陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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犯罪者の宴 ―――パスト・クライム

推奨BGM:Noli me Tangere
*1推奨BGM:Sol lucet omnibus


「……はぁ、はぁ」

「大丈夫?」

「だ、大丈夫じゃないかも……」

「ちょっと!」

「悪い、まだ余裕だ」

「余裕があるのならそう言ってよ! ……もう」

 少し冗談めかしたが、シノンを無駄に心配させてしまったようだ。いや、実際に体はほとんど引きずるような形で動かしていて、シノンの支えがなければ倒れている所だ。それだけ、今の体の状態は酷い。鉄橋のあった、先ほどまでいた場所、つまりはISLラグナロク南側からシノンに支えられながら何とかラフィン・コフィンの二人組から逃げてきたのだが、正直状況は良くない。

「もう少し我慢してて。あと少しで農園エリア……そこには洞窟があったはずだから」

「こっちの、エリアも、……発掘されている訳か」

「BoBは一回目じゃないからね……って、喋ってて大丈夫なの?」

 そう言って心配そうに見てくるシノンの顔を見て、少しだけおかしくなって苦笑してしまう。少し前まではあんなに噛みついてきていたのに、こうやって共有できる敵や状況を持った瞬間こんな風に振る舞うのは―――この少女が根の部分では優しいからだろう。今更な話だが、少しだけ利用した事を申し訳なく思う。あぁ、本当に少しだけだ。必要な事だったし、シノンを騙さなければうまく大会に参加できなかっただろう。あぁ、この少女に出会ってよかったと今だから言える。


 こうやって、他人の為に必死になれる人間は素晴らしい。疑うべくもなく、素晴らしい人間だ美しい精神の持ち主だ。

「喋ってる方が、気が紛れる……」

「少し黙っててなさいよ。ほら、見えたわよ」

 そう言ってシノンがISLラグナロクの東側に存在する農場エリア、そこに存在する洞窟の中に体を引きずりこむ。適当な壁に俺を預けると、インベントリから素早く回復アイテムを取り出すが―――それを片手で制す。

「それじゃあ治らない」

「……薄々感じてたけど、やっぱりチートか何かを使ってるの?」

 チートか。

 まあ、

「チートって言うのかなあ」

「はっきりしないわね」

「チートだったらどんなにいいんだろう。そんな感じの話しだよ」

「はあ?」

 まあ、直ぐに理解できる人間なんていないだろう。でおもこの状況で理解しようとしているシノンは―――

「いや、これ以上はやめておこう」

「なによ?」

「いや、俺の中でシノンを褒めるのはもうやめておこうって話。これ以上褒めたら恋人に嫉妬されて刺されてバッドエンド直行するかも」

「アンタよく無事ね」

 ウチの抜刀妻はああ見えて結構ヤンでるけどそうでないときは普通に良妻なのだ。アスナの家が予想外に出かかったのが誤算だが、此方も此方で彼女に釣りあえるだけの男になろうと奮闘中だ。将来は絶対に結婚の約束を取り付けて、バーチャル世界だけではなくてリアルでの夫婦関係を目指したい。

 明広とマリィの、あの二人がやったような結婚式はまさに理想的だ。俺も、アスナとあんな風に結婚したい。まあ、それはまだ先の話しだろうし、ついでに言えばこの状況を乗り切ってからの話しだ。まずは治療を進める為に。インベントリを開き、装備欄から装備している防具、というよりも服の上半身だけ解除する。

「ちょ、ちょっと! いきなり何を脱いでるのよ!」

「悪い悪い」

 謝るも謝罪する気は全くない。上半身を裸に死、確認する自分の体は男のものだ。その事実に改めて安心し―――メイトチョッパーに貫かれた傷口を見る。シノンも何をしたかったのかここで理解し、傷口を見て口を押える。

