陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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悪夢 ―――マーシレス

推奨BGM:Holocaust
*1推奨BGM:Mors Certa


 転移が終わり、バトルフィールドへと到着した俺にはもうGGOを純粋なゲームとして楽しむ余裕がなかった。それはナハト、ジューダス、そしてあの白い少女―――彼らが参加しているという事実が生まれた瞬間から無くなった。彼らの存在を止められるのは最低でも決勝か―――決勝までの間、会場であの三人を殺す事だ。だが後者は不可能だ。そう簡単に殺せる相手ではない。寧ろ一対一の状況でなければこっちが殺られる。そして予選表を見た限り俺とアイツらではブロックが違う。つまり決勝まで戦う機会が存在しないのだ。となれば、

 ―――決勝までの死を許容しなくてはならない。

「クソ……!」

 無力だ。圧倒的に無力だ。

 総務省のバックアップを貰っているが、何の役にもたたない。権力なんて意味はないという話だろうか。あぁ、そうだ。圧倒的暴力の前に信念だとか心だとか―――そんな物は意味をなさないかもしれない。世の中はきれいごとで渡れるほど優しくはなく、そして汚い事ばかりで動くほど汚れてもいない。

 銃声が響く。


 そこで弾丸が頬を裂き横へ抜けて行くのを知覚する。そして同時に今、立っているのが遮蔽物のない、砂の地獄……砂漠フィールドだという事を認識する。離れた場所へ視線を向ければ射程に優れる銃を持って、こっちを狙う姿がある。堂々と、姿を晒して此方を狙う姿は潔く、前の対戦相手よりも好感を持てる。が、

 こいつは少々運が悪い。

 ほんの十数秒前に、俺からは余裕が消えた。

 二射目のトリガーを引く前に、前の試合で奪った銃を引き抜き、それを全力で投擲する。超人的な筋力パラメーターを持って投擲された拳銃はまっすぐ、速度を落とす事も重力に縛られる事もなく直進する。それは敵へと命中する前に相手の銃―――おそらくライフルに撃たれ、砕ける。だがその瞬間には既に前へと踏み出している。砕けた銃がバラバラになって舞っている。つまり、遮蔽物が増えているという事だ。

 真正面から撃てばどうあっても銃の残骸に命中してしまう。

 ほんの一瞬だけ相手がトリガーを引く指を止めてしまう。

 それだけで十分だ。

 光剣を抜き、残骸を体で押しのけて突き進む。瞬間的に弾丸が放たれ、此方の急所を狙って強襲する。だが既に抜刀している。シノンはこの武器をただのおもちゃとしか思っていないが、それは違う。これ以上にこの世界で俺になじむ武器などない。結局どこへ行っても黒の剣士という烙印と業からは逃げられないわけで、

「悪いな―――遊べなくなった」

 弾丸を切り裂く。

 男が即座にライフルを捨てて二丁のマシンガンを取り出す。完全に接近戦を仕掛けるつもりだろう。此方に照準を合わせて一息で弾丸を放ってくる。弾道予測線は相手の心境を反映してかなり広く、が、しかし弾丸の量からして避けにくい。

 だから弾丸を切り裂く。

 正面から、右手で握る光剣だけで、マシンガンの弾丸を全て叩き斬る。そこにはためらいも躊躇もない。もはや運営にチート認定されるとか、そういうレベルは超越している。どんな手段を使ってでも勝利し、そして決勝戦であの三人を殺す―――今、死銃の存在よりもこの目的の方が大事に思える。死者の数は、確実にあの三人の方が多く生み出せる。

「ま、マジかよ―――」

「楽しんでいる所悪いな」

 マシンガンの弾丸を切り抜けて相手に到達し、一息で両腕を切断する。同時に左手で握るP90を首に突き付けてフルオートで弾丸を叩き込む。凶悪な威力の弾丸が首を突き抜けてライフを一気にすべて奪う。ライフがなくなった瞬間に攻撃を止め、視線を外す。考えるべきことは、どうやってあの三人に勝利するかだ。真正面から戦えば確実に勝てない。ならここは味方を作るべきだ。

 ―――司狼とミハエル―――。

「駄目だ……!」

 あの二人でさえ殺される。直感が今、この場にいる人間では勝てない事を訴えている。司狼の―――自滅因子の運命であれば生き残るかもしれない。しかし、勝利するビジョンは見えない。それはつまり死だ。あのレベルの敵と戦い、勝利しない事実は即座に死を意味する。……ここまで勝利するイメージが湧かないのも久しぶりすぎて頭が狂いそうだ。

