陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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硝煙は雨に消えて ―――ネクスト・デイ

推奨BGM:Burlesque


 少しずつバイクの速度を落とす。バイクの速度を落とし、目的地が見えると道路の横へバイクを寄せ、止める。白線の内側に入るとバイクから降り、エンジンを止めて両手でバイクを押し始める。すぐ目の前に目的地が見えているのでそこまでバイクを押す必要はない。ゆっくりとバイクを押し、目的地に着いたところでバイクのスタンドをだし、バイクを立てる。バイクが倒れる事はないと確認すると、その横の壁に寄り掛かる。季節は秋に入ってもう結構立っている。もうそろそろ冬が近い事もあってかなり寒くなってきている。手にはバイク用のグローブをつけているが、それも冬に備えてもっと暖かいものになっている。服装も少し前よりも暖かいものになっており、全体的に厚着になっていると思う。

 周りに黒一色のファッションセンスをどうにかしろと言われたが、結局は面倒なので服装は全部黒で統一されている。アスナと会う時ならまだしも、日常生活で色を得編んだりするのは正直面倒だ。パソコンと剣にしか能のない男にファッションセンスを期待されても困る。いや、ここで中世ファンタジー系の服装を出してくれるのであれば少しは実力を発揮できるのだが。

 まあ、それも今は関係のない話だ。ぶっちゃけ黒は楽だ。

 ゲーム内の染色的意味でも。

 右腕のリストウォッチを確認すると時間はまだ三時十分前となっている。約束した時間が三時となるとちょうどいい時間に来たかもしれない。授業が終わるのは三時だし、あと十分程度待てば授業は終わる。基本的に待たせる事よりも待つ方が特異なタイプだ。根気比べなら狩りの時でいつも発揮している。リアルでの今季比べも悪くはない。


 ……俺は何を言っているんだろう。

 見上げる空は青い。透き通るような冬の空だ。夏とはまた少し違った色だと思う。でもやはり夏の空の方が好きだ。冬は基本的に嫌な思い出しかない。アインクラッドとか、アインクラッドとか、アインクラッドとか。嫌な思い出というか悪夢だ。アレは。アインクラッドの全てが悪い夢だとは言わない。だがあそこでの犠牲は多すぎたので。幸せな記憶以外のものはなるべく思い出として封じ込めておきたい。蓋をする、という表現になるかもしれないが、完全に封印するわけではない。あの出来事も間違いなく俺の一部なのだから、せめて手の届く範囲で封印させてもらおう。

 と、

 そこで鐘の音が響く。

 背後を振り返れば寄りかかる壁―――校門横の壁から少し動き、校内を覗き込めば学校の校舎についている大時計が午後の三時になったことを鐘の音で主張している。未だにライダー用のヘルメットをかぶっているため、音自体はそう大きく聞こえないはずだが……鋭敏化された五感は嫌でも鐘の音を拾ってしまう。まるでヘッドホンを付けた状態で大音量の音楽を流しているような状態だ。そんな状態だというのに、決して苦であるわけでもない。うるさい、と感じるだけで決して耳が痛いわけではない。不思議な感覚だと思う。本来ならあり得ない。

 三時になって学校が終わる時間になったことから校舎からぽつぽつと生徒達が出てくる姿が見えてくる。彼らを見てまず最初に得るのが”ふつうの学生だなぁ”という時点で自分の人生はどこかで間違えているのかもしれない。まあ、アインクラッドに参加した時点で大いにっ間違えている感じはあるので今更な話なのだが、自分もああやって普通の学生ごっこはしたい。そう、ごっこ。もう二度と普通であることはありえない。そんな感じはする。だからあくまでもごっこ。

 分はわきまえている。

 学生たちが此方に顔を向けて首をかしげる。まあ、ヘルメットをかぶった不審者がいれば誰だってそうだろう。かぶっていたヘルメットを外し、それをバイクの上に置き、校門に寄り掛かる様に背を預ける。横眼を向けながら学生たちが通り過ぎる中で、ライダージャケットのポケットの中に手を伸ばし、出てくるのはジッポーとタバコの箱だ。もちろん両方とも中身はあるう。が、別に喫煙者というわけでもない。ただ持っているだけだ。ボトムレス・ピットでバイトしている間に一度押し付けられたものだ。あそこで働いているチンピラ達は基本的にガラは悪いように見えて実は結構いい人たちだから困る。

 と、まあ、そんな情報はどうでもいいとして、

 彼女の接近を気配で感じ取る。タバコの箱とジッポーをポケットに戻し、ガンゲイル・オンラインで感じた気配と全くいっしょの気配が走って接近するのを六感で捉え、そしてその方向へ目を向ける。

