陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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犯罪者の宴 ―――ブラック・アンド・ワイト

推奨BGM:Einherjar Nigredo


 ―――時間をさかのぼる事十数分前の話し。

 まだキリトがザザと衝突する直前の話し。

 それは奇跡か、もしくは意図された出来事なのか、その二人は樹海の中で出会ってしまった。黒と白、対照的な色を持つ二つの存在は劇物にも近い存在だ。それは人間としての観点からだけではなく、”世界”その者から見ても劇物の内に入る。世界にとってもこの存在は許容の上限に迫る異常な存在だった。特に白の女―――アストの存在は逸脱しすぎている。逸脱者が皮を被って無理やりレベルを落としている様な、そういう感覚がこの存在にはある。格で言えば明らかに黒円卓の男―――ミハエルよりも高い位置に存在する。

 堕天使と英雄では格が違うのだ。

「ミハエル、ヴィットマン」

 少女に見間違うような体躯の女がニグレドを確かめる様に名前を口にする。それに応える様にニグレドが口を開く。しかし、その口から零れるのは名前ではなく、

「―――アスタロス」

 アスタロス、悪魔の名でアストを呼んだ。いや、名を呼んだのではない。アストを表す神号を呼んだのだ。彼女が一体何を象徴するのか、それを一瞬で見抜き、そしてそれを呼んだ。彼女を中小者(クリミナトレス)と、ミハエルはそう呼んだ。その事実にアストは眉一つ動かさず、が、しかし口を開く。

「見つけました。私の相手には貴方が最適でしょう」

「……ふむ」


 ミハエルが軍帽を少しだけ触れ、その位置を正す。今のアストの言葉には引っかかる部分があるのだ。貴方の相手ではなく、私の相手、そうアストは言ったのだ。順番が逆だ、と思うのが普通だろうが、視点を変えて考えてみよう。つまりアストの目的は足止めではなく、戦うこと自体が目的である。最適と言うからにはもちろんある程度の手札は読まれている。しかし、

「なるほど、俺を導いていたのは貴様か」

「いえ、それは違います。貴方も結局導かれた”犠牲者”にすぎません」

 確信をアストに否定され、そして確信は確定的な事実となった。瞬間、ミハエルは自分がここへと来た意味を、その本当の理由をようやく悟った。幾多にも仮説や憶測を立ててきたが、それらが全て一つの答えへと統合され、そしてミハエルは珍しく、本当に珍しく息を吐く。普通の息ではなく、溜息にも似た、呆れの色を含んだ色の息だった。ミハエルが知るものがそれを見れば、驚愕に値する光景だ。しかしアストは特にそれに興味を持たず、

「貴方の存在は実に―――」

「―――都合がいい、か。なるほど。なるほど、確かにそうだな。俺も丁度そう思っていたところだ。なるほど。実に奴らしい脚本だ。面倒なこと極まりないこの上ない。そして―――俺が俺と言う個の終焉を迎えるにはまだ遠いか」

 ミハエルの言葉は何か、一種の悟りが存在していた。常人では計り知れぬその言葉の意味をアストは理解するが何も言わず、

 手を動かす。

 瞬間、アストの周りに十数の光弾が浮かび上がる。この世界にも、別の世界にも属さない、既に存在しない魔導(ロジック)によって組み上げられた術はが拳ほどの大きさとはいえ、それ一つが家を吹き飛ばす程度の威力を持っている。それがこれだけ集まれば、破壊的な結果を生み出すのは目に見えている。アストは見た目は可憐であっても、ミハエルが言ったように、その本質は悪魔であり、堕天使である。ナハトともジューダスとも勝ると劣らぬ凶悪な力を秘めた存在であり、本気を出せばこの舞台自体がただでは済まない。だが場所を気にすることはない。

 寧ろ、破壊こそをアストは望んでいた。

 攻撃の準備が完了してアストを前にして、ミハエルも正対するように株氏を構える。それは軍隊格闘技の基本中の基本の構えであり、一番最初にならう拳の構え方だ。なのにその構え一つから滲み出す密度と、秘められたの修練の量は素人でさえ解るほどに異常性を持っている。その構え一つとるだけでありとあらゆる隙が潰され、なくなるのを認識できる。そう、単純に言って隙が存在しない。この男はこの場において、戦士として究極系の位置に立っている事を証明していた。動作の一つ一つが十年や二十年では不可能なレベルにまで洗練されている。それこそ一生を戦場で経験しなければ不可能なレベルにまでその姿は完成されている。

