陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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悪夢 ―――リターニング・デビルズ

推奨BGM:Dance Makabule (Paradise Lost)


 ―――死神の姿をスクリーンで見つけた瞬間、背後に気配が現れる。唐突に、まるで無から出現したような現れ方だった。何も感じ取ることができなかった。ただ、今、

「―――レスト・イン・ピース」

 背後を取られ、背中に銃を突きつけられている事実だけがあった。疑う必要なんてない。こんな芸当ができるのも、その言葉を好んで使うのも、この世で一人しか俺は知らない。背中に突き付けられ感じる大口径の銃の感覚も懐かしい。一体何年ぶりだろうか、銃を突きつけられて明確に自分の死がイメージできるのは。

「ッ!」

 横へ体を一気に動かし、腰から光剣を抜き、起動させてその刃を背後の存在へと向ける。そこで背後にいた存在はおどけた表情で両手を上げ、降参のサインを見せていた。とことんふざけている。相手はふざけているのに、生きた心地がしない。今も殺されそうな、そんな錯覚がする。いや、錯覚ではない。この男は脅威だ。今日、此処へ来てよかったのかもしれない。

「……ジューダス」

「おぉ、覚えてくれてたのかい? そりゃ嬉しい話だね」

 クルクルと指で銃を回し、それを赤いコートにジューダスがしまう。変わらない。こいつの服装も姿もアインクラッドで見た時と変わらない。それはミハエルにも司狼にも言えた事だが、こいつらは偽る事を良しとしない。常に自分の本質をさらけ出して、それを見せつけている。ごくり、と緊張に耐えかねてつばを飲み込む。


 ……ヤバイ。

 今、此処で殺り合うのは得策じゃない。

 ジューダスの銃はマシンガンの様な連射性、ライフルの様な精密性、そして大砲の様な威力を有している。接近戦に置いて一番怖い武器は銃とナイフどちらだとくだらない事でスレが立つほどに、接近戦で銃の存在は畏れられている。というよりも、あの弾丸を経験した事のある人間であれば。もう二度と食らいたいとは思えない。

 ―――バレット・オブ・バレッツもここまでだな。

 ラフィン・コフィンの関係者を、死銃を見つけ出す事は出来なかったが、此処でこいつを排除する事の重要性と比べれば些細な問題だ。つまり一か十の選択問題だ。ちまちま人を殺す死銃を選ぶか、一度に大量虐殺を引き起こすジューダスを選ぶか―――目の前のこいつが一般人の命に頓着するようには見えない。だから、今すぐ殺すべきなのはこの男だ。

 だから、

「来い―――」

 黒い斬首の刃を呼ぼうとした瞬間、

「―――まあ、待ちなよ」

 ジューダスの声に止められる。

「ほら、ここで戦う気はないんだよ。アンダースタン?」

 ジューダスが両手を広げて無害であることを示している。その姿を数秒見つめ、身じろぎすらしない時間が過ぎて行く。だがジューダスの姿を数秒みつめ、この男には今戦意も殺意も存在しない事を認識し、光剣と召喚しかけた刃の存在を引込める。

「で?」

 武器を引いたとしてもジューダスは敵だ。その事実は変わらない。相容れる事は一生ありえない。

「おいおい、そんな冷たくされちゃうと悲しいぜ。人生もう少し楽しくやらなきゃ生きている意味が解らないぞ? ああ、不感症にでもなってみなければそこらへんは解らないか。まあ、君には余裕が足りないと思うよ。ま、それともなんだ。君は格下相手じゃないと余裕の一つや二つ見せられないのかい?」

 挑発だ。見事なまでの挑発で、此方の神経を逆なでしてくる。が、それに構っていたら駄目だ。怒りをぐっとこらえ、

「なにが目的だ」

 質問する。そう、此処にいる意味を聞かなくてはならない。それでもし、それがあの夜の様な出来事であれば―――命に代えてでも倒さなければならない。既知感はなくなったが、それでも俺は強くなった。準備は十全と言える状態ではなくても、相打ちにか、援軍を呼び込むだけの時間は稼げる。

「さあ―――当ててみなよ?」

 大胆不敵に笑みを浮かべるジューダスはやはり挑発してくる。いい根性だと思う。解っている。今の俺は平静じゃない。いつもの余裕を持ってふざけている俺ではない。それでもこいつらを見てしまうとどうしても平静ではいられない。理解してても興奮してしまう。

 そこには戦えることに喜ぶ俺と、

 今すぐこいつを排除すべきだと叫ぶ俺がいる。

 つまり目の前のこいつを殺すべきだと俺の本能は訴えかけているが、本能よりも強い理性でそれを抑え込んでいる。殺せと叫んでいるのは確実に”アレ”で、久しくなかったあの好戦的な感覚がよみがえるのを認識する。だが戦意というものは重要なため、その感覚を捨てきらず、体内に押しとどめたまま目の前のジューダスを睨む。

 笑みを浮かべるジューダスと睨む俺。

 互いに武器は一旦しまったが―――それはもう一度抜く事を止める理由にはならない。理由なんて些細なものでいい。視線が合った。気に入らない。こいつは危険すぎる。機嫌が悪かった。こいつらとは相いれる事が出来ない。だから戦い、そして殺すのに必要なのはその程度の悪意と覚悟だけだ。そう、悪意だ。敵を排除しようと、殺そうとする意志が美しいわけがない。それが悪意でしかないのは明白だ。

 敵を殺そうとしているのに、それを守りたいなどと綺麗事を抜かす事はしない。

 戦おうとする意志はどんなに綺麗事を並べても―――結局は排除であり、拒絶の意志だ。正しいはずがない。とことん不毛なのが戦闘というものだ。何も生み出さないし、生み出せない。だからこそ、意味がある。

