陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

時空を超えて ―――ビギニング・オブ・ザ・ストーリー

推奨BGM:Berlesque


「―――やっぱりさ、大きい方がいいんだと俺は思うんだよ」

「あぁ、私もそれに関しては同意だ。やはり男子たる者、大きさには心を奪われてしまうな」

「だろ? やっぱりさ、男ってのは……こう……、少なからず大艦巨砲主義だと思うんだよ。やっぱ大きさに惹かれるんだよ。これはどうしようもない男としては基本的な事でさ、もう本能の一部だと思うんだよ。男として生まれたからにはやっぱり求めてしまうもんなんだよ……」

「然り、男の性とはどうも度し難いものではあるな……」

「おまえらは。いったい。なにをいっているんだ」


 目の前では金髪の美丈夫と青髪の男がそれこそアホみたいに盛り上がっていた。会話の内容からそのアホさ加減は察して欲しい。場所は珍しくアルヴヘイム―――ではなく、六本木のとあるビルだ。休憩室みたいな部屋の一室で、スーツ姿のラインハルトと明広の前に、普段通りの服装で来てしまった事に少々後悔している。そういえばこいつら社会人だった。そりゃあスーツぐらい着るよな。

 糞、何故神はこいつらを人生の勝ち組にした。

 どう見たって狂人なのに何故嫁がいる。やっぱり理不尽だ。

 何時かその狂人枠に自分が追加される事を祈りながら、目の前で馬鹿な話を繰り広げる嫁持ちのゲームマスター二人を見る。

「私もな、あの双丘には夢が詰まっていると思うのだ。ただの双丘ではない、男子の夢の詰まった双丘だ。あぁ、卿には解るだろ? この胸の奥底から湧き上がる熱き情熱の意味を」

「俺はドンビキだよ」

 そんな事を気にせずそれからいい大人が二人嫁自慢に入る。六本木と言えば立派なオフィス街なのに、そこに来ておいてやっているのは大人の嫁自慢とおっぱい談義。というかお前ら絶対に話し合って自慢しているのは嫁のサイズだろうが。いい加減にしろよ。

「でかいのもいいけどやっぱり美乳だろ!!」

 それだけは絶対に譲れない。

 と、そこで扉が開き、二つの姿を部屋に迎え入れる。どちらもスーツ姿という事は一緒だが、片方は東洋人で、もう片方は西洋のアルビノだ。もはや毎日顔を合わせている戒とヴィルヘルムの姿だ。こうやって同じ側に立っているとものすごく安心できる、心強い人物たちだが、

「おい、戒、ベイ」

「そこに大艦巨砲主義を理解できない異端者がいるぞ、殺せ」

「おい、貧乳と美乳を一緒にするなよ!」

 即座に俺のロリコン説を否定し、貧乳と美乳の違いを説明しようとしたところ、小さい声でベイが言葉を漏らす。

「いや、俺、どちらかというと小さい方が好みなんすけど」

 ヴィルヘルムのその言葉に部屋が凍る。比喩でもなんでもなく、部屋の温度が数度下がっている気がする。肌を撫でるわずかな冷気の発信源を迷うべくもなく、冷ややかな視線をラインハルトと明広の二人はヴィルヘルムへと向けている。

「うぉ……」

 それを受け一気に自分が何やら不味い事を言ったと一瞬で理解に至ったヴィルヘルムは一番簡単で解りやすい行動に出た。

「お、お、おい、カイン」

 即ち、味方を作る事だった。激しく動揺しながらも、ヴィルヘルムはまだ会話に加わっていない、唯一味方になりそうな人物である戒にその視線をロックオンする。

「カインお前、惚れた女が理想のタイプだとか痒い事を言うタイプだろ? キルヒアイゼンもどう見たってテレジアより酷いナイチチだ。お前なら俺の言う事も解るだろ?」

 今、さらりと凄い発言を怒涛の様に口から吐いているヴィルヘルムは色んな人物に喧嘩を吹っかけている自覚は存在するのだろうか。いや、多分冷静な状況であればこんな愚を犯さないだろう。それだけ今のヴィルヘルムは焦っている。

 そしてヴィルヘルムの失礼極まりない言葉に、戒は笑みで答える。

「ごめん、僕巨乳派なんだ」

「ヴィルヘルムよ、少々話がある、ついてくるがいい」

「やヴぉーるまいんへる……」

 ついてこい、とは言うがラインハルトがヴィルヘルムの頭を手で鷲掴みし、それをずるずる引きずる形で部屋の外へと出てゆく。ラインハルトが扉を開け、ヴィルヘルムを連れてった先、彼らの代わりにベアトリスが部屋に入ってくる。戒が口を開ける事が出来る前に、笑みを浮かべたベアトリスが親指で後ろを指す。

「戒、屋上」

「……はい」

 とぼとぼと、頭を下げたまま戒がベアトリスの後をついて行く。これからビルの屋上でドイツ式の処刑が行われると思うと色々と胸が熱くなってくるが、とりあえず彼らの無意味な犠牲はこの際完全に忘れよう。また短い人生において無駄な時間を過ごしてしまった。