 言葉はいらず、

 この二人に開始の合図もいらない。

「―――」

 踏み込むのと同時にミハエルの拳が振るわれる。あっさりと音の壁を粉砕しながら光の速度に到達する拳はアストを打ち砕くためだけに振るわれる。形成も活動さえも発動していないただの拳だが、そこに秘められた聖遺物の特性は隠しきる事が出来なく、死の気配としてにじみ出ている。拳に触れれば終焉する事はなくとも、ありとあらゆる加護と防護を破砕、無効化するだろう。なぜならミハエルの祈りとは、願いとは終焉をもたらす事であり、完全な発動ではないとはいえ、それでも極限レベルの渇望は隠しきることなく漏れ出ているのだから。

 それをアストはあまりにもあっさりと回避する。空中へと跳び上がる様に宙返りしながらその周りを浮遊する光弾を放つ。数十を超える光弾は一斉に複雑な軌道を持ってミハエルを襲う。人間一人を消し飛ばすには十分すぎる威力を持った光弾がミハエルへと襲いかかる瞬間、

 それがミハエルの拳に触れる。

 あらかじめ狙っていたかのように、アストへと届かなかった拳は迫りくる光弾を正面から殴りつける。そう、正面だ。横でも受け流すようでもなく、正面から光弾を打撃し―――殴り砕いた。光速で動く光弾を臆する事もなく、気負うこともなく、その行動がまるで当たり前だと証明するように数十の光弾を正面から砕ききった。砕かれた光弾の破片がミハエルの顔を照らすのと同時に、

 樹海を真っ二つに裂くように斬撃が走る。

 紫の一閃だった。

 放たれた場所からその到達点までが全て紫に染まり、弾けた。反射的に避けるミハエルとアストであったが、その選択は次の瞬間正しいと証明された。紫が走った場所は次の瞬間汚染され、鎖、そして枯れた。毒だ。大地そのものを枯れさせるような凶悪な毒の一閃だった。触れれば肌からしみ込み、心臓を溶かす様な猛毒が振るわれていた。

「―――見つけたぜ」

 斬撃の発生地点、その方向へと視線を向ければそこにはボロボロの服装の、マスク姿の男がいる。マスクによって顔は隠されているが、その名前を察するのは簡単な事であり、そしてマスクの下で笑みを浮かべているのを理解するのもそう難しい作業ではない。

「見つけたぜマキナァ……」

 そう言って男は、ジョニーブラックは毒の滴るナイフを手の中でクルクルと回してから強く握る。

「黒の剣士とか黒騎士とか、キャラが被ってんだよ? ドゥ・ユー・アンダースタン? 黒いキャラは俺一人十分なんだよ。死ねよお前」

 狂った理論だった。殺すにはあまりにも稚拙すぎる理由。色が気に食わない。たったそれだけだ。それが理由でジョニーブラックは絶対にミハエルを殺そうと決めていた。常人には理解のつかない理由だが、ジョニーブラックの中では既にその答えは決まっており、そして同時に完結していた。気に食わないから殺す。いや、理由は特になくても殺す。まさしく狂人の発想。そして狂人の視線がアストにも向けられる。

「お前もなんだか白すぎて目が痛いんだよ。ユー・シャルダイ・トゥー。クククク、ハハハハハハハ……ハハハハハハ!」

 なにがおかしいのか他の人間には理解さえできないだろうが、ジョニーブラックにはこの状況が楽しくてしょうがなかった。そしてミハエルもアストも、襲われる事に異論はない。敵が増えたところで結果は変わらない。

「貴様らが消えて俺が残る。結果は変わらん」

「寧ろ都合がいい」

 ミハエルもアストも完結しており、そしてジョニーブラックもまた既に完結していた。故に納得し、殺し合う結果は生まれても他の結果は生まれない。ジョニーブラックが殺すと宣言しナイフを構え、アストはただ闘争を望み魔導の脅威を顕現させ、そしてミハエルはただ両の拳でそれを打ち砕く。睨みあうことも待つこともない。

 戦闘を開始すると決めた瞬間には殺す為にジョニーブラックが動き出した。踏み込んだ瞬間から軽薄な口調は消え、その全神経は戦闘へと向けられていた。その敬白な笑みの気配は消えない。だがその思考と戦意は確実に殺すためだけにシフトされている。踏込と同時に振るわれるナイフは得物としてはリーチの短いが、振るう速度の早い超近接向きの得物だ。しかしジョニーブラックが振るうナイフはその斬撃の発生と同時に紫の一閃を、毒の一閃を生み出す。それはナイフのリーチを超えて木々を腐らせ、そして汚染してゆく。飛び上がり回避するアストと、

