陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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悪夢 ―――リアリティ

推奨BGM:Dumme Marionette
*1推奨BGM:Nacht der langen Messer


 刃を向けた先、懐かしくも吐き気のする悪夢はマスクの下で笑みを浮かべて、こっちの事を見下していた。そう、確実に見下している。お前など取るに足りない存在であると。しかし、確かな殺意、拒絶、そして嫌気がマスクの穴からは見える。こっちを拒絶し、排除したがる強い意志がそこにはある。それは、明広の渇望に似ているようで違う。アレは守りたい気持ちからくる拒絶だが、この拒絶の形は真逆―――破壊したく、消し去りたいという思いから生まれる排除だ。故に排除の意志は同じでも、渇望の違いは決定的だ。

 向ける刃も、向けられる刃も一切のブレがない。それはいい。それよりもPohに言いたい事は一つで、

「お前―――それをどこで手に入れた……!」

 驚愕よりも、戦慄がそこにはあった。信じられないという感覚が体を貫いている。目の前の男から感じる気配は間違えようもない。それは約十ヶ月ほど前に感じ取ったあの汚泥の様な、心を犯す様な悪寒にも似た、あの感覚だ。それを持っていながら何故こうも正気で居られるかが解らない。あの人一倍執着心と狂気に歪んでいた男でさえ耐え切れずに自壊し続けていたのに。目の前の男はその気配以外には何も変わらず、精神を強固に保っていた。


 そう、あの頃と強さ以外は何も変わらない。

「ふ、く、くく、久しぶり、だな」

「よお、久しぶりだなぁ、キリトさんよお」

 何時の間にか、気配もなく二人は現れた。

「……ッ」

「おっと、動くなよ」

 声に覚えはあるし、姿にも覚えがある。ポンチョ姿のナイフ使いはアインクラッドでPohのスタイルをリスペクトしていた毒使いのジョニーブラック、そしてもう一人、銃をシノンの首に当てるギリースーツ姿の男は資料で見た死銃。そしてその中身を、この場で会った事で即座に看破する。

「―――お前が死銃だったわけか、”赤目のザザ”」

「あぁ、今の、お前なら絶対に、俺だと、見破るだろうな」

 死銃、いや、ザザはそう言って低く笑う。緊張感に包まれた空気の中でシノンは口を開き、

「馬鹿じゃないの? ここは圏内よ。攻撃が―――」

「黙れ」

 一閃。

「なっ……!」

 ザザの手の中にはいつの間にかナイフが握られており、シノンの頬に切り傷を生んでいた。戦闘のできない圏内エリアとしての保護を無視するザザの姿は、シノンからすれば驚愕の一言に尽きるだろう。自身の頬に流れている赤い液体をシノンは茫然としながら見つめ、

「それ以上動いたら俺が撃つ」

 P90をザザの方へと向ける。が、ザザは手に持っている銃を強くシノンの首に押し当てる事で牽制する。

「熱っ……」

 シノンは自分の頬に走る痛みにまだ驚き、混乱している―――頼れない。いや、頼る気すらない。シノンは巻き込まれただけの一般人だ。彼女の役目は終わっている。このバカげた祭りから早く逃がすべきだが、その道筋が見えない。

「これこそ本当の圏内事件だな? あの時は何ともつまらないオチだったけどよ、今回はどうするんだよ。おい、英雄クンよぉ、どうやるんだよ! はははは! また最前線のお友達いっぱい連れてくるかあ?」

 ジョニーブラックを睨み付ける。それに対してジョニーブラックはおぉ、と声を出しておどけて見せる。解っている。この程度で怯むような連中ではない。あのラフィン・コフィンの幹部、そして創設者だ。サイコパスの親玉とも言える連中がこの程度で終わるはずがない。

「Humph, that boring。もっと噛みついてこないのか?」

「なんだ、食いちぎられたいのか? お望みとあらば今すぐその首を噛みちぎって犬の餌にしてやるぜ」

 Pohの挑発に対して挑発を返し、そしてそこで我に返ったシノンが声を出す、

「え、いや、ちょっと待ってよ……なにこれ。何で私―――」

「シノン……後で説明するから今は黙っててくれ」

「ぁ……うん」

 シノンを黙らせるとジョニーブラックが大声で笑う。

「はははは! 相変わらずモテモテだなキリト! あっちに女、こっちに女、侍らせて満足か? 出張先にも女作るとはとんだナンパ野郎だなぁ! お前のだーいすきな閃光ちゃんもとんだビッチなんだろうなぁ?」

