陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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冬の日常 ―――クリスマス・イブ

推奨BGM:Burlesque


「こんばん……わ?」

 横からかかってきた声に振り向けば、白いドレス姿の少女がいた。おそらく、僕よりも若い。なのにとても綺麗で、別次元の美しさを持ったような少女だった。あまり美とかに興味のない僕でも、少し羨ましくなるような、そんな白い少女だった。ただもう少し自信を持っていればいいな、とは思う。初対面だというのにオドオドしているのが目に見えている。

「あ、……こ、こんばんわ!」

 まるで勇気を振り絞ったかのように話しかけてくる少女に、これ以上相手に任せるのは酷かな、と判断し、代わりに話を進める事にする。

「僕の名前は木綿季。紺野木綿季。今、明広とマリィの所で預かってもらっているんだ」

 それを聞いて、コクリと白い少女が頷く。

「初めまして、アンナ・シュライバー、って言います。よ、よろしくお願いします」

 そう言って、アンナが手を前に出してくる。親睦の握手を交わすと、

「こ、こっちです」

「え?」


 そのままアンナに手を引かれ、部屋の隅の方へと引っ張られる。マルグリットや明広が参加していたグループとはまた別のグループがそこにはいた。だがそこにいる人物は傍目に見ると非常にデコボコ、というよりも共通点のない人物だった。まず最初に目につくのは茶髪の神父だった。おそらくヨーロッパ人の、なんだか気苦労してそうな顔の神父だ。今も少し疲れている様な顔をしている神父の横には背の高い、日本人の女性が立っていた。此方は”かっこいい”系の女性で、まるでモデルの様なスタイルをしている。そして最後にアンナと似た様な背丈の、赤毛の少女だった。年齢は多分、自分と同じぐらいだと思う。

「やあ、いらっしゃい木綿季君」

「ようこそエデンの死角へ」

「エデンの死角というよりは停戦協定結んだ中立域よね―――特にいつでも破ってこれる辺りが」

「やめてよね、シャレにならないじゃない」

 赤毛の少女と黒髪の女性が諦めたような溜息を吐く。どうやらこの集団は他のグループとは違い、避難所、というよりは落ち着いて話をしたい人たちの集まりらしい。ともあれ、引っ張ってこられたのだ。まずは頭を下げて、

「こんばんわ」

「こんばんわ。いい夜ね。と言いたい所だけど酷い夜になりそうね」

 黒髪の女性の視線は他の二グループに向けられている。明広のグループでは明広と男二人がボトルでワインを飲んでいるし、マルグリットの方のグループでは金髪の女性がボトルを開けていた。あの集団の頭の中には酒しか入ってないのだろうか。もっと楽しむものがあるのではないかと思わずツッコミを入れたくなってくる。

「初めまして、私は櫻井螢よ」

 よろしく、と螢と握手を交わす。

「あぁ、申し遅れました」

 神父が頭を軽く下げ、握手を求めてくる。

「ヴァレリア・トリファと申します。この教会で住み込みの神父をやっている者です。どうぞよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 手を握る、それを上下に振る。そして今度は赤毛の少女が手を前に出してくる。

「私はアンナ。アンナ・マリーア・シェヴェーゲリン。多分私がロリってるから同じぐらいの年齢に見られているけど、あそこで酔ってるスットコドッコイ共と同じぐらい生きてるから勘違いしないでね」

「え、えぇ!?」

 いきなりの爆弾発言に少々驚かされる。ゲームの中ならまだしも、現実で、この体格で二十何歳というのはどう考えても非現実的で非科学的だろう。だが良く考えれば明広の存在が超非現実的なのでそこらは何も言えない。明広の知人友人と言うだけで、ここにいる人間が非現実的であることはあり得る。そう思うといささかインパクトが足りないのではないかと思う。

「よろしくお願いします」

「アレ、持ち直されちゃった。まぁいいわ。アンナじゃそこの白いのと被っちゃうから、ルサルカとでも呼んでおいて。その方が解りやすいだろうし。あと私に敬語はいらないから気を使う必要はないわよ」