 しかし。

 なんだったのだろう、今の茶番は。

 いや、深く考えたらいけないのだろう多分。こういう茶番劇はそれをそれとして楽しむからこそ価値があるのであって、それを真剣な表情して冷静に解釈してたらネタにマジレスしてるようなものだ。あぁ、それはいけない。だからここは純粋にヴィルヘルムと戒の不幸を祝おう。他人の不幸でメシが美味い。

「いやぁ、ラースは今日もグラズヘイムですねぇ……」

「その表現は色々とおかしいけど意味は間違ってないから。うん。何も言わないよ」

「お前も口が達者になったな」

「おかげさまでな」

 肩を竦めながらそう答えると明広は苦笑しながら壁に寄り掛かる。見慣れないスーツ姿で壁に寄り掛かる姿は何とも新鮮で、そして普通の人間に見える。そう、見えるだけ。その存在の深淵へと覗き込めばそれが一瞬で人間以外の何かであることが解る。解りはするが、理解はできない。まるでチャンネルがズレているような、まっすぐ見れないような、そんな感覚と共に理解はできない。いや、これ以上考えていても仕方のない話だ。俺はバイトに来ているんであって、理解できない事を理解しようとしているわけではない。

「和人」

 キリト、ではなく和人と名前を呼ばれる。リアルではアバターではなくこうやって名前で呼んでくれるのはありがたい。黒の剣士キリトは少々有名になりすぎた。名前だけで反応する人間は多い―――いや、アバターはそのまんまだけど。

「最近どうだ」

「なんだよそのお父さんが息子を気遣うような話かたは」

「いいじゃねぇか。お前アインクラッドじゃコミュ障だったろ? お兄さんは純粋に友人の将来とその周囲に関して心配してやってんだ。少しぐらいゲロれよ」

「ゲロれって……」

 そう言われて思い出すのは―――死銃事件が終了してから今までの時間の事だ。

 今は十二月。もうクリスマスまで一週間程しかない。死銃事件が終わったのはもう一ヶ月前以上の話しで、気持ち的には色々と整理がついた。

 司狼やミハエルが死んだこととか。

 やはり最初はショックだったが、これだけ時間が経ってしまうともう受け入れざるを得ない。騒動の元凶だったPoh達を逃してしまった事が痛いが、アイツらはアイツらで何時か絶対に見つけて殺してやるって気持ちであるので今は置いておく。ともあれ、この一ヶ月の一番の変化は―――おそらくシノンのALOへの参加だろう。

 俺が誘った事もあるが、シノンはALOへとキャラクターをコンバートし、遊ぶようになった。完全にGGOを止めたわけでは無く、個人的に銃器が好きな事もあってシノンはまだまだGGOを遊び続けるようだが、遊ぶ比率は一気にALOに傾いている。ALOでは中々に珍しい弓使いだが、身内の中で一番早く心意にたどり着いたのはシノンだ―――銃を握らせたような精密性でどんどん射抜いてくる。クラインがナンパしようと特攻して轟沈した記憶がまだ新しい。

 まあ、総評するのであれば、

「楽しくやってると思うよ」

「そっかぁ、……ボトムレス行ってる?」

「行ってる。バイト先だし」

 司狼が死んだ直後は少し入りにくかったが、今では問題なく行けている。司狼も自分が死んだ場合を想定したプランを既に作っていたようで、ボトムレスピットはその主なしで円滑に機能していた。いや、エリーがまだ残っているから完全に主がなくなったというわけではないけど。

「つかさ」

 明広がこっちを見ながら口を開く。

「お前バイトばっかしてるけどそれでいいのか学生? 将来とかちゃんと考えてるのか?」

 まるで父親の様なものいいの明広に呆れる。苦笑しながら頭を掻く。

「バイトラッシュは今だけの話だよ。ほら、もうすぐクリスマスだろ? いい加減アスナにちゃんとした物を買いたいしさ」

 あぁ、と納得したような表情を明広が浮かべる。

「確かにお嬢様と付き合ってりゃあそらハードル高くなるよな」

「レストラン誘ってプレゼント、なーんて事は出来なくてもアクセサリーの一つでも送っておきたいからな。物より思い出って言うけど実際送る側は形として残るものがないと送った気になれないよな」

 特にアスナは黙っていながらっも結構期待しているフシがある。クリスマスが近づくにつれ、段々とそわそわする様子から心待ちにしているのは目に見えている。正直、クリスマスの細かいプランは決まっていない。ALOもALOでクリスマスイベントをやるらしいし、現実でアスナと二人で過ごすか、もしくはALOで全員でクリスマスイベントに参加するか。今までのクリスマスが散々だった分、今年のクリスマスぐらいは純粋に楽しく過ごしたい所はある。