「口がよく回るようだなジョニーブラック。あんまりしゃべりすぎると命に係わるぞ」

 光剣の刃に心意を乗せ、そして銃にも心意を乗せる。

 こうなれば―――戦うしかない。ちょうどいい。あの三人と比べればまだまだ戦いやすい相手だ。前哨戦にはちょうどいい。そう、ウォーミングアップだ。だから、

「お前らがその糞をどこで拾って食ったかは知らないけど―――それを感じるだけで胸糞が悪いんだよ。ぶっちゃけ見たくないんだ。アイツを思い出すようで。だから今すぐ消えてくれるんだったら何もせずに、尻尾を振るのを見ててやるんだけど?」

「ボス、こいつやっちゃいましょうよ。もう我慢できねえ。今ここでぶっ殺してバラバラにしちゃいましょうよ。んでフィナーレはバラバラの体を閃光に送り付けるんだよ! なあ、ボス、いいよなあ!?」

 一触即発の雰囲気の中、ジョニーブラックもザザも狂気を理性で抑え込み、自分たちが誰よりも信頼するボスの言葉を待っている。それさえあればこの二人は躊躇しない。そう、それがあのオベイロンと―――須郷伸之と決定的に違う所だ。あの男は力を得たが自我と言うものが壊れていた。何らかの意思を受け、それを執行するだけの木偶人形と化していた。だが、目の前の三人組は違う。どういうわけか理性を残したまま力を得ている。これでオベイロン並に強ければ問題しかないが、

 何となくだが、今ならまだ勝てる気がする。

 根拠のない自信にはもう飽き飽きだが、―――この三人だけには負けない。

 故に戦意を滾らせ、Pohが開戦の言葉を口に出した瞬間いつでも動けるように四肢に力を込める。真っ先に優先すべきはシノンの救出で、その後は本気で三人を殺す。そう、殺す。

「―――」

「―――……貴様ら、派手にやりすぎだ」

 Pohが口を開く前に新たな気配が出現する。重く、そして濃密な気配を体の内に秘めているのは寡黙な男だ。無精髭を生やし、軍服に身を包んでいる。その目には生気が存在しないが、その胸の内に強い渇望の炎が宿っている事が、一目見ればわかる。ジョニーブラックの背後に出現した男は拳をジョニーブラックの背中に押し付けている。

「ここは余興の場だ。暴れるのならしかるべき場所で殺れ。貴様らも無駄に注目を集めたいわけではあるまい」

 ミハエル・ヴィットマン。黒円卓における三騎士の一人がそこにいた。不穏な空気を感じ取ったのか、もしくはこの争いがあからさまだったのか―――いや、おそらく後者だろう。俺もラフィン・コフィンも気配を隠す気など微塵もなかった。故にこの結果は必然で、簡単に感知できる状況となっている。

 だからこそ、

「へぇ、面白い事になってんじゃねぇか」

 ザザの頭に銃が付きつけられる。チンピラにしか見えず、咥えタバコをしているオレンジ髪の男。誰よりもこういう派手な雰囲気を好む様な奴が、愉快な気配を嗅ぎつけてここに参加した。

「いいぜ。嫌いじゃないぜこういう一触即発の空気。ニトログリセリンがぶち撒かれている様な状況だ。思わずライター落としたくなるぜ」

 遊佐司狼。知り合いの中でも最大級のトリックスターが、ザザの背後を何時の間にかとっていた。状況はミハエルと司狼の登場で一気に此方の優勢に傾いていた。今の司狼がデジャヴってるかは解らないが、自滅因子であることは変わらないため死ぬことはないだろうし、ミハエルは力の一端でも引き出せばジョニーブラックは死ぬ。

「前線のお友達はいないけど新しいお友達ならいるぜ?」

 挑発的な笑みをPohへと向ける。暗にこっちの王手だと告げるが、

 Pohは笑みを浮かべる。ゾクリと、背中を悪寒が駆け抜ける。嫌な感覚だ。それはまるでこの状況がPohの臨んだような状況であることを示しているようで、自分が有利なはずなのにまだ状況が握られているような気もする。刃を一ミリもブラすことなくPohに突き付け続ける。それで何か状況が変わるわけでもないが、この状況で膠着してから数秒、

「決勝戦で待っているぞ、キリト。Lets start our final show there」
                    (そこで俺達の最期のショーを始めよう)

