陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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時空を超えて ―――ブラック・アンド・ブラック

推奨BGM:Thrud Walkure


 槍の様な刃だと思う。

 長く、鋭く、そして強い。抜身の刀を思わせるような鋭さを持って俺の刃と切り結ぶ。そこに存在するのは斬撃と切り払い、攻防の動きだ。相手が切りかかるから俺がそれを切り払う。たったそれだけの動作。一回、二回と、両手に握る武器で切り払った瞬間、僅かにだが得物に違和感を生じる。無視してもいい、ほんの少しだけの差異。

 それを無視しない。

 攻撃してきたブラックロータスの刃を切り払うのと同時に神経を集中させ、目を凝らす。その視線の向ける先は敵ではなく自分の刃だ。感じた違和感は敵を一撃にではなく自分の刃に存在した。柄から始まり、刃の先までを一瞬で見る。その構成ポリゴンをナノ単位まで目視し、そして情報を理解する。故に見てわかった。

 刃が、斬れている。

「おいおい、リズベットに謝れよ」


 その確認自体はコンマ以下の秒数で行われた確認行動だ。切り払うのと同時に刃を再び戻し、今度は完全にブラックロータスの刃の腹を叩く様に切り払う。絶対に切断面には触れない。刃と刃をぶつけ合う愚を犯さない。たった一度の交差で刃に違和感を生むほどの切断能力。あぁ、何となくだが切り結んだ瞬間に理解できた。そういう事なんだろう。

「※※※※※※」

「日本語を喋ってくれ!」

 まぁ、言いたい事は解る。

 斬撃と斬撃を繰り出し合い、俺が後ろへと動く形で攻撃はブラックロータスが優勢に見える。が、その実は拮抗している。ブラックロータスの攻撃は完全に防がれ、そして刃に蓄積するはずだった切断のダメージは発生していない。それを俺が見破ったからだ。事前情報なしの相手であれば一瞬で武器を破壊できるいい戦術だが―――武器を破壊する程度では、

「止まらない」

 ロータスが踏み込むのと同時に俺も踏み込む。


                           ◆


 ―――この男はイカレている。

 この男は確実に初見だ。ほぼ直感の判断だが間違いなく初見だと理解できる。根拠はないが、この男はブレイン・バーストの”ブ”の字も理解してなさそうな気がする。その代り、戦士としての純粋な適正は天井を知らないものがある。正直に言えば化け物だ。化け物としか表現ができない。ワールド・エンド―――絶対切断と呼ばれるのはこのアバター、ブラックロータスの両腕の刃には斬れないものが存在しない故の名前だ。そしてそれは常に結果を生み出してきてくれた。昔、まだ無名だった頃の話。絶対切断能力の事を知らずに勝負を仕掛けてきたアバターはことごとく切り裂かれ、まずは武器を、次の防具を、そして命を絶たれてきた。

 だが目の前の青年は一回切り払い、それにできた傷から能力について把握した。

 たった一合の斬り合いで。

 二合目からは斬撃の全てが刃の腹を狙って振るわれている。此方の攻撃を全て的確に、最小限の動きを持ってやり過ごしている。目の前の相手は姿が青年の様な形をしているが、それに蓄積されている戦闘技術はとてもだが姿とは見合わない。そして自分の様に長い時を戦い続けて蓄積されたタイプでもない。

 短くも、強烈であり苛烈であり、そして凶悪な強者と戦い続けてきた者特有の、敗北を恐れない化け物だ。最初から自分が劣っている事を認め、受け入れ、そして飲み込んだ本当の意味での逸脱者だ。負ける事を恐れない一番厄介な手合いだ。それが一番怖い。この連中は敗北したと思ったらさらに強くなって戻ってくる。

 ―――そう、ハルユキ君の様に。

 ほら、今この瞬間も痛みを恐れずに踏み込んだ。

 故に、

 体を後ろへ引きながら回転する。武器は手の先ではなく腕全体だ。腕の一部にでも触れればそれでダメージは通る。春雪を抱きしめる事の出来ないこのアバターの腕は、それそのものが刃だ。一瞬で踏み込んだ侵入者―――キリトの首を狩ろうとして、

 腕が硬質な感覚を得る。

 剣だった。

 交差するように防御に入った刃が腕の攻撃を防ぐ。確かにこれなら一瞬だが拮抗する事が出来るだろう。そう、一瞬だけだ。

「斬ったぞ」

 冷静に結果だけを告げる。それは発生していないが、次の瞬間には現実となって実現される。防御に入った刃がアビリティによって無残にも切り裂かれる。速度は相手の方が初手が早い。攻撃が到達するのは相手が先だ。だが武器は破壊した。次の一手から攻撃に対する防御手段がなくなるのは相手だ。