 そこには見た事のない少女がいた。彼女の姿はアバターと全く違う。あの強気な美少女の姿はないが、一目でそれが彼女だと解る。まあ、現実とアバターで姿は大きく変わるのが普通だ。普通は解らない。SAOリターナーみたいに顔割れするリアルの姿をしたアバターを使う人間は他のVRMMOでは絶対に見ないだろう。

 彼女、シノンが走って寄ってくる。

「よっ、数日ぶりだな、シノン」

「や、やっぱり……キリト?」

「後で迎えに行くって言っただろ?」

「数日前の話しよ! というか何で私のことが解ったのよ!」

「菊岡……あぁ、総務省の人に調べて貰った」

「人権とは一体なんだったの……」

 さあ、少なくとも権力の前には意味のないものじゃないのかなぁ。権力を持っている人間が強いのは昔からある話だ。ちなみに一番強いのは暴力を持っている人間だと思う。俺のトップに立っているのはラインハルト、明広、そしてメルクリウスの三強。この三人を超える暴力が存在するとか想像したくない。

 ともあれ、バイクに戻ってスペアのヘルメットを取り、それをシノンへと向けて投げる。少し驚いた様子でヘルメットをシノンは受け取る。俺も自分のヘルメットをバイクからとり、それを頭にかぶる。

「ちょっと待って、今からどこ行くのよ」

「銀座」

「はあ?」

「そこで待ち合わせしてるんだよ。ほら、早く後ろに乗ってくれ」

 バイクにまたがりバイクのエンジンに火を入れる。騒音と共にバイクのエンジンがよみがえり、その存在を主張する。シノンがバイクを奏でる騒音に驚き、丸い目を向ける。

「これってまさかガソリン式?」

「かっこいいだろ?」

「……服のセンスは悪いけどバイクのセンスはいいのね」

「……」

 司狼が選んだものだとか死んでも言えない。とりあえず褒められたと取っておく。

 シノンもスカートに気を使いながらバイクにまたがり、此方の腰に両腕を回す。既にヘルメットはかぶってある。体を寄せてきたシノンが口を開いて質問してくる。

「で、今日はなんなの?」

 なんなの、ってそりゃあ。

「お前も説明欲しいだろ? 今回の出来事―――真実ってやつを」

 その言葉にシノンは黙り、

「じゃあ」

 一旦区切る様にして、

「―――アレ、全部夢じゃなかったんだ」

 夢かどうか、それを判断するのは何時だって自分自身だ。


                           ◆


 あの日、確かに俺とシノンは見た。世界に穴が開く瞬間を。世界が変わる姿を。多くの人間が死んだ瞬間を。発狂しそうな精神を抑え込み、そしてシノンの心を守り、そうやって俺達はその日を乗り越えた。友の死を感じて、そしていつd多雨した何かを感じて。そして心意という禁断のシステムを全世界へと公表して。そうやって世界は変わるはずだった。俺もシノンもPoh達が消えてから体に力は入るも、何もできなかった。何もできずに終わると思ったのに。

 ISLラグナロクには俺達二人しか残さず、BoBは終わった。

 正直に言えばかなりとまどった。何があったのか、それは完全に理解の範疇を超えていた。ただ理解したのは、

 ―――心意という存在が忘れ去られていた事。

 まるでそんな出来事は最初からなかったかのように、心意の存在を誰も知らなかった。掲示板を、ログを探った。なのに誰も心意という存在に関しては知らなかった。それはまるで、心意の事に関する情報だけ綺麗さっぱりに記憶から消し去られたような、そんな感じだった。違和感しか存在しなかったのに、誰の記憶もいいように改竄されていた。俺とシノンが協力して他の対戦車を全て倒した―――そんな風に事実は書き換わっていた。

 不可思議な現象を前に、出来た事は何もない。本当に俺が戦っていたのか、それすらも怪しくなるような状況だが、自分の中には記憶という確かな証が残っていた。他の皆からすれば異常とも見えるこの違いだけが自分を肯定する要素だったが、シノンに会った事でこの違和感が確証へと変わった。

 だが、ある程度事実を把握している俺よりはシノンの方が大変だろう。

 そういう事もあって、バイクは銀座の見覚えのある店にまで来ると動きを止める。裏手のパーキングエリアでバイクを止め、エンジンを止めてから鍵を抜く。ガソリン式バイクはもはやアンティーク扱いで盗む人間などいないだろうが、それでも高い買い物だったのだ。ヘルメットを外してロックを駆ける。最近の日本は色々とセキュリティーも凄い事になっているし、これが盗まれる心配なんて必要ないのだろうが……。

