陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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悪魔に涙はない ―――カメラード

推奨BGM:Unus Mundus
*1推奨BGM:Einherjar Nigredo


 血の赤も。骨の白も。弾丸の銀ももういらない。そんなものはいらない。

 そんなものはもう、いらない。

 過去の記憶をさかのぼって思い出してみろ。そう言われて一番最初に、いや、一番昔の、古い記憶。最古の記憶として蘇るのは戦火だ。戦争によって焼ける祖国。廃染色が濃厚であっても指揮官は突撃を命令する。どこもかしこも血と硝煙と肉の焼ける匂いしかしない。世界は焔に包まれて赤く染まっている。これもまた赤だ。だが血の赤とは違って此方は瞼を閉じていても見えてしまう。どんなに逃れようとしても命令の一つで自分は戦場に帰る。

 それが兵士の運命だ。

 血も、骨も、硝煙の匂いももうどれもいらない。


 そう思っても再び戦場に帰る。結局はそれが俺の居場所なのだ。そこにしか俺の居場所はない。だからこそ、それは時を超えて俺の脳裏に焼き付いている。決して消えようのない記憶としてそこに残っている。何故だ。何故それが残った。そう嘆く事もあったかもしれない。だが何も焼き付いていたのはそれだけではなかった。

『ガワの問題だよ』

 そう言ってくれる戦友がいた。

 俺は長く戦場に居すぎた。だから服の着替え方を忘れたのだと。夏になったら夏服を着る様に、冬になったら冬服を着る。これもそれと全く変わらない話だと言った。俺は洗浄では兵士のガワを着ていればいい。だから日常へと帰ってきたのなら日常で着る様なガワを着ろ。洒脱さが女を口説く上では大事だ。まずは身なりを整えてから中身を切り替えろ。あの時はくだらない事だと思っていた。思ってしまった。だが今して思えばアレは金言だった。

 愚かな男だった。

 だが優しい男だった。

 そう、愚かしい程に優しい男だった。祖国の未来がどうなっているのかは解っている。もう目に見えて崩壊は始まっている。それは疑いようのない事実だった。そのまま適当に後方で大人しくしてればいいものを、一緒についてくるからこんな終わりを迎えてしまった。あぁ、だがお前は間違いなく俺の無二の戦友だった。いや、だからこそ俺の戦友だった。お前はこの刹那を美しいと言った。同意せざるを得ない。俺達は生きている。全力で生きている。だからこそ俺達は輝いていた。

 そして死んだ。

 ある日何の予兆もなく俺達は死んだ。馬鹿か。予兆など幾らでもあった。俺達の日常は死で溢れていた。死の中でこそ俺達は輝いていられた。だから俺達には終わりが来た。必然の話しだ。

『おい、マジかよ、なあ……俺達ここまでなのかよミハエル―――』

 俺の名を呼んでくれた友。

 お前は死んだのに。

 なぜ俺はまた立っている。

 記憶していた。覚えていた。受け継がれていた。その名称や概念が問題ではない。俺は俺の記憶を持っていた。戦場の英雄として戦った俺の刻を持って生まれていた。もう血の赤も骨の白もない。そこらじゅうに秘密警察や硝煙の臭いが漂う街はない。誰もが笑って、三時におやつを食べようかなどと口にする程に平和な世界だった。時代も大きく進んでいる。

 戦争してまで手に入れたかった普通で世界は溢れていた。

 神は俺にどうしろというのだ。

 戦車を操り、人を殺すしか能のない英雄を再び引っ張り出して神は何をしたかった。何故死なせてくれなかった。英雄の物語は英雄の死を持って完結するのではなかったのか。今すぐにでも死にたい。自殺したい。だがそれは出来ない。それは誇りを穢す行為だ。自殺だけは許されない。

 だから生まれた瞬間から俺は歩く死体だった。何をするにしても無気力。言葉を放せても当たり前。計算で来ても当たり前。体の動かし方を知っていても当たり前。どれもこれもできて当然だ。俺は俺として生き続けているから。故に、世界に色はなく破滅の願望だけを持って俺は生きていた。

 ―――そして俺は出会った。

『久しぶりであるなヴィットマン大尉』

『卿は卿の好きな様に生きるのが良かろう。あぁ、天主の意志など我々の知った事ではない』

『そうであろう? ヴィットマン大尉……いや、ミハエルよ』

 再び軍務に身を投じながらも自由に生きる黄金の姿は俺にとっては衝撃だった。同じ境遇である事ではない―――同じ境遇でありながらこの男は過去を過去として扱えていた事だった。俺には到底無理な事だけにそれは衝撃だった。あぁ、だが、それは俺の記憶を呼び覚ます。

