陳情の先を行く部屋

基本的に二次創作を公開しているブログです。楽しく読んでいただければ幸いです。

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DAY24

「……ん……ぁ……」

 少しずつ意識が覚醒して行くのを認識する。何時もの様に直ぐに意識がはっきりと覚醒をはじめない。軽いだるさが体に絡みつき、肉体が熱を持っているのを自覚する。これは―――疲労だ。基本的に体調管理も立派な職務の内の為、風邪を引いたり疲労でダウンする事はほぼない。というより転生を果たして以来一度もない。だからこの感覚は―――前世以来の経験だ。疲労を感じながらも狂気の精神力で全てを捻じ伏せて行動していたころは、肉体が通常を超越していた。だけどこの肉体は鍛えているだけで、まだ常識の範疇だ。そこに込められた技術や経験は常軌を逸脱していたとしても、疲労は打ち消せない。

 だが、精神構造は肉体よりも正直だ。本来なら精神よりも肉体なのだろうが、そこらへんは鍛え方が違う。意志一つ、持ち方を変えるだけで眠気は一気に拡散し、意識の覚醒を早める。倦怠感や熱を一気に思考回路から追い出し、体を持ち上げる。未だ着ている服がメイド服だという事をそこで認識し、首元のボタンを外し、首のタイも緩める。一気に胸元まで解放し、そこで体を軽く伸ばす。


「―――俺は一体どれぐらい寝てたんだ?」

「―――大体四時間ほどだな」

「わお」

 ベッドの横を見ると、そこには椅子が置かれており、そこには知った顔が座っていた。豹の耳と尻尾の男が座っていた。そこにいた人物を確認し、

「はぁぁぁ……」

「そこであからさまに溜息を吐かれると、落ち込みそうになるんだけど……」

 あからさまに溜息を吐く。それを見たバナードが苦笑いを浮かべて、そして懐かしそうに顔を歪める。

「懐かしいなあ。君がそうやって素を見せるのも随分久しぶりに思えるよ」

「実際問題、最近はずっと出ずっぱりで休む暇なんてなかったしな。こうやって俺が地を見せてられる時間も場所も相手も少なくなったな」

 久しぶりに見せるプライベートの口調は少しだけ、軽い違和感がある。少々仕事に入れ込み過ぎなのかもしれない。が、今、人生が充実している事に変わりはない。毎日を楽しく感じている。仕事が充実し、楽しくやれるのであれば何の問題もないと思える。あぁ、問題さえなければ。普段なら敗北したとしても全力を持って相対した結果だから納得し、受け入れる。が、

「タバコか酒ない?」

「ない」

「ケチ」

「前線にどっちもあるわけないだろ……」

「気がきかねぇなぁ……お前、いつか絶対に離婚するって」

「君の素を見てショック死する人がどれだけガレットにいるのか、少し興味が出て来たよ」

「お前も結構言うようになったなあ」

「君ともう二十年近く友人関係を続けていれば嫌でも慣れるよ」

「やったな、美女とのコネができたよバナード君! よし、今度お前の奥さんにビオレにフラれた時の話をしてやる」

「……もう少し寝るかい?」

 バナードが拳を握り、そこに静かに輝力を込め始めるのでそろそろ忍耐の限界かもしれないと思い、一旦黙る。バナードの座る側とは逆側に目を向ければ窓がある。そこから外を見れば夕日によって黄昏色に染められている世界と、そしてせっせと作業を進めるガレットの兵士達の姿が見える。ビスコッティに対する敗北で、ガレットは王都の制圧に失敗し、一個前の拠点―――即ちミオン砦で明日までの時間を過ごす事となっている。

 夕日が沈んで行く中で、日没までに明日の準備を終わらせようと作業を進めるガレットの兵士数百人の姿が見える。全ての兵士が見えるわけでもないし、砦に収まるわけでもない。故にそれが全てではないが、それでもかなり賑やかになっている。

「殿下を手伝わなくていいのか? 戦争興業はお前の仕事だろ、騎士団長殿」

 その言葉にバナードは苦笑し、

「いいのかい? ビオレもルージュもレオンミシェリ閣下もいないんだよ? ―――寂しくないかい?」

 その言葉に、

「―――少しだけ、寂しいかなぁ」

 苦笑してしまう。こうやってストレートに言える程度には自分も素直になったものだと、こんな風になったのだなぁ、と思う。バナードも軽く笑っている辺り、こんな感じになると思っていたのだろう。と、窓の外で砦の外へ―――ビスコッティへと向かって走って行くジェノワーズの姿が見える。