 ともあれ、バイクから降りてシノンのヘルメットを回収する。初めて来るのか、少々高そうな店にシノンが気おくれしている。その姿に軽く苦笑しつつ、シノンの肩を叩く。

「さ、中に入るぞ」

「あ、う、うん」

「なんだ、緊張してるのか?」

「う、うるさいわね」

 その意気だ。

 シノンを先導するように銀座にある店の中に入る、店の中に入ったところで、受付の女性が頭を下げてくる。

「いらっしゃいませ―――」

 そしてそれを邪魔するように、

「おーい! キリト君こっちこっち! こっちだよー!」

「……ツレが迷惑してます」

「いえ、ごゆるりと」

 出来た店員さんだなぁ、等と思いつつも恥ずかしく思い、店内、菊岡がセーブしている席に向かう。終始無言のシノンはどうやら菊岡の迫力だけではなく、店内の雰囲気に圧されている所があるようだ。初々しいなあ、等と思うが自分も最初来たときはこんな感じだったのではなかろうかと、そんな事を思う。

 菊岡の体面に座る様に椅子に座ると、シノンが軽く菊岡に頭を下げながら横に座る。

「やあやあようこそキリト君にシノンちゃん? うん、まずは話を始める前に好きなものを頼んでよ。これ、国民の血税から出てるから懐が痛まないよー」

「おい。おい!」

「一気に食欲なくしたわ……」

 開幕から軽いジャブを叩き込んでくる。が、まあ、菊岡のこれにももう慣れたものだ。BoB終了から既に数日が経過しているが、その前に一度情報の生理や報告で菊岡とはあっている。そしてその時に今回の件の報酬を貰っている。その一部に少しだけ条件を足してもらったが―――それが今回、ちょっとした協力のお願いだ。

 さて、と一回口にしてからメニューの中の物を見る。前回頼まなかった者で少しだけ気になっていたものがある。

「あー、ダージリンはこの季節オータムフラッシュしかないか。んじゃあ軽くダージリンとブルーベリースコーンだけでいいや。シノンはどうする?」

「え、いや、これ、値段がおかしくない……?」

「銀座だよ銀座。これぐらい普通だろ」

「アンタの金銭感覚おかしいんじゃないの」

「まあ、最近は割と懐が温かいからなあ……な、菊岡サン」

「うーん、死銃の調査でバイト代持って枯れたばっかりだからねぇ。まさか交渉で負ける日が来るとは……」

「ガラの悪い先輩に色々と教わったからなあ……」

 手持ちがなかったらレイズする方針は見事に司狼と一致していた。あの人の煽りスキルとブラフのスキルは一級品だ。教わる事は多かった。まさかこうやって本当に使う日が来るとは思わなかったが。

「それよりもシノンは何も頼まないのか?」

「あ、いや、……うん。私はキリトと同じのでいいわ」

「そうかい? おーい! 店員さーん! ダージリンとブルーベリースコーン二人前よろしくー」

「頼むから人前で叫ぶような恥を知らない事は止めてくれよ」

「うーん、恥なのかなあ……?」

「駄目だこいつ」

 まあ、菊岡の奇怪さに関しては今に始まった事ではない。SAO事件終了後、初めて会った時からぢ値こんな感じのキャラだ。俺が分析したところ、足運びが少々訓練された人間の動きだったり、どこか”作った”雰囲気があるところから、菊岡が宣言通りの人間ではないとは思う。まあ、今の所看破する意味も必要性もないのでそのまま放置している。藪をつついて蛇を出したい人間などいないだろう。

 ともあれ、

「ま、今日シノンを連れてきたのには理由があってさ」

「……」

 黙ってシノンが耳を傾ける。

「知りたいだろ? BoBを巡る話を。死銃とはなんだったのか。その正体は―――そしてこれからどうなるのか」

 菊岡は俺の言葉に笑みを浮かべる。

「さ、これから嫌ーな話が続くから、甘いものでも食べにあとね?」

 そう言って、俺達のオーダーが運ばれてきた。

 少し、長い話になりそうだ。

 GGOでの戦いは終わり、死人が多く出た。

 それでも、俺達の日常は……何も変わらない。
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| 断頭の剣鬼 | 11:47 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

更新お疲れ様です。

GGO編もエピローグですね。
心意の暴露とかは、なかったことにされたのかー

他にもアスアスは■にたどり着いた後、どうなったか気になりますな。

| tk | 2012/11/03 14:24 | URL |

やっぱり司狼は…。

| しっぽ | 2012/11/03 15:49 | URL |

そんな、そんなはずは(焦

きっと
「――ま、ぶっちゃけ、オレがいないとこの話詰んでんだけどな」
とかなんとか言って場をぶち壊してくれるはずだ
司狼さんならきっと、たぶん、――おそらく?(汗

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/11/03 17:13 | URL | ≫ EDIT















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