陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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犯罪者の宴 ―――エスケイピング

推奨BGM:Juggerunaut


 体から命が抜けてゆく。油断したという言葉は言い訳にはならない。結果こそがすべてであり、やはり、俺が敗北したという事実は覆らない。腹から突き出ているメイトチョッパーの刃と、そして背後から感じる凶悪な気配がそれを何よりも物語っている。そう、俺は今、必殺の一撃を受けて死にかけている。この一撃は敗北した。

 そう、この一撃だけは。

 馬鹿が。

 間抜けが。

 あぁ、あの二人ならこんな状態でもこう言ってくれるだろう。

「―――この程度でで俺が死ぬわけないだろぉ―――!?」

「ハハッ!」

 腹を貫通する刃から強引に体を引く抜くのと同時に腰からグレネードを抜き、それを足元に叩きつけながら全力で地を蹴る。グレネードが地面にたたきつけられるのと同時にプラズマの爆発が発生する。その先がどうなるかを確認する余裕が俺にはない。故に前へ逃れるように必死に跳躍し、大地で前転を知りながら地に墜ちた光剣を回収する。土煙が舞い上がり、周りが一時的に見えなくなる。が、それも限定的な範囲だ。頼るべきなのは視界ではなく、第六感だ。現実でも、VR現象でもなく、そこから外れた、オカルトの領域に近いものを心の目で捉えるのだ。


 ―――そこだ。

 土煙を掃って突き出るエストックをギリギリで回避し、体を再び転がしながらさらに距離を生む。土煙を貫通するように弾丸が放たれてくる。五体から消えて行く力をかき集め、その弾丸を光剣で叩き落としてゆくが、一発一発、叩き落とす度に感じる銃弾の重さが体に響く。それでもここで負けるわけにはいかず、全力で回避しながら距離を生む。

 結果、土煙の中から逃れ、

 そして鉄橋の前まで到達してしまう。そのまま鉄橋を渡ろうとしたところで、足元に銃弾が突き刺さる。土煙が晴れ、そこから黒星とL115Aと構えたザザ、そしてメイトチョッパーを持つPohの姿が見える。どちらも趣味の悪いマスク姿だが、その下ではニタニタ笑みを浮かべているのが解る。非常に腹の立つ事実だが、今、俺はこの二人に抑え込まれていた。

 腹から流れる血を片手で抑えながら、インベントリから緊急回復ポーションを取り出す。それを一気に飲み干すが、回復する兆しはない。まあ、予想していた事実だ。アイテムで回復するのだったら苦労はしない。だがこうなったら昔、ナハト相手に使った無限回復バグの利用もできない。これは非常に困った話だ。

「……ま、負ける気はないけどな」

 銃はイナンナから奪ったウィンチェスターライフルが一丁、それ以外は全部使い切ってしまった。何気に銃の活用が捨て駒だっただけに、やっぱり銃とは相性が悪いらしい。あぁ、最初から光剣二刀流とかロマン装備で行くべきだった。その方が俺らしいスタイルだし、何よりも一番活躍できそうな武装だ。何故まともに戦おうと思ったんだろう。

 もう、俺自身はまともじゃないのに。

「まだまだ元気そうだなキリト」

 気軽に、まるでともに話しかけるような気楽さでPohが声をかけてくる。だがそれに秘められた狂気も、そして手に握られた得物が血に濡れている事も隠せてはいない。いや、隠していない。元より隠す気すらないだろう。となると、この男の現実世界における私生活が非常に気になるところがあるが、今はそんな事は重要ではない。

 何故だろう。命の危機に瀕している時こそ、くだらない事ばかりを思ったりしている気がする。

 ……余裕なのかな。

 まぁ、少なくとも―――明広と戦ったときよりはまだマシってレベルだ。

 あぁ。なら余裕だな。

 痛みも体のだるさも変わらない。が、それを無視して背筋を伸ばす。この男の前には絶対に弱みを見せたくない。

「ハッ、何を言ってるんだよPoh。まさかこの程度で俺を倒せると思ってたのかよ」

「いいや、そう思ってないさ。この程度で倒れちゃあつまらないしな。クリミナル・パーティーはまだ始まったばかりだ。この程度でクタバってちゃあ楽しい所を共有できないぞ」

