陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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悪魔に涙はない ―――アイ・ウィル・ファイト

推奨BGM:Disce libens
*1推奨BGM:Thrud Walkure


 倒れている。

 指一本動かせずに倒れている。反応する事すらできなかった。ただ攻撃を受けて倒れたという事実しか残らない。体の前面に裂傷を受け、そこから勢いよくが噴出する血。数十分前にPohにメイトチョッパーで体を抉られたときと同じように、体から活力と体温が逃げて行くのを感じる。致命傷なのかもしれない。いや、致命傷なのだろう。攻撃を受けたというのに何故か痛みを感じない。痛みは感じすぎるとある一点で痛覚が麻痺して、全く感じなくなると聞く。多分そういう事なのだろう。痛すぎて痛すぎて何も感じなくなっているのだ。

 っつーとなんだ。

 俺、負けたのか。

 ゆっくり、ゆっくり、本当にゆっくりと体が流れる。地面に向かって倒れている。本当に何もできなかった。知覚する事さえできなかった。本当の意味で次元の違う、そんな言葉の意味が理解できたのかもしれない。倒れ行く体からはマスクをかぶるPohの姿が見えて、表情は見えなくても今、こいつが失望の表情を浮かべているのが解る。

 なんだよ。

 その雰囲気として理解できる。

 が、

 なんだよ。なんだよそれ。なんでそんなに残念そうなんだよ。ふざけんなよ。勝手に蘇って勝手に仕掛けて勝手に殺してきて。そんで勝手に失望して。なんなんだよそれ。ふざけんな。何ででてきたんだよ。


 倒れながらも胸にこみ上げてくるのは理不尽に対する怒りだ。何故出てきた。なぜこんなことをした。何でかかわった。お前がいなければ平和な日常だったのに。アスナと、ユイと、そして皆がいる楽しい毎日だった。それなのに亡霊が何で今頃出てきた。思い出の中に消えててくれ。お前らは生きてちゃいけないんだ。だからお願いだから消えてくれ。何でそっとしてくれないんだ。何で、何で俺に関わるんだ。


                           ◆


               「順境は友を与え、欠乏は友を試す」
          Fortuna amicos conciliat inopia amicos probat Exempla



                           ◆


「The end of hero―――」(英雄の終わりか―――)

 つまらなさそうに呟くPohの声が聞こえる。本当につまらなさそう。期待していた楽しみがまるで何でもなかったかのように、むしろこれから見る筈だった映画のストーリーをバラされたような。そんな色をした声だった。叫びたい事は色々あるが、敗北感を上塗りするような諦めの絶望が体を見たし、体をただ倒すだけでそれ以上な何もできない。ただ脱力して―――大地に倒れる。

 背中を打つ硬い大地の感触ももう感じられない。体から流れ出す血液が大地を濡らし、それと共に世界の色と五感が薄れてゆく。体の前面に出来た切り傷は深く、視線だけを動かせば腹のあたりは内臓までバッサリやられている感じがする。あぁ、こりゃ駄目だ。経験からして生存できるボーダーラインを確実に超えている。

 銃声が響く。何かがPohの頭に直撃するが、Pohは仰け反りすらしない。何か、誰かの声が聞こえる。誰かが名前を叫んでいる。だが段々と音も聞こえなくなってきている。本格的に死期が迫っているのが理解できる。なんかの気配が必死に迫ってくる。シノンだ。シノンだと解る。腕を脇の下に通して、体を持ち上げてこようとしてくる。

「キリト! 起きなさいよ! 馬鹿! あんたは私が倒すんだから―――」

 耳元で何かを叫んでいる。


                           ◆

      「運命は、軽薄である 運命は、与えたものをすぐに返すよう求める」
            Levis est fortuna id cito reposcit quod dedit



                           ◆


 駄目だ。本格的にシノンの声が聞こえない。体を引きずられているのも理解できる。だが四肢には力が入らない、口も開かない。馬鹿な女だ。利用して利用して利用された挙句利用されて。なのにこんな詐欺師を助けようとしている。本格的にシノンの将来が心配だ。そのうち悪い男にだまされてコロっといってしまうかもしれない。あ、いや、俺がその悪い男だ。モテる事は罪だなぁ。