 と、そこで、転移の光が体を包む。


                           ◆


 転移が完了して会場に戻ってきても、胸を覆い尽くすのはあの絶望に対抗する手段。攻撃だけなら通る。確実に、ダメージを与える事だけなら可能だ。そして―――相打ちを視野に入れるのなら確実に一人落とせる。だが一人落としたところでまだ二人残っている。それを放棄する無責任さを俺は許容したくない。あの三人にどうにかして対抗できる手段かヤツを―――。

「そうか!」

 フレンドリストを開いて確認する。たとえアバターをコンバートし、違う世界へ渡ろうとも、フレンドリストは機能する。そしてこの世界に来て初めて覗き込んだフレンドリストには見知った名前と、そしてアスナからメッセージが十数件溜め込まれていた。確認するのが怖すぎるのでそれを後回しにすることにして、

「ラインハルトと明広しか……」

 肌で感じたあの強さに対抗できるのはあの二人ぐらいだろう。だから何とかして二人に連絡をつけようとして―――失敗する。フレンドリストに登録されているラインハルトと明広の名前はどちらも灰色になっている。それはつまり、二人がオフライン状態であることを示している。これぐらいは予想すべきだったが、失敗したことで軽い落胆を感じ―――

「ちょっと! なんだったのよアレは!」

 驚いたような、少し怒っている様な気配を持ってシノンが近づいてきた。あの三人の印象が強くて忘れていたが、彼女もいたのだ。そう言えば。

 近づいてきたシノンは一気に肩を掴んで揺さぶってくる。

「なによアレ!? 弾丸を斬った? マシンガンの弾丸を全部斬った!? ファンタジーすぎるわよ!」

 あぁ、そう言えばスクリーンを通して戦いを見る事が出来るんだった。先ほどの試合はシノンに見られてしまったのだろう。とはいえ、本当の戦闘スタイルや奥の手は未だに見せてはいないし、見せる事もない。

 それよりも、

「シノン―――棄権するんだ」

*1

「はあ?」

「悪い事は言わない。今すぐ危険しろ。この大会はヤバすぎる。正直俺一人で止めるのはもう不可能なんだ。せめて君一人でも逃がしたい。悪い事は言わないから今すぐ逃げるんだ」

 なるべく真剣に、真面目にシノンの目を見つめて言葉を放つ。が、シノンはそれを挑発や悪ふざけだと取ったようで、挑戦的な笑みを浮かべる。

「なに、私と戦うのが怖くなった?」

「違うんだシノン―――この戦いには死銃が出ているんだ」

 その言葉を聞いて、シノンが首をかしげる。

「死銃?」

 聞き返してくるシノンに対して頷く。ここでナハトやジューダスの名前を出しても意味はない。ここはもっと身近で、そしてわかりやすい例題を上げた方が理解できる。……それでシノンがいう事を聞いてくれるかどうかは別だが。

「少し前に酒場で銃撃し―――リアルの人間を殺したという事件が発生した」

 それを聞いてシノンは得心いったような顔をする。

「あぁ、知ってるわそれ。でもそれって―――」

「―――冗談でもなんでもなく、本当にリアルでプレイヤーが死んでいた。外傷はなし。死因はおそらく心臓麻痺。死亡時刻は銃撃から約数秒後。死銃の銃は現実でも殺していた」

 その言葉を聞いてシノンは驚き―――

「―――総務省の通信ネットワーク内仮想空間管理課はこの事件の早期解決を……」

「総務省!?」

 シノンが更に詰め寄ってくる。顔が近い為、一歩後ろに下がり、両手を上げてシノンを抑える。

「……俺は総務省の役人にこの事件を調査するように雇われているだけだ。で、調査してたらガチでヤバイのが引っ掛かって、早く逃げた方がいいって話。だから、な? 出来るなら棄権してくれ」

 これで棄権してくれればうれしい話なのだが―――

「―――嫌よ。なにそれ。ゲームが現実を侵してるの? そんなのありえないし、許せないじゃない」

 ま、そうなるとはおもっていた。シノンの性格からして簡単に引くとは思えなかったし、この提案もダメ元でやっただけだ。現実としてあの三人の脅威だけではなく、死銃のまだ理解できていないリアル・キリングの方法を探し出す事も重要だ。規模が違うだけで、死銃の話は本当だ。それに菊岡に依頼されたのはあの三人の存在ではなく、死銃の調査だ。

