に着替え終わり、顔も洗い終わった。サンタ何ていないと解っていながら心躍る気持ちでクリスマスツリーまで向かい、その下に置いてある包みを見て、持ち上げる。


「あんなにはしゃいじゃって可愛いね」

「そうだなぁ、俺も伐採してきただけの価値はあったなぁ」

 購入じゃなくて直に伐採してきたらしい。たまにこの男の行動は常識の範疇を余裕で殴り飛ばしてくれる。意外と苦労してきたのかもしれないとかんがえつつも、プレゼントを胸に抱いて笑みを浮かべる。

「ありがとう!」

 笑みを向けられた二人は互いに顔を見合わせ、

「クリスマスは子供が楽しむ日だからいいのよ」

「クリスチャンでもないから祝うって部分だけ盛大に楽しんでおけ。遊んで学ぶのがガキの仕事だよ」

 やはり子ども扱いされているのだろう。年齢自体は十程度しか違わないだろうに。だが実際にはかなり年期の入ったような言葉に感じるから、それ以上何も言えず、ただうん、と答えてクリスマスプレゼントの包装紙に手をかける。包装紙も中々美しい事から勢いよく破らず、テープを外して綺麗に開けてゆく。その姿を二人がニヤニヤしながら見ているのが見える。なんかこの二人には頭が上がらないんだろうなあ、等と思いつつも包装紙を剥がし、クリスマスプレゼントの中身へと到達する。見覚えのあるものだった、というより欲しかったものの一つだった。アミュスフィアよりも少々大きなデザインはどちらかというとナーヴギアに近いデザインだが、内臓バッテリーもなく、従来の物よりもグラフィックや処理の性能が格段にパワーアップしたアミュスフィアの最新型だ。まだ発売されたばかりでかなりの高級品だったはずだ。

「あ、ありがとう」

 さすがにこれだけ高価なものをぽんと渡されると気後れする部分があるが、明広は珈琲を口に運び、そこでほっとした息を吐き出しながら手をひらひら振る。

「結構な高給取りだから高いとか安いとか気にするな。子供はお金の事を考えずにいればいいんだよ。そういうのは高校の卒業頃、進学とかを考え始めてから気にするもんさ」

「私達は結構余裕のある生活してるから、不満があったら何を言ってももいいのよ?」

 マルグリットが明広の横に座り、同じく珈琲に口をつけながら笑みを送ってくる。

 なんというか。

 すごく、懐が広い。この二人は見ず知らずの人間であれ、躊躇なく抱きしめるであろうと直感する。それがおかしいと感じるも、凄いとも感じられる。結局のところ、この二人と生活してて、この二人は致命的に”何か”がズレている事が理解できた。その”何か”がまだ少々解らないが、それでもこの二人はまるで裏と表―――ほとんど同質の持ち主であることが見えてきた。似た者夫婦であり、そしてお似合いの夫婦だ。ただ、

 それをもの凄く羨んでいる自分がいた。

 だけど、

「不満なんてあるわけがないよ。こんなに良くしてもらって、欲しいものは何でも与えられて、恵まれすぎて。本当に、不満なんてあるわけないよ」

「そりゃあいい」

「うん。そうだね。じゃあ、朝ごはんにしようか?」

 マルグリットが立ち上がり、そして明広も立ち上がる。

「クリスマスだし、朝はちょいと珍しいものを用意すっか」

「たとえば?」

「スパムを買っておいたからスパムおにぎりとか」

「え、ナニソレ」

「知らんの? ごま塩混ぜたおにぎりの上に寿司みたいにスパム乗せて海苔で縛って食うと美味いぞ」

「初めて聞いた」

「うし、ちょっと待ってろ。今作ってやる」

「じゃあ私は御味噌汁を作るね」

 ……本当に、幸福で満たされていると思う。


                           ◆


 朝食が終わると明広が出勤し、マルグリットが食器を洗ったり、洗濯を始めたり、一日の家事を始める。それに合わせて僕はやることがなくなるから、少し怠惰と言えるかもしれないけど、ALOへとログインする。今日ばかりは新型のアミュスフィアももらい、テンションが高い為、食べ終わったらすぐリビングのソファに座り、アルヴヘイムの空へとダイブする。