「……! !! ―――!!!」

 悪いシノン。聞こえない。もう少し解る様に喋ってくれ。

 体を引きずるシノンを見下す様に、手に武器を持ったPohとザザが一歩一歩、ゆっくりと歩み寄る様に歩いて近づいてくる。確実にシノンのペースよりも少し早いぐらいだ。そう、ほんの少しだけ、早いぐらいだ。嬲るような速度だ。手は出さない。ただ類て近寄ってくるだけだ。少しずつ、距離を食らって近づく。それだけなのにシノンの両手は酷く汗で濡れていて―――

「……!!」

 シノンの手から俺が滑り落ちて再び大地に倒れる。もう痛みなど感じないから気にもしないが、何かを叫びながらシノンは再び俺の体を引っ張る。その顔はかなり憔悴して見れる。俺を置いていけシノン。俺じゃこいつらを止めるのは無理だった。ミハエルか司狼、多分……この感じ、明広のやつも激しくドンパチやってる。いや、確実にやってる。だからアイツらのどれかを頼ってくれ。俺はもう無理だから。だからシノン、お前だけでも生きてくれ。

 そう言いたいのに。

 口は動かなくて、

 シノンは叫びながら体を引っ張る。

 そして、転ぶ。


                           ◆


                「恐れは望みの後ろからついてくる」
                     Spem metus sequitur.



                           ◆


 シノンが立ち上がり、そして体を引っ張ろうとして倒れる。蹲っている暇などない。今すぐ逃げるべきなのだ。俺を置いて。でもそれをシノンは仕様としない。俺を引っ張って、何とか逃げようとして、再び転ぶ。可愛い顔に土がついて、勿体ない事だと思う。こんな銃と硝煙にあふれた世界にいるべきではない。

 と、そこでザザが銃をシノンへと向ける。引き金に指は書けていない。ただのジェスチャーだ。だがそれだけでシノンは動きを止める。トラウマだ。シノンの記憶の中の触れてはいけない部分にザザが触れている。下種の極みだ。シノンはそれを向けられて震えだし―――

「――――――!!!」

 吠えた。獣の様な咆哮を上げて、自らを叱咤した。そして逃げようと俺を引きずり出す。トラウマを乗り越えて、俺と一緒に逃げようとしている。だが俺という重りがある限りシノンは逃げきれないし、彼女は俺を捨てようとしない。だから逃げる事は不可能だ。トラウマを乗り越えたその事実だけでも驚愕に値するのに。

 シノンがこうやって頑張っているのに。

 俺のこの体たらくは何なんだ。

 見てられない。無様だ。あぁ、だけど。

 俺は負けたんだ。

 Pohとザザが直ぐ傍まで寄ってくるのを知覚しながらも、目を閉じる。いい加減この生にケリつけよう。俺が死んで消えればシノンも少しは軽くなるはずだ。あぁ、敗者は黙して去るのみってやつだ。いい加減眠くなってきた。

 そろそろ―――。


                           ◆


                        「喜んで学べ」
                        Disce libens.



                           ◆


 ―――瞬間、悪寒が体を抜ける。

 今、確実に誰かが死んだ。誰か、身近な人物がその命を失った。それが悪寒として、確実な予感として体を抜けて行った。知っている人物の気配が途絶えた。それは最近よく顔を合わす仲で、そして同時に信じられる仲間の一人で―――

「―――――――――」

 瞬間、島全体を咆哮が轟いた。悼むような、そんな咆哮だ。それは聞く者の心に直接訴えかけてくるような声で、それを聞いた俺は涙を流さずにはいられなかった。理解してしまった。理解できてしまった。今の瞬間、誰の命が永遠に失われてしまったのか。それを理解できたしまった。理解なんかしたくもないのに、認めたくもないのに。どうしようもない事実としてそれを迎えいいれてしまった。

「ぁ、あ……ぁ……」

 ふざけるな。ふざけるな。ふざけるな。

 ふざけんじゃねぇ。

 いい加減にしろよ。

 舐めるなよ。

「俺がぁ……!」

 口の中から鮮血があふれる。それを吐き出しながらもシノンの手を振り払い一気にたアち上がる。体の前面にある傷などもはや些細な事だ。怒りが全身を満たす。目の端から涙が流れる。悔しい。何もできなかった自分が悔しい。諦めて泣き寝入りしようとした自分が悔しい。ふざけるんじゃねぇ。あぁ。ふざけるな。何を弱気になってたんだ俺は。何でこんなにもあっさりと諦めてんだ。よ