「というよりも私達が、ね」

 螢の同意に、トリファが苦笑する。

「私としては今から口調を正すのは大事な事だと思いますよ? えぇ、テレジアの教育で失敗していますから、やはり普段から―――」

「そんなみみっちぃから立場弱いのよ」

「……」

 ルサルカの言葉に一刀両断され、トリファが一気に黙る。その様子に軽くだが、アンナが笑う。そしてこっちの視線に気づき、少し恥ずかしそうにしてから素早くルサルカの後ろに隠れる。

「いやいやいやいや、アンタ同年代の友達作れるって楽しみにしてたんでしょ? もっとガッツだしなよって」

 ルサルカの背後で頭をブンブン横へと振るアンナの姿を眺めていると、横から落ち込んでいるトリファを無視して螢がやってくる。

「ごめんなさいね。アンナはああ見えてドイツの方では有名でね、同年代の友達というものがないのよ。だからできるのは歳の離れた知り合いばかりで、私達でもそればかりはどうにもならない話なの。今日は同年代の女の子が来るって話で、結構楽しみにしていたらしいから、出来たらでいいから、友達になってくれないかしら?」

 螢にそう言われ、アンナの方に視線を向ける。視線を向けられたアンナは体をビク、っと強張らせ、そして恐る恐ると言った様子で此方へと視線を向けてくる。その姿はまるで小動物の様で、保護欲が湧いてくる姿だ。可愛い美少女というジャンルに対して何か胸にこみ上げてくるものが生まれそうな気がする。また隠れそうになったアンナの背中をルサルカが叩く。

「ほれ、少しは勇気を振り絞ってみなさいよ」

「……木綿季なだけに?」

「……っぷっく……」

 アンナの素の言動に螢がそっぽを向いて少しだけ笑いを堪えようとしたが、笑い声が聞こえているためバレバレだ。トリファが何か言おうと口を開くが、ルサルカが鋭い眼光をアンナの背後からトリファへと向け、トリファを黙らせ、落ち込ませる。大体トリファのロールが解ってきた気がする。

 ともあれ、

 アンナがおずおずと言った様子で前に踏み出してくる。

「え、えっと、ああ、あの、そ、その」

「お、落ち着いて?」

「う、うん」

 予想外に対人経験が少ないのか、もしくはこれが地なのか、激しくどもり、言葉を噛みながらもアンナは何とか自分を落ち着かせ、そして完全に落ち着いたところで、また手を前にだし、

「木綿季さん、私とお友達になってくれますか?」

「もちろん! よろしくお願いします!」

「は、はい!」

 再び握手を交わす。何やらすぐ近くで男が号泣するような声がするが、中々愉快な神父だとは思う。ともあれ、折角友達になったのだし、もう少しお互いを知るために何か適当な話題でも振ろうとした瞬間、

 バン、と音を立てて扉がはじけ飛ぶ。

 開いたのではなく、文字通り弾け飛んだ。

 部屋の外から扉を壊しながら入ってきたのは男の姿だった。それを形容するのであれば黄金。苛烈な黄金と称するのが正しい。その存在を覗き込もうと思えばそのまま飲み込まれてしまいそうな黄金―――明広と似た様な印象を受ける事の出来る存在だった。セーターにジーンズ姿の男は、その肩や頭の上には雪が僅かながら乗っている。それを見るに今、外では雪が降っているのかもしれない。突然の侵入者に誰もが動きを止め、そして視線の集中を受けた黄金が前に踏み出しながら手を広げる。

「―――フローエ……あ、いや、待て。クリスマスは明日か。なるほど。ならば遅れた、申し訳ない」

「お前、一瞬テンションに任せて全部有耶無耶にしようとしただろ」

「あぁ、そうだ」

「認めやがった……」

 頭を抱える明広、そしてそれを恥じる事無くドヤ顔で胸を張る黄金の前に小さな姿が出てくる。此方も黄金の髪の持ち主だが、ドアを弾き飛ばした方とは違って苛烈さがない。優しさを感じる少年だった。年齢は多分アンナに近いものがある。そのまま前に出てきた少年が、

 頭を下げた。

「すいません! 本当にすいません! いつもいつも父が皆様に迷惑をかけまして、本当に申し訳ありません!」

 何でだろう。涙が流れそうになった。この手慣れた感じ、絶対この少年は今まで何回もこの父の奇行に対して胃を痛めながら頭を下げていたに違いない。絶対に優しくしよう、そんな思いを抱いていると、扉の向こう側から更に一人やってくる。此方は背の高い赤髪の女性だった。

