陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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犯罪者の宴 ―――キリング・フィールド

推奨BGM:Schutz Staffe
*1推奨BGM:Juggernaut


 スコープを通してみる光景の中では二人のプレイヤーが戦闘をしていた。鉄橋の上を舞台とする銃撃戦は自分から見てもかなりハイレベルな戦いだと解る。減じあのGGOの風潮がAGI優先型な事もあって鉄橋上の戦闘はハイスピードで動き回りながら如何に命中率の高い、短機関銃系列の銃の弾丸を相手に当てるか、その勝負となっている。見える男は二人で、その両者がともに高速で動き回りつつ銃を当てようと大きく動き回っている。そう、大きい動きなのだ。大きく、跳ぶような勢いで動き回り絶対に照準を合わさせない。細かく動けば銃口を合わせられる可能性が増える。それを考慮しての動きだろう。それができるだけ、レベルが高い。

 アンチマテリアルライフルを通してみる光景の中で、トリガーに指を書けたままどちらか一方が落ちるのをひたすら待ち続けながら体を草むらに伏せ、ひたすら戦闘の様子を見続ける。消臭スプレーで体臭を消したし、自分の体も草の中に隠れている。全く問題はない。故に、此処で焦って引き金を引く事だけが問題なのだ。スナイパーは見つかってない場合においてのみ、初撃が見えない様に設定されている。弾道予測線が相手には見られない。

「チッ」

 そう、見えないのだ。見えないはずなのにあの男は非常識な事にも切り払った。まるで頭の裏に目がついている様な動きだった。頭に向けて背後から狙撃したのに、引き金に指を駆けた瞬間反応して、引き金を引く頃には既に武器を構えていた。とてもだが人間の行動の様には思えなかった。


 ……ムカつく。

 キリト。

 私を騙した張本人で―――SAOリターナー。

 それはもう確実だ。疑いようのない事実だ。もしあの会話の内容が本当だとしたら、キリトは二年間あのゲームの中で本当に命を賭けて戦ってきた男なのだ。死銃の去り際には人殺しなんて言葉も聞こえた。

 何で私の過去を知っているの、

 そして、

 君も誰かを殺したんだ。

 四回戦はキリトに一がバレた瞬間倒されてしまったため何も言えなかった―――それでも今、明確に聞きたい事がある。そしてそれを聞くまでは絶対に負けるわけにはいかない。だからこそ引き金に指をかけるが―――それを引く事はしない。そう、精神を落ち着ける。絶対に察知されてはならない。スナイパーは一人を仕留める為なら数日前から張り込み続けるなんて話も聞いた。精神構造が違うのだろう。それが冗談なのかガチなのかは判断がつかないが、今だけはプロの軍人か殺し屋か、彼らと同じステージ事を成せなければ到底あの少年に追いついて、そして聞く事が出来ない。

 何で。

 どうやって。

 ―――何故乗り越えられたの? どうやって―――。

 胸をかき乱すのは殺人への罪悪感。昔、郵便局に押し入った強盗から銃を奪って撃ち殺してしまった。その罪悪感が今も消えることなく胸の中で残り続ける。それがぬぐえない。どんなに手を洗っても匂いが離れる気がしない。もちろんそれは幻覚だ。血の匂いなんてないし、血事態体にかかってなんかいなかった。だけどこれは罪悪感の産んだ産物だ。過剰な反応かもしれないが、それでも心に刻まれた傷は消えないし消えてくれない。忘れたくても忘れたくても忘れらえない。

 それがどうにか克服できないか、そう願ってこの世界に来たのに―――。

 ……動けなかった。

 死銃に銃を突きつけられて、動けなかった。

 黒星。あの銃だ。

 私の心に傷を刻んだ銃。

 そして死銃が私に突き付けた銃―――!

「忘れろっ……!」

 震える指を無理やり抑え込む。刺激されるトラウマは銃がここにないだけましだと思い、無理やり抑え込む。可能だ。不可能ではない。私はできる。大丈夫……何も問題はない。そう、何も問題はない。スコープを通して相手は見えるし、引き金に賭ける指は震えていない。息を殺し、弾道予測線も安定している。もっと、もっと落ち着かせて―――そう、これでいい。

 落ち着かせた精神を表す様に弾道予測線は綺麗な線を描きながらまっすぐ敵へと向けてある。それは戦う二人の中間点で彷徨ってあり、勝者を狙って漂っている。ただそこで待つこと数十秒、