 俺は、今の俺でいればいいのだ。

 そう、要するに”ガワ”の問題なのだ。

 俺は今の俺の”ガワ”を着ればいい。それだけの話だ。黄金はそれが上手くできたというだけの話しだ。あぁ、改めて到底無理な話だとは思う。だが、そうだな。

 少し、無謀な事をしてみようとは思った。

 この手は真っ赤で染まっていた。

 だが今は生まれなおした人の手だ。罪は魂にあれど、この肉にはない。

 ならば衣を着替え―――昔は出来なかった事に手を出してみよう。

 弾丸で何百何千何万とも笑顔を奪ってきたのだ。少々、笑顔を増やす職に就くのも悪くはない。失敗したら失敗したで運がなかった。才能がなかった。それだけの話だ。破滅願望は捨てられない。これは俺達があの戦場を駆け抜けたあかしであり唯一価値のある勲章だ。だから俺は少々別のガワを被って生きよう。

 それを、俺の友情の証として送ろう、ロートス。

 あぁ、そしてお前はアイツなのだろう。顔も声も姿も歳も恰好も全く違う。だが解るぞ。その輝きが。その願いが。誰よりも似ている。輝きが、祈りが似ている。出会い、話し合い、そしてやはり貴様は貴様だと理解した。今はもうそこに記憶はなくとも―――受け継がれるものは世代を超えて受け継がれている。

 お前も随分と愚かで、そして優しい男だな、アキヒロ。

 故に、全霊を持ってお前の友情に応えよう。

 あの時は形にして何も返せなかったからな。

 お前を通して受け取った一部を清算させてもらおう。そして、ミハエル・ヴィットマンという一つの存在に対して終焉を与えよう。それまでは俺は永遠に亡者だ。歩くだけの死者だ。

 故に―――


                           ◆

*1


<1>
「人世界・終焉変生」
Midgardr Volsunga Saga

 終焉を叩き込む。それ以外にすることもできる事もない。この拳はあらゆる歴史に幕を引く拳でありそれが俺の渇望。あぁ、死者が羨ましい。死んだままでいられる彼らが何とも羨ましい。そして自滅因子が発露しているあの二人は本当の羨ましい。時を超えて生まれたこの渇望はだれにも代えられない。そして変えられないからこそ強く、そしてこれを耐えられる存在などいない。そう、目の前の二人が堕天使でも、欲界の細胞であろうと構わない。この拳は終焉だ。触れればおある。

 終焉しろ。

 振るわれた拳がまっすぐジョニーブラックを終焉する事を狙って振るわれる。祖糞、精密性、そして技量は極限域にまで達している。人間の一生を費やしても到達できない技巧がその一撃には存在する。二生目を受け、そしてそれでも止まらなかった鍛錬があってこそ到達できる魔人の領域の技巧が逸れには詰まっている。一挙一動が必殺名だけではない。動きの一つ一つが意識の合間を縫い、超直感が正確に相手の動きを先読みし、捉える。その動きから逃れられるん方法は存在しない。

 この二人でなければ。

 ジョニーブラックは幕引きの拳を受けた。瞬時にジョニーブラックの体に終焉が言い渡され、その体は消滅を始める。だがその瞬間、ジョニーブラックが退くそのものとなって終焉された部分を切り離す。毒そのものと化しているジョニーブラックにしかできない芸当だ。いや、ジョニーbラックが規格外の逸脱者であり、そしてそれが毒という性質を持っているからこそ可能な芸当だ。純粋に存在としての質量が大きいだけではなく、毒という性質が汚染、腐食、そして同時に治療を行っているからだ。古来より毒というものは薬にもなるもの。

 故に相性と質量の問題でジョニーブラックは終焉を避けていた。

 それはミハエルが持つ唯一にして最強の兵器が意味をなさなくなったことに違いがない。そして毒が両腕以外に中る度にミハエルの体はけずれ、溶け、そして死んでゆく。ジョニーブラックはそうだ。攻撃を受ければ受けるたびに体の毒が離散し、拡散し、そして付着する。そうやってジョニーブラックを攻撃する相手は勝手に自滅するのだ。ただ笑ってみているだけで。

「おいおいおいおいおいおい、どうしたんだよぉ!」

「―――」

 笑って見下す。それだけでジョニーブラックは勝利できる。性質が、そして何よりも祈りが最悪に最低な能力だ。

「俺は掛け値なしにすばらしい! あぁ!」

 天狗の理。

 ジョニーブラックが目の前の二人と対等に立たせている最大にして唯一の要因。それこそが最悪の源。それさえなければジョニーブラックなど芥程の力しか存在しない。故にそれを誰よりも理解している―――アストは詠唱を始めた。

「ATEH MALKUTH VE-GEBURAH VE-GEDULAH LE-OLAM AMEN

BEFORE ME FLAMES THE PENTAGRAM BEHIND ME SHINES THE SIX-RAYED SATER 
我が前に五芒星は燃え上がり、我が後ろに六芒星が輝きたり

