陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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時空を超えて ―――ワールド・エンド

推奨BGM:Burlesque


 一瞬の意識の空白。

 そして覚醒。VRゲームを始めるときに常に発生する事態だ。一瞬だけ、VRギアが現実との回線を遮断するからだ。これが民生用のVRギアであれば軽いカラーテストからログイン画面が映るのだろうが、今装着しているのは民生用のVRギアであるアミュスフィアでもナーヴギアでもなければ、次世代機に最も近いと言われているインプラントでもない。STLと言うフラクトライトを解析するためのモンスターマシンだ。

 そこにカラーテストは存在しない。

 その代わりに、妙な違和感がある。

 違和感といっても遺物を感じるようなそれではなく、まるで自分の体の中、脳の中、魂を探られている様な、そんな感覚だ。俺がSTLをフラクトライトを解析する装置だと決定づけているのはこれが一番の理由だ。フラクトライトとは人間の魂に当たる部分だ。そこには人間の全ての情報は記されており、そしてそこにアクセスする事で記憶からデータを引きだし、そしてそれを投影する事でサーバーのいらない超リアルな仮想空間を生み出すっことができる―――らしい。実際、俺が経験したSTLで出力された世界はリアルだ。気持ちが悪いぐらいにリアルだ。


 どちらが現実だ、と問われて俺がログインしている事を忘れれば、それが解らないほどにリアルだ。

 故にそこには若干恐怖もあり、そして驚きもある人間はついにこんなフェーズまで科学を進める事が出来たのか、と。これが”あの”オカルトチックな技術を使用しない純粋な科学の産物であることはここに黒円卓の研究者や社員がいる事を見れば一目瞭然だ。彼らには黒円卓にあるような圧倒的”外れた”感じがしない。まだまだ余裕で人類の範疇にいる存在だ。

 ……話が逸れた。

 ともかく、このSTLにカラーテストはない代わりに、フラクトライトを調べる、そんな感じがする。その時、少々だが思い出す事がある。アインクラッドでの冒険とか、十歳の誕生日とか、直葉が剣道の大会に出た時とか―――そこに順番も関連性もない、ただ魂の中の記憶が探られている、そんな記憶だ。心にしまったものが強制的に暴かれる不快さは確かに拭えないが、まあこれも必要な事なのだろうと割り切る。

 目を閉じたままリンクを続けて行くと、瞼の外の世界が光を放ち、輝くのを知覚できる。軽い発光と共に今、STLによって世界が構築されているのだろう。ポリゴンが、現実と遜色のない恐ろしい程の精密な描写によって編まれ、世界が生み出される。

 体の感覚が戻ってきて、大地に足が立つ。これで世界は生み出された。あとは目を広げればそこには湖畔の姿が広がっているはず。ゆっくりと、世界を目視するために目を開く。

 目を開きそこで見たのは綺麗な湖ではなく、

 学校だった。

「―――は?」

 目をこすってもう一回確認する。学校だ。湖畔じゃない。テストを始める以前の問題だ。

「おい、比嘉さん、設定ミスってるぞー!」

 聞こえている筈であろうスクリーンの向こう側の人物へと向けて声を飛ばす。

「給料パクってじゃねーぞ明広ー!」

 これはたぶん違う。でも挑発したら出てきそうなのでとりあえず叫んでみた。

 が、反応はない。軽く舌打ち押しながら左手でウィンドウを呼び出そうとする。ALOは右手でフライトコントローラーを握る事がある為、ウィンドウ表示は左側になっている。そしてここ、STL内でもALO式の方が馴染み深いため、ウィンドウ表示はALO式となっている。ウィンドウを表示する、といっても表示されるのは現在時刻、そしてリアルとの通信だけなのだが。

「……バグった?」

 どんなに指を動かそうがウィンドウが表示されない。今までのテストは目立った大きなミスがないないから、こんな風に大ポカしてしまう光景は珍しい。完璧超人の集団にっも思えたが、こうやって大ポカしてしまっている辺り、やっぱり人間らしいなどと感想を抱き始めたあたり、

 ―――視線を感じる。

 反射的に背中の剣に手が伸びる。比嘉が用意したアバターはALOで使用しているキリトのアバターだ。つまり、アインクラッドで使用していたそれと全く同じ。背中には白と黒の日本の剣が交差するように存在する。それは再びリズベットに打ってもらった剣だ。エリュシデータでもダークリパルサーでもない、ただのレア剣だが、命を賭けるのに値する剣だ。柄に手をかけたまま視線を感じる方向、

 学校の屋上へと視線を向ける。

 そこにいたのは黒だった。


                           ◆


 ―――黒雪姫、ブラックロータスは突然の乱入者に困惑を隠せなかった。

 彼女が繋がっているのは梅郷中学のローカルネットワークだ。バーストリンカーが普段大戦様に繋がっているのはグローバルネットであり、ローカルではない。そして梅郷中のローカルネットワークに接続できるのは梅郷中の人間だ。突然の対戦には驚いたが、何より驚かされたのは彼女自身が把握していないバーストリンカーが梅郷中に存在した事だ。しかもレベル9という超高レベルバーストリンカーに勝負を売り込むほどの自信を持った相手だ。驚かざるを得ない。だが対戦を申し込まれたところで色々と疑問がある。

 今までどこに隠れていたかが最初の問題だ。普通に考えて自分や春雪が把握していないバーストリンカーがいるのはおかしい。この学校にいるバーストリンカーは調べているし、把握しているつもりだった。それに今になって対戦を仕掛けてくる意味も理解できない。これは単に相手が調子に乗ってるのか、それとも自分を倒す算段が付いたからなのか、その判断がつかない。