 片方が頭を打ち抜かれ死亡した。

 防弾装備が装備されていなかった頭を打ち抜かれ片方がもう一人……大会まで参加していたスコードロンのリーダー、ダインによって倒される。アレは中々臆病で人間としてはあまり関わりたくない部類に入る人間だが、プレイヤースキルだけは本物で、そこそこ上位に入る実力者だ。だから、ヘカートの照準をダインの脳に合わせ、

 引き金を引いた。

 素早く照準を合わせ、退かれた引き金は一瞬でダインの脳へと到達し、貫通した。ヘッドショットによるダメージボーナスが発生し、その一撃によってダインが気づく前のライフがゼロになり、敗北する。ダインが狙撃されてその経験値がこっちへ流れ込んでくるのを確認しながら安堵の息を吐く。これで先ず一人、いや、二人だと。

 まだまだISLラグナロクにはたくさんのプレイヤーがいる。そのうち厄介なのを一人、サテライトスキャンで居場所が割れる前に倒せたのは行幸だったのかもしれない。一度撃った狙撃手は居場所が割れてしまう。故にここから離れるのが正しい選択だ。ずっと同じ場所で待機していればそのうち居場所が割れてしまう。見える範囲に誰もいないとはいえ、用心に越したことはない。

 と、

 そこで、

 鉄橋の無効―――地平線の向こう側からゆっくりと歩いてくる姿が見えた。立ち上がろうとしていた体の動きを止め、即座に体を伏せながらスコープを通して相手を確認する。ボロボロのギリースーツ、赤いアイのガスマスク、そして……片手に握っているのはライフル種別は―――L115A3、サイレント・アサシン。

 スナイパーライフルだ。

 ……!

 息を殺して見る。相手はスナイパーライフルを片手で軽そうに運んでいる。確実にそれを戦闘に使ってくる。しかも狙撃にではなく近接の打ち合いで。それに腰に差してある得物はおそらく剣か何らかの武器だ。その姿が異様すぎる。ザザ、とキリトは言っていたか。いや、重要なのは名前ではなく、今、目の前から死銃と名乗った男がノコノコ歩いてきているという事実だ。そう、この男は先ほどのダインの狙撃を見ていない。つまりはスナイパーの持つアドバンテージ、初回のみ弾道予測線が見えないという特権が行使できる。

 これは……好機ね……。

 冷静に、ゆっくりとスコープを通し、弾道予測線の照準を死銃に合わせる。向けた瞬間死銃が一瞬ピクリとし、バレているのどうかを疑ったが……そんな事はなかった。死銃は気にすることなく歩き続ける。その姿をスコープで追いながら、死銃がもっと近づいてくるのを見る。もっと近く、弾丸の勢いが失われない距離から死銃の頭を打ち抜く。それだけを狙って頭から雑念や残念を全て追い出す。今はトラウマも、会場で感じた恐怖も全て、全てを忘れて、ただ銃と相手とこの引き金だけを認識する。それだけで十分。それだけが今認識すべき事で、それ以外は邪魔だ。

 不必要なものを脱ぎ捨てた状態で弾道予測線を伸ばし、死銃の頭に照準する。死銃がベストレンジに入った。今引き金を引けば確実に殺れる。それを確信し、

 引き金を引いた。

 ヘカートの銃口が火を噴き、弾丸を吐き出す。

 それを死銃が緩い動作で避けた。

「……はぁ!?」

*1

 避けた。結果が全てだが、……避けられた。その事実以前に死銃の動作が軽すぎて、あまりに軽すぎて避けられたとさえ感じられなかった。いや、アレは避けたのではない。

 動いたのだ。

 最初から弾丸が見えているようで、確実に攻撃が来ると解っていて―――攻撃を一歩動く事で台無しにしたのだ。それは、此方が相手にすらされていないという事実だった。死銃はこちらに顔を向ける。ガスマスクに阻まれてその顔は見えないが確実に今、私を見て笑っているのが見える。嗤っている。滑稽な私の存在を笑っている。腹が立ち、殺してやりたく感じる。その思いを現実にするためにも再び照準を合わせ―――

 ―――死銃が取り出した黒星に体が硬直する。

 ……動いて……!

 心では動け、そう叫んでいるのに体は答えない。体は心よりも正直で、トラウマを引き起こした得物を前に動こうとしない。そのまま死銃が取り出した黒星を此方ではなく―――ダインに敗れた相手に向ける。相手は既に死んだプレイヤーだ。銃を向けて引き金を引いたところで何も起きはしない。死亡判定を受けたプレイヤーは大会が終了するまでそのままで放置されるのがBoBの通例だ。ログアウトか断線すればまた別の話しなのだろうが、

 ―――まさか……!