「※※―――」

 胸を貫く衝撃は甘んじて受け入れる。その衝撃でライフバーが一気に三割も削れることも受け入れる。その代り、

「受けろ」

 今の一撃で溜まった必殺ゲージをすべて吐き出す勢いで腕を相手の背後へ回し、抱き寄せる様に刃を一気に自分へ持ってくる。

「デス・バイ・エンブレイス」

 切断属性を込めた一撃必殺の技が発動する。防御特化の緑のアバターでさえ一気に殺せるだけの威力を持った一撃を放つのは純粋に目の前の脅威への正当な評価への結果だ。自分の身を犠牲にせぬば一撃を通す事は出来ない、その評価の結果が今の状況だ。

 取った。

 そう判断した瞬間、

 そいつは使った。

「Incarnate……!」

「貴様―――」

 青年の瞳には闘志の炎が燃えている。インカーネイト。心意システム。それを口にした。それもはっきりと、こっちに通じる言葉で。この青年は言ったのだ。

 なんだ、言葉は通じるのではないか。

 しかし状況は青年にとって最悪だ。超密着したこの状態ではデス・バイ・エンブレイス、死の抱擁から抜け出す方法はない。

 だからこそ気づけなかった。あまりにも馬鹿馬鹿しすぎて、あまりにもくだらなすぎる攻略方法に。

「※※※※※※ッ―――!!!」

 力づくで破った。


                           ◆


「オオォォ―――ッ!!」

 声を叫び、抱擁を突き破る。相手の体を吹き飛ばすのと同時に、首の後ろから痛みを感じる。素早く手をそこへ動かせば首の後ろには切り込みがある。つまり切られていたのだ。あと刹那でも遅ければ首を半ばまでやられていたに違いない。そして発生する痛みはかなりリアルだ。そのレベルが本来受ける筈の痛みと比べて低い事があるが、痛みは本物だ。

 ……中々刺激的だなぁ!

 少々エンジンがかかってきた。

 戦ってると割とプッツンするタイプで、状況に流されやすいのもある。だが掛け金は基本的にレイズする主義なんだ。あぁ、男たるものやはりギャンブラーでなきゃつまらない。状況に詰まったら賭けろ。チャンスだったら賭けろ。

「レイズするのさ!」

 もちろんやる事は一つ、

 心意によって破損された得物を再構成する。もっと強く、もっと硬く、そしてもっと使い慣れた得物に。二刀流を使う上でこれ以上なく信用できる必殺の二刀に。

「エリュシデータ、ダークリパルサー……!」

「※※※※……!」

 破損し、破壊された剣を粒子から再構成し、アインクラッドで猛威を振るった白と黒の剣に作り変える。一瞬で握った刃に光を乗せ、高速八連撃の必殺スキルを正面の敵へと叩き込む。一瞬で速度の乗った刃は脅威以外の他でもない。心意を使った事に対する負い目は一切存在しない。なぜなら―――

「―――心意」

 言葉として理解できた。

 そして同時に敵の刃に光が乗るのが見える。黒かったボディに青いラインが入るのが見える。

 真っ向からソードスキルとロータスの腕がぶつかり合い、弾けあう。強烈な心意のイメージによって編まれた剣はもはやシステム的干渉を拒否する不死属性のオブジェクトと化した。相手がいかに切断に特化された攻撃の持ち手であろうがそれは関係ない。先ほどまでは刃を気遣って攻勢に出れなかったが、

 ―――もう、暴れてもいいよな?

 ニヤ、と笑みを浮かべる。

 久しぶりに、正統派の戦闘スタイルを持った敵だと今更ながら理解し、笑みが深くなる。最近戦う相手はどいつもこいつも嫌な意味で人間やめてやがる。稽古をつけるとか言って黄金の槍とりだしたり、ギロチン取り出したり、電気になったり腐ったり燃えたり吸収したり……どいつもこいつも人間という存在馬鹿にしやがって。というよりも俺をダシにしやがって。

 あぁいいさ。

 もう我慢しない。

「スターバースト―――」


                           ◆


「ストリ―――ム!」

 必殺を叩き込んだのは同じタイミングだった。正面から星の光を纏った斬撃と突きのコンビネーションが連続で放たれ、互いを吹き飛ばしながらグラウンドの中央で光の爆発を生む。もちろんそれで動きを止めない。相手が自分と全く同じ技を繰り出したことには驚いた。が、まだこっちにも技はある、そう、たとえば―――

