陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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犯罪者の宴 ―――トランスペアレント

推奨BGM:Bottommless Pit
*1推奨BGM:Schutz Staffe


 洞窟の中へと転がり込んできた司狼の姿を見て、シノンは一瞬で威嚇ではなく、射殺の為に銃を構える。が、引き金を引ける前に司狼が銃を取り出しシノンのサイドアームのみを撃ち弾く。銃を抜き、そして構える動作はシノンよりも後に行われていたのに、何故か司狼のその動きはシノンのを超える速度で行われていた。明らかにシステム外の動きであり、同時に司狼が逸脱者であることを示しているが―――まずはシノンを抑える事から始める。

「不本意ながらそれ、俺のバイト先のオーナー」

「不本意ながらそれ、ウチの将来有望なバイト」

 司狼と俺の茶番に毒気を抜かれたのか、銃を弾かれた腕を所在なさげにぶらぶらと振ったあと、それをひらひらとさせてから自分のライフバーを確認していた。

「……友達、選んだ方がいいんじゃないかしら」

 シノンが隠す気もない溜息を盛大にはくと、司狼に撃ち弾かれた銃の回収に向かう。が、シノンが拾い上げようとしたそれは触れた瞬間、砕けてスクラップと化す。今の司狼の一撃はシノンの銃を破壊したのだ。シノンが即座に司狼へと向けて睨み付ける様な視線を向け、司狼は何時の間にか口にタバコを咥えていた。


「んだよ。未成年にはやらねぇぞ」

「おい、そこでいかにも法律守ってます的な事しなくていいから」

「今まで俺様の慈悲でバイト代を出してやったことに気づいてないのか?」

「おい、シノン。こいつ露骨に脅迫しだしたぞ」

「そんな事より私は今破壊されたサイドアームを弁償して欲しいんだけど」

 シノンの視線を無視していた司狼だが、インベントリを開くとその中から銃を一丁取り出し、それをシノンへと投げてよこす。それをシノンはキャッチし、銃を確認する。

「ってなにこれ、デザートイーグルじゃない。こんなもの使えるわけないじゃない」

「おいおい、そりゃあ俺のスペアだぜ。デケェし、重いし、強いし。男が二丁拳銃やるときに選ぶチョイスだろ」

「アンタどこの厨二病患者よ! DE二丁流なんて実用性なさ過ぎて誰もやらないわよ! 無駄に要求STR高いし!」

 しかしネタスタイルでもどうにかなってしまうのが俺達の困った話で、どこからどう見てもナメプなのに全てが一撃必殺になってたりするから困る。しぶしぶと言った様子でデザートイーグルをしまう様子を見ながら、視線を改めて司狼へと向ける。洞窟の壁に寄り掛かってタバコを吸う姿を見ていると忘れてしまうが、この男は意味もなく洞窟に来て一服するような男ではない。

「で、何をしに来たんだよ」

「治療」

「はぁ?」

 こいつは一体何を言っているんだと、そう言いかけて司狼の姿を改めてよく見る。その服装も姿も何かをしたのか現実のそれと変わらない事はもはやもうおなじみとなっているが、何時もの赤い派手なコート、脇腹辺りが普通よりも少しだけ赤い気がする。いや、実際に赤いのだろう。そして鼻を使えばその正体が解る。

 血の匂いだ。

「司狼」

「ん? あぁ、気にすんな。直ぐに塞がるだろうよ」

 タバコを吸い、休息を得ている司狼はだれか、司狼を傷つけられる存在と戦ってきたのだろう。これがラフィン・コフィンやジューダス達だとしたら……いや、あの連中でしかありえないだろう。だとしたら、俺は、

「―――気にすんじゃねェよ」

 タバコを吸いながら、此方に視線を送るでもなく司狼は心情を見透かしたかのように言葉をはなってきた。

「”アレ”は俺の相手だ。お前じゃそもそも会う事すらできねぇよ」

「ん? それはどういう事?」

 シノンの疑問につまらなさそうに司狼が答える。

「どういう事もそういうことも、ただ純粋に”会えねぇ”ってそれだけの話だよ。解ってんだろ。セッティングされたかのように綺麗に集められたメンツに舞台。お前にはお前の相手が、俺には俺の相手が用意されてんだよ。胸糞悪いけど、あぁ、ようやくエンディングが見えてきたって感じだな」

「……」

 司狼にそう言われてしまえば何も言えない。露骨すぎるほどに作為性は見えていたのだ。こうやって口に出されてしまうと何も言い返せず、自分が相手できるのが―――ザザとPoh、あの二人だけだと決まってしまう。となると、