「ま、その為にはまずは働かないとな」

「だな」

 と言って明広が背中を壁から離し、歩きはじめる。つまり休憩の時間は終わりだという事だ。六本木までただ遊びに来ているわけではない。明広は社会人で、俺はバイトだ。

 つまり、仕事があるのだ。


                           ◆


 やってくるのはベッドの置いてある部屋だ。と言ってもただのベッドではなく、その周りには大きな機器が繋げられ、ヘッドセットが枕の上に置いてある。迷うことなくベッドの上に横たわると、そのヘッドセットを装着する。装着するヘッドセットは今使っているアミュスフィアとは違い、昔使っていたナーヴギアに近い形と大きさをしている……つまり、少々重いのだ。それを装着し終えるとベッドに横たわる。部屋の中にいるのは俺だけではなく、明広もいる。ベッドの周りの機器を確認していると、部屋の扉が開く。

「おいーっす! 元気かヤロウどもー!」

 赤髪の、どう見ても少女体系にしか見えない女性、此方もスーツ姿のアンナだった。やはり最初見ている姿が軍服姿なだけに、こうやってスーツ姿の皆を見ると違和感しかない。元気のいいアンナの言葉に俺と明広で言葉を揃えて返事をする。

「ういーっす」

「うわ、声が死んでる」

「気合でどうこうする年齢じゃねぇしなぁ……」

「腐ってるわねぇ」

 苦笑しながら部屋に入ってきたアンナが機器の前に移動すると明広が退き、ベッドの上で横たわる俺の前にやってくる。そこで俺の体をチェックし、頭のヘッドセットを―――VRギアをチェックする。

「うし、問題ないな」

 サムズアップを向けると明広が部屋から出てゆく。アンナも周りの機器のチェックを終わらせ、ウィンクと共に部屋から出てゆく。これで部屋の中に残されたのは俺一人だった。数秒間、何もせずベッドの上で仰向けになっていると、

『こっちの声が聞こえるッスか?』

 部屋にはない人物の声だ。近くのスピーカーを通して聞こえてくる声はこのプロジェクトに参加しているメンバーの一人、比嘉タケルのものだ。語尾が特徴的な人物だが、悪くない人だ。特にキャラの濃さが薄いと言う時点で素晴らしい。ともあれ、今回のアルバイト内容はどうやら比嘉が説明してくれるらしい。

『何時もモルモ……テストご苦労さまッス。今回も≪STL≫の稼働実験ッス。今回は湖畔が出てくる様にするからおかしなところがあったり―――』

 最初に言いかけた事はこの際スルーするとして、

「何か違和感があったら指摘すればいいんだろ? 解ってる解ってるって。もう何回やってると思うんだよ」

『そういえばそうッスね。んじゃあ早速はじめちゃいましょうか』

 音をたて周りの機器が起動しはじめる。既に何度も聞いて、慣れてしまった音だ。このVRギアも、機器も、その詳細は完全な謎だ。誰に聞いてもそれは機密だと言われて詳しい事を教えてくれない。ただ知るのはこれが次世代なんてレベルの存在の機械ではなく、その遥か先に存在するべき機械であるという事だ。

 今の所理解しているのが、このSTL―――ソウルトランスレーションマシンは人間の脳内に存在する魂に当たる物、≪フラクトライト≫を解析し、サーバーを必要としないVR世界を生み出すらしい。それ以上の情報は今のところは言ってこないが、このままバイトを続ければ教えてもらえるのだろうか。

『アバターは”キリト”に設定してあるッス。他にも要望があったらどうぞー』

「特にないよ、さっさと始めようぜ」

『了解、カウントダウン始めるッスよ。三……二……一……」

 比嘉の声を聴きながら目を閉じる。次に目を開けるときに存在するのは湖畔なのだろう。そこにはVRマシンでは到底再現しきれないはずのリアルな世界が映っており、そしてそこで通信を取りながら俺はバグか不備を探す。これで数万貰えるのだからボロい。

 ―――この俺の自信は数秒後、崩される事となる。

「リンク・スタート」

 意識が白く染まる。




風邪をひいて予想外に執筆再開まで時間がかかりましたね。申し訳ありません。
バーサス編第1話です。

久しぶりの執筆なのでおかしかったら容赦を。
スポンサーサイト

| 断頭の剣鬼 | 19:45 | comments:4 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

 ぉ? おぉ? いつの間にか更新されている、だと……
 更新お疲れ様です。
 体調に気をつけて、更新頑張ってください!

| サツキ | 2012/11/19 00:02 | URL |

更新キタ―――!
風邪は治ったんですかね?
これから先も楽しみです。

| 烏 | 2012/11/19 02:23 | URL | ≫ EDIT

自分もキリキリさんと同じ美乳派ですねぇw

そして、ベイと戒、南無
二人のことは忘れないよ

| 尚識 | 2012/11/19 04:03 | URL | ≫ EDIT

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

| | 2013/11/20 17:23 | |















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://tenzodogeza.blog.fc2.com/tb.php/264-1393bb41

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。