「クソ、どうにかしないと……」

 悪態をつきながら頭を掻く。

「……」

 どちらもなんとかしないとこのVR業界が再び危うくなる。いや、既に危ない位置にあるのかもしれない。実際VRゲームの遊びすぎで死人は出ているし、反VR団体と言うのもできている。マスコミも無駄に騒ぎ立てたりしているし、死銃の件が漏れればVRの信用はガタ落ちだろう。俺は今のこの環境が気に入っているし、壊したくないと思う。時よ止まれだとか触るななどとは言わないが、今のこの状況を自分らしく楽しみたいとは思う。

 ―――それには、どう足掻いてもアレが邪魔だ。

 そう、邪魔だ。ラフィン・コフィンの残党も、悪夢の残滓も全部邪魔だ。お前らは必要とされていない。悪夢は悪夢らしく夢となって消え去ればいいのに、なぜそうも必死に食らいつくんだ。俺はいい加減にアインクラッドの関係を清算して前に踏み出したいのに、過去はどう足掻いてもそれを許してくれない。

 いや、

 VRに俺がしがみついている時点で―――アインクラッドの悪夢から逃れることは不可能なのかもしれない。

「ねえ、キリト―――」

 熟考に入りかけていた思考をシノンの声が呼び戻し、

 そして同時に不快な視線が背中を撫でるのを感じる。

 味わった事のある感じだ。殺す、その明確な意思が込められているのと、そして同時に嫌悪感が込められている。ただの殺意ではなく拒絶と排除からくる殺意だ。ただの殺意と比べ純粋ではなく―――感情が込められている。純粋な殺意とは純度が違うが、これもまた素晴らしく悪寒を生む殺意だ。これは経験した事がある。いや、この殺意の持ち主とは何度か剣をぶつけ合った事もある。

 瞬間的に、死銃事件の犯人が誰か把握した。

 前よりも強く、そして異質に感じる殺意は相手も前進している事を表し―――吐き気を生む。

 振り向くのと同時に光剣を抜き、それを背後の存在へと突きつける。

 同時に、此方にも刃が一本向けられていた。

 分厚い、肉きり包丁の様な刃だ。その印象は間違っていない。ダガーサイズの武器は何よりも肉を断ち切る事に特化している得物だ。そう、肉を断つことだけしか考慮に入れていない得物だ。勢いを持って振るわれる事で初めて意味を成す得物だが―――それには確かな脅威が存在する。

 ボロボロの服装はあの頃と一切変わっていない。そう、あの頃と全く姿は変わっていない。どうやってかは解らないが、あの死神の様な姿も、”メイト・チョッパー”も健在だった。

「Hey, long time no see mate」
(よお、長いことあってなかったな相棒)

「ッハ! 吐き気がするんだよ! 気軽に話しかけるんじゃねぇよ」

 自分よりも背丈の高い存在の為、見上げながら言葉を放つ。

「お前が死銃か―――Poh」

 顔を半分隠すマスクの下でPohは笑みを浮かべ。

「―――ウェルカム・トゥ・ザ・クリミナル・パーティー」

 この大会がただのそのままでは終わらないを、予感させた。




ザザ? ジョニーブラック?
おいおい、悪役つったら出番が少なく終わったプーさんだろ!
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| 断頭の剣鬼 | 10:28 | comments:6 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

シノンさんまじにげて。
ここはもう異界よ。

| 羽屯十一 | 2012/10/14 11:51 | URL |

ぽーさんwww

取り合えず良い空気がエタった!常人の方々!そんな鉛玉撃ってヒャハってないで逃げて!

―――――どう足掻いても絶望。

| オベリスク | 2012/10/14 12:16 | URL |

なに、ポーさんも人外化してんのwww
GGO完璧に\(^o^)/

| 裸エプロン閣下 | 2012/10/14 13:07 | URL |

PoHの読みはポーやないプーや!

この人は原作だといつの間にかログアウトしてたからなあ。
一体何処に消えてたのやら。

| hunting ground | 2012/10/14 16:52 | URL | ≫ EDIT

GGOはもう、閉鎖した方が良さげな件w

もう、地獄にしか見えないZEwww

| 尚識 | 2012/10/15 01:27 | URL | ≫ EDIT

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| | 2013/11/18 18:21 | |















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