 ……が、解る事が一つだけある。

 自分は王だ。

 黒の王だ。

 ネガ・ネビュラスを率いる黒の王だ。敗北など言語道断。許されるわけがない。故にやるべき事は一つ。

 斬る。

 ワールド・エンドという名が偽りではない事を証明する。

 その思いを持って教室から天井を切り裂き、一気に跳躍し屋上へと出る。そこからなら梅郷中の周りを見る事が出来る。そして敵はいた。梅郷中のグラウンドに、何度も激戦を繰り広げる場となった場所に。背中に二刀の剣を交差させ、此方の視線に気づき即座に視線を送り返す。だがそのアバターは異質過ぎた。今まで見た事のあるアバターの全てと似ても似つかない。こんなアバターがこの加速世界には存在したのか、そう言いたくなるぐらいに異質だった。

 そのアバターは、人の姿をしていた。


                           ◆


 屋上の影はまるで刃の様だと思った。

 まず見てわかるのが、その存在が完全な黒一色であるという事だ。頭の先から足の先までの全てが黒であり、体の全てが金属的な光沢を帯びている。そのフォルムから女性的な形だということが解るが、その両手足の凶悪な刃が中々に刺激的な姿だと判断する。総評すると”中々凶悪”という意見が浮かぶ。此方に向けられているのは敵意と―――驚きだ。つまりこの事態は目の前の存在にとっては予想外の出来事だったに違いない。

「……紛れ込んだ……のか?」

 もしかしてどっかのゲームサーバーにアクセスしてしまったのかもしれない。あの姿はどう見ても何らかのアバターだと考えるのが妥当だ。そして相手が出現した瞬間に出てきたライフバーとカウントダウンするタイムを見る限り、その評価は間違っていないと思う。

 とすれば、非があるのはこっちだ。ここは普通に誤ってログアウトした方がいいのかもしれない。

「ごめん、此方はラースって会社の実験中だったんだけど、ちょっとした手違いでこっちとつながってしまったみたいなんだ、えーと……」

 名前を確認する。相手の名前は出現している。それは―――

「ブラック……ロータス……さん?」


                           ◆


「Kirito……キリトか」

 対戦相手のデュエルアバターは人間の姿そのものだった。少々女顔の青年、そんな姿だった。ただ身にまとう服装はまりで中世ファンタジーの世界の住人の様な、そんな服装をしていた。このブレイン・バーストというゲームでは原則、生身の姿の様なデュエルアバターは生まれない。いや、生身でデュエルフィールドに出現する事は出来る。それはローカルネットワーク用のアバターで入場した場合の話しだ。だがそうすれば戦闘能力はないし、目の前の相手は戦闘能力がないようには見えない。

 敵なら倒せばいい。そう判断したところで、

 敵が、キリトが口を開けた。

「※※※※※※※※※※※※※※※」

 しかしその口から放たれた言葉はとてもだが理解できるような言語ではなかった。というよりSAN値を一瞬削られそうになるような音だった。人間としてはかなりヤバイ分類に入る。だが相手はとりあえず、話す姿勢を取っている。ならばこの”城”の王としてそれ相応の態度で接さぬばならない。屋上から飛び降り、自分もグラウンドの上へと落りる。

「君はキリト君でいいのかな」

 此方からも声をかけてみる。


                           ◆


 黒いアバター、ブラックロータスは呼びかけに応じて降りてきた。が、

「※※※※※※※※※※※」

 まるで検閲がかかっているかのように声は全く違う音の羅列へと変換されていた。言葉という概念だけが抜き取られ、音という概念だけが残ったような感覚だ。聞く者が聞けばその音を解析して言語だと認識できるだろうが、俺にその技術はない。つまりバッドコミュニケーション。会話は成立しない。それは実に困った事態である。この世界に筆記用具の類はなさそうに見える。このままコミュニケーションが通じないのは困る。

「あ、そっか」

 剣を使えばいいんだ。

 剣を使い、それでグラウンドに文字を掘ればそれで言葉は通じる筈だ。外観からしてこのゲーム内はどうやら日本がベースとなっているらしいし、日本語は特徴的だ。通じなくてもそれで何となく意味を察してもらえるかもしれない。今世紀最大の発見かもしれない。

 やべぇ俺って天才かもしれない。

 剣が泣きそうな使い方だが、元々使えるものは使える事に使うと言うのがモットーだ。アスナへのプレゼントの為に剣は犠牲になったのだと思えば安い。

 手を放した剣の柄に再び手を伸ばし、それを握りながら前へ、ブラックロータスへと向かって一歩進む。

 そこで初めて、自分がやってしまったと認識する。

 前へと踏み出した瞬間にはブラックロータスが歴戦を思わせる反応速度を持って一瞬で両手の刃を展開した。俺が剣を引き抜くのと、ブラックロータスが刃を構えるのは同時であった。そして、ブラックロータスからは明確な敵意を感じる。それは排除の意志だ。そして、

 不意討とうとした相手への敵意でもある。

 普通に考えて、剣を抜けば交戦の意志だと取られかねない。その事を完全に失念していた。というか何が天才だ。完全にアホの極みじゃないか。これ絶対に明広にプギャられるぞ。それは激しくウザイのでこの件は闇に葬る事に決定する。

 ともあれ、

 超高速の突きを右手で抜いた剣で払い、続いて左手の剣で次の一撃を弾く。

 もはや言葉を交わす事は出来ない。

 ならぶっとばしてヘコませて黙らせてから聞かす。
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| 断頭の剣鬼 | 11:14 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ぉーいキリットさん、それ完全に脳筋の思考回路ですよ……

| | 2012/11/19 14:53 | URL |

「切ればわかる」か

| 空 | 2012/11/19 17:23 | URL |

思考が戦闘民族っぽくなってるな~

| 烏 | 2012/11/19 20:18 | URL | ≫ EDIT















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