「奪命撃(ヴォーパルストライク)―――!」

 リーチ外からの心意による超高速攻撃。ほぼ射撃と言ってもいいレベルを誇る突きを槍の様に放ち、進路上の全てを貫き、切断する。その一撃の前に光は切断され、そしてグラウンドも奪命撃の一撃を受けて一気に引き裂かれる。必殺の心意が迫る瞬間、黒い姿の剣士は二刀の内右の、黒い剣を限界まで引き絞り、それに心意の光を乗せるのが見えた。

「※※※※※※―――!」

 全く同じ一撃を繰り出され、奪命撃が相殺された。衝撃という他になかった。どの必殺技も自分しか使えないオンリーの奥義のはずだ。いや、そういう心意に特化していれば真似る事は出来るだろう。だが互いに初見だ。そして相手は純粋なファイター型の戦士だ。コピーだとかそういう事は一切見えない。あぁ、なんというか、

 性別の違う自分を見ている感じだ。

 なんだかわからないが闘志が燃え上がるのを感じる。何故だか解らないが、目の前のこいつにだけは負けたくない。その感覚がふつふつと自分の中で強く湧き上がるのを感じる。くだらない感覚だが、黒の王と呼ばれている自分のプライドとはまた別のものだ。悪くはない。

 だから斬る。

 相手も斬りかかってきた。

 だから四肢をつかって、

 斬る。

 互いに一瞬で接近し、獲物をぶつけ合うと体を互いに飛ばし合い、距離を生むと斬撃の余波で周りを切り裂く。大地に斬線が生まれ、そして梅郷中の校舎が壊れ始める。だがそれを気にすることなく音速を超えたヒットアンドアウェイを繰り返す。接触を繰り返す度に動きは加速し、そして周りへの被害も加速する。動きを一秒も止める事はしない。加速する。この加速している世界の中で、更に加速する。限界まで、この偽りの肉体が再現できる最高速度を超える勢いで、心意が連れて行ける最高のステージまで、

 精神を、肉体を、技術を、


                           ◆


 限界速を―――超える。ロータスとの斬撃の応酬はもはや中学を離れ、周りの建造物を破壊する勢いで行われている。明らかにリアルではない場所だ。破壊する事に躊躇はない。そんなつまらない事を気にして負ける方がよほど困る。

 だからこそ、

「勝負―――」

 ここで勝負に出る。長ったらしく戦闘を続けるのはタイプじゃない。クイック・アンド・スマートがキリトの戦闘スタイルだ。だから、

 この刹那に全てを込める。

 心意を滾らせる。

 二刀に灯った光が炎に変換される。二刀流スキル最大ヒット数を誇り、そして最大の威力を持つスキル、コロナの炎を叩きつけるという現象へと心意によって昇華されたそれは凶悪な威力を持つ。改めてこの力の異質さを理解する。そして、許容する。ロータスも同じ思いなのか、必殺の準備は完了している。なら遠慮する事はない。

 俺が屋上を蹴り、ロータスへと加速する。

 ロータスが民家の窓枠を蹴り、加速する。

 正面から最高速度でぶつかり合う。

「ジ・イクリプス……!」


 間違いなく俺の持つ最高の奥義だ。故に、それに絶対の自信を持つ。たとえ最初の六連撃が相手の必殺と相殺しようが関係ない。完全な信頼とは結果として絶対に現れてくれる。絶対にその役目を果たしてくれると信じている。故に十六連撃が終了し、一撃が通らずとも、

 信頼は揺るがない。

 そして、二十連撃が成功する。

 斬撃と斬撃、光と熱、それがぶつかり合い爆発し、周りに被害を生むがそれを全て無視し攻撃を続けた結果―――互いにスキル最後の一撃を放つ体勢に入っていた。既に幾度もなく繰り返してきた衝突により相手の体力も自分のライフバーも削れている。ここまで非常に胸の躍る時間は珍しく、そして名残惜しいが、

「俺の―――」


                           ◆


「私の―――」


                           ◆


                      「勝ちだ―――!」


                           ◆


          そしてカウントはゼロになり、俺は世界からはじき出された。
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| 断頭の剣鬼 | 00:57 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

早い更新お疲れ様です。
ただ、内容の質が良いのはいいのですが、今回はいつもに増して誤字が多く見えましたね。

| イーヴル | 2012/11/20 08:18 | URL | ≫ EDIT

いや、それよりもタイトルとは異なり、この文の主人公出現回数がますます減る感じだが?
速い更新感謝して, よく読んでいきます。

| 無名 | 2012/11/21 07:54 | URL |















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