陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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DAY28

 寝覚めは何時もの様に、はっきりと始まった。目を覚ませば目の前にはレオンミシェリの顔がある。穏やかに寝息を漏らし、ここ数日分の睡眠を一気にとっているようで全く目を覚ます気配がない。気持ちよさそうに寝ている姿は此方まで眠気を誘ってくるものがある。このまま惰眠をむさぼる事も素晴らしいのかもしれないが、朝は朝でやる事がある。一日の自由はまずしっかりと朝の仕事、つまり書類テロをバナードとガウルに投下してからが条件だ。昨夜のまま、手を繋いでこうやって眠っているのは悪くないが、それも長く続けているわけにはいかない。

 ゆっくりと、眠りが深いとはいえ、それでもレオンミシェリを起こさない様に気を付けながら指をゆっくり解いて行く。指を一本ずつ、ゆっくりと開けて、それを解放しようとしたところで、

「ん……」

「……」


 レオンミシェリが軽く身じろぎをし、体をさらに寄せてくる。猫の様に体を丸ませながら寄せて、頭を胸に中るような形でくっつく。寝ているのにゆらゆらと気持ちよさそうに揺れる尻尾は見ていて飽きないし、こうやって近くで感じる体温も心地がいい。だが、実際問題としてここまで密着されると動けない。どう動こうともレオンミシェリの体を引きはがす結果となる。幸い、今の動きで指が外れたのはいいが、それでも脱出の難易度は上がっている。しょうがないと思う反面、地味に楽しんでいる自分もいるのが厄介だ。このままここにいていいかもしれない―――なんてことはない。

 まあ、その気になれば脱出など容易い。

 いかなる状況であれパーフェクトであり、そして完全に任務を遂行するのが侍女である―――と、そんな風にガレットでは習った。絶対にどっか間違っている気がするが、完璧な住所を今までは演じてきているし、これからも問題ないだろう。故にやる事は簡単で、

「ッ!」

 一息でレオンミシェリを揺らさず、起こさず、一瞬で離れて部屋の中央に出現する。

 ―――ただし上半身裸で。

 ベッドの方へ視線を戻せばパジャマの上を抱き込んで、丸まって眠るレオンミシェリの姿がある。

 ……久しぶりにやってみたが意外とできるものだなぁ……。

 なんてことはない。忍術自体は数年前、ダルキアンとユキカゼがガレット領へ任務の時に来たときに教わっている。出番がないから足おとっを消したり気配を消したり、そんな事しか使わないが基本的な技術は習っている。故に、

 もちろん身代わりの術や縄ぬけの術の一つや二つも習得している。

 今回はその応用で抜け出した、というわけだ。ともあれ何時までも上半身裸で過ごすわけにもいかない。朝の涼しい空気に当てられて若干肌寒くなるこの時間で上半身裸はやはり少し辛いものがある。それに自分の部屋でレオンミシェリが寝ているのに半裸の従者がいるのではまるで情事のあとではないか。これでレオンミシェリに同性愛者の称号でもついてしまったら将来がヤバイ事になる。それだけは防がなければならない。

 よし、服を着よう。

 そう思った時、扉は開いた。

「サイアス? 起きてるかしら」

「ですよねー」

 扉を開けて入ってきたのはビオレだった。展開には同しようもない悪意を感じるが、入ってきた人物がセーフなのでセーフだ。いや、ギリギリセーフだ。ともあれ、

「やっぱりここだったのね……」

 声音を落としたビオレがやれやれといった風に表情を変えるのを見て、一応ジェスチャーだけ、

「いやーん?」

「服を着なさいよ」

 やっぱりビオレは凄い。

                           ◆

 着替え終わり、そして服を着替えて書類テロを終わらせたところで、やっと朝食の時間となる。未だに起きる気配のないレオンミシェリは俺の部屋に置いたまま、ビオレと二人で並んで食堂のテーブルに座る。ここ最近朝食も夕食も、全部ガウル達と一緒だったのでこうやってビオレと並んで食べるのがものすごい久しく感じる。ついでに服装も何時ものメイド服ではなく、ロングスカートとブラウスの普段着となっている。ここ最近忙しくて買い物に行けなかったために少しだけ流行から外れているが、それでも俺が美人なので問題ない。うむ、問題ない。

 朝食はビスコッティの領土だという事もあって、ビスコッティ風に整えられている。基本t系にはガレット風と内容は同じだが、ガレットと違ってビスコッティは海産物が少なく、野菜や肉の方が比率としては高い。それが朝食にも反映されており、肉と野菜がバランスよく盛られているものが更に上にある。それをフォークでつつきながら、

