陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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DAY30

 たった一日だけの休暇はレオンミシェリの宣戦布告により終わりを告げた。レオンミシェリはその最終目標、ビスコッティの保有する宝剣を賭けて戦争を申し込んだ。その殊に民衆は驚愕を隠せずにいたが―――その大半がこれもまた演出の一つだろうと、そう信じて疑わなかった。誰もが今、本当にビスコッティの危機であるとは思わなかった。それはこのフロニャルドの人間として生まれ―――フロニャ力の加護によって平和に暮らしてきた人の思考だ。危機に対する判断能力が低下しているのだ。そのため、今が本当に国家存亡の危機であることに気づかない。

 ビスコッティとガレットの未来を決めるこの一戦は今まで戦争に使用してきた戦場を繋げた感じに行い、今までが局地戦が多かったのに対して、今度は多くの砦などを巻き込んだ大きな戦争となっている。ガレットもビスコッティも、どちらも全ての兵士を導入した、超大型の戦争となる。過去最高の興奮を得られると民衆も兵士達もこの一戦を心待ちにしている。ビスコッティもガレットも、どちらもマンの兵士を用意して、互いの本陣の前に布陣している。

 一日だけの休暇は終わった。

 ここからは仕事の時間だ。

 ―――俺の姿は本陣の天幕に会った。


 服装は長らく着ていたメイド服ではなく、親衛隊の服装だ。背筋を伸ばし、両手足を揃え、そして礼をする。

「これよりレオンミシェリ閣下の親衛隊に復帰させていただきます」

「うむ、良い。此度の戦はワシの指示に従って戦え」

「姉上ェ……」

 ガウルが絶望していた。軽く絶望していた。納得はいかないし、そして言いたい事は色々ある。が、ガウルも一国の王子であり、そして今の領主はレオンミシェリだ。逆らうことは今は出来ないため、命令に従うことはできない。故にガウルはこの戦争で勝利する以外にできる事はないのだが―――。

「―――姉上! 俺が立派になるまでつけてくれるって約束じゃなかったのか!?」

「ホント欲望に素直じゃよな」

「ガレット魂だ!」

「いや、関係ないじゃろ」

 ガウルの脳が若干アッパー入っている。その姿を見て、近くにいたバナードが苦笑し、そしてゴドウィンも呆れの溜息をつく。この場にジェノワーズがいないのは幸いと言うべきか、あの娘たちは表情には見せないが、ガウルを慕っている所がある。乙女の心情を探る事などこのスーパー従僕には容易い事だ。

「姉上……!」

「そろそろあきらめないとがっつきすぎだと思われて引かれるぞ」

 チラッ、とガウルが此方へと顔を向けるので軽く手を振る。ガウルの視線がレオンミシェリへと戻り、

「じゃあな姉上!」

「もう少し下心を隠す練習をしろ。将来本当に領主が務まるのかワシは不安じゃぞ」

「大丈夫! 大丈夫! フハハハハー!」

 何やらかっこつけながら部屋から出て行くガウル。アレか。ガウルももう十三歳だ。

「厨二病発症の時期ですか……」

「殿下も報われんな……」

「絶対君は意図的にスルーしてるだろ」

「さあ、何のことか私には解りかねますね」

「白々しいのう……」

 まあ、ガウルのあの姿は見ていて楽しいのでしばらくはそのまま躍らせておく。ああやって空回りする姿を放しのネタにするメイドは結構多いので、話題の提供は必須なのだ。後ろで邪悪な笑みを浮かべているとか言われているが気にしない。あぁ、気にしない。ともあれ、

「久しぶりに着ている所を見るのう」

「まあ、久しぶりに着るものですからね」

 もちろん親衛隊の服の事だ。それ自体はビオレが来ている物とほとんど変わらない。こうやってこの服装に腕を通すのは何年振りだろうか。懐かしい反面、これを着ると気持ちが引き締まる気がする。なんといってもこの服装こそが過去、戦場を荒した時の服装であり、思い出の塊でもあるのだから。

「武器はいらないのかい?」

「武器は握らない事にしてますからね」

「一回だけ見せてもらった剣舞は中々の物であったのがのう」

「命令であれば使いますが」

「いや、その程度命令するものではなかろう。……さて、ゴドウィン、ガウルを頼む」

「ハッ」

 ゴドウィンがガウルを追う様に天幕を出る。ゴドウィンも何も知らない人間の一人だ―――まあ、今回はガウルと共に前線の方で派手に暴れてもらうこととする。そして、

「バナードも」

「はい、準備を進めてきます」

 バナードもレオンミシェリに促され、退室する。これで天幕に残ったのは三人。俺とレオンミシェリとビオレだけだ。しばり無言でその場で立っていると、レオンミシェリが口を開く。

「さて、どこまで知っている」

 レオンミシェリが確認するように問うてくる。だから俺は目を伏せたまま、

「さあ、一介の従僕には何のことかわかりかねますが、閣下が私が何かを知っていると思えばそうなのではないでしょうか」

「なんか遠回しにネチネチ言われそうな予感がしてきた……」

「閣下、あの子実は結構陰険なところあるので舌戦で勝負しようとか考えないでください。気が付いたら丸め込まれてご飯を奢らされていますから」

「嫌に具体的じゃがそれは経験談か何かか」

 ビオレがそれを語りたがらない様に目を逸らす。従騎士時代は色々と充実していた気がする。いや、今を否定するつもりはないが、ここ最近はなんというか、仕事をしていても少し前ほどの充実感を得られない。まあ、その理由は把握しているし、原因も調査で大方は理解している。ともあれ、今の自分の立位置と居場所を考えると、

「グラナ砦にアレを近づけなければいいんですね」

「少しずつ口調が崩れてきておるぞ」

「えぇ、まあ、久しぶりに全力でいかないとどうにもなりそうにないので少しずつ”化粧”を落としてます」

 女とは色々と怖い生き物だと思う。心構え一つで色々仮面をかぶるし、違う姿を見せる。普段見せる姿とは別に、真実の姿を持ている。それを化粧で固め、隠している。自分の公私の分け方もその一種だが、

 それを纏ったままでは少々、重い。

 故に最強の名を冠する者と戦うには余分なおもりを振りほどく必要がある。本当に素の自分をさらけ出し、相対する必要がある。それでも勝てるか勝てないかで問われれば―――否、勝つことは不可能だ。存在としての格が違いすぎる。届く事は出来ない。経験と質量差は覆せない。

 だからと言って、

 時間稼ぎ自体は不可能ではない。

「まあ、閣下がやりたい事をやる程度の時間は五体を使って何とか稼ぎますので、好きにケジメる事をお勧めいたします」

「済まん」

 レオンミシェリが視線を天井へと向ける。

「―――ダルキアンに頼めればどれだけ楽なんじゃろうな。しかし、これはワシの始めた事だ。今更部外者に頼む事は出来ぬ。自分で始めた事の尻拭いぐらいは自分でせぬと恥ずかしくて外を歩けぬわ」

 ダルキアンの存在だけで子の戦場は台無しになる。それだけあの怪物は桁違いだ。そしてそれに相対する事となる俺は確実に貧乏くじを引いているが―――さて。

 戦争の開始まではもう時間がない。

 ビスコッティとガレット、その運命を決める戦いはもう始まる。
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| 短編 | 11:47 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

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| | 2012/10/28 13:00 | |















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