「パーティーが何だよ。パーティーしてんのはお前の頭の中じゃないのか? クスリでもキメて一人頭のン下でぶっ飛んでろよ。どーぞどーぞ、俺の知らいないところで死んでろよ。お前らマジでいらねぇから。頼むから俺の人生に関わるのやめね? 見るたびに肥溜めの様な臭さを我慢しなきゃいけないんだよ。つかさ、お前毎回部下を連れまわしてるけどさ、何? 一緒に出なきゃ怖いの? 一人じゃ寂しいの? 大人になってそんなんじゃだせぇよお前」

 俺の言葉にPoh一瞬動きを止め、そして腹を抱えて笑いだす。

「なんだそれは。お前はそんなキャラだったか? あぁ、くだらない。実人くだらなくて、そして素晴らしい。ああいいぞ。最高だ。アインクラッドにいたころのお前はただの目障りな糞だった。お前を殺したくて殺したくてしょうがなかった。それは今も変わらないが―――お前という男に今、明確な興味を持った。初めてお前の事が面白いと思えたよ。殺したい気持ちに偽りはないが、お前に生じた”変化”には実に興味がある」

 愉快に、半分笑いながらPohは言葉を続ける。その口調からPohが今、興に乗っている事が解る。何かがPohの精神的なものに引っかかっている。そしてそれはチャンスだ。時間を稼ぐことは相手よりも此方のプラスになる事が大きい状況だ。ならばこの状況を最大限利用すべきなのだが―――

「―――なあ、お前何時からそんなに変わったんだよ。っぱり首が大好きなお友達に影響されたか? いや、今はそれ自体はどうでもいいか。それよりも大事なのは今のお前の状態の方だ」

 ……見当違いだった。Pohはどこまでも冷静に状況を見ていた。遊ぶのは確実に遊べるときのみで、

「……お前はまだ戦える。目から戦意が消えていない。見ればその程度は一瞬で解る。だからお前は殺さなきゃいけない。残念だが喋る暇もなさそうだ」

 ザザとPohが一歩前に踏み出す。忘れていた。Pohは俺が知っている限り一番残忍で、そして一番サイコな男だったのだ。誰よりも狡猾で、そして悪のカリスマとも言うべき存在。悪に属する人間であれば例外なく魅入られる脅威の悪。それが絶対的邪悪を得て、目の前にいるのだ。元々頭の切れる男が残忍性に磨きをかけているのだ。

 逃すわけがないだろう。

 ただ、

 ―――まだ全部見せちゃあいない。

 そう、まだ本来の得物を抜いてはいないのだ。抜いた瞬間の身体能力の向上や心意発動で無理やり傷は塞げるし、ある程度の回復もできる。瀕死の状態を覆す様にだまして不意を打てばそれでザザとPohの両方を一撃で討てるかもしれない。もちろんリスクは大きい。が、同時に得られる結果も大きい。

 やるかやらないかではなく、やり通すほかにないのは解っている。

「Sleep well Kirito。お前の事は忘れないさ」
(よく眠れキリト)

 Pohが初速を生むために一歩目を踏み込んだ瞬間、

「―――キリト!」

「む」

 空から大量のグレネードが降り注ぐ。その中でも一番ラフィン・コフィンの二人に近かったのが第三射―――シノンの狙撃によって爆発した。空中で爆発したプラズマグレネードは爆発は降り注ぐのと同時に爆発に触れたグレネードが連鎖爆発を起こし一斉に爆発する。プラズマ、そしてスモークグレネードが入り混じったグレネードの雨は俺とラフィン・コフィンを包み、分断し、そして、