「吐きたいのなら吐いても構わないぜ」

「は、吐くわけないでしょ。それよりも……それ、大丈夫?」

 シノンはどうやら気力で抑え込んでいるが、メイトチョッパーによって貫かれた個所はあまりいい状態ではなかった。グロテスクと言ってもいい。突く事ではなく叩き斬る事に特化した得物で無理やり突き刺された痕。無理やり引き抜いたことが祟っている。傷口が抉れているのだ。ポリゴンで構成されているアバターのはずなのにそこからはピンク色の肉と赤い血、そして内臓が見えている。内臓が外へと漏れ出ていないのは純粋に今まで心意で抑えこんでいたからに過ぎない。

 心意の凡庸性は凄まじい。

 ありがとう心意。

 ありがとう茅場晶彦。

 超ありがとう茅場晶彦。

 はい、感謝ここまで。

「ッ……グッ!」

 右手を傷口に当て、イメージするのは治療、細胞が再生し、傷口を埋めてゆく姿。内臓を、出血を抑え、体を元の形へと作り直すイメージ。消耗によって精神は疲弊しているが、それでもこのシステムの使用に関しては茅場晶彦を抜いて、誰にも負けないだけの実力があると自負している。そしてその自信を証明するかのようにゆっくりとだが、体は再生を始める。まるで無理やり肉体を再生させているかのような状況に、傷口を中心に激痛が走る。が、それを無理やり噛み殺す。手を血で真っ赤に染めながらも、傷口は心意の優しい光によってふさがった。その結果を見ながら、背中と腹の穴がふさがったことを確認し、改めて脱力する。

「あぁ、間に合った……」

 もう少し遅かったらヤバかったかもしれない。

「本当に、傷がなくなった……」

 道中、シノンに治療する方法はあるとだけ伝えておいたが、話に聞くのと見るのとでは全然違うだろう。ビデオの逆再生を見る感じにふさがる傷を見てシノンは目を丸くし、傷口のあった場所をじっと見つめている。その光景を少しだけ息を荒くし、俺は見つめ、その視線に気づいたシノンが少し躊躇いながら聞いてくる。

「えっと、今のが」

「―――心意だ」

「心意……」

 少しだけ伝えるかどうかを悩んだが、結局は伝える事にした。ラフィン・コフィンを一人で相手する事が出来るのが重畳なのだが、話はそうもいかない。特にザザはシノンを狙うような発言をしていた。つまりシノンが襲われる可能性もある。そんな状況にさせるつもりはないが、もし俺が倒れるような状況ができてしまった場合、シノンが一人で戦うような技術が必要だ。

 それが心意。

「チートとかじゃ……」

「いや、これは全てのVRゲームに”仕様”として存在するシステムだ」

「でもこんなシステム見たことないわよ。そんな傷口も、それを再生させることも、現実の人間を殺す事も―――」

 その言葉い苦笑する。やはり見せても簡単には信じて貰えない。ラフィン・コフィン……いや、Poh達がいつ来るかはわからないが、今は休む必要がある。横の地面をたたき、シノンに座るように催促させる。

「少し長い話になるから座ってくれ」

「警戒は―――」

「半径一キロ以内だったらネズミ一匹逃さないよ」

 その言葉にシノンが胡散臭そうな表情を浮かべるが、溜息を吐いて横に座る。シノンが横に座ったことを確認し、腹に当てた手を退ける。まだ軽く痛みは残っているが、それでも普通に動く分には問題ないレベルにまっで回復している。両の指を膝の上で組んで、さて、と声を漏らす。

「どこから話すべきかな」

「全部」

 すかさずシノンの声がした。横へと顔を向ければ真剣な表情でそういうシノンの姿がある。

 ……全部か。

 さて、んじゃあ……。

*1

「―――俺はSAO帰還者だ」

「……それは何となくだけど解ってたわ。そうじゃなきゃその出鱈目な戦い方が説明できないし」

「酷いなぁ」

 まあ、シノンの行っていることは間違いではない。旧SAOプレイヤー。特に最前線で戦い続けて来た攻略組は現代のVRゲームでは怪物とも取れるプレイヤースキルを持った存在だ。単純に二年間命を賭けて戦い続けて来た戦闘経験と技術は死んでもいい様なゲームをプレイした人間とは次元で違うレベルに立っている。ALOのトッププレイヤーのプレイヤースキルはSAOの中堅級といい所、という程に旧SAOプレイヤーのスキルは高い。それ故、以上に技術の高いプレイヤーイコール級SAOなんて方程式が成り立つこともある。