 そして、

「―――形成」

 ミハエルは汚染を砕いた。

 正面から避ける事などせず、形成によって出現した鋼の両腕。それによって毒の汚染をミハエルは砕いた。広がる汚染は拳に触れた瞬間砕かれ消える。が、一撃では終わらない。素早い動きを許す小さな得物は連続的な攻撃を許す。故にミハエルとアストを毒の斬撃が波状で襲い掛かる。アストは回避し、ミハエルは正面から砕く。形成によって現出した機神・鋼化英雄が色濃く活動の色を残している。汚染などものともせず、それをすべて砕き―――

 ―――百を超える光弾が空から降り注ぐ。

激しい雨の様に光弾が空から押しつぶす様に降り注ぐ。光弾が破砕されるのと同時に新たな光弾が生まれ、終わりのない破壊の雨が降り注ぎ続ける。ひたすら振り続ける雨の中、発生するのは大地の破砕と―――光弾の破壊による鱗片の拡散だ。豪雨ともいえる公団の射撃に対しミハエルもジョニーブラックも無傷で立っている。それがこの攻撃はまだ二人の体に傷を生み出すほどの攻撃ではない事を語り、そして、

 同時にまだ、更に戦いは激しくなる事を訴えていた。

 ミハエルが拳を振り上げ、それで打撃する。一連の動きは隙が存在しないだけではなく、極限まで無駄が削られ、動く事に最低限の動きしか残ってない。此方は芸術ではなく、反復から生まれたのでもなく、ひたすら実践と地獄の様な経験から生み出された荒々しさが動きに存在する。だが、それでもその動きはほぼ完ぺきに近いと言える。その一撃は光弾の雨の合間を縫ってジョニーブラックに一気に接近させ、そして拳を振るう。

 それをジョニーブラックは受ける事ではなく、回避を選択する。受ければ必殺されるのは目に見えている事であり、それを挑戦するほどジョニーブラックは愚かでもない。その性質が快楽殺人者であり、狂人であることに変わりはないが―――同時に、ジョニーブラックは戦闘者として至高をも備えていた。それがジョニーブラックに対して、この状況における最適な回答を導き出している。つまり回避であり、

「死ね」

 死角からの斬撃。

 ミハエルの拳を避けるのと同時に気配を殺し、ミハエルの死角へと一呼吸以下で移動する。そのまま振るわれる毒の斬撃はミハエルでさえまともに触れれば汚染し、体が腐り散る。故に触れればそこまでの話しなのだが―――伊達に黒騎士と呼ばれているわけではない。

「そこか」

 それをミハエルは超人的な勘で回避した。もはや未来を導き出すレベルにまで高められている超直感はミハエルの経験の産物であり、同時に心理的動きから推測を生み出す、ほぼ確定に近い勘。それによってジョニーブラックの位置を悟り、回避するのと同時にカウンターの拳を叩き込む。

 拳がジョニーブラックに叩き込まれ、

 が、しかしジョニーブラックは必殺されない。

 この男を殺すには純粋に形成、そして活動位階の出力では足りない。それを理解するのと同時に、ジョニーブラックが笑い声を零す。

「ククククハハハ……!」

 どうしようもなく、救いのない笑い声だ。この状況を純粋に愉快だと思える歪んだジョニーブラックの精神をその笑い声は証明していた。どう、ジョニーブラックだけは楽しんでいるし、そして自分の勝利を微塵も疑っていない。

「俺は強い、負ける事なんてありえない―――お前ら全員腐って散れ」

「残念ですが」

「腐食は俺の担当ではない。日を改めて出直せ」

 軽口をたたくアストとミハエルではあるが、このままでは状況がこう着するのは見えている。ジョニーブラックも、そして互いに手札を斬らない状態で勝てる相手ではない。

 それを理解し、

 口を開く。

「―――死よ 死の幕引きこそ唯一の救い」
     Tod! Sterden Einz' ge Gnade!


 死を求める祈りが口から呟かれ、

「―――因子変更―――」
    エレメントリライト


 アストの口から遺失された術を発動される言葉が生まれる。もはやその詠唱を知る人間は存在しないだろう。

 ―――その生みの親以外には。

 三つ巴の戦場はこう生まれ―――そして膠着に入る。
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| 断頭の剣鬼 | 09:18 | comments:5 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

うん、お前らやりすぎだ。
絶対に映ってるってw

| 羽屯十一 | 2012/10/23 09:34 | URL |

>激しい雨の様に睾丸が空から押しつぶす様に降り注ぐ。
いくらなんでもこの誤字はひどい

| | 2012/10/23 10:42 | URL |

キャー、アストたんマジアストたん。
世紀末具合がハンパないな……。いいぞもっとやれ←

| 空 | 2012/10/23 17:32 | URL |

これ見てる人絶対ポカーンてしてるよww
世界間違えたってレベルじゃねえぞwww

| 裸エプロン閣下 | 2012/10/23 18:07 | URL |

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| | 2012/10/24 22:57 | |















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