 ―――諦めなかったから今があるんだろ。

「俺が―――」

 立ち上がるのと同時に手の刃を強く握りしめる。今までこれを落とさなかった事が不思議だ。不思議なのに、こいつは絶対に手放さなかった。あぁ、そうさ。まだ戦意は萎えちゃいない。何を俺は言ってやがるんだ。この程度だ。そう、この程度の傷だ。

「―――この程度で死ぬわけないだろぉ―――!!」

 叫びつつ立ち上がり、”二刀”を構える。手の中に握られていたはずの大太刀は何時の間にか消え、その代わりに両手の中に刃が、片手剣が一本ずつ握られている。不思議とその剣は手になじみ、そして疑うことなく自分の刃だと信じられる。全身に力が、満ち消えて行った力はもうなくとも、再び体が戦意と活力で満たされる気がする。もう死ににいくとか、そんな問題じゃない。直接的な犯人はお前じゃないだろうけど。

「司狼の弔い合戦だ……!」

 目の端の涙を拭わず、楽しそうな気配のPohに向って叫ぶ。

「あぁ、そうだ。俺を―――」


                           ◆


「―――舐めるな」

 閃光が身を貫いたなどとは知らない。いや、興味がない。体に穴ができた程度で己は死ぬのか? その答えは否。死なない。死ぬわけにはいかない。死は直ぐそこまで迫っているとはいえ、こんな結末は絶対に認めない。死にたくとも、死に方は俺が選ぶ。そして俺を殺せるのは、

「貴様ではない!」

 幕引きの拳を全速力の加速を持ってアストに叩き込むため、ジョニーブラックを終焉させ、攻撃を食らった直後にアストへ向かう。体を貫いた閃光によって全身を焼くよな痛みが存在するとはいえその程度は無視できる。死ぬときのあの感覚はぬぐえない。何時だって覚えている。戦車の中で焼け殺されるあの感覚で比べれば今の状況は万倍マシだ。だからわかる。

 俺は死んではいない。

 加速を得た拳が不意を打って高速でアストに衝突する。それで終焉したかのように見えた。

 が、

「……」

「幸いなれ、癒しの天使 
Slave Raphael,

その御霊は山より立ち昇る微風にして、黄金色の衣は輝ける太陽の如し 
spiritus est aura montibus orta vestis aurata sicut solis lumina

黄衣を纏いし者よ、YOD HE VAU HE―――来たれエデンの守護天使。

アクセス

モード”パラダイスロスト”より、ラファエル実行―――」


 拳が触れたのはアストの光子の翼だった。それが終焉するのと同時にアストの肩甲骨から生える様に純白の翼が現れ、そして竜巻が発生する。触れた空間を引き裂き、そして世界自体に傷を残す、空間を切断する竜巻。その中にミハエルを捉える様に召喚された竜巻は一気に敵を滅ぼし、世界を引き裂こうとその暴威を振るう。

「ォオオ―――!」

 それに拳を叩きつける。それだけでラフェルの術式は崩壊し、消え去る。殺傷力という点に置いてはこの願いは頂点に君臨している。相性も抜群として高い。両腕でしか終焉を与えられないという点を抜けば最強に近い能力だ。

 しかし。

「アッシャー・イェツラー・ブリアー・アティルト―――開けジュデッカ」


 ―――敵も本気で殺しに来ている。

 足りない。

 勝利には、足りない。




良く考えるともうすぐ30話なんですよね、GGO編も。毎回30話前後だなぁ……。
ジュデッカとは■ではなく特異点の事らしいです?
ともあれ、次回からクライマックスでしょうね。
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| 断頭の剣鬼 | 08:32 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

水銀ェ―――
最近? 大人しい? と思ってたらそんなことなかったorz
安定のウザサであるw

にしても配役、役者が変わるとえらいパワーバランスが(苦笑)
こうなれば最近汚染されていい空気吸ってる気味なキリキリと我らが妖怪閣下の活躍というか無双に期待してみる(`・ω・´)キリ

| 女神は至高、金髪少女は至宝 | 2012/11/02 10:25 | URL | ≫ EDIT















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