「な、なによ」

「こいつにも役割は割り当てられているんだろうな」

「何の事よ」

「ま、この会話も飽きたわな」

「いや、唐突過ぎるんですけど……」

「理解できる奴には理解できるって事だよ。ま、案の定お前も違ったってだけだ。あんまし気にするんじゃねぇよ。ふぅ」

 今の発言は確実に既知感の有無をチェックする言葉だった。となると、司狼はまだ既知感に囚われているのだろう。なんというか、自分一人だけ既知感から脱却していると申し訳ない気分になってしまう。あの既知感から逃れられない地獄の感覚は理解できるから、どうしようもなく申し訳なく思えてしまう。が、司狼はそんな事は求めないし、見せられても面倒臭がるだけだから表情にはおくびにも見せない。

 シノンもよく解らない、散った風な表情を浮かべ、頭を軽く振る。司狼も一種の狂人だ。方向性が悪性か善性か、その違い名だけで間違いなく司狼は狂っている。いや、司狼だけじゃない。黒円卓の人間、明広も、確実に狂っている。アスナもカテゴリとしては若干狂人側だが可愛いので問題はない。

「ねぇ、それでさっきの話しの続きなんだけど」

「ん? ああ、そう言えば話の続きだったな」

 よいしょ、と声を置いてから座る体の位置を調整する。洞窟の大地とか硬く、冷たいのでそろそろ尻が痛くなってきていた。軽くその位置を調節してあまり冷たくない場所を探すと、そこで腰を落ち着けて、

「えーと、どこまで話したっけ……」

 確かラフィン・コフィンの話になって、殺人に対する罪の意識の話しになって、そしてそこで司狼が現れたのだったか。

「んじゃあ、これから俺が話すのは≪ザ・シード≫によって生み出されたVRゲーム全てに搭載されているシステムで仕様として組み込まれているけど、だけど説明書には絶対乗らない仕様だ」

「説明書に乗らない仕様?」

「そ、それが心意(インカーネイション)システム。茅場晶彦がこっそりSAOに積んだ、想像を現実に帰る力、と言うのがいいのかな。ともかく、強く願った事を再現し、その思いの強さではシステムの枠組みから外れる事さえできる、そんなシステムだよ」

 その説明を受けてシノンは戸惑っている。ここで一旦言葉を止めて、シノンが情報を飲み込み、整理し、そして質問を思いつける時間を与える。彼女が情報を噛み砕きながら待つ無言の数秒間、嫌に緊張しながらそれを乗り越えた所で、シノンは此方に視線を合わせ、

「―――ルールもクソもあったもんじゃないわね」

「うん。まあ、その言葉には全面的に同意せざるを得ないけど、流石にその言い方はどうかと思う」

 システム破ったりルール無視したり人殺したりできるけど、一応心意システムのおかげでヒースクリフに勝てたし、ALO事件も解決に導く事が出来たし、アスナを取り返せたし。今、こうやって治療する事が出来ている。だから流石にその言い方はない。

 あ。いや。一方的に使われる立場だったら同じことを言ってたかもしれないけどさ。

「ま、訳の分からねぇモンには”黙ってろクソが”って言いたくなるわな」

「うんうん」

 ガンマン組は心意システムに対して文句がある様子だが―――

「―――心意って私にも使えるの」

 興味津々にそう言ってくるもんだから苦笑してしまう。さて、そこらへんはどうなのだろうか。茅場晶彦ではなく、事件が終わった後、”手加減”の仕方を軽くレクチャーしてもらいながら教わった話によると、

「心意は誰にだって使えるものじゃないらしいよ。強く、本当に強く願わなきゃいけないんだ」

 シノンはその言葉に首をかしげる。

「強くって?」

 そうだな、確かこう言ってたな。

「―――現実は間違っている」

「え?」

「現実は間違っている。私の考えが正しい。私が信じる事こそが現実だ。……まあ、教わった話だとこれぐらい強く願わないと発動できないらしいよ。つまり”現実否定して自分の考えが正しいと肯定できるレベル”で強く願わないと心意は発動してくれないんだ。もちろんそれだけじゃなくて強いイメージ能力も必要だ。結局心意は想像を現実にし、それで情報を書き換えているシステムなんだから。まあ、普通の人間には使えるものじゃないよ。使おうと思っているんだったら」

