陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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時空を超えて ―――ショート・ストップ

推奨BGM:Burlesque


「―――なっああああぁぁぁああ!?」

 意識が引き戻されるのと同時に頭のヘッドセットを外し、勢いよく上半身を持ち上げる。何故かそばにいた比嘉タケルが奇声を上げながら後ろへと倒れる様に尻もちをつく。が、今はそんな事ではない。それよりも大きな問題がある。つまり、

「どっちが勝ったんだぁ―――!!」

「うぉ!?」

 頭を抱えてそれを叫ぶ。心意まで引きだしておいてあそこで終わったわけはあるまい。絶対に俺の勝利のはずだ。絶対最後の一撃は通った。そんな感じの感触はあったはずだ。多分。というか一般人に負けたとか考えたくない。タイムアウトとかどんだけタイム気にせずに戦ってたんだ。とりあえずベッドから飛び降り、そして尻もちをつく比嘉のシャツの襟をつかむ。

「ログだ! ログを調べるんだ! ログを今すぐ調べて俺の勝利を確定するんだ! さあ、さあ、さあ!」

「ちょ、っちょ! き、キリトぐぇ」

 潰れたカエルの様な声が比嘉の口から洩れるが知った事ではない。問題は俺の勝敗だ。バグとか問題点とかは後回しだ。ともかく、今すぐ比嘉にログを調べてもらい、アクセスした場所、ゲームで俺の勝利を確認すべきだ。アレで引き分けだった日には不完全燃焼で眠れなくなるぞ。

「おい、止まれ、ストップ。ヘイ、ステイ。ステイしろよ和人」

「ぬぐぉ」


 頭を鷲掴みにされ、強制的に比嘉を解放させられる。そのまま頭を鷲掴みにされ、体を持ち上げられる。

「ほーれ、困ってるだろうが」

 頭を掴まれ、体を持ち上げられ、強制的に立たせられるとようやく解放してもらえる。少々冷静さに欠いていたかもしれない。というか人一人、片手、しかも頭を掴んで持ち上げる筋力はどこから来るのだろうか。背後を振り返ればスーツ姿の明広がいる。そういえばこいつが俺の人外化の元凶ではなかったか。なら納得。

「ほれ、落ち着いて飴ちゃんでも食ってろ」

 ポケットからイチゴキャンディを取り出した明広がそれを渡してくる。何やら年下扱いされている様な気もするが、飴に罪はないので大人しく貰ってそれを口に入れる。少しだけミルキーな味。甘い味がいい感じに糖分の足りなかった脳を満たしてくれる。

「落ち着いたか?」

「あぁ、うん」

「扱い慣れてるッスねー……」

 非常に残念なことながらもはやこの妖怪クビオイテケーには敵う気がしないので大人しく言う事を聞くということで自分の中の意志は決定している。逆らうだけ無駄なのだから最初からあきらめがついていると結構楽なのである。

「それよりも、ログ調べてくれよ」

「ログッスか?」

「おう、STLでダイブしたら全く別の場所へと飛ばされたぞ。たぶんどっかのゲームサーバー」

「うぇ、マジッスか? ちょっと調べてみるッスね」

 比嘉がすぐさま近くの端末を操作し始める。スクリーンに映る様々なデータを見、ログを調べ、そして俺が数分前までいったいどこで何をしていたのかを調べ上げはじめる。素早く検索をかける動きはさすが比嘉と言ったところだろうが、端末を弄る動きが鈍り、そして止まる。そこで頭を軽く描き、困った様子で比嘉が顔を向けてくる。

「……データ……ないッス」

「え、ちょ、待ってよ」

 比嘉の横へと移動し、そして操作端末を覗き込む、そこには様々なデータが映し出されており、俺がここ十数分間STLを通じてどこへ繋がっていたかを証明している―――はずなのだ。だが比嘉が言ったように、俺がSTLに接続されている間の時間が綺麗に切り抜かれている。まるで最初からSTLなんて使用していなかったかのように。