 一瞬の空白。

 次、目が覚めた瞬間にいるのは白い、清潔な部屋ではなく茶色の安い宿だ。そして自分もHIV感染者の紺野木綿季ではなく、インプの長剣使い、ユウキになった。この世界での僕は現実とは違って強いし、早いし、空だって飛べる。少しだけ、現実にはない全能感を味わえる。それが現実逃避だって事は解っていても―――この世界を止める事なんて到底できなくて、そしてユウキである事が現実であればいいな、と強く願う時もある。

 宿のベッドから起きてまず最初にフレンドリストを確認する―――と言っても、スリーピング・ナイツの仲間は一人もログインしないだろう。誰もが余命を宣告されていた人だ。自分を除けばみんな家族がいるのだ。今日一日はALOにログインせず、家族水入らずの時間を過ごすという事は聞いているし、理解できている。

 羨ましいとも思う。

 自分にはもう両親も姉もいないから。

 だから一緒に時を過ごせる肉親がいる事は本当にうらやましく思える。まあ、そこで自分自身を卑下するつもりはない。何せ自分にだって今は親代わりとなる家族の様な存在もいるのだ。マルグリットも明広もどちらも親と呼ぶには若すぎるが、家族と呼ぶには十分すぎる存在だと思う。自惚れていなければ、相手からもそう思われている―――と、思いたい。

 ともあれ、ALOにログインしたのだ。

 まずはシステム画面に表示されている時間を確認する。

「意外とギリギリかも」

 少し急いで、宿の扉を開けて部屋を出る。そのまま廊下をダッシュで走り、宿の外へと出る。ALOの首都であるユグドラシルシティはクリスマスであってもかなりの人数がいた。VRMMO最大の接続数を誇るゲームにはクリスマスであるかどうかは全く関係が無かったようだ。こうやって人が多いのは活気があっていいな、と想いながら羽根を出す。飛び上がりながら待ち合わせ場所として指定していたユグドラシルシティの転移門広場へと向かって高速で飛翔する。敏捷ステータスに任せた加速を持って一気に体を前に押し出すと、転移門広場までは三十秒もかからずに到着する事が出来た。急速にブーレキをかけ、スピードを落とし、急降下する。

「到、着!」

 転移門広場に墜落するような速度で到着する。開きっぱなしだったシステム画面によれば丁度、といった時間となっている。いかんせん、今朝はテンションに任せて少々ぐだりすぎたのかもしれない。もうすでに待ち人たちは来てないか、と広場を見渡すと、目立つ白い姿と金髪の姿があった。そちらへと向けて手を挙げて振る。

「おーい! アンナー! イザークー!」

「あ……」

 アンナとイザークの姿を見つけた。どうやら集合場所に遅れてやってきたのは自分だけだった。小走りで二人の所へと近づくと、片手をあげてハイタッチの姿勢を見せて―――

 ―――空ぶる。

 ちょっとコケかける。

「ちょ、ちょっと! そこは片手をあげてイエー! って感じにハイタッチしなきゃ!」

 お約束を完全にスルーしたテンションの足りない二人に抗議の声を上げて、頬を膨らませて見せる。が、それにアンナとイザークは困ったような様子を見せる。

「え、えっと……その……恥ずかしいですし……」

「うん……」

 昨夜、同年代と言う事で意気投合したのはいいが、この二人は基本的にそんな主張するタイプの人間ではない事を忘れていた。イザークも結構自己主張の強いタイプだと思ったが、それは基本的に頭を下げる時だけみたいだし。