 ふと、自分の頬に刻まれた一線の傷を思い出す。

 それはシステム的な制約を無視して傷を刻んだのだ。それは―――つまり死亡判定など意に介さないともとれる。

 ヤバイ、そう感じた瞬間には弾丸を死銃へと向けて放っていた。それが誰かを救いたい気持ちか、もしくはそんな現実を許せないという気持ちかは判断がつかないが、ほぼノータイムで死銃へと向けて弾丸を放った。

 が、死銃はそれを煩わしそうに片手で掃った。

 威力ではゲーム中、ほぼ最高を誇るアンチマテリアルライフルが片手で弾かれた。その事実に絶望を感じた瞬間、

 パァン、と音が響く。

 スコープを通して死銃が銃の引き金を引き、倒れた男の頭を打ち抜くのが見えた。そこに見えるのはシステムのエフェクトではなく、飛び散る血と脳だ。それはどこかの18禁栄華のグロテスクなシーンの様で、一瞬で吐き気を覚える光景だった。今まで流血描写の存在しなかったこの世界で、急にリアルを見せつけられた気がして一気に熱が冷め、そして全身を悪寒が襲う。

 何故だかわからないが、今、撃たれた男は確実に死んだと確信できる。

 バーチャルではなく、リアルで。

 返り血を浴びた死銃は興味を失ったかのように頭を打ち抜いた体を蹴り、その体を転がす。同時にその体は蹴られた威力によって砕け散って消える。そして、

 黒星が此方に向けられる。

 瞬間、悟った。

 ―――あ、私、殺されるんだ。

 どうしようもない事実として認識してしまった。これは避けられないし、防ぐこともできない。あの黒星は死の塊ダ。アレを受けてしまえばアバターとリアル、その両方が死ぬ。死んでしまう。それがあの死銃であり、死銃に与えられたロールだという事だ。まさしく心意神。この銃と硝煙の世界に降臨した死神だ。黒星を握る死銃は確実に嗤っている。嘲笑するように、此方が矮小な存在だと、圧倒的力の前では何もできないただの蟻だと嗤っている。見えないが、それでもガスマスクの向こう側にあるヤツの素顔は今、嗤っている。それが確信できる。

 逃げようと意志を動かすが、体は動かない。

 トラウマによって縛られた体は動けない。

 だからここで私は死ぬ。

 ……勝てなかった。

 キリトにも、トラウマにも。

 その事に悔しさを感じていると、

          「―――ザザァァァアアアアアアアアアアア―――!!」

 轟くような、この世界全体を振るわせるような激しい怒気が込められた声が響く。それは以外にも私の後ろから響き、硬直の溶けた体が反射的に声の主を求めて視線を動かす。その声で誰か既に把握しているのに、それでも心は素直で、相手を求めてしまう。

 そこにいたのは黒だった。

 黒の髪、服装、全身が黒に包まれた女のような男だった。そう、男なのだ。その左手にはP90を、右手には光剣を持ち、その全身からは鬼気にもにた怒りを覇気を纏っていた。

 キリトだ。

 そして今、この姿のキリトを見ればわかる。

 この男もあの三人と一緒で、どうしようもなく”外れて”いる。システムという枠、そして人類という枠から一歩外へと踏み出ている。いや、人間の先という場所にキリトは踏み込んでいる。故にキリトという存在が今、恐ろしいと同時に―――何よりも安心した。

「ザザ! 殺ったな? お前もうすでに五人は殺ったな!?」

「遅いかったな、英雄。お前をおびき寄せる、餌だったが、効果的だったようだな」

「ザザ……!」

「お前はボスの、獲物だが、ボスも狩りを楽しんでいる、から今は―――俺がお前を殺してやる。死体さえ残れば、ボスもきっと喜んでくれるはず」

「やれるものならやってみろよ糞野郎! オベイロンの時は不覚を取ったけど、今回は負けないぞ……!」

 背後から羅割れたキリトは一瞬で私を追い越すとザザへと向かって信じられない速度で接近する。それは四回戦で私に見せた動きを全ての次元において超越し、まだキリトが本気の欠片も見せていなかった事を思わせる。状況の変化に頭を追いつかせようとしながら、

 死銃が黒星とサイレント・アサシンを構え、

 そしてキリトが切り込んだ。
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| 断頭の剣鬼 | 10:44 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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