「ベイ、カイン、酔ってないでさっさと扉を直さんか!」

「ういーっす」

「はーい」

 明広と酒を飲んでいた二人がボトルを放棄し、登場した黄金によって弾け飛んだ扉を拾い、それを何とか修理しようと頑張る状況が生まれた。何とも哀愁漂う背中だが、この二人もまた動きに慣れがある。これは絶対に一回や二回目ではない。結構な頻度で尻拭いをしているに違いない。

「おぉ、卿がそうか」

 この黄金の髪の持ち主に対して少なからず戦慄を感じていると、気負うことなくこっちへやってくる。若干気おくれしている此方に構わず、手を取り、

「ラインハルト・ハイドリヒだ。そして此方が息子のイザークだ」

「こんにちわ、父の奇行に関しては本当に申し訳ありません……」

 もはや謝る事がデフォルトになっているイザークの事に関しては触らないであげる事が何よりもの優しさに感じる。ラインハルトと握手しながら答える。

「えっと、紺野木綿季です。よ、よろしくお願いします」

「卿の事は友からよく聞いている。良き時を過ごせる事を祈っているよ」

「あ、はい。その、ありがとうございます」

「うむ。子供である内は存分に遊ぶが良い。時とは常に不平等であるが故に。エレオノーレ、酒を持てい! 盛大に飲むぞ! 今宵我らを縛るものはなし!」

「ヤヴォール・マインヘル! 酒を持ってこんかキルヒアイゼン!」

「ワンワン!」

 まるで嵐の様にやってきて去ったラインハルトの姿を呆然と眺めながら、短い時間ながらもただ破天荒なだけではなく、凄まじい人物だと記憶した。今の動きが凄まじいのではなく、内側に宿る”何か”が凄まじいのだ。言葉に中々上手くできないが―――カリスマや、存在感、そんなものを体の内側に抑え込んでいる様に感じられた。

 それにしてもこの部屋のカオス濃度が一気に上昇したような気がする。酒を持ってカオスグループに突撃するラインハルトの姿を見てる傍らで、イザークが動いていないところを見る。そういえば到着してからまだ料理や飲み物に一個も手を付けていない事を思い出し、近くのテーブルへ行き、コップを二つ用意してその中にジュースを注ぐ。流石に恥もなく暴れていたり、酔いつぶれている人間を見ると酒は飲みたくなくなる。

 注いだジュースを一つ自分様に、もう一つイザーク用にと、イザークへと持って行く。

「はい」

「あ……ありがとうございます」

 イザークが頭を下げてジュースを受け取る。ラインハルトがエレオノーレと呼ばれた人物から受け取った酒を飲み、明広と肩を組んでいる姿を見て、何故かほ、っと息を吐いている。

「明広さんがいればもう大丈夫ですね」

「そうなの? 僕としてはむしろ不安しかない組み合わせなんだけど」

「父と同格の存在はこの地球上でも明広さんだけですので、明広さんがいれば父の奇行もある程度抑えられます」

「意外な新事実」

 個人的な信用は―――まあ、それなりにあるし認めているが、こういう場では結構はっちゃけるタイプだと思っていた。意外と良心が働くタイプだったのかもしれない。それはそれでいい。ともあれ、あのグループに混ざらないのであればこっちグループの人間だ。手を引っ張って、自分とアンナの方にイザークを寄せる。そしてイザークとアンナの両肩に手を回し、抱き寄せる。

「わっ」

「、え、え、あ、ああ、あの」

「僕たち三人、年齢も近いし仲良くしようね!」

 取り合えずイザークも年齢が近そうだし、どうにかアンナの友達にできないか計画する。


                           ◆


「―――良い娘ではないか」

 ラインハルトが片目で木綿季の事を見ている。それに関しては完全に同意だ。あまり対人関係が上手くないアンナが若干振り回されながらも笑っている。いい事だ。子役として働いている以上年上に対する接触が多くても、木綿季やイザークの様な年齢の近い子供への接触はほとんどない。逢ったとしてもほぼ仕事関係だ。それが笑っているのだ。実に良い事だ。