「せっかくのクリスマスなんだからもっとテンション上げていかないと!」

「は、恥ずかしい……です」

 まあ、アンナならそう言うと思った。

「これでも結構テンション上げてるつもりなんですけど」

「くたびれた様子でそんな事言われたら僕、何も言えないよ……」

 イザークの様子は疲れていた。なんというか、残業で仕事を終わらせたら終電に間に合わず、仕方がなくタクシーを呼んで帰ったら妻も子供も先に寝てて冷めたご飯をチンして食べたサラリーマンの様な顔をしている。とてもだが十代の子供がする様な顔ではない。明らかに人生に疲れたような人間のする顔だ。これでテンションを上げているというのだから色々と恐ろしい。

「えーと……やっぱりお父さん?」

「……はい」

 イザークが顔を伏せながら答えた。

 昨夜のパーティーはラインハルト、イザークの父がやってきてからが本番だった。まず登場するのと同時にワインを飲むと、それでいい感じにテンションが上がったのか急に明広と共に愛について語り合いだし、それから何故か嫁に自慢に移り、そして最終的にはなぐり合っていた。何が何だかよくわからないが最終的にはクロスカウンターで二人とも床に沈み、ヴィルヘルムと戒によって引きずられる形で二人とも退場していた。

「クリスマスと言う事もあって父のテンションが天元突破していたのか、サンタのコスプレを初めて家へ挨拶に回ろうとしたのを必死に止めたんです」

「挨拶だけならいいんじゃない?」

「いえ、父って破壊する事が愛って言っているので挨拶は挨拶でも打撃が挨拶なんです」

「なんてはた迷惑な」

 それなら胃がマッハで削れるよね、とイザークの疲れた様子に納得してしまった。もうこれ以上イザークに不幸が降りかかる事がない事を祈りつつ、それは無理なんだろうなぁ、とイザークのこれからの苦労も考えていると、若干アンナがそわそわしているのに気づく。

「アレ、何か……アンナ、ちょっとテンション高い?」

「う、うん」

 なんだか昨夜見た時よりは少々テンションあがってるようには見える。その疑問を氷解させたのはイザークだった。

「そう言えばアンナはヴィルヘルムさんからクリスマスプレゼントを今朝受け取ってた―――」

 その先をイザークが言う事はなかった。

「キャ! きゃ、キャ―――!!!」

 アンナが悲鳴と共にイザークを殴り飛ばした。乙女の様な悲鳴をアンナは上げているが、その筋力ステータスは軽く数字がおかしいのか、軽いジャブはもはや肉眼で見える速度を超えて、空気の壁を叩くような音とともにイザークを遠くへ殴り飛ばす。今のリアクションで大体理由は見えたが、それにしてもイザークのこれの扱いはないと思う。流石にイザークが哀れに見えてくる。

 帰ってきたら優しくしよう。

 そんな事を思いつつ、ユグドラシルシティの端まで吹き飛び、空から落ちそうになっているイザークの回収に走る。

 ―――クリスマスはまだ始まったばかりだ。
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| 断頭の剣鬼 | 10:44 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

イザークェ……( ノД`。)・゚。・゚。・゚。・゚。

お前は泣いて良い……。

| 裸エプロン閣下 | 2012/11/28 14:15 | URL |

挨拶(破壊)

ヴィルヘルムェ・・・やはりロリコン・・・!ヘルガさんあいつです

| おk | 2012/11/28 15:47 | URL |

逆に考えるんだ
中尉がロリコンじゃなくヘルガ姐さんがロリぃからロリコンなんだ

| ぜんら | 2012/11/28 19:17 | URL |

安心と信頼のイザークェ

怒りのクリスマス、ベイ、その二つが意味する物とは……!
次回、「不死鳥死す」

| サガリ | 2012/11/28 19:18 | URL |

イザークゥゥゥーーー!!!まだ、サンタコスを披露していないだろ!帰ってこい!
しかし、アンナ可愛いよアンナ。。。さすがチワワイバー(笑)

| nao | 2012/11/29 07:28 | URL | ≫ EDIT















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