陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

≫ EDIT

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

| スポンサー広告 | --:-- | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

≫ EDIT

DAY26

推奨BGM:唯我変生魔羅之理


 ミオン砦での攻防は大きく分けて三つに分かれている。

 一つ、ジェノワーズとエクレールの勝負。

 二つ、ガウルとシンクの勝負。

 そして、最後に―――。

「―――陀羅尼孔雀王」

 拳に込めた輝力を爆発させる。目標を外れて城壁に着弾する拳は城壁を砕きながら岩の雨を発生させる。威力が浸透している証拠に砕けた城壁は砂の様にサラサラになって広がる。風に乗り、砦中にばらまかれるそれは視界を奪う。だが視界を奪う砂を一刀の下に武者が振り払う。久々の戦場であることを自覚し、同時に申し分のない相手であることを理解し、武者の口の端が吊り上る。戦意による高揚を受けてこの展開を喜んでいる様にすら見える。

「お館様!」

 空を飛び、袋を握る武者、ダルキアンの部下―――ユキカゼが見える。彼女もビスコッティの属する者であり、百歳を超える土地神。前あった時とは大きく変わった姿に少々驚きがあるが―――背中にリコッタを背負い、攻撃の準備に入っている事からアレが敵であることに間違いはない。

「ふん―――!」


 開けた視界の中で鉄球が豪速を持って空を駆ける二人に向かって放たれる。

「のわっ!?」

 空中で身を捻りながらカワし、ユキカゼとリコッタが空から爆弾と花火を大量に落としてくる。降り注ぐ爆弾が紋章の影響を受けて大爆発を起こし、一般兵が巻き込まれ、けものだまと化す。が、その中で平然と敵を見据える。爆発と爆発の合間、小さな隙間に体を通し、ゴドウィンと共に両側からダルキアンに襲い掛かる。

「ッシ―――」

 ダルキアンの刀が振るわれる。輝力の籠っていない斬撃の描く軌跡は美しく、そこに数百年の研鑽で積まれた輝きが見て取れる。それが純粋な演武だったら、素晴らしかっただろう。だが実際はその刃は戦うための刃であり―――研ぎ澄まされ無駄を完全に殺した刃は美しくも、危険である。無駄なものがないという事はそれだけ刃が研がれている。一刀一刀が風を割くような斬撃を前に、

 鉄球が衝突する。

 此方はダルキアンの刀と違って美しさの欠片もない、力任せに振るわれた超重量の塊だ。しかしそれがただの投擲と違う点は、その鉄球には重心が捉えにくいように軽い回転がかけられている事にある。美しくなく、あえて雑にしてある。レベルの高い戦いとなると動きの一つ一つが芸術であり、同時に必殺でもある。そして、敵にどうしても同じレベルを求めてしまい、それに対応するように体を動かすのだ。故に同じレベル、もしくは匹敵しうる相手がワザと雑に攻撃した場合―――それは少々面倒な事となり、対処が一瞬だけ遅れる。

 とはいえ、

「貰ったで御座る」

 ブリオッシュ・ダルキアンという武者はあらゆる面で超越している。この大陸に置いて知識、武芸、紋章術、その全てで突出しており、それはもちろん身体能力に関しても言える。ダルキアンの身体能力は通常の将兵のそれを軽く超越している。故に芸術的な域の武芸と合わせ、動きだけで他者を圧倒する彼女の武威は、たとえ小賢しい手段を弄しようともそれを真っ向から捻じ伏せる。

 ここで斬撃が鉄球を裁き、ゴドウィンの体を切り裂こうとする刹那、

「ぶち込まさせていただきます―――」

 それを最初から予想しての打撃が繰り出される。一呼吸の間に繰り出される高速の連撃は動きと動きの間の隙を極限にまで減らし、同時にダルキアンの死角、そして防具によって動きにくい場所を狙っての一撃。ゴドウィンも最初から攻撃を食らうこと前提で動き、それを耐える事を目標としている。自分が囮など最初から理解しているため―――ゴドウィンに斬撃が叩き込まれ、同時にダルキアンの体に拳が中る。

「力が足りぬで御座るな。その疲弊した状態では厳しいで御座るよ」

 ゴドウィンの鎧が大きく切り裂かれ、同時にダルキアンの脇腹に拳が突き刺さる。しかしダルキアンは少し痛そうにするが、それだけだ。致命的なダメージは入れられていない。代わりにゴドウィンへのダメージはでかい。故に、

「掴んだぞ」

「むっ」

 ゴドウィンがダルキアンを掴んだ。ダルキアンを掴むゴドウィンの両腕には全力の輝力が込められている。たとえダルキアンと言えども、女であり、全力で抑える事だけに集中した男の束縛から抜け出す事は難しい。故に拳を脇腹に当てたまま、

「覇ッ!!」

 通しを繰り出す。防具を、肉質を、防御を無視する零距離からの拳撃。密着していなければ当てられないという弱点はあるが、それでも威力はある。必殺の一撃を受けたダルキアンは苦悶の表情を浮かべた―――姿が変わる。ゴドウィンの掴んでいる姿が、

「なんと」

「チッ」

「素が少しだけ見えているで御座るよ」

 掴まれていたダルキアンは何時の間にか陣羽織を着た丸太になっていた。通しを受けて真っ二つに砕けているが、それはダルキアンではない。声のした方向、上空を見上げれば陣羽織の脱げたダルキアンが跳び上がり、背後に紋章を浮かべて刀を構えている。が、その横腹の服は破れて脇腹が見えている。通しを打ち込むギリギリのタイミングで避けられたようだ。少しはダメージが通っているようだが、致命打には遠い。故に、