ATEM MALKTH VE-GEBURAH VE-GEDULAH LE-OLAM
されば神意をもって此処に主の聖印を顕現せしめん

アクセス、マスター

モード”エノク”より、サハリエル実行―――」


 放たれたのは黄金に輝く光の縛鎖。サハリエル。ありとあらゆる存在を拘束し、その存在を封じ込める光子の鎖。神格には無理だが、それ以下の存在であれば容赦なくがんじがらめに全ての行動を、意識さえも封じ込める拘束術式は一瞬でジョニーブラックを拘束する。回避、防御、攻撃、その行動の全てを禁じられたジョニーブラックにミハエルが迫る。

「終わりだ」

 幕引きの拳がジョニーブラックに叩き込まれ、

 ―――ジョニーブラックの体が破裂する。

「ダミーだよばぁーか!」

 破裂したジョニーブラックの体は毒によってつくられたダミーだった。サハリエル発動前に生み出した分身は幕引きが直撃する寸前で爆発し、四方へ大量の毒を散布し、穢れと汚染を振りまく。最も近かったイハエルが拳でそれを終焉させる。しかし全てとはいかない。

 アストが光子の羽で毒を吹き飛ばすが、ミハエルの右半身に大量の毒が付着する。それは一気に服を溶かし、そして同時にミハエルの皮膚をも溶かす。溶けた個所からはミハエルの骨が露出して見える。が、表情の変化は一切ない。新たに見えたジョニーブラックの位置に幕引きの拳が叩き込まれる。再び切り離して回避するジョニーブラックとミハエルの行動はただのイタチごっこだ。アストの攻撃をものともしない性質である二人の為妙な硬直状態に入っている。

 が、

 ミハエルだけが死に向かっている。

 ―――しかしそこに歓喜はない。

 認められん。

 そう、認められない。

 貴様らに殺される事を俺は良しとしない。あぁ、俺は死人で。死者だ。墓場に帰るべき存在だ。死者が歩いているなどとは気持ちの悪い事だ。故に俺は死ななくてはならん。だが貴様らではない。貴様らに殺されて納得などできるものか。そうだろう、戦友よ。

「―――俺に幕を引けるのは戦友だけだ」

 ミハエルが静かに言葉に死、全力で疾走するのと同時に、

「モード“シェムハザ”―――因子変更―――

モード“エノク”より、アルマロス―――実行」


 アストが術を発動させる。瞬間的に肉体が内部から膨張を開始する。左腕の終焉を自身の体に叩きつけるのと同時に膨張は消え去る。しかしジョニーブラックはそのまま膨張し、破裂する。死を生む毒が爆発と同時に辺りに飛び散る。それがミハエルの体に降りかかるが―――

 ―――構わん。

 体に降りかかる死を全て無視し、精神を全力集中させる。瞬間的に著感覚で捉えるのは予知にも似た先読み。次の瞬間、どこに敵が現れるのか。その全てを―――見切る。

<1>
「人世界・終焉変生!!」
Midgardr Volsunga Saga

 全力で幕引きの拳が虚空に叩きつけられる。拳は空を切って無に中ったように見え―――瞬間的に体を形成したジョニーブラックの体に命中する。幕引きがジョニーブラックの体に行き渡る。

「な―――」

「終わりだ」

 二発目の幕引きがコンビネーションによってジョニーブラックに叩き込まれる。ストレートからボディーブローへ。もはや終焉は止められない。毒の液化現象は終わりを与えられ、ジョニーブラックの芯に、汚染も精神も渇望も記憶も命にも、全ての歴史に終止符が打たれた。

 二一発で十分すぎる終焉を二発も受けたジョニーブラックがその姿を永遠に消失する。

 ここにジョニーブラックは死亡し、

「ATEH MALKUTH VE-GEBURAH VE-GEDULAH LE-OLAM AMEN

汝等見張る者ども、第五天に捕らえられし虜囚達よ、ここに魂を解放せん

汝は蛇にしてオリオンに吊られた男

ベネ・ハ=エロヒムにして砂漠の王なり。贖罪の日は今この時なればこそ、

生贄の山羊を持ちて疾く去ぬるが宿命と知れ。

アクセス、マスター。モード”エノク”より、アザゼル実行」


 熱の存在しない閃光が空間を歪曲させながらミハエルを背後から貫く。
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| 断頭の剣鬼 | 09:25 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

ジョニーブラックが死んだら誰がキリトをリアルで襲うの?
米軍?

| ポートラム | 2012/10/30 09:53 | URL | ≫ EDIT

だから誤字が酷いって。

| 校正 | 2012/10/30 12:25 | URL | ≫ EDIT

※校正
おまえ何様だよ
気になるなら非公開コメで誤字の部分を伝えれば済む話だろうが。HNにも悪意しか感じない

| 臣 | 2012/10/30 18:38 | URL | ≫ EDIT















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