 そう言葉を残しPohが背を向ける。去って行くPohを追うためにジョニーブラックとザザが武器をおろし、足早にPohの背中を追いかける。

「ぼ、ボスー! 待ってくださいよ!」

「キリト、そしてシノン、貴様らは、絶対に、殺す。さらばだ、人殺し」

 ザザだけは捨て台詞を残してその場から去る。近くのスクリーンを見れば、あと数分で三回戦の転移が始まる事を示している。ようやく武器を下ろす事の出来る安堵感に包まれつつ、武器を下ろしてシノンの方へと向く。そこで解放されたシノンが地面の上に座り込む所を目撃する。

「なによ、これ」

*1

 そんなシノンを無視して司狼が声をかけてくる。

「よお、中々愉快な事になってんじゃねぇか。アレ、お友達か」

「縁を切りたいタイプのね」

「中々の個性派じゃねぇかよ。ありゃあチーム・マスクマンとか何かか? ジェイソンのリスペクトで仮面被ってるんだったらセンスねぇな。あ、一人ガスマスクか。どちらにしろセンスはねぇわな。アレイケてると思ってんだったらファッションセンス一から勉強のし直しだな。マジねぇわぁー」

 Pohがいるときに司狼が黙っててくれてよかった。おそらく黙っていたのではなく状況を把握しようとしていたのだろう。この男が口を開くと挑発かからかいしか口から出ないのでとことん厄介だ。味方でも、敵でもだ。

 というか、ミハエル、

「お前、何で俺だって気づいたの?」

 アバターはSAOやALOとはまったく違い、美少女然とした物になっているのに。

 と、そこでミハエルが背を向ける。

「”色”を見ればその程度分かる。……決勝で会おう」

 そう告げてミハエルは去る。色とはすなわち見た目とかではなく、その人物の本質や魂といった、そういう部分だろう。一目見ただけで判断できるあたり色々と凄まじいが、今回はそれに救われた部分があるのかもしれない。早々に去って行くミハエルの背に感謝し、

「アレが噂の死銃か。中々愉快な事になってるじゃねぇか。暇つぶしに参加した大会だったけど、なんかいい感じになってきたな。クリミナルパーティーだったか? ハッ、上等って感じだな」

 ……ん?

 クリミナルパーティー?

 その言葉に違和感を覚え、司狼の事を片手で制す。視線を司狼の目に合わせ、

「―――どこから聞いてた?」

「最初から」

 やっぱりか。クリミナルパーティーはPohが初めに言った言葉だ。その言葉は会話を聞いていなければわからないものだし、特に有名な言葉でもない―――というか、最初からいたのならもう少し早く出てきた欲しかった。いや、この男の事だからどうせタイミングを計ってたとかそんな理由なのだろうけど。……いや、よそう。ALOの件で計算も予想もつかない男だという事は覚えてしまった。その後の悪ふざけでも嫌と教えられてしまった。だからそこらへんはもう諦めよう。今はそれよりも、

「シノン、大丈夫か?」

 床に座り込むシノンに手を伸ばす。その手をゆっくりと見上げて、シノンが手を伸ばす。プライドとか、体面とか、そういうのを気にする余裕がシノンにはなく、その体は小さくだが震えていた。

 ―――忘れていた。

 俺や司狼、ミハエルは別次元の生き物なのだ。特にこの世界では。だからあのプレッシャーも簡単に跳ね除けるが、普通の人間はそうではない。Pohやザザ、ジョニーブラックが発する狂気に僅かでも触れてしまえば、それだけで心が砕けてしまう。だから、それを受けて気を失わずにいられただけでも凄まじい。この少女は、心が強い。

 「な、なんなのよこれ、なんなのよアレは……」

 シノンは震えながらもなんとか立ち上がると、自分の体に活を叩き込み、少しずつだが震えを抑えてゆく。

「アレが……死銃」

 シノンがそう呟き、

「違う」

 俺は否定する。違う。アレは死銃なんかじゃない。そう、死銃何て存在しない。アレは―――

「―――死にきれなかった亡霊だ」

 俺も、アイツも人殺しだ。その事実からは逃げられないし逃げるべきでもない。と、三回戦の時間が来た。シノンの体が転移の光に包まれるのが見えた。もう喋る時間はない。だから自分やシノンが消える直前に、

「―――心配するな、アイツを何とかする為に俺が来たんだから」

「……ぁ」

 それだけを残し、俺達は次の戦場へと消えた。
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| 断頭の剣鬼 | 09:10 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

 思うんだが……キリトさん、そろそろサイアスさんに主人公返してあげてくだせぇよぉ……なんかもう最近、キリトさんマジ主人公と言わんばかりの状態で。サイアスさんは主人公に返り咲くことができるのか不安になってきたのだが――!

| サツキ | 2012/10/15 12:19 | URL |

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| | 2013/11/18 18:25 | |















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