「……」

「……」

 あの頃と比べてジューダスの実力には大分近づいた。今ならこいつの実力がある程度分かる。あの頃はまだ”強い”としか認識できなかったジューダスの実力も、その大体が理解できるようになった。つまり格上。つまり別格。つまり強敵。倒せない事はないかもしれないが、確実に犠牲は出るといったレベルの存在。

 改めて覚悟を決め、再び―――

「―――そこまでです」

 制止の声が入る。突如として現れたのは少女だった。全身白の少女。シュライバーを思い出させる白の髪に近未来チックな白い服。ただしその瞳だけが赤く、アルビノを思わせる様に赤い。瞬きをした瞬間に彼女は俺とジューダスの間に立っていた。そして彼女が現れた瞬間、

「おいおい、勘弁してくれよ。今いい所なんだぜ?」

 ジューダスに存在した挑発的な雰囲気が消え、嫌な顔をする。それを見て此方の警戒心が薄れ―――はしない。逆に跳ね上がっていた。正面、目の前に現れた少女は”同じ”存在だ。このジューダスと似たような存在、似たような実力、似たような次元の―――超越者。その事実ははっきりしていた。この白の少女も黒円卓やジューダス、ナハトと同じ超越者の部類に入る存在だ。

 しかし何だこの惨状は。

 ミハエルも司狼もそろっていて、死銃はラフィン・コフィンの誰かで、謎の超越者が三人もいる。

 なんだよここは。グラウンドゼロか。最終戦争でも始まるのか。

 見えないが、確実に大きなうねりを感じる。そしてそのうねりに、流れに逆らえずに今、自分が呑み込まれていることが解る。大きすぎて全く先も、どこから来たかも解らない大きな波にのまれている気分だ。最悪―――の一歩手前といったところだろうか。この少女が敵対ではなく仲裁に入ったのが少しの救いだ。

「貴方は遊びすぎです」

「人生真面目にやってると何時か疲れるぞ」

「まだ疲れを感じませんし疲れを感じる事もありません。何よりも―――」

 少女が一瞬だけ、此方に視線を向ける。

「あの”程度”に構っていたところで益はありません。関わる必要性すら感じません」

「……ッ!」

 今のは挑発ですらない。

 あの少女は俺を羽虫以下の存在として認識しているのだ。まだジューダスの方がマシだ。ジューダスはこっちを一人の人間、敵として認識しているが、この少女は俺を人間とすら認識していない。視界の中に入ったところで”見ていない”のだ。

 が、それは同時に興味がない事を俺に伝える。第一回戦が終わり転移で戻ってくるプレイヤーが増えてきた。今暴れれば周りへの被害がデカすぎる。少女のおかげで頭が少しだけ冷静になれて、此処では戦うべきではない事を認識させる。その点においてのみは感謝できる。

「行きましょう。私達に残された時間は少ない」

「はいはい。ま、そんなわけだ」

 ジューダスが再び挑発的な笑みを浮かべる。

「決勝戦は少しだけ時間があると思うからね、そこで会えることを楽しみにしてるよ」

 そう言ってジューダスと少女の姿が見えなくなる。その姿が人込みに紛れて消えるのを認識しながら、やっと緊張から握りしめていた拳を振りほどく。

「……ふぅー……」

 何時の間にか握っていた拳は爪が食い込むほどにきつく締められていた。そして、汗も大量にかいている事を認識する。何かで拭いたいところだが、この不快感は時間と共に消えるだろう。いや、話はそんな事じゃない。

「ジューダス……!」

 ヤバイ何て状況じゃない。今、菊岡からこの仕事を引き受けた事を全力で後悔している。このままアスナに叱られる事を恐れてALOに引っ込んでいれば良かった。どんなに思考をめぐらせても頭に思いつく結果はロクな事ではない。ジューダスとナハト、そしてそれと同格の少女―――この三人が存在する限り、避けられない死が既にプレイヤーに与えられている事は明白だ。おそらく先ほどスクリーンに映っていたナハトの対戦相手―――首を握りつぶされていた彼はリアルでも死んでいるに違いない。確証はないが、直感的にそうだと理解できていた。

 言うなれば、あの三人は死だ。死という概念が人の形をして、服を着て、そして歩き回っている。触れたら死に、触れなくても、その気配を感じるだけでも死へと至らせる最悪の毒だ。そこに存在しているという事実だけで、周りの運命が死へと向かって歪んでいくのを認識できてしまう。彼らは彼らが認める存在以外の全てを、塵芥の様にしか思っていないのだろう。それはある意味で―――。

「……」

 言葉が出てこない。この状況で何をすべきかが―――いや、ある。方法だけならある。

 それを成すためにも素早く周りに視線を送る。増えてきた人込みの中、たった一人を見つける為に気配を探り、必死に周りを探る。既に試合が終わっているのは認識できている。早く見つけてここは―――。

 そこで、

 体が光に包まれる。

「ヤバっ―――」

 転移の光だ。

『これより第二回戦を開始します。転移によって―――』

 集中しすぎたせいで運営からの放送を聞き逃していた、というよりも聞いてなかった。駄目だ、また犠牲者が増えてしまう。転移の光を振り払おうにも、試合の勝利は先に進む為には必要な事だ。

「クソ!」

 悪態を吐いている俺を、転移の光が運ぶ。

 次の試合へ。
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| 断頭の剣鬼 | 09:44 | comments:1 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

キター!
アストたんマジアストたん。

| 空 | 2012/10/13 14:32 | URL |















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