「閣下の面倒もうチョイよく見ろよ」

「昔と違って何時も後ろにいなきゃいけない歳じゃないのよ?」

「それでもさ、気配ぐらい追えよ」

「そこまでデタラメに気配を追えるのはぐらいよ貴女」

「隠密の二人にはできるじゃねぇか」

「あの二人は百年以上生きていることを前提にして話してくれないかしら」

 ビオレも随分とよく口が回るようになった。お姉さん、昔入学試験で見た時のビオレの姿が偶に恋しくなるよ。あの純粋で白いビオレはどこへ行っちまったんだろう。いや、これも駄目だ。確実に精神の成長には俺が関わっている。つまり俺のせいだ。なんというブーメラン。まさか二十年を経て帰ってくるブーメランがあるとは。ともかく、思考をこの嫌な考えから逃げるためにも強制的に皿の上のソーセージへと逃がし、フォークでそれを突き刺しながら持ち上げ、目の前で見つめる。

「まあ、閣下がいい感じに寝てるしこの件はいいか」

「少し痛い話だから避けてくれると嬉しいわ」

「そっかぁー……アレ、俺今ビオレの弱み握った? これを盾にいやーんな事迫れない?」

「思考が二十年前から変わってないわよ」

「俺って結構高いレベルで完成されているからね」

「確かに高いレベルで完成されてるわよね。主に人に話せない部分で」

 なんだよその微妙にエロティシズムを匂わせるいいわ方は。少し気になるじゃないか。しかし仕事用とは違って、プライベートの自分が人間としては凄まじく酷い事はもう自覚しているし、もうこのままでいいと思う。女という生き物は酷く二面性を持っているものだから、これを楽しむべきなのだ。今の俺は。

 しかし、

「明日なぁ……」

「どうしたの?」

 ぼやかずにはいられない。

「ダルキアン卿来ちゃったなあ……」

「あぁ、来てしまったわね……」

 多分ガレットがビスコッティを征服する上での最大の障害だ。大陸最強の名がだてではない事は既に昨日身をもって経験している。戦場から離れて結構時間が経っているはずなのに未だ続く現役時代。土地神の類の生き物は何故ああもチートなのだろうか。救いなのはあの女武者に宝剣級の武器がない事だが、あの女の持つ刀も業物級の剣だ。色々と面倒だ。

「確実に俺が相手するんだろうなあ」

「不満なの?」

 挑発的なビオレの言葉だが、

「……昔ほど積極的に戦いたいとは思わないなぁ。むしろ若い子を育てたり、次世代の成長を眺めている方が楽しいかな。うん。レオンミシェリ閣下やガウル殿下の従者として働いている方が満たされる感じがするわよ。今の俺」

 戦っている時よりも誰かを見守り、それを助ける方が今は嬉しい。

 なんというか、

 本格的に認めなくてはいけないのだろうなぁ―――。

 まあ、それを今考える事もない、事実は事実としてゆっくり飲み込んでいけばいいのだ。急いで飲み込んでのどに詰まらせる必要もない。朝食を食べながら、

「今日は暇?」

「ごめん、私は仕事あるわ」

「ざまぁみろ」

「私が休みを取ったら同じことを言うから覚悟しなさい」

 朝食を食べながら、結局は明日の事を考える。充実した仕事漬けの人生だが、好きな事が仕事だという時点で色々と詰んでいるかもしれない。だから休みの日でも考えるのは仕事の事ばかりで、もう仕事に結婚しているとも言える。

 だが、まあ、

 これはこれでいいとは思う。

 ともあれ、明日は明日で大変になりそうだと思う。

 ダルキアン対策、どうすっかなぁ……。

 アレ、本気を出せば確実に喜んで対応してくるであろうから嫌だ。

 だが全力を出す以外に勝利する方法はないだろう。

「詰んでる……!」

「ま、まあ、がんばりなさい」

 ビオレの慰めが空しい、今日この頃。
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| 短編 | 19:41 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

アスアスちゃん頑張れ、アスアスちゃん!

超、応援してるよ、アスアスちゃん!

| 尚識 | 2012/10/22 00:31 | URL | ≫ EDIT

小さな一歩だが、同時に大きな一歩でもある。

アスアスが脱いだ。
脱がされた、では無く、脱いだ。
これは些細な事であり、さほどの違いも無い。しかし、その些細な違いは、大きな一歩でもある。

そう、これは、革新だ。

| なぐもん | 2012/10/22 12:44 | URL | ≫ EDIT

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| | 2012/10/28 12:44 | |















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