「はあ―――!」

 ダルキアンから放たれた紋章の一撃が一か所に固まった此方へと降り注ぐ。砦の塔すら綺麗に両断するダルキアンの斬撃を飛び退く事で回避するが、回避した瞬間此方に向かって攻め込む姿がある。

「お久しぶりで御座る」

「お久しぶりです―――ですが排除です」

「冷たいで御座るなあ……」

「―――仕事ですから」

 一気に飛び込んできたユキカゼが拳を連撃で振るってくる。隙のない、最短最速を狙った拳の連撃。それは振るわれる度にユキカゼの手の甲の紋章を輝かせ、

「ユキカゼ式―――」

「させん」

 ゴドウィンの鉄球がユキカゼに向かって投擲される。その回避の為にユキカゼが紋章術の発動を中断し、攻撃を避ける。が、それにタイミングを合わせ、

「陀羅尼孔雀王」

 全力の拳撃をユキカゼに叩き込む。忍術や、紋章術による防御が発動するよりも早く、最速で最大の拳をユキカゼの胸に叩き込む。

 ―――胸の脂肪阻まれて、ちゃんとした拳が芯までは通らないか……! 無駄な大きさとはまさにこのこと……!

 拳の重心を少しだけズラされた感触を得た。視線の先ではユキカゼが体術で体から拳の衝撃を逃がしていた。器用な事だとは思うが、自分達にだってそれは出来る。故にユキカゼを一撃で落とせなかったのは理解できるが、それは痛い。この一撃で倒せなければ明確な隙を相手に対して晒すからだ。消去法で敵の攻撃箇所を絞込み、そこに開いている左拳を回す。

 次の瞬間、強い感覚が左腕を抜ける。

「相も変わらず惚れ惚れする先見で御座るなぁ」

 背後からダルキアンが刀で切りつけてきていた。それを左腕で受けるが、力が足りずに拳を背中に叩きつけられる感じで押し切られそうになる。その場で大地に足を食い込ませ動きを止めながら、体を前に倒す。地面に伏せるように体を倒しながら、斬撃の軌道を頭上へ、上を抜ける様に流し、

「ゴドウィン!」

「承知!」

 紋章を解放させたゴドウィンの姿がそこにはあった。紋章を通し極限にまで輝力を練るゴドウィンの二度目の全力。だが今度は確実にダルキアン、そしてユキカゼを討ち滅ぼす為に中庭全体を巻き込む様な一撃を繰り出すつもりでいる。そこには味方や敵の識別など存在しない。

「逃がしません」

 倒れるのと同時に尻尾をダルキアンの足に絡め、手をユキカゼの足に伸ばし、掴む。

「私に忍術は通じませんよ」

「昔教えたのが仇になったで御座るか」

「お館様!」

「承知しているで御座る!」

「潰れろォ―――!」

 ゴドウィンの得物である鉄球が極大の大きさへと膨れ上がり、まるで一つの隕石の様に砦の上から落ちてくる。大きさからして中庭から逃れる事のみが回避の方法だ。しかしユキカゼもダルキアンも俺に足を掴まれ動けない。

 ならば、迎撃しか方法はない。

 上に視線を向けたダルキアンの背後には既に紋章術の発動を示す紋章が、最大レベルで展開されている。ゴドウィンの必殺に対するには同じく必殺レベルの攻撃が必要だ。戦意と高揚を受け、武者として一気に覚醒を果たしたダルキアンは”大陸最強”の名に恥じぬ速度で自身の刀を巨大化させ、

 真正面からゴドウィンの大鉄球とぶつけ合った。拮抗は一瞬。輝力の質も量も上だったダルキアンの斬撃が鉄球を両断する。その瞬間を狙って拳を大地に叩きつける。瞬間大地が脈動し、爆破する。

 吹き上がる土砂が壁の様に打点を中心に広がり、ユキカゼとダルキアンを吹き飛ばす。

 同時に、今まで出さなかった―――二刀の描かれた紋章を発動させる。一瞬で砕け、莫大な輝力が拳に込められる。鉄球を割いた瞬間のダルキアンを狙う。が、ダルキアンも既に体を戻し、迎撃―――いや、攻撃の体勢に入っている。本気の一撃で正面から潰すつもりだ。ならば、

「―――神魔」

「―――大宝楼閣」

 ダルキアンの体が輝力の使用から赤く発光し、此方の拳を輝力の拳を黄昏色の輝力の光が覆う。互いに必殺。避ける事も防御する事もない。

 これで決める。

「―――!」

 技を発動させようと名前を叫ぼうとした瞬間、

「―――そこまでじゃ! 双方退けい!!」

 ―――聞き覚えのある声に即座に戦意を捨て、前ではなく後ろへと跳ぶ。同時に技の発動をキャンセルさせ、溜め込んだ輝力の全てを霧散させる。声のした方向に顔を向ける。そこにはセルクルの背に乗った声の主がいた。横の地面にはジェノワーズとガウルの姿があるが、その一切を無視し、声の主の下へ行き、礼をする。

「―――戦争は遊びではない! お主がいながら何てザマじゃ!」

「申し訳ありません、レオンミシェリ閣下。ガウル殿下が私に秘密で強引に……気が付いたら参加する以外の方法が私にはなくて……」

「おい! 俺に全部責任を押し付けるな! サイアス! 頼むからやめてくれ!」

 懇願に近い声を無視して見上げるのは真の主、レオンミシェリ。

 彼女の存在によってミオン砦の攻防は終わりを告げた。
スポンサーサイト

| 短編 | 19:26 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

| | 2012/10/28 12:33 | |















非公開コメント

TRACKBACK URL

http://tenzodogeza.blog.fc2.com/tb.php/233-336d3883

TRACKBACK

PREV | PAGE-SELECT | NEXT

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。