 ……あの三人娘、またロクでもないことをしそうだなぁ……。

「ジェノワーズには期待しているんだけどなぁ、もう少し落ち着きを持ってくれないかな」

「アレ以上をあの年で求めるのは少し酷じゃないのかい?」

「俺とビオレのコンビはもっとうまくやってた」

「君たちを基準にすることが間違っているんだよ」

 まあ、自分も結構そう思うわ。だけど、若い者に期待をしたくなるのは歳を取ったものとしての特権であり、そして同時に仕方のない事でもある。自分がもう二十五だという事実は結構驚きである。だが、まあ、こんな風に加齢するのも悪くはない話だ。

 ―――あくまでも、レオンミシェリ閣下を悩ます原因さえ消えれば。

 声のトーンを少し下げる。

「見つかった?」

「いや、見つからない」

 それだけで会話は終わった。

「そっかぁー。まぁ、仕方ねぇよなぁ……」

 しかし、問題はそれだけではない。

「勇者登場か。ビスコッティが活気づくし、面倒だなぁ。相手は人間でけものだまになる事はないだろうから、ガチで殴ったらそのまま壁のシミになりそうで怖いし。でも手加減するのはするので難しいんだよなぁ―――今までどんなに本気で攻撃してもけものだまになるだけだったから、フロニャ力って便利だなぁ、って改めて思うわ」

「サイアス、君、今言ってはいけない事を言ったんじゃないのかな」

「どこらへん?」

「後半部分」

「んじゃあ今のは聞かなかった方向で」

「そうだね」

 さてと。

 そろそろ起き上がる。なんだかんだ言ってバナードと話し込んでしまった。陽はおちて、世界は夜の闇を受け入れていた。バナードと話しているうちに軽く三十分、いや、一時間程度は経過しているかもしれない。ベッドから足をおろし、そこに置いてある靴に足を通す。少し体の方を軽く確かめる。少しだけ疲労感が残っていたりするが、久々にとった余分な睡眠と無駄話でかなり活力は戻ってきている。

「調子はどうだい?」

「お前に時間稼がれたせいで結構回復した。あー……こうやって無駄話するのも何時振りだろうか……」

「ははは、流石に気付かれちゃったか。部下に書類仕事押し付けて来たかいがあったよ」

「お前もお前で中々いい性格してるよな」

 立ち上がり体を大きく伸ばす。胸を前に突き出すようにして、今まで伸ばしきれていなかった体を徹底的に伸ばす。背骨などが軽くバキボキ音を立てるのを聞きながら、近くのテーブルに置いてあった水差しからコップに水を注ぐ。コップがもう一つ余分に置いてあるのでそれにも水を入れ、

「飲め」

「何で命令形……」

 コップをバナードに渡し、中の水を口に含んだことを見計らい、

「おい、フリンは駄目だぞ」

「っぷ……っく……くはっ! あ、危なかった!」

「チッ」

 ギリギリでバナードは口から水を噴出するのを堪えた。イケメンの幻想を叩き割る光景を見れるかと思ったが、どうやら無理だったようだ。バナードの抗議の声を無視して水を口に含み、窓の外の光景を見る。

 月の光が夜を照らし、

 ―――月明かりに照らされたジェノワーズが、ミルヒオーレ姫を運んでいた。

「ぶふぅっ」

「げ、げほっげほっ!!」

 ちょうどバナードもその光景を見た様子だった。信じられない光景に水をのどに詰まらせ、苦しそうに咳をしている。

 何時かやらかすかとは思っていたが、

「あの三馬鹿、ついにやらかしやがった……!」

「少しは信用してあげようよ」

 それもそうだ。

 なら、

「まずは真相を調査してから―――処刑だな」

「君、実は二十年前から変わらないね」

 そう簡単に俺がブレるかよ。
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| 短編 | 19:09 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

アスアスちゃん、仕事ばかりしてると精神が病むよ~~!!


たまにはリフレッシュしないとね!

| 尚識 | 2012/10/12 23:14 | URL | ≫ EDIT

首斬り分が足りないから、不調になったんじゃないか?丁度三つできそうだな?

| nao | 2012/10/13 05:54 | URL | ≫ EDIT

ジェノワーズ逃げて―――!

| 雑食性 | 2012/10/13 21:45 | URL |















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