陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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硝煙は雨に消えて ―――トーキング・スウィート

推奨BGM:Burlesque


 スコーンとダージリンが届いたところで、菊岡に甘味が再び補充される。先ほどまではパフェを食べていたが、今度はあんみつが前に置かれている、前はポケットから角砂糖を取り出していたことからそうとうの甘党だとは思っていたが、っこいつの甘味に対する執着は並々ならぬものがあると思う。ともあれ、全員の分が着た事から菊岡が全てについて放す気になった。まずは、と菊岡がシノンに頭を下げる。

「此度は此方の不手際で貴女を命の危機にさらしてしまいました。申し訳ありませんでした」

「あ、いえ、頭を上げてください」

 シノンが頭を下げた菊岡に向かって両手をふり、早く頭を上げる様にジェスチャーする。実際にこうやって頭をいきなり下げられても迷惑な話だろう。なにせ、

「その、今回はなんというか……私が自分で戦うことを選んだんです。ログアウトして逃げる事も出来たけど、それは……何か違うんです。間違っているんです。だから私は戦って立ち向かうことにしたんです。だから、その、頭を下げて謝罪されるのは……」

「素直に受け取っておけシノン。こいつらがちゃんと仕事してればお前は俺と会うこともザザやPohと会うこともなかったんだ。人生平和であることに越したことはないよ。というか俺の人生は平和であって欲しい。常にそう願い続けてるのに何でおれの人生ってこうも平和じゃないの? いや、マジで。どうしていつもいつもこう破天荒になってるわけ。アインクラッド然り、アルヴヘイム然り、ガンゲイル然り。俺の人生ヘルモードに突入して夜も安心して眠れないぞ」

「またまた、キリト君には可愛い恋人さんがいるんじゃないか。もう夜は別の意味で眠れないでしょ」

「目玉抉るぞ菊岡」

「……冗談に聞こえないなあ」

「冗談じゃないからな?」

「と、とにかく! 頭を下げて貰わないでいいですから!」


 シノンが強引に話の流れを切って元の道に戻そうとする。少しだけ冷や汗を掻く菊岡はまだ手を付けていないあんみつにスプーンを入れると、何とも幸せそうな顔であんみつを食べ始める。まるで先ほどの会話がなかったかのように菊岡の幸せそうな表情は存在し、こいつ、完全に今の状況が何であるかを忘れているな、何て事が思える。

「菊岡サン、いい加減食べるのが好きだってのは解ったから説明したらどうなんだよ……」

「あぁ、ごめんごめん。でも今回の事情に関してはある程度キリト君が話しているんでしょう?」

「ある程度はな」

 といってもあの状況だったし、さわりの部分しか話していない。こんなことになっているんだから菊岡が改めて全体から話を進めるのがいいだろう。それを告げたところであんみつを食べる手を菊岡が止め、シノンを正面から見る。

「僕はね、総務省の仮想世界に関する所で働く下っ端なんだ」

「へぇ。ふーん。ほぉ」

「……うん。たぶんそんな感じの部署。と、ともかく、そんな僕には仮想世界の平和とか、そんなものの為に働く義務があってね? 仮想世界での死者に関して調べたりもしていたんだ。よくある話だよ。VRゲームの遊びすぎで餓死というのは。そういうのが起きない様にあらかじめ対策したり、まあ、そんな感じのンお仕事なんだけど……」

「へぇ。ふーん。ほぉ」

「キリト、話が進まないからだまってて」

 シノンに怒られたので黙る。

「まあ、それで仕事の一環でガンゲイル・オンラインでの死者に関して調べていれば死銃なんて名乗る変人を見つけてね? IPアドレスを探知して撃たれた人を調べてみれば死亡時刻は重なってたりと、まあ、なんというか……非常に厄介な話になっていたんだ。仮想世界は安全なはずなんだ。アミュスフィアはナーヴギアおあえて劣化させることで安全装置の取り付けに成功している。だから茅場晶彦が行ったような手段はとれないし、仮想世界から現実世界の人間に影響を与える事は出来ないはずなんだ」