「あぁ! もう! なんなのよこれ!」

 高速で接近したシノンが一気に俺に近づくと、肩を貸してくる。此方の腕をシノンの方に回す様にしてシノンが俺の体を支えてくると、

「アンタ、走れる?」

「……悪いな」

「んな事言ってる暇があったら逃げるわよ!」

 シノンふたりで、二人三脚の格好で大量の煙とプラズマの爆発に紛れて逃亡する。煙の向こう側から感じる二人の気配は最初の場所から動いていない。王気配がない。それが相手によって生かされている事だと認識しながら、シノンの好意も、このチャンスも無下にできない。

 ―――次は絶対に勝つ。

 その意思を煙のカーテンの向こう側へと飛ばし、シノンと共に逃亡する。


                           ◆


 スナイパーライフルを背負った少女、そしてキリトが逃げて行くのを感じる。キリトの気配は他の人間に比べて独特すぎる部分がある。追うのはそう難しい問題ではない。グレネード程度はもはや障害でもなんでもない。その気になれば助けに入ったあの少女を殺すことだってできたが、

「ボス、追いますか」

「もう少し時間をやれ。狩りは相手がある程度反撃してくるから楽しいというものだ」

 らしくないと思う。いつもの自分なら即座にキリトを殺す様にザザに命じる筈だ。キリトはまだ手札を隠している。それは確実だ。得意の二刀流が出てこない時点でそれは確定的だ故に手負いの獣を本気を出す前に潰すのが良いのだが―――今、直感がそれを避けろと言っている。互いに奥の手を出さない状況で、これ以上追いつめると逆にやられると、そう直感が告げている。

 今はその根拠のない自信に付き合うこととする。

 ハンティングも悪くない。

 あぁ、そう言えば忘れていた。

「ザザ,ブラックはどうした」

 自分の腹心に問う。もう一人はどうしているのか、と。いてもいなくてもやる事に変わりはないし、ザザにもジョニーブラックにも今は自由行動をさせている。この宴の間は好きに暴れるといいと、そう伝えておいたが、ザザはともにいる事を選んだ。しかしジョニーはどこかへ消えた。

「アイツは、殺したい相手が、いると、言って、行きました」

「ほう」

 キリト以外に執着する相手がいたか。それはまた面白い話だ。

「それは」

「―――マキナ、です」


                           ◆


 そこは死の大地だった。

 振るわれる拳によって樹海は木々を砕かれ、その一帯は更地と化す。短剣の一振りで読破撒き散らされ、腐り、汚染し、死んでゆく。そして腕の一振りで発せられる魔導の数々は連弾となって暴風の様に全てを穿ちながら突き進んで行く。そこに存在する死の権化は二色に分かれている。

 黒と白。

 三者は互いに臆する事もなく、全てが必殺であることを証明するように攻撃を叩き込む、周りの破壊を気にすることなくひたすら攻撃を続けていた。

「―――」

 ミハエルの拳が振るわれる。速度、制度、筋力、技術その全てにおいてこの男は超越していた。戦士という存在の頂点にして到達点というべきに場所に立つ男の拳は何も能力が付与されていないとしても必殺の一言に尽きる。

 それを空へと跳び上がって回避するのが白の少女アスト。繰り出されるのは魔導の奥義、天使や堕天使の業。システムから外れているのではなく、時代そのものから切り離されたように、もはや存在しない世界の存在しない魔導を操り放たれる数々の術は圧倒的火力を持ち、破壊を撒き散らしながら触れた物すべてを消滅させる。

 そして、その攻撃の全てを毒によって散らし、砕き、そして狙うのがジョニーブラック。ここで誰よりも劣っているように見えて、その実は誰よりも異質な存在。その力の源から受ける力は強大であるのと同時に、強烈な自我によって支えられている男の能力は必殺の一撃を受けてもジョニーブラックに最低限の傷しか生まない。

 ISLラグナロクの樹海エリア。

 そこは死と破壊の三つ巴が発生していた。
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| 断頭の剣鬼 | 08:27 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

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| | 2012/10/24 22:50 | |

誤字が…

はじめまして、いきなりで失礼します。
と、ここ何話分か誤字が酷いです。
非常に面白いがゆえに残念です。
たまに読み進めていて解読できない事もありました。
できれば、修正お願いいたします。

| 凍神 | 2013/07/17 01:53 | URL |















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