「え、まさか機器事態にエラーッスか? 勘弁してくださいよぉ、フルチェックじゃないッスか……」

 比嘉が目に見えるほど落ち込み、しょんぼりとした表情を見せる中、ログが消えているなんてことはありえないと即座に理解する。なぜならここはおそらく、この地球上で一番安全な場所だ。そして、最も完璧な場所でもある。ラインハルト、そして明広がいる以上ミスなんてものが生まれる筈がない。だから、ミスが起こるとしたらその犯人は二人に一人しかいなくて―――

「―――いない?」

 明広が先ほどまでいた場所には誰もいなかった。そちらへと視線を向けた瞬間にバタン、と音がする。音源へと視線を向ければそれが扉のしまった音だと解る。

「悪い比嘉さん!」

「あぁ、うん。おつかれ様ッス……」

 比嘉の覇気の抜けた声を背に受けながらすぐさま事件の犯人であるはずの男を追い、扉を抜ける。勢いよく開け放った扉は壁に当たるとバン、と大きな音を立て、その音を廊下全体に反響させる。だが廊下に出たところでスーツ姿の背中を見つける事が出来た。

「明広!」

「お前にはまだ早い話だよ」

 やはりと言うべきか、今回の主犯は目の前の人物だったようだ。せめて知っている身近な人物が主犯だったらしいことに脱力すると同時に、また新たな謎が生まれる。

 何故、こんなことをしたのか。

 それを問おうとして、

「ま、そろそろこれは返してもらうぜ」

 そう言って、明広は廊下の角に姿を消しながらあるものを掲げていた。

 ―――それは、黒い大太刀だ。

「はあああぁ―――!? え、いや、ちょ、おまっ、はぁああ―――!?」

 廊下の角に消える姿を見送る以外に、俺は何もすることができなかった。ただ茫然と、仮想がオカルトで現実を侵食し、そしてそれが一瞬で奪われる姿を、俺はただ見つめる事しかできなかった。


                           ◆


「―――思えば、妙な相手だった」

「先輩?」

「それは先ほどマスターがおっしゃっていた謎の対戦者の話ですよね?」

 学内のロカールエリアの中で、自分と自分のレギオンと共に椅子に座り、戦い終わった相手の事について話し合っていた。レギオン、とは言うが、そこにいるのはハルユキとタクムのみだ。全員揃っているわけではない。とはいえ、この梅郷中で一番実力のあるバースト・リンカーが三人もそっているのだ。考案するには十分すぎる面子だ。故に、先ほど戦ったばかりの相手に関して言葉を零す。

「どこからどう見ても生身だった。言葉は通じない。迷いなく心意を使ってくる。私としても全く新しいタイプで恐れ入るほかなかったよ」

「―――そしてマスターと同じ技を使ったわけですか」

「先輩と同じ技……」

 そう、星光流連撃(スターバースト・ストリーム)や奪命撃(ヴォーパル・ストライク)と言った必殺技を初見ではなく、見ないで発動していた。相手が事前にこっちの情報を持っており、使用してきた可能性も考慮できるが、そんなタイプの敵ではない事は剣を交えた黒雪姫自身が理解していた。

「なんというか、性別の違う自分と戦っている感じだったよ。多分リアルで会うことがあれば非常に気の合うタイプだっただろう。恋人としてよりは親友としてほしいタイプの人間だっただろう。……ああぁ、勘違いしてくれないでたまえ。私は何時だってハルユキ君一筋なんだから」

「せ、先輩」

 赤くなった顔を隠そうとするハルユキの姿は中々可愛いものがあると最近覚えた。理不尽に立ち向かう時や勝負の時の凛々しい顔も素晴らしいが、こういう一面もいいと思える自分がいる。もうちょっとそれを楽しみたい所ではあるが、実際自分の領地の中でも最重要な場所に踏み込まれてきたのは異常事態だ。

「手合せした感じ、確実に青の王クラスの剣に関する才能を感じたな」

「それほどまでに、ですか?」

 タクムの驚いた表情に頷く。

「剣だけではなく動き、集中力、発想、心意の強度、心意を扱う能力―――その能力の全てが最高クラスだった。本当にどこから来たか解らないものだが、アレ程のプレイヤーが加速世界に無名で存在したことが驚きだ」