 ふぅ、と一気に話しとおした菊岡は一息をつき、そしてその続きを俺が拾う。

「ま、そんなわけで俺に仕事が回ってきたわけだ。菊岡個人に借りがあって、SAOのデスゲームを終了させた超かっこいい最強の英雄、そしてALO事件も見事暴いたスタイリッシュな二刀流使い」

「アンタそれを言ってて恥ずかしくないの」

「厨二に染まってなきゃ二刀流なんてできないんだよ」

「金言だねぇ……」

「今のが!? 今のが金言なの!?」

 シノンは全くわかっていない。ゲームの世界とはいえ、真面目な顔で詠唱だとか改造だとか、武器を振り回しているんだ。これで常識的な人間だったら”俺は一体何をやっているんだろう”と頭を抱えて悶えるだけだ。SAOで既に証明されているが、こうやってトップになるまでゲームを遊べるようなやつはどこか突き抜けて厨二かなんなのかなのだ。

 つまり俺の病気は完治していない。

 というか黒円卓もアレはアレで厨二軍団か。

「くくく、まあ、いくつかの条件と引き換えに俺は菊岡サンから仕事を受けてガンゲイル・オンラインへ行ったんだ。目立てば絶対に食いついてくる自信があったからね」

「まさか女の子まで食いついてくるとはね」

 菊岡って実は自殺志願者ではないのだろうか。

 菊岡の言葉に顔を赤くするシノンは放置し、

「それで、まあ、俺はあの世界で再びジョニーブラック、ザザ、そしてPohと会ったんだ。アインクラッドでも最恐最悪のレッド(殺人)ギルドと名高かったラフィン・コフィンの幹部とその首領に。何重、案百人ものプレイヤーがアイツラのせいで死んだんだよ。できる事ならキッチリとこの手で始末したかったんだけどなぁ……」

「それに関しては僕からも本当にすまない。アバターからIPを検出する所までは行けたんだけど、居場所を割り出して向ったら見事もぬけの殻だったよ。その後もなんとか足取りを追ってみたんだけど……」

「だけど?」

 そこでやれやれ、と菊岡が首を横に振って溜息を吐く。

「―――アメリカだよ」

「……え?」

 菊岡の言葉にシノンが首をかしげる。

「アメリカに逃げられたよ。まさかとは思ったけど、本当に国外逃亡されたよ。いやはや、本当に予想外だった。今回の件をバラす事も出来ないからアメリカ側に身柄の要求もできないし、手詰まりだよ。完全に逃げられた。お手上げだよ」

 もう笑うしかない。ジョニーブラックだけはしたいとして見つかったが―――それをシノンに言う必要はないというのが俺と菊岡の判断だ。態々頭と胴体が破裂したような死体になった男の話をしてもいい気分になれないだろう。俺の様に異常な経験をしていればまた別の話だが、シノンはまだ死と触れている時期が短すぎる。あまり彼女の精神を削るようなことはしたくない。

「っていうと、つまり犯人には全員逃げられたの?」

「実に不甲斐ない事に……」

「あの時、俺も負けてたから何も文句は言えないんだよなあ……」

 Pohとザザの実力ははっきり言って予想外だった。あの二人も何らかの特殊な力受けている。どう見ても心意には見えなくて、オベイロンが受けていた力とは同種のものだ。それの源は解らないが、オベイロンと違ってあの二人はそれを完全に呑み込んでいた。それが決定的な違いだ。正直、あの腐海の様な力を飲み込んで正気を保っているだけで俺からすれば驚きだ。そこだけは純粋に褒めてもいい。偉業として称えてもいい。

「まあ、次は絶対に殺す」

「それ、出来たら僕の前で言わないでくれると嬉しいんだけどなあ」

「言ったとこで手を出せないんだったらどっちにしろ何もできないよ」

「それもそうなんだけど……あぁ、うん。まあ、今はそんな感じだよ。話にしてみればなんてことはないよ、シノンちゃん。僕は殺人事件を何とかしようとしてキリト君を雇った。キリト君は私怨を含めてハンティングに行った。相手は予想外に強くて逃げられて、もう追えない。それだけの話だよ。何とも情けない話だよ。政府の役人といっても殺人犯の一人を捕まえられないとはね」