 だが、まあ。

「俺はアインクラッドでは攻略組あー……つまりSAOにおけるトッププレイヤーの集団のことな? とにかく”それ”の中でもちょっとした特別な位置に立っててな。ソロプレイヤーとしてあの七十五層までの冒険をしたんだ」

 まあ、なんと言うか。最初と最後はソロじゃなかったんだけどさ。見事アスナに攻略されてしまった感がここら辺にはあるよな。

「と、まあ、ともかく俺はトッププレイヤーだったんだ。ああ。うん。別にぼっちだったわけじゃないからそこらへん勘違いするなよ? 二人組作ってー! とか言われてもフレンドリストから十人ぐらいフレンド呼び出せたからな!」

「ボッチじゃないアピールはどうでもいいから話を続けなさいよ」

「この俺の空気を和ませよとする配慮を理解しないとは……。はあ、まあ、そんでPohやザザ、ジョニーブラックはそんな俺達”攻略組”が壊滅させた犯罪者ギルドなんだ。ラフィン・コフィン。犯罪者を表すマーカーがオレンジ色なのに、あまりに多くの悪事に手を染めた事からレッドギルドって呼ばれててな―――ゲーム内での死が現実の死に直結するあの世界でPoh達は両手の指では数えきれない数のプレイヤーを殺してきたんだ」

「……」

 シノンは黙っていた。それを聞いて、何に反応するわけでもなく黙っていた。

「結局ラフィン・コフィンはやりすぎだって話になって攻略組で討伐隊を組んだんだけどどっから情報が洩れてて、Pohをはじめとする幹部には何人か逃げられるし、奇襲するつもりが奇襲された死。挙句の果てには殺す覚悟もないから襲われても投降を呼びかけて剣を振るえないやつとかが出てきて、酷い地獄絵図だったよ。一部のプレイヤーが率先して殺人に回ってくれなきゃ今頃全滅してたんだろうなぁ……」

 視線を自分の手に落とす。エリュシデータを握っていた右手に視線を下ろして、そして思い出すのはあの時の光景と感触。握った黒い刃で俺は確かに敵の首を刎ねた。胴を割いた。心臓に突き刺した。そうやって相手を殺して生き残った。

「ホント、酷い地獄だったよ……俺も五人ぐらい殺したよ」

 その後にナハトとジューダスの登場という素敵すぎるイベントが待っているわけだがこちらはシノンと全く関係ないので避けておく。

「待って」

 話を突受けようとしたところでシノンに止められる。

「アンタも……人を……殺したの?」

 アンタ”も”、か。

「あぁ、殺したよ。生きる為に殺したよ。あの日の後も、俺は死にたくないから殺したよ」

「じゃあ―――」

 シノンが真剣な表情で此方の目を見つめる。

「―――どうやって乗り越えたの?」

 あぁ、なるほど。

 この少女も胸に何らかの傷を背負って、何かを求めてこの世界へ来ているのだ。そう、答えを探してこの荒野をさまよっているのだ。だがここは違う。ここでは答えを見つけられない。こんな、乾いた世界では見つかりっこない。

 だから教えてあげる。

「どうやって殺した罪悪感から俺が乗り越えられたか、だって?」

 そんな物、答えは簡単だ。

「―――今でも乗り越えていられないよ。数日置きに悪夢を見るよ。アインクラッドで殺した連中の顔を思い出すよ。善人ぶるつもりはない。殺す必要があったから殺した。俺は間違っていない。結果からそう信じる事は出来るけど、死者を忘れる事も死を忘れる事もない」