 いや、あるいは、

「加速世界の住人ではない……?」

「それは―――」

「……いや、憶測で語っているだけだ。そう深く考える必要はない。それに可能性にしたって相手が単なるチーターだという可能性だってある。先ほど言ったが、あのアバターは我々の様なデュエルアバターとは全く違う、生身の姿をしたアバターで対戦を仕掛けてきたのだ。ブレイン・バーストのバースト・リンカーである以上、全てのプレイヤーはインストール時点でデュエルアバターを作成され、それを使用するのだが、この」

 そこで腕を広げ、自分の学内アバターを広げて見せる。

「アバターでデュエルフィールドに出ることだって可能だ。だが知ってのとおりこれに戦闘能力はない。だから戦闘は生身の様なローカルアバターではなくデュエルアバターで行うのだが」

「既存の法則に縛られる事のない法則ですか」

 既存の法則に縛られない存在―――

「それは、中々当を得ている表現かもしれないな」

 あえてあの青年を表現するのであれば”場違い”という言葉がしっくりくるのではないかと思う。まず第一に言葉が通じない事実、そして服装が明らかにブレイン・バースト用の服装には見えなかった。別の、ファンタジー系のVRMMOから参加してきたような、そんな姿をしていた。それに言語が通じなかったのはいまさら思えば言語が違ったのではなく、法則が違っていたのかもしれない。その中で心意という言葉のみ通じ合う事に何やら作為性を感じるが、あの青年の正体が、

「ふむ、全く違うゲーム……もしくは世界からの客人かね?」

「えーと、先輩?」

「あ、いや、悪い」

 自分でも今、おかしなことを言っている事は解った。しかし、

「まるで本当に、自分自身を見ている様な感覚だったのだよ。彼との戦いは。そうだな、私を男にしたとしたらまさしくあんな感じなのだろうと、そんな風に私は感じられたよ。同じ色を好んだし、二刀流と言うスタイルも合致する。土壇場では退かず賭けに出るところとかも非常に似ている。だからどうしても考えてしまうのだよ。―――アレはどこか別の世界から、もしかして男として生まれた私が来たのではないかと」

 だとしたら、

「引き分けで終わったしまったことに納得もできる。……少しだけだが」

 そう。少しだけだ。ほんの少しだけ、一ミリだけ引き分けた事に納得する。自分と戦って勝てるわけがない。自分と戦って起きるのは完全な相殺、即ち引き分けだ。だからあの戦いの結果は引き分けで正しい。……非常に不本意な結果ではあるが。

 ここで露骨に息を吐く。

「まあ、広すぎる加速世界では何が起きるのか、それを把握しきるのは完全には無理だと言う話だな」

 その言葉にてこの話題を終わらせる。他にも話す事はあるから何時までもこの話題に囚われているわけにはいかない。しかし、叶うのであればまた戦いたい所ではある。引き分けと言う結果は非常に不本意な所である。それは相手にしてみても同じだろう。また機会があるのであれば、

「戦いたい所ではあるな」

 もちろん、

 その時は自分の勝利で終わらす。


                           ◆


 こうして、二つの世界を繋いだ物語は終わり―――。

 ―――”世界”を知らぬ少女の短い物語が始まる。




 これにて短いバーサス編を終了。そして次回から予告していたマザーズロザリオ編を始めます。
次回と言うか、明日ですな。こっちは今まで目立たなかったキャラをメインにするつもりです。
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| 断頭の剣鬼 | 09:01 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

……明広やラインハルトに乱入して欲しいと思ったのは私だけではないはずと思いたい

| | 2012/11/21 18:53 | URL |

あれ自分が居る?
乱入してほしかったけど・・・ただの虐殺になるからなー
そういえばツイッターみれないけど、どうしたの?

| モグラ | 2012/11/21 20:26 | URL | ≫ EDIT















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