「それを言ったら俺だって結局最後までいいようにされて逃げられたんだ……こう見えて戦う事だけに関しては自信があったんだけどなぁ……」

 軽くブルーに入る。もちろんラフィン・コフィンをただの殺人集団とは思っていなかった。強敵になる事は予想していた。だがここまで押し込まれるとは思わなかった。はっきり言えば負けるとは思わなかった。負ける気もなかった。なのに最終的には見逃される形で逃げられるとは、何とも情けない話だ。というか恥ずかしい。俺が見逃されるとか……。

 あー、色々と顔向けができない。

「あ、いや、ほら、ふ、二人共頑張ってるじゃないですかっ!? 一回の失敗で落ち込まない落ち込まない!」

 シノンが少し焦った様に励ましてくれるのが救いだ。苦笑しながら俯いていた頭を持ち上げ、シノンへとそれを向ける。ありがとうと言葉を送りながら、すっかりと覚めてしまったダージリンに口をつける。美味しいが、勿体ない事をしてしまった。本来の美味しさがせめて失われている。ラインハルト達と付き合っているとクラシックやお茶に詳しくなったり、司狼と付き合うとブラックな方面で知識を増やしたりと、

 俺は一体どこへ向かっているんだろうか……。

 おれのかんがえたすっげぇきりと化計画!

 ないわぁ。

 それだけは絶対にないわぁー。

「まあ、このまま殺人犯を逃がすだけにはいかないからね。ネット側から常に監視するように体勢は用意してるよ」

「それって合法なの……?」

 国外にいる相手を監視してるんだしギリアウトなんじゃないだろうか。まあ、法律関係はそこまで詳しくないので何も言えない。

 そこで菊岡があんみつを食べ終わり、テーブルの上にお金を乗せてから立ち上がる。

「悪いね、僕はこの後用事があって少し忙しいんだ」

「あ、いえ」

 シノンが立ち上がって菊岡に頭を下げる。

「本日はありがとうございました」

「頭を下げる必要はないぞシノン。菊岡サンが仕事してればこんなことにはならなかったし」

「君はウチになんか恨みでもあるのかい……?」

 ない。だが子尾やるせない気持ちはどこでぶつけて発散しておかないと色々と溜まって爆発しそうだからこうやって吐き出す。八つ当たりなのは百も承知。だが俺は完璧な人間ではない。だからどこか、適当に吐き出せる場所でストレスは吐き出しておく。

 菊岡は首をかしげ、ポケットから角砂糖を取り出し、それを口に投げ込みながら店から出てゆく。その様子を冷たくなったスコーンとダージリンを楽しみながら見、

「アイツを印象通りの人間だなんて思わない方がいいぞ」

「え?」

「アイツ、よく見れば解るけど手にタコができてるし、足運びも訓練された人間の動きだ。ベイとかミハエルと同じ―――軍人の動きだ」

 とはいえ、日本にあるのは自衛隊なのだが。

「ま、関係ないかもしれないけど一応覚えておけ」

「もう私はいろいろ詰め込まれて何が何だかって状態よ……」

 ま、それはそうだろ。シノンが”此方側”に踏み込んだのはほんの数日前の話しだ。こんな話をしてもしょうがないとは思うが、知らないと知っているのでは結果的に大きな違いだ。

 さて、

「次へ行くぞ」

 片手でウェイトレスに支払の意志を告げて、菊岡の置いて行った金を渡し、会計を完結済ませながら自分も席から立ち上がる。次へ行くぞ、という言葉にシノンが困った様子を浮かべる。今ので全てだと思ったのだろうが、それは大間違いだ。シノンには少し辛いかもしれないが、それd目おこれをやる意味はある。

「次ってどこよ?」

「なぁに、ついてくれば解るさ」

 シノンを連れて店を出る。本当の意味でシノンが今までの辛い物語を終えるには、その終わりを飾るために美談が必要だ。

 そう、今までの悲劇を帳消しにする様な美談が。
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| 断頭の剣鬼 | 11:22 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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