 司狼を指さす。

「最低であんな感じにならなきゃ駄目」

「私には無理だわぁ」

「お前ら結構いいノリしてんな」

 結構不思議な話だが、シノンとはなんだかウマが合う気がする。まあ、前見たあの水銀―――あの男が関わっているのだとしたら……いや、疑うのも考えるのもよそう。考えれば考えるほどドツボにはまるだけで、神ならぬ身で全てを把握できるわけがない。俺の様に矮小な一般人は天命に流れを任せて、その流れの中でできる最大限の事を実行するほかにできることはないのだ。

 と言うよりもめんどくさい。

 第一”俺”という人間は本来そこまで頭を使う男じゃない。そりゃあ軽く廃人だと言われる程度にはゲームで攻略とかそんな所で頭を使ったりはするが、特別勉強に秀でているわけではない。戦闘も脊髄反射で対応している所が多いし。動きの一つ一つを精密に計算して動くのは無理だ。

 だから、とりあえず、

「まあ、楽しいし問題ないんじゃないかな」

「むしろ盛り上げなきゃ私はやってられないわよ……なによこの状況。意味不明な事言われるし、意味不明なことしてくるし、意味不明な事になってるし」

「もうちょいボキャ増やしてから同じセリフ言ってみろ。お前、今の発言恥ずかしくなってくるから」

「今ので恥ずかしくなったわよ」

 軽く額を抑えるシノンから警戒の色は完全に消えていた。先ほどまで無駄に気負っている部分もあったし、これで精神が少しほぐれたのであればそれでいい。心意に関しては正常な精神の持ち主であれば辿り着く事はない。たどり着くにはどこか”外れる”必要があると俺は思う。それは戦意かもしれないし、渇望かもしれないし、怒りかもしれないが、心意を発動させるのは確実に常識的な枠組みから外れる行為だ。態々それを捨てる事もないだろう。

 結局、無駄に力を手に入れた者の末路と言うのは今の俺と司狼が表わしている訳であるし。

 さて、しかし、

「もうそろそろかな」

 立ち上がり、体の調子を確かめる。もう痛みはないし、傷口も完全に塞がっている。インベントリを操作し、再び上半身の装備を装着する。再び全身が黒い服装に包まれ、今、自分の精神が戦闘に向けて切り替わるのを認識する。もう躊躇はしない。温存する事もバレる心配もしない。事後処理は完全に総務省に分投げする。その気になれば情報規制とかしてくれるだろう。

 既に、十人以上死んでいる事だし。

「―――さて、殺るか」

 そう、殺す。もう殺す事でしか止められない連中を殺す。やりたくないし、嫌いだし、手を出しちゃいけないんだけど―――俺がやらなきゃ犠牲者は増えるだけだ。罪のない人間を快楽の為に殺して、あの連中は犠牲者を増やすだけだろう。

 なぁ、そうなんだろ。

 Poh。


                           ◆

*1


「ボス」

「あぁ、解っている」

 先ほどからキリトのする気配へと向かって少し時間をかけながら移動している。そこにはもちろん誰か引っかかることを期待している事からやっていることだ。だが、それにしては妙だ。そう、妙なのだ。

 妙に静かすぎる。

 銃声が全く聞こえてこない。

 かなり離れた場所ではジョニーブラックが盛大に暴れているのは解るが、ISLラグナロクの南部から東部へと移動する間にプレイヤーを一人も見ない以前に死体すらない。戦闘を行った形跡だけはあるのに、死体はそこに残っていない。これでは死体撃ちさえできない。

「ザザ、スキャンを使え」

「はい」

 ザザが配布アイテムであるサテライトスキャンを取り出し、それを使ってスキャンを開始する。一定時間に一度衛星のスキャンによって使用のできるこれはISLラグナロクの参加者の居場所、そして生存者を表示してくれる。ただしこれには川の中や、洞窟にいる相手の居場所を表示しないという弱点も存在するのだが、今確認するのは居場所ではなく生存者名簿だ。

「ボス、ほぼログアウトさせられています」

「そうか」

 ザザが確認した事で理解した。

 ―――キリト以外の誰かが先回りしてプレイヤーを倒し、島の端から落として強制退場させている。

「誰か、それが問題だな」

 マスクの下でそう呟き、頭を横へ振るう。

「Oh well, the party won't stop now」
(ま、もうパーティーは止まらないだろうがな)

 見えない誰かが動き回っている事を感じつつ、ザザの端末から生存者の名前を確認する。

 キリト、ジューダス、ミハエル、ナハト、シノン、ザザ、Poh、司狼、アスト―――イナンナ。

 この中の誰かが、参加者を逃がしている。

 確信と共に、農場エリアへと到着する。
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| 断頭の剣鬼 | 09:32 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

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| | 2012/10/26 17:33 | |















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