 そう、黄金の言葉を借りるなら、

「”死を想え”死は汝の隣人である。死を忘れちゃあいけないし、死んだ人の事を忘れてはいけないんだ。殺した事実は永遠に残るし、どんな善行を積んでもその悪行が消えるわけでもないんだ。それこそ人間から欲と詰みが撲滅された世界でしか許されないよ。だから俺は忘れないし忘れられない。剣で首を刎ねた相手の顔を、この手で貫いた心臓の感触を」

 クラディールは糞の様な男だった。だが、それでも生きていた。殺した事実を忘れないし、一生それを背負う。

「乗り越えるなんてとんでもない。俺達人殺しは何時までも殺した事実をずるずる引きずって生きるんだよ。その事実に折り合いをつけて、整理して、死を受け入れて、その事実を十字架として背負って生きるんだよ。その事実ですら人生の一部なんだから」

「なに、よ……それ……」

 それを聞いてシノンは脱力氏、洞窟の壁に寄り掛かる。力なく、愛銃であるスナイパーさえも手から放してしまう。その様子から今のシノンの精神状態がうかがえる。だがシノンはその事実を気にする以前に気づく様子もなく、

「なによ、それ。……背負うなんて。無理よ……私に……無理よ……背負うとか、受け入れるとか。そんな簡単にできるのなら苦労しないわよ……なによそれ……マジなによ。心まで化け物級何て勝てるわけないじゃない」

「今凄い酷い発言を聞いた気がする」

「事実じゃない。そんな風に受け入れる事の出来る人間なんてほんの一握りよ。無理よ私には」

 簡単な話だ。

「だったらその一握りなればいいんだよ」

 それを聞いてシノンが驚愕の表情を浮かべ、呆れの表情にそれを変える。何か自分一人に向かって呟き、

「アンタ―――馬鹿よね」

 よく言われる。すっごいよく言われる。ついでに朴念仁っても言われる。トップが化け物で二番目が馬鹿で三番目が朴念仁。ちなみに四番目は可愛い。表に出ろクライン。

 少しずつだが調子が戻ってくるのを自覚する。あと数分大人しくできれば、そのうちに体力も完全に回復できるかもしれない。楽しい事を思い出せるのであれば、それは余裕の証拠だと思う。

「さて、次は心意だけど―――ッ!」

「キリト?」

 インベントリからウィンチェスターライフルを抜き、それを洞窟の入り口へと向ける。この距離になるまで一切の気配を感じなかった。凄まじい穏行だ。誰かに接近されている。相手が穏行を解除したからこそ気づいた。

「出て来い!」

「ッ!」

 シノンも狭い洞窟での不利を悟り、ハンドガンを取り出す。それを共に洞窟の入り口へと向けながら、

「あーちょっと待て待て」

 両手を上げながら現れたのは―――遊佐司狼の姿だった。





「半径一キロ以内だったらネズミ一匹逃さないよ」 キリット

キリトさーん! ネスミどころか頭がイカれてる先輩逃してたよ!
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| 断頭の剣鬼 | 09:36 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

 ……あっ。キリトさん人生終了のお知らせか――?
 聞きようによっては十分に口説き文句として通じそうな台詞を吐いた時にすくそばに司狼とか……どう考えてもヤン妻に音声データ送られちゃうじゃないですか~。

| サツキ | 2012/10/24 10:24 | URL |

キリキリALOでBoB中継&キリト祭りになってるのしらないんだよなぁ・・・。
うん、まぁ、これ終わった後が本番かな。

とにかく頑張れキリキリ。
ヤン妻に必死で弁解する準備をするんだ!

| 断章の接合者 | 2012/10/24 10:40 | URL | ≫ EDIT

キリキリさん、一晩吸い尽くされるのは覚悟しな(意味深)

| ポートラム | 2012/10/24 11:15 | URL | ≫ EDIT

かわいそうに・・・
どうあがいてもチクられる既知しかないわwww

| 読者 | 2012/10/24 17:32 | URL |

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| | 2012/10/24 23:02 | |















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