「とは言え、あまり良い趣味とは言えんな」

 その言葉は視線と共に俺の方へと向けられていた。同格であるからこそ、やっている事がラインハルトには見えている。この男に隠す事は無意味だ。何かを隠してやりたいのであれば、メルクリウス並に策略に秀でていなくては難しい。あまりその姿を見せないが、ラインハルトという男は天才で、全ての分野において極めていると言っても過言ではない実力者だ。

「ま、気持ちのいい事をやっている、とは言わないさ」

「ほう」

 空になったボトルをテーブルの上において、プレートの上からクラッカーを取る。その上にスモークサーモンやクリームチーズを乗せ、一口で口の中へと運ぶ。

「目的があってやっているのであれば私は何も言わんよ。卿もまた約束を果たそうとしているにすぎんのだろう」

「まぁな」

 ―――約束。

 その言葉には重い意味がある。

 重い意味があるのだが、

「―――ま、今ばかりはそれを忘れて刹那を味わおう、ラインハルト。明日は明日の風がふくさ。明日はクリスマスイベントで忙しくなるし、楽しめる内に楽しんでおこう」

「然り、それが日常を歩むということであるか」

 時が来たらそれに覚悟してぶつかり、駄目だったらそのまま砕け散る。それが人間という生き物だ。

 と、そう言えば。

「ラインハルト」

「なんだね」

「”怒りのクリスマス”って一体何だ。俺説明全く受けてないんだけど」

 そこでラインハルトが笑みを浮かべ、サムズアップを向けてくる。

「―――期待していろ。なに、退屈はさせんさ」

 激しく嫌な予感しかしないがこの男も何気に現世というものを謳歌しているらしいし、それを責めるつもりはない。楽しんでいる人間を邪魔するつもりはない。まあ、ラインハルトに限ってそう酷い事にならないだろ―――

「―――先輩?」

 背中に、誰かが抱きついてくる感覚がある。首を動かし視線を向ければ玲愛がへばりついているのが解る。しかも片手に酒を握っている。

「何をしてるんですか」

「なんか最上君が難しい話をしてるからとりあえずへばりついて悩殺ボディで誘惑してるの」

「この人本気で悩殺とか考えてるのかな。悩殺どころか逆に憐れに思えてくるほど貧相な胸だぞ」

「えい」

 頭にボトルが叩きつけられた。ボトルも俺の頭も割れないが、激しく鈍い音が部屋に響く。

「私はとても気分を害しました。最上君、椅子になって酌をしなさい」

「助けてラインハルト」

 この先輩酔ってやがる、と口に出そうとしたところで、ラインハルトは息子の所へ向かっていた。そして背中にへばりつく玲愛と、俺の様子をマルグリットが見ていた。

 そして、

「―――えっち」

「違うんだぁ―――!!!」

 クリスマス・イブの夜に、俺の絶叫がこだまする。
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| 断頭の剣鬼 | 08:09 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

"怒りのクリスマス"は黄金閣下プロデュースとかw
ヤバい、結末がカオスなことにしかならない(笑)

リアルが充実? してるだろうクズ兄さん&ベア子や吸血兄貴&咲耶orヘルガ姉さんとかモロにヤバいんじゃ……
妖怪閣下?
リア充はグラズヘイムに堕ちるといいよ(笑)

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/11/27 12:33 | URL | ≫ EDIT

うん。皆が楽しそうで何より。
怒りのクリスマス(いろいろな意味で)惨劇だろうなぁ。
明日も期待。更新楽しみにしてます。


やっぱユウキのレギオン化は獣殿だからこそ
思うところもあるのかもね。
獣殿のレギオンは(ここでは)自発的志願者が大多数だし。

| 断章の接合者 | 2012/11/27 13:30 | URL | ≫ EDIT

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| | 2012/11/27 13:40 | |

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| | 2012/11/27 18:15 | |

我等の苦労人筆頭のイザーク様の降臨ではないか。もしかして、怒りのクリスマスにはサンタ娘コスでも見れるのか?彼に胃薬必要かな?しかし、黄金閣下がついに登場したか。混沌の予感。未知なるカオスを…!!!!

| nao | 2012/11/28 08